【3行要約】・十分な睡眠をとっているのに疲れが取れないと、“今日もまた、何もできなかった”と自己嫌悪に陥りやすくなります。
・株式会社Awarefy 代表取締役 / CEOの小川晋一郎氏は、感情の改善を待つのではなく、小さな行動から始めることで活力を取り戻すアプローチを提案しています。
・また、ポジウィル株式会社 代表取締役の金井芽衣氏は、仕事をがんばりすぎてしまう人は「自分がやらなきゃいけない」という思考が強いと指摘しています。
前回の記事はこちら 気持ちを書き出す「ジャーナリング」
石野智子氏(以下、石野):(反芻思考を改善するための手法の説明を受けて)なるほど、「ジャーナリング」というのは?
小川晋一郎氏(以下、小川):今のが、呼吸とか「今・ここ」に意識を向けるというやつなんですけど、ジャーナリングはもうちょっと吐き出すみたいな感じですね。

「上司に怒られてめっちゃムカつく」とか、自分の感情をとにかく1回書いて出す。やはり頭の中でモヤモヤしていると、ずっとそれが続いちゃうので、書き出すことで、ちょっと客観的に距離が置けるじゃないですか。これがすごく大事と言われていて。
これは「コラム法」というやり方なんですけど、起こった出来事、例えば友だちが向こうから歩いてきて、「よっ」とあいさつをしたけど無視されたとします。「嫌われているのかな?」とか、いろいろ考えちゃうんですけど、実際に起こった出来事は、「友だちにあいさつをしたけど無視された」ということだけです。
感情としてはたぶん「悲しみ」とか「モヤモヤ」が出てきて、「自分は嫌われているかもしれない」という考えが浮かんでくると思います。だけど、別の考え方をしてみると、友だちはただ忙しかっただけかもしれないとか、本当に気づいてなかっただけかもしれないとか、実際はいろんな可能性があるじゃないですか。
というふうに、頭の中でずっと「嫌われているかも」モードになると、ワーッと考えちゃうんですけど、ちょっと吐き出して書くことで、少し客観的に見れたり、「そういうこともあるよな」と思えたりする効果があると言われていて。
AIと会話して感情を整理する
小川:こっちはどっちかというと、頭の中のぐるぐるを吐き出すことで、すっきりする。これも、寝る前に1回、ワーッと感情的に整理をすることで、仕事モードでぐるぐると考えて夢を見ないために、効果的かもなというものですね。
石野:アドバイス、ありがとうございます。
金井芽衣氏(以下、金井):先ほどいただいていたコメントで、「小川さん、ジャーナリングしていますが、『1人で考えても、他の人に吐き出さないと、結局は反芻思考になって意味がない』と言われたことがあります」と。
小川:ありがとうございます。もちろん意味がないこともないんですけど、人によっては確かに1人で吐き出したところで、なかなか整理がつかないこともあると思うんですよね。
そんな時にAIがあって。実は僕らのサービスだと、(ユーザーが)書いたものについて、AIの「ファイさん」というキャラクターがそれを整理してコメントをくれたり、「こういうふうに考えるといいかも」みたいなヒントをくれたりするんですね。
そういうふうに、人じゃなくても、ちょっと別の視点の意見とか(情報の)整理とか、共感をしてくれる存在があるだけで、やはりぜんぜん違うということが、ユーザーさんから聞いていてもわかっています。そういうものを使って少し気持ちの整理をしていくやり方もあるのかなと思いますね。
“寝ているのに疲れが取れない”という悩み
石野:なるほど。もし人に聞いてほしいという場合は、我々、ポジウィルにも、ちょっと聞いていただけたらとも思いますけれども。
小川:そうなんです。
石野:この後、ジャーナリングに近いワークもいろいろとあると思いますので、また教えてください。ありがとうございます。
小川:ぜひぜひ、ちょっとやってみましょう。
石野:では、次のページ。「寝ても疲れが取れない」。
小川:今のは「よく眠るために」だったんですけど、もう1個ご紹介したいのが、「寝ました。でも、疲れている感じがする」と。
これもみなさんありますよね。単純に睡眠不足もあると思うんですけど、「常にだるい」みたいな時にどうするかを、少しお話しできればと思います。
石野:お願いします。
小川:先ほどのパターンみたいな話なんですけれども、一般的に疲れが取れないとどんどん悪循環になります。例えば「今日は疲れてやる気が出ないな」となると、やる気が出ないから行動できないじゃないですか。行動できないし、がんばれないとなると、「今日は本当に何もできずに1日が終わっちゃったな」みたいな、ますます落ち込むような悪循環に陥ってしまう。
気持ちではなく行動を変える
小川:ここからどう抜け出すかをお話ししたいと思います。ちょっと実験をさせていただければと思うんですけど、今から5秒で、楽しい気持ちになってもらっていいですか?
石野:5秒で?
小川:はい。5、4、3、2、1。はい。できました?
金井:はい。
小川:できた? さすがです!(笑)。「ちょっとできそうかな?」って思っていました(笑)。
石野:私はまだ、なり切れなかったです。
小川:ありがとうございます。じゃあ次に、5秒以内に口角を上げてみてください。5、4、3、2、1。はい、ありがとうございます。(金井さんは)最初から上がっていらっしゃる可能性があります。
金井:ありがとうございます。
最初はほんの小さな行動でもOK
小川:「どちらが簡単でしたか?」というと、やはり、いきなりうれしい感情にするって難しいですよね。でも、口角を上げるとか行動をするのは、別に感情は関係ないので簡単ですよね、というのがあります。
前提として、行動と気分ってお互いに影響し合っているんですね。楽しい気持ちになれば、楽しく行動できるし、楽しい行動をしたら、気持ちも楽しくなる。よく、「どっちが先か」みたいな話があると思うんですけれども、ここが関係しています。

「元気になったらがんばろう」とか「楽しくなってから行動しよう」というふうに、気分の側を変えていくのはやはり難しいんですね。
逆に行動を変えちゃうことで、気分が変わりやすいというのがあって、これを「行動活性化」と言ったりします。要は、行動することでちょっと活性化する。
これはすごく大事で、うつになった方とかはやる気が出ない、元気が出ない、ということが多い。そういう時、例えばカーテンを開けるとか、自分がその場でできる限りの量の行動をするだけでもいいんですね。
いきなりワーッと(行動)する必要はなくて、できる範囲でいいんですけれども、ちょっとアクティブに、自分が元気になるような行動をすることで、感情が少しずつポジティブに変わっていくと言われています。
金井:人生の成功の秘訣もこれですよね。
小川:いやー、本当にそうかもしれないですね。
できる範囲の行動で感情の悪循環を断ち切る
金井:やはり、何かやり始めるというか「行動できないからうまくいかない」というのが増えちゃうじゃないですか。ジムに行くとかも、「面倒くさいな」と思いながらも行くみたいな。
小川:まさにね。やる気が出ないけど、とりあえず行っちゃう。
金井:行くことでけっこう変わるというか。
小川:「面倒くせぇ」と言いながら、行ったらやはり「行って良かったな」となるんですよね。
金井:そうそう。
石野:行ってしまえば、人間って意外とやりますよね。
小川:行動する、運動すると、やはりスッキリするんですよ。本当にそのとおりだと思います。そういう意味では、先ほどの悪循環を、どっちから断ち切るかという時に、まずは行動側から変えてしまう。

もちろん無理しすぎは良くないんですけど、感情が追いついていなくても自分が無理ない範囲で、ちょっと行動してしまうことが、結果的に感情側を変えるきっかけになるんですね。というわけで、僕のほうはこの2つ、行動すると変わってくるというところと、反芻思考をどう止めるかのお話をさせていただきました。
石野:とっても勉強になりました。この後の仕事、キャリア、人生の話にもすごく通じてくるところだと思いますので、引き続きよろしくお願いします。
小川:ありがとうございます。