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感情×睡眠マネジメント〜感情と眠りを整え、最高の成果を出す〜(全7記事)

眠りはじめの「黄金の90分」が良い睡眠のカギを握る “散らかった脳”を片付ける睡眠マネジメントのポイント [1/2]

「感情×睡眠マネジメント」をテーマにしたイベントに、EQ(感情マネジメント)の専門家である池照佳代氏と睡眠医学のプロである石田陽子氏が登壇。科学的な知見と実践的なアプローチをもとに、感情と睡眠をマネジメントし、パフォーマンスを向上させるためのヒントを探ります。本記事では、良い睡眠をとるために重要な「深睡眠」について解説しました。
※記事中の資料の無断転載・無断使用を固く禁じます。

「睡眠マネジメント」は覚醒中にしかできない

石田陽子氏(以下、石田):では先に進んで、最後に具体的な睡眠マネジメントのお話をしますね。

池照佳代氏(以下、池照):はい、そうですね。

石田:では、とうとう最後に睡眠マネジメントに進みましょう。といっても、「睡眠の話を聞きに来たのに、さっきから起きている時の話しかしていないじゃないか」と、みなさんもちょっとご不満に思っているかもしれません。

冒頭でも告知の話はありましたが、今日は池照さんにも「みなさんはこんなことに悩んでいらっしゃるんじゃないかな?」というような投げかけをいただきました。ともかくみなさん、睡眠に関するいろんなモヤモヤを抱えていらっしゃると思います。

ただ、このモヤモヤの中で1つだけ言える共通点があります。それは、このモヤモヤを自覚しているあなたは100パーセント覚醒しているということなんですね。

睡眠の一番の特徴は「意識がない」ということなんです。睡眠中は絶対に感情マネジメントはできません。睡眠は感情マネジメントにとても大事ですけれども、同時に行うことはできません。みなさんが自分の睡眠をいいとか悪いとか評価しているその瞬間、睡眠していることは絶対にないということなんですね。

睡眠マネジメントは覚醒中にしかできないということをまずは覚えて、ぜひ覚醒中に睡眠マネジメントをしてください。私の話を聞いても私の書籍を読んでも、残念ながら寝ている間に奇跡が起こるみたいなことはありません。だけど、優れた睡眠は必ず奇跡を起こします。

本来はサインカーブのように交感神経が日中にきれいに盛り上がって、そして対称的に夜は静かに副交感神経優位になっていくというリズムが、私たちの体には自律神経のサーカディアンリズムとして、備わっています。もしリラックスしていて、とてもいい状態でストレスなく過ごせる時はこういう1日もあるかもしれません。

これに先ほどの認知機能が減衰しているグラフを重ねると、こんなふうになるんですね。つまり(起床から)10時間を過ぎると自律神経も穏やかにリラックスしていくし、認知機能もどんどん減っていくということなんですね。

ここのタイミングで寝れば何の問題もないんですが、ハイパフォーマーの人を(グラフで)重ねるととこんなふうになっています。本来は昼に来るはずの高ストレス状態のピークを、仕事で夜遅くまで引き伸ばしちゃっているのが働く人たちなんですね。

本当はここから自然に寝られればいいんですけれども、短い時間でこのレベルまで自律神経の活性化を下げていかなきゃいけない。交感神経の活性化を下げて、副交感神経になっていかなきゃいけない。ここで、やはり睡眠マネジメントが必要です。

働く人の睡眠の悩みは「起床後の時間の使い方」が問題

石田:さっきのようなモヤモヤを言っている方々すべてを含めて、おそらく働く方の睡眠のモヤモヤは睡眠中の問題ではなくて、起床後の時間の使い方が問題です。

(起床後の時間の)使い方が問題と言ったんですが、この18時以降の時間はがんばっちゃダメです。みなさんは仕事中は仕事をがんばって、興奮状態で帰宅したあと、睡眠も大事だなと思って、睡眠のためにがんばろうとするんですね。それが一番良くなくて、この後(認知機能が低下した後)はともかくがんばらないということが大事です。

せっかく睡眠の話を聞きに来てくれたので、ザ・睡眠の話をちょっとしますけれども、これが1日8時間の睡眠の波形です。睡眠のそれぞれの段階には、それぞれの役割があります。

まず、寝床に入って一番最初が浅いノンレム睡眠。ここから深睡眠に入りますね。睡眠が浅いとか深いという表現がありますが、より正確には「浅いノンレム睡眠」と「深いノンレム睡眠」があって、そのほかに「レム睡眠」という睡眠があります。

レム睡眠は、深いとか浅いとかは関係ないです。レム睡眠とノンレム睡眠があって、ノンレム睡眠の中にだけ浅い、深いという概念があります。ノンレム睡眠というのは、中枢神経の電気活動が覚醒時よりも穏やかになる睡眠です。

深い睡眠というのは、その中枢神経の電気活動がほぼゼロになっている状態です。意識がないので当然ですね。意識がないですし、(睡眠が)深ければ深いほど強い刺激を与えても目が覚めなくなるのは、みなさんなんとなくわかっているんじゃないかなと思います。この時、自律神経は完全に副交感神経優位になっています。これが「本日最初の深睡眠」なんです。

この例では、一晩に3回深睡眠がありますが、この3回の中で本日最初の深睡眠が、最も長くて最も重要です。この本日最初の深睡眠で、深睡眠の機能の大半を果たします。疲労や眠気の回復は、おそらく多くの方が睡眠のメイン機能だと考えていると思いますが、実はその機能は、最初の1時間半ぐらいで終わっています。

認知機能が良くない状態=脳が散らかっている

石田:成長ホルモンは、文字どおり子どもの成長や発達に関わるホルモンで、深睡眠の間だけ下垂体から分泌されます。成人後は老化を防いで生命活動を維持するための機能を果たす、アンチエイジングホルモンです。

よく「お肌にとって睡眠のゴールデンタイムは22時から2時だ」ということを聞くんですが、22時から6時を睡眠時間とすると、成長ホルモンが出るのがこの時間だからというのが原因じゃないかな、そのための都市伝説なんじゃないかな、というふうに私は考えています。実際に(睡眠中の)前半に成長ホルモンが出ます。

睡眠と感染症の発症や増悪、睡眠と一部のがんの発症、全がん死亡率あるいは全死因死亡率などの関係が証明されていますが、免疫機能を高め、異型細胞を除去する機能は主に深睡眠で行われます。あとは深睡眠と糖尿病、睡眠と肥満など代謝性疾患との関係も明らかになっています。

深睡眠でしか行われない生命活動のうち、私が一番生産性にとって大事だと考えるのは、(スライドで示した深睡眠の役割のうち)一番最後に書いた脳のデトックス、脳の大掃除なんですね。脳の掃除は深睡眠でしか行われないことがわかっています。しかも、脳の掃除の度合い、脳の散らかり具合が認知機能の悪さを反映するということもわかっています。

もしかしたらみなさんもアミロイドβという物質を聞いたことがあるかもしれません。アミロイドβという物質はアルツハイマー病の脳に沈着することが有名ですけれども、本来は深睡眠でウォッシュアウトされるべき老廃物なんですね。

なので、認知機能が良くなくなっている状態は脳が散らかっている状態。脳が散らかっていると認知機能が良くないというのは、非常にわかりやすい話なんじゃないかなと思います。

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