【3行要約】 ・株式会社Awarefy代表取締役 / CEOの小川晋一郎氏と、『強いビジネスパーソンを目指して鬱になった僕の 弱さ考』著者の井上慎平氏による、キャリアとメンタルヘルスをテーマにした対談をお届けします。
・井上氏は「納得できなくても、自分の弱さと向き合う姿勢が大切」と指摘します。
・自分の弱さを受け入れ環境を調整することが、無理せず長く働き続けるための重要な視点となります。
前回の記事はこちら 「がんばれるはずだ」と自分を説得していた
小川晋一郎氏(以下、小川):今、ひととおりの流れのお話をおうかがいできたと思うんですけれども、その上でご自身のうつや双極性障害と向き合う上で、どのようなことを実践されていたのか。先ほどの「25分働いて5分休む」とかも1つだと思うんですが、どのようなところを意識して活動されていたんでしょうか?
井上慎平氏(以下、井上):すごく難しいですね。復職して1年半配慮してもらってから、休職して結局辞めて、
『強いビジネスパーソンを目指して鬱になった僕の 弱さ考』という本を書いて、ようやくそこで考え方をだいぶ変えることができました。なので「実践しておけばよかった」という時間軸まで戻しちゃうと、できていなかったことのほうが目立ちますね。必死に自分を説得していたというか。
僕みたいなアッパー系(うつ)かどうかはわからないですけど、誰しも「がんばらないと」「自分はがんばれるはずだ」という気持ちは多かれ少なかれあるはずです。今としては、それを自分で認められなかったことを、もう少し早く切り替えられていればなと思いますね。
小川:そこはやはり『弱さ考』を書く中で、徐々にご自身の中で整理されていったんですか。
井上:そうですね。やはり、本を出すぐらい突き詰めて整理して書くことは、あまりないと思うんですよ。本の中にも一部分は書かれているんですが、僕は最初の再発から3年ぐらい経ってもまだ納得していなかったんです。正直、今もしていないので。
小川:そうなんですね。
自分の至らなさを責めなくていい
井上:定期的にぶり返すというか、完璧には(納得)できない。うつになる時に、「自分の弱さを認めて納得しよう」みたいなことを僕が言っても、もし観客席に僕がいたら、あまり聞かないと思うんですね。
小川:なるほど。
井上:だから、自分を言葉で説得する作業は必要なんですけど、そんなにすぐには聞かない。葛藤が生まれるじゃないですか。傲慢な自分を反省したり、「またやってやるぞ」みたいな気持ちになったり。
そういう自分で自分の至らなさを責めるみたいな、二度目の攻撃はしないほうがいいよとは言える。すでにいろいろなことに気づいたり、傷ついたり、みじめな気持ちになったりという、一度目の攻撃を食らっているので、二度目は要らないかなというところですかね。
あとは、1つだけいいですか。
小川:もちろん。
井上:長く働くという(ことです)。これはアドバイスをしてくださったビジネス界の大先輩がいて。「井上くんね、僕は今40過ぎだ。僕の周りには、もっと優秀なやつはたくさんいた。でも、体や心を壊してだんだんいなくなり、気づいたら自分が最後まで立っていた。体が強ければ心が先に壊れるし、心が強ければ逆もあるから、長く働けるようにがんばってね」と。
僕はたぶん、NewsPicksに入って数ヶ月ぐらいで言われて、「いい話だな」と思って聞いていたんです。でも今お話ししたとおり、ぜんぜんわかってなかったんです。過去の自分に言って、唯一まだ聞く耳を持つかなというのは、がんばってもポキッと折れたら、もうそれまでじゃないですか。やはり普通に働いていくならば、60歳とかまでの射程の話であって、「長く働けるような選択を」ということだけは、過去の自分に言いたいですね。
湧き上がる感情を否定せず受け止めてみる
小川:ありがとうございます。『弱さ考』を書きながらも完全に整理ができたわけではなくて、ぶり返してくることもある。その葛藤が常にあり続けるというのは、すごく興味深いなと思ってうかがっていました。
井上:僕は背伸びをした、強がりをしていた(と思います)。『弱さ考』は「強がり考」なんですね。強がっていて、そこで働けなくなった自分がいて、みじめな気持ち、悔しい気持ちがあった時に、それをないものにすることもできるし、部分的にしていたんですよ。
でも、何か自分の中にあるネガティブな感情をないものにするって、「働く量が多くてつらい。でも、それをないものにする」っていう、2020年の僕と変わらないなと思って。
今は、自分の中にそういう傲慢さや野心があることを否定せずに眺められるようになりました。状態というか愚かさ的には一緒なんですけど、さっき言った「2回目の攻撃をしない」みたいなところがちょっとだけ変わった。