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発達特性と仲良くなる日。〜特性を“使いこなす”という自分攻略法〜(全4記事)

発達障害当事者が語る、仕事や勉強で挫折するパターン 一般化のしすぎ、過小評価…ストレスを抱えやすい人の思考のクセ

【3行要約】
・発達障害の特性による「認知の歪み」が勉強の壁になり、挫折を生むケースが多く見られます。
・株式会社キズキの林田絵美氏と半村進氏が、全か無か思考や一般化のしすぎなど5つの思考パターンを解説。
・当事者である林田氏は、これらの歪みに気づき客観的に自分の思考を見つめることが、勉強や人生の挫折を乗り越える第一歩だと語ります。

『発達障害の人のための自分攻略法』著者が登壇

半村進氏(以下、半村):まず自分から少しだけ自己紹介をさせていただきます。キズキの半村進と申します。キズキの創業間もない頃からいるスタッフなんですけれども、実は自分もいろんな偏りや紆余曲折がありました。不登校、そして5年半ぐらい引きこもっていた経験もあります。

実は人生で初めてアルバイトをしたのが30歳の時で、それがキズキとの出会いでもありました。キズキ共育塾の講師も長くしていたんですけれども。その後、少し立場が変わりまして、今はみなさまのご相談を受けることが非常に多くなっております。

累計2,000名以上のみなさまのいろんな勉強に関する悩み、進学、進路、あるいは不登校とか体調とか、いろんなことを聞いてまいりました。ただ、僕は今日は脇役です。次に、今日の主役の自己紹介をさせていただければと思います。

林田絵美氏(以下、林田):主役とご紹介いただいて僭越なんですけれども、私は株式会社キズキ取締役の林田絵美と申します。実は『自分に合った「働く」が見つかる 発達障害の人のための自分攻略法』という本を執筆しまして、今回このようなイベントを企画させていただきました。

簡単に自己紹介させていただきますと、私は地元の小学校、中学校に通っていて、それこそ埼玉の田舎で、本当に田んぼのど真ん中に学校だけあるようなところに通っていたんですけれども(笑)。高校は早稲田実業学校に進学して、そこから早稲田大学卒という感じです。

私自身が発達障害の当事者で、診断を受けたのは大人になってからなんですけれども。それこそ小学校、中学校、高校ぐらいの時は、本当にいろんなことがあって。「なんで自分は人と違うんだろう」ということにすごく疑問を抱えながら生きてきました。

ここに書かせていただいているとおり、高校とか大学の経歴だけを見るとすごく順風満帆にいったように見えるかもしれないんですけど。それこそ小学校の時は毎日宿題をやってこないぐらい、ちょっと問題のある行動をしていて。授業中におしゃべりが止まらなくて教卓の前に座らされていたり、いろんな悩みも抱えてきました。

そこから大学在学中に公認会計士の試験に合格して、最初は会計士として働いていたんですけれども。2018年にキズキに入社したんですが、その2年前ぐらいに初めて発達障害という診断を受けて、発達障害の人がキャリアを築くことについていろんなことを考えて、うつと発達障害による離職からの再就労を支援するキズキビジネスカレッジという事業を立ち上げました。

なので、けっこう現場経験も長かったんですけれども、今ではCFOとしてコーポレート全体を統括している立場になります。本日は、よろしくお願いします。

思考傾向から考える「勉強に“心が折れる”パターン」

半村:ありがとうございました。実は自分も埼玉県の田舎にいたり、いろんな偏りがあるのですごく親近感を感じたんですが。ただ、すごく肝心なこととして林田さんは何がすごいかというと、自分も発達障害の当事者で支援者でもある、そして経営陣でもあるということなんですね。なので、勉強についても進路についても働くことについても、いろんな観点で発達障害との結びつきを語れる。

ただ、僕たちの話だけを聞いていても、みなさんもう飽きてきてしまったかもしれないので、さっそく本題に入ろうと思います。

今日は大きなテーマを3つ用意しているんですが。1つ目は「思考傾向から考える『勉強に“心が折れる”パターン』との向き合いかたは?」ですね。

キズキにいるともう「勉強、とにかくやりたくない」、あるいは「嫌な思い出があって」と心が折れちゃったり、「続けられる気がしない」「始められるんだけど続けられない」という悩みをすごくよく聞くんですね。

ストレスや挫折を生み出しやすい人は「白黒思考」をしがち

半村:なので、対談の1つ目のテーマはもうこれしかないとさせていただきました。では、次のスライドの解説をお願いいたします。

林田:はい。このテーマと、著書でご紹介しているテーマにちょっと親和性があって。今回はそのテーマをピックアップしてみたいなと半村と事前に話していたんですけれども。

みなさん「認知の歪み」ということを聞いたことがありますかね。もしくは、そのうちの1つの「白黒思考」とかは聞いたことがありますかね。実はこれは、別に発達障害の人がこの思考を持っているということではまったくないんですけれども。

今まで我々が支援してきて、発達障害のお子さんとか、あるいはそうでなくても何か自分自身でストレスや挫折を生み出してしまいやすい人は、こういう思考傾向を持っていることがわかってきています。

一般化のしすぎ、拡大解釈、過小評価…「認知の歪み」のパターン

林田:じゃあ、その認知の歪みはどういうことかということを、今回いくつかご紹介したいと思うのですが、この「全か無か思考」。これは著書の中の「働く」をテーマにした図解から取ってきているので、中身が働くこと(について)になってしまっているんですけれども。

例えば仕事の場でも資料を作る時とか。100点の資料を自分の中の理想としちゃって、そこに1ミリでも届かなかったら、もうこの資料は使えないという思考になってしまう。もしかしたら一部直せばまた使えたかもしれないけれども、もう最初からやり直しだという思考になってしまう。こういう思考回路を「全か無か思考」といいます。

あと「一般化のしすぎ」ですね。勉強に置き換えて説明すると、例えば先生から一度怒られたとか注意されたとか、友だちと一度喧嘩してしまったとなった時に、「いつも自分はこういうことをしてしまう」「そうしたらもう他の環境、この後の学校生活でも絶対同じことを犯し続けてしまうだろう」「もうこの学校ではやっていけない」という。

この1つのことが、すべての時間軸やケースに当てはまってしまうように自分の中で思ってしまう。1つの出来事で、その場で「もうやっていけない」という思考になってしまうことを「一般化のしすぎ」と言ったりします。

あるいは「拡大解釈、過小評価」。これもここに入っている例では仕事の場になっていますけど。例えば自分と友だちを比較すること。これは普通の人でもよくあると思うんですけれども。

この「拡大解釈、過小評価」という思考を持っている人は、例えば自分の長所と短所と、友だちの長所と短所が、実態としてはそこまで大きな差がなく存在していた時に、この人の頭の中は、自分の長所はこんなに小さく見えて自分の短所だけがこんなに大きく見える。相手の長所だけこんなに大きく見えて、相手の短所がこんなに小さく見えてしまう。これを自分の頭の中で作ってしまうんですよね。

この右側の状態で比較してしまうから、「あ、自分はこんなに劣っているんだ」という過小評価になってしまうことがあったりします。

事実から「マイナスのことだけ」を汲み取ってしまう

林田:あるいは「心のフィルター」ですね。例えば何か自分が発表をしました。このクラスのために何かをやりました。ある人からは「ありがとう」と言われて、ある人からは「助かったよ」と言われた。ただ1人だけ、それに対して無反応な人がその中にいるとなると、起きている事象はこの3つのはずなのに、自分の心にはこの無反応の人の表情しか入ってこないわけですね。

その表情だけを見て「自分のやったことは喜ばれていないんだ、自分は役に立たなかったんだ」という、ここが膨らんでいってしまう。要は現実にはプラスのこともマイナスのことも起きているけれども、その自分にとってマイナスのことだけを汲み取ってしまって、そこでダメージを受けてしまう。というのは、「心のフィルター」という思考。

あるいは、「すべき思考」。これは聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれないですね。例えば自分に任されたことは自分で終わらせるべきだといつも思っているとします。ただ、それは原則なんだけれども、実際には難しいところは誰かと分担したり、手が回らない時は他の人に助けてもらったりすることもあると思うんですけど。

この「自分が任された仕事は自分で終わらせるべき」というのが、やっぱり自分の中でものすごく強いルールになっている方はいらっしゃるんですよね。

それをこの現実に落とすと、その原則以外のことが起きてしまった時、「こんなのは絶対ダメだ。許せない。あり得ない」と考えてしまう。例えばこんなことが、「すべき思考」だったりします。

勉強、進路探し、受験…「認知の歪み」で挫折することも

半村:今、代表的なパターンを林田さんがおっしゃってくださったんですけれども、この著書の中には他にもおもしろいパターンが入っているんですよ。実は僕がこの本を読んで真っ先に思ったことは、勉強も進路探しも受験もまったく同じだなということです。だからこそ、この対談のテーマを勉強のものにさせていただきました。

例えば、先週こんなご相談もあったりしたんですよね。高校に入学した時に、最初の最初の段階で「中学校の範囲をまとめたテストをやってもらいます」と、学校が言ってくる。そのテストで、「あらら、思ったより(点が)取れなかったよ」という。最初の最初のテストで期待どおりの点が出ない。

そうすると「もうこの会社ではやっていけない」じゃないんですけれども、「最初の1回のテストでこんな点を取っちゃったよ」「もうダメだ」と。まさにこのスライドですよね。「自分はいつもいつも肝心な時、最初にこういうことをしちゃうんだ」「今後の学校生活も絶対うまくいくはずがない、もう学校でやっていける気がしない」みたいな感じで、もう一気にいってしまう。

そして、受験勉強の時もそうですよね。「最初の模試を受けてみたんだけど」とか。なので、まさに身につまされていたことがあるんですが。実はこの本の中に林田さんのちょっとビックリするようなエピソードも入っているんですけど。

林田:(笑)。

半村:僕も恥ずかしいことを言っておくと……。このスライドの中に「心のフィルター」というものがあったと思うんですけれど。実は、僕は2000年4月からどんなに暑い日でも外で半袖を着られなくなったんですね。

それはなぜかというと2000年4月に、渋谷を半袖のシャツで歩こうとした時になぜか「自分がこんなガリガリ(の体)で袖を見せて歩いたら、みんなにビックリされるに違いない」と勝手に思い込んで、未だに半袖が着られなかったりします。

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