PR2025.11.27
数理最適化のエキスパートが断言「AIブームで見落とされがちな重要技術」 1,300社が導入した「演繹的AI」が意思決定を変える
コピーリンクをコピー
ブックマーク記事をブックマーク

石田陽子氏:ベッドの中に入っている時間って、おそらく良くない思考が浮かびやすい時間ですよね。それは当然で、この時間は理性が枯渇しているんです。認知機能が枯渇している時ですから、1日で最も合理的な思考ができない、感情マネジメントにはふさわしくない時間です。
だから、ここでネガティブな思考が浮かんでも、「こんな時こそ感情マネジメントだわ」とは思わないでください。感情マネジメントは、元気な時にこそやる意義があると思います。
睡眠潜時の意義が大きいのは、私たち人間が睡眠か覚醒かどちらかしかできないからなんです。人間はどちらかしかできないんですが、生物の中には渡り鳥の一種とか回遊魚の一種みたいに、半球睡眠といって半分睡眠・半分覚醒できる子たちがいます。うらやましいですね。
睡眠中は完全に意識がなくなる人間と違って(半球睡眠ができる生物は)意識はなくならないんですね。そのために泳ぎ続けられるし飛び続けられる。もし人間のように意識がなくなってしまう場合、急に眠ってしまうと仕事が中断してしまう。命が危険にさらされることがあるわけですね。鳥だったら(空から)落ちちゃうわけです。
例えばこれが(駅の)ホームの端っこにいるとか、運転中や高所作業中ということになると、急に眠ってしまうと大変なことになるんですね。だから私たちは生物としての安全を守るために、「睡眠する」と決めて横になった時や、「もう睡眠していいですよ」という時にしか睡眠できないように厳しくプログラムされています。
覚醒から睡眠に急に移行しないための安全プログラムが、人間には何重にも整備されているんですね。生物学的なリスク回避なんです。眠るためのプログラムよりも、眠らないためのプログラムのほうががっちりしているんです。だから徹夜ができちゃう。人間だからなんですね。「人間だもの」なんです。
これは起きている時の脳波です。初めて見る方もいると思いますが、(覚醒時は)ガチャガチャガチャっとしています。ガチャガチャっとしている時は、中枢神経の電気活動が活発であることを示しています。
ここで大事なのは、中枢神経の電気活動が活発なのと認知機能が保たれていることは、何の関係もないということです。(中枢神経の電気活動が)活発だけれども認知機能が保たれていないのが、眠る前の状態です。覚醒していると、認知機能が低下していても、電気活動は活発です。
活発な脳の状態が、浅いノンレム睡眠になってだんだん穏やかになってきて、だんだんギザギザが大きくなって、最後はノコギリのようになっていきます。これが「徐波睡眠」といって、三角になっているのでデルタ波とも言います。
このデルタになっている状態が、さっきも言ったようにまったく脳の電気活動がない状態です。深睡眠中は、脳の電気活動がない状態の時にしかできない仕事をやってくれています。AWAKE(覚醒)の時は、イライラしていてもリラックスしていても、起きている限りは(脳波の波形が)ガチャガチャガチャっとしています。
どんなに理論的で合理的な思考をしていても、どんなに感情的に泣きわめいていても、どんなにリラックスして穏やかな状態でマインドフルネスしていても、覚醒中の脳波はこういうふうになっています。
深睡眠の状態では、血圧も脈拍も呼吸数もミニマムになっているので、心臓も血管も休めています。この睡眠潜時というのは、脳の活動と交感神経活性を和らげていく非常に大切な時間なんですね。
「私、記憶がないぐらいすぐ眠っちゃうんです。寝付きがいいんです」って、みなさんおっしゃるんですね。さっきいっぱい睡眠のモヤモヤ(悩み)を出しましたが、「寝付きが良すぎるんです」ということでモヤモヤしている方は1人もいらっしゃらないんですね。
睡眠と覚醒を同時にできない人間は、簡単に覚醒から睡眠に移行しないためのプログラムが何重にも整備されているので、眠いから、横になったからといってすぐに移行するのは非常に危険なんですね。睡眠潜時ゼロの状態というのは、睡眠ではなく医学的には「気絶」とか「失神」とか「昏睡」という言葉を使います。
ただ、これは実際にうちの睡眠外来をつい最近受診してくださった方121名の結果なんですけれども、睡眠課題の解決に非常に興味があって、わざわざお金を払って睡眠外来を受診されたかなり睡眠エリートの方々かと思いますが、4割以上の方々が気絶群でした。
理想的な睡眠潜時の方が14パーセントしかいないんですけれども、半分以上の寝付きが良すぎる方々のうち、私と話をするまで寝付きが良すぎることを課題だと考えていた方は1人もいらっしゃいませんでした。
(良い睡眠の)3つの条件である、たくさんの深睡眠、たくさんのレム睡眠、たくさんのサイクルをかなえるためには、とにかくたくさん寝ることが大切なんです。そのうえで、もう1つできることがあるとすれば、22時睡眠のために、19時前には自分の体をできるだけ穏やかにして、脳の体温をできるだけ下げることです。
脳の電気活動は体温が下がると活動が減ることがわかっています。さっきも言ったように、活動していればしているほど頭脳明晰というわけでは決してないんです。だから熱中症とか自分が高熱を出した時って、高熱が出ていて頭グワングワンするけれども、頭は悪いですよね。認知機能は低くなっている。
「頭を冷やす」という言葉がありますけれども、冷静になっている時、頭を冷やしている時のほうが、実は認知機能もある程度高いことがわかっています。
続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。
会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
スピーカーフォローや記事のブックマークなど、便利な機能がご利用いただけます。
すでに会員の方はこちらからログイン
名刺アプリ「Eight」をご利用中の方は
こちらを読み込むだけで、すぐに記事が読めます!
スマホで読み込んで
ログインまたは登録作業をスキップ
この記事をブックマークすると、同じログの新着記事をマイページでお知らせします
「嫌いな上司」の前だとドキドキ、嫌な汗が出る…… 医師が教える、ストレスとパフォーマンスの関係性
「退屈な仕事」をすると、休息してもストレスが回復しない 睡眠の専門家が語る、自律神経のバランスが乱れる原因
6時間睡眠を5日間続けると、認知機能は“泥酔状態”まで低下 仕事を休めない日本人の「睡眠負債」がもたらす損失
眠りはじめの「黄金の90分」が良い睡眠のカギを握る “散らかった脳”を片付ける睡眠マネジメントのポイント
横になると秒で寝落ち…それは、睡眠ではなく「気絶」 意外と自分では気付けない眠りの問題点
仕事を効率よく進めるための「就寝前」の過ごし方 睡眠の専門家が教えるパフォーマンス向上のヒント
手帳に「感情」を記録する、嫌な気持ちは紙に書いて捨てる EQの専門家が教える、感情マネジメントの実践法