【3行要約】
・日々の仕事や生活で悩みを抱える人が多い中、北の達人社長の木下勝寿氏は20年間ほとんど悩んでいないと言います。
・木下氏は「世の中の問題の9割は思い通りにいっていないだけ」と指摘し、問題解決には3つのアプローチがあると体系化しています。
・悩みを回避するには「うまくいかない」と「思い通りにいかない」を区別し、失敗を前提とした行動、そして「お金がない」という言い訳を手放すことが重要です。
20年間ほとんど悩んだことがない…木下勝寿氏の思考術
——木下社長! 木下社長は創業社長として上場を成し遂げたり、日頃の経営を行ったりする中で他の人よりも多くの困難にぶつかってきたと思います。木下社長が悩んでいる姿を見たことがないんですけど、悩んだりするんですか?
木下勝寿氏(以下、木下):私自身、20年ぐらいはほとんど悩んだりしていないです。私から見ると「多くの方が、本当に悩みすぎだな」と思うんですけども。先ほどおっしゃっていただいたように、人よりトラブルとかが少ないというわけではなくて、起業してここにくるまでは普通の人の10倍ぐらいのハードシングスを経験していると思います。
基本的に悩むことは、もうないんですよ。そういう話をすると「ポジティブシンキングをしている」とか、すごく「鋼のメンタルを持っている」と思われることもあるんですけども。まったくそういうこととは関係なく、思考アルゴリズムで悩みを回避することを、ずっとやっているんですね。
20歳ぐらいの時に、出来事が起きた時に「悩みってこうやって回避していけるんだ」と知って、30歳ぐらいでそれが完全に自分の中で体系化されました。それ以降はもうほとんど悩んでいないんですよ。なので今日は、悩みから自由になる思考アルゴリズムについて、チャート式でみなさんにご説明したいと思います。
——よろしくお願いします。
悩まないための思考フローチャート
木下:今図に出ていると思うんですが、これが悩まないための思考フローチャートです。問題が発生した時にどのように考えていけば、悩まない状態になっていくかっていうところなんですけども。まず大切なことが1つあって、今起きていることは、うまくいっていないのか、それとも思いどおりにいっていないだけなのか。
これを判断するのが第一歩になってきます。例えばAさんが目的地に行こうと思った時に、電車に乗ろうと思ったんだけれども、集中豪雨で電車が運休になってしまった。これは、うまくいっていないんじゃなくて、思いどおりにいっていない状態なんですね。
どこそこに行くのが目的で、電車で行くという手段がある。電車で行くことが無理になっただけであって、目的地に行けなくなったわけではないんですね。タクシーに乗り換えたり、歩いていくこともできますので。このように、起きた状態に対してうまくいっていないのか、思いどおりにいっていないのかを考えるのが大事です。
世の中の問題の9割は「思い通りにいっていない」だけ
木下:うまくいかないっていうのは、目的を達することができない状態。思いどおりにいっていないというのは、目的を達するための手段がダメだった場合ということですね。世の中の問題の9割は、うまくいっていないのではなくて、思いどおりにいっていないだけです。思いどおりにいっていないだけの時は、手段を変えればいいんですね。
人がなかなかこれができないのはなぜかというと、感情で判断してしまうんですね。ぜんぜん他の手段を考えていなかったのに、運休になったら「わー! 行けない!」みたいな感じになっちゃうんですけども。そこでいったん立ち止まってですね。
今の自分はうまくいっていないのかな、思いどおりにいっていないのかなってことを判断して、思いどおりにいっていないだけだったら「別の手段にすればいいや」って判断する。一方で、本当にうまくいっていない場合、これは問題がまだある状態なんですけども、ここからどうしていくか。
問題は、必ずしも解決しなくてもいいんです。まず、うまくいっていない問題を抱えた状態なんですけども。問題に対する接し方って3つあります。1つは、問題そのものを解決する。これは問題そのものを解決してください。そして次は、問題を問題でなくする。そして3つ目が、問題を具体的な課題に昇華させるということです。
問題は必ずしも解決しなくていい
木下:問題そのものを解決するというのは、(例えば)近くの人に嫌がらせをされていたとしたら、その嫌がらせを止めてもらうことだったり。もしくは、会社で仕事をしました。がんばったけど評価されなかった。じゃあ、もっとがんばって評価されましょうとか。事業をやりたいけど、事業資金がないとか。じゃあ、なんとか手を入れる。これができれば問題ないんですけども、できないから悩んでいる状態ですよね。
そして次に、問題を問題でなくするということです。これはリフレーミングという方法で、物事の捉える観点を変えてみるってことなんですね。要は、外部で起きていることの出来事、事実と、内部と解釈、感情を分けるということです。不快な出来事が起きているのではなくて、起きている出来事を不快に感じていると捉えてください。
問題は、ここで起きているんじゃなくて、この状態を受け取った自分の心の中で、今起きているってことですね。世の中の問題の8割ぐらいは、気にしなければいい話が多いです。みなさんも人から相談を受けた時に「それ、気になるの?」って、思うことはありますよね。同じことが起きても自分だったらぜんぜん気にしないようなことを、この人はとても気にしていたりとか。
それが悩みになっていたりするんですけども。みなさん自身が他人に対して思うように、他人もみなさんに対してそう思っています。そういった時にどうするかというと、考え方を変えるんです。がんばったけども評価をされなかったとしたら、「そもそも評価って、なんのためにされるんですか?」って考えるんですね。
そもそも「気にしなければいい話」が8割
木下:いろんな理由でがんばろうとしたり、評価されようとしたりするんですけども。「評価されないと、なかなか会社の中にいづらいですよね」とか「居心地良くないんですよね」という場合って「本当に評価されさえすれば良くなりますか?」とか「職場の同僚と、もっと仲良くなれば別にいづらくなくなりますよね」みたいな捉え方もあります。
例えば「事業資金が必要なんです」ってなった時に「本当に事業資金って必要ですか? 事業資金が必要ないやり方に変えればいいんじゃないですか?」ということがあったりします。そもそもそれって本当に問題なのかを考えるのがすごく大切になります。
ここに具体例がいろいろ書いていますけれども。全部紹介すると大変なので一部を紹介します。世の中の仕組みを知っていけば、そもそも悩むべきことではないですよというのが、けっこうわかってくると思います。悩みは他人ではなくて、自分から生まれることを知るの
が大事です。
誰かに嫌がらせをされました。でもそれは、誰かが起こしている行為を自分が嫌だと感じているっていう状況で、この人が行為を止めなかったとしても、自分が嫌だと感じなければ、
実は問題じゃなくなるんですね。
”失敗前提”で行動してみる
木下:あとは失敗を恐れる人。失敗ってどういう仕組みになっているかってことなんですが。基本的に物事って9回失敗して、最後の1回が成功するようにできているんですよ。それを知っている人って、最初から9回失敗することを全部織り込んでいるので、傷つきもしないんですね。なぜそこで傷つくかっていうと、この構造を知らないからなんですね。
物事にチャレンジして1回目で失敗します。失敗した時に「あ、こういうやり方をすると失敗するんだな」とわかります。次にまた失敗します。「こういうやり方も失敗するんだな」っていうので、9つぐらいの失敗パターンを理解して、それを避けてやるとだいたいうまくいくんですよ。その構造を知らないので「なんとか失敗しないようにがんばろう」ってする。
それで「失敗が嫌だなぁ」と思って悩みが発生しているんですね。それを知らない状態の人って、なかなかチャレンジできなかったりします。わかっている人って、もう淡々とやっていくという感じです。あと問題の9割は、実はお金では解決しないってことです。お金で物事を解決するって具体的にどういうことなのか。
お金で解決するってことは、お金を誰かに払うってことですよね。「なんで払うんですか?」「問題を解決するためです」。つまり、誰かにお金を出して、この人が解決をするって話ですよね。でも、この人が解決できるんだったら「あなたでもできますよね?」って話なんですよ。めちゃくちゃ高度なことって無理かもしれないですけども。
「お金があればできる」はやらない言い訳
木下:結局問題は、誰かがなんとか解消しないといけないってなった時に、お金を払ったところで解決しない問題もたくさんあるんですね。実際にあった話なんですけども、ある投資家の方がSNSで「10億円持っていたら、何をしますか?」って質問したんですよ。多くの方がバーッと答えてきました。その答えを見て、僕はものすごくビックリしました。
この答えは、完全に2種類なんですよ。1つは、10億円がなくてもできること。もう1つは、10億円あってもできないことをみんな答えているんですね。例えば10億円なくてもできることで言えば「10億円あったら、僕は会社を作ります」。会社って、今は1円で作れます。「10億円あったら、貧しい人たちに寄付します」。10億円なくてもできるよねと。
今すぐできることを、お金がないからできないと(考えていて)、「お金ってできない理由に使われているんだな」って、その時に思ったんですよ。もう1つは「日本の国のためになる政治家になります」って言っていたんですけど「素人のあなたが、10億円あったらそんな有能な政治家になれるんですか?」っていう話なんですね。
それよりも、あなたは被選挙権を持っているんだったら、日本のためになりたいんだったら「一刻も早く今立候補すべきじゃないですか?」って話です。そして10億円あったところで、本当に政治家になったとしても、10億円で日本を良くするっていうのは、なかなか難しいと思いますね。実は、お金で解決することってほとんどないんですよ。大切なのは、自分自身がどう解決していくか。
時間がないからできない、お金がないからできないっていうのは、ほとんどの場合、自分に対する行動しない言い訳になってしまっているんですね。まずそれに気づくことが大事なんですよ。「お金があればできるな」ではなくて「お金がなくてもできることを、今自分でしようとしていないな」って認識すると、それはそれで自分の意志で決めているわけですから。そこは悩みじゃなくなってくるということです。