PR2025.11.27
数理最適化のエキスパートが断言「AIブームで見落とされがちな重要技術」 1,300社が導入した「演繹的AI」が意思決定を変える
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池照佳代氏(以下、池照):質問をたくさんいただいているんですが、この時点でというよりも、もしかするともう少しお話しいただいてからご質問に答えていただいたほうがいいかなと思います。なので先生、お話を進めていただいてもいいですか?
石田陽子氏(以下、石田):はい、わかりました。では、その2に入ります。ストレスと、もう1つ私たちの感情マネジメントに非常に関係がある中枢神経、認知機能のところにいきたいと思います。睡眠は自律神経のバランスを正常化するだけじゃなくて、脳や脊髄といった中枢神経を整えて、認知機能によって生産性を高めます。
この認知機能は睡眠で最高の状態にクリアされて、覚醒している間に減衰し、やがて枯渇するというリズムを持っています。認知機能が枯渇すると、復活のために睡眠を求める。これを科学的には「恒常性のリバウンド」と言い、眠気の正体の1つです。
こちらの図は、アルコール血中濃度と身体機能の関係を示したものです。身体機能、集中力は下がっていくんですが、気分という点ではアルコールを飲むと最初はリラックスしてご機嫌になることがわかっています。飲みすぎるとそうでもなくなって最後は死んでしまうんですけれども、運転などをしない限りは、リラックスのためにはほろ酔いもいいでしょう。
次に、アルコール血中濃度と認知機能の関係を「精神運動覚醒検査(PVT)」というもので示した図がこちらです。PVTは、睡眠業界ではパフォーマンスや他覚的な覚醒レベルの尺度として用いられるんです。
(アルコールを摂取すると)気分で言うと1回ちょっと上がったんですけれども、認知機能だけで言うと、本当に滑り落ちるように真っすぐに認知機能が下がっていくんですね。認知機能が下がると、運転技能が低下するという影響が出ることがわかっています。これは科学的な絶対事実で、道路交通法では、飲酒運転が厳しく禁じられています。
ちなみに0.03パーセントが免許停止基準、0.05パーセントが免許取消基準のアルコール血中濃度です。左右の図を見ていただくとそっくり同じですね。左の縦軸は同じです。
見れば見るほどそっくりなんですが、先ほどのように左の図はアルコールを飲めば飲むほど認知機能が下がりますよという図で、右の図は起床してから起き続けている時間、連続覚醒時間が増えれば増えるほど、どんどん判断力を失っていきますよという図です。
免許取消基準の0.03パーセントぐらいまで認知機能が低下するのは、起床後16時間。6時に起きたとしたら22時ですね。運転していれば免許停止なんです。……だから、22時に運転するのは危険なんですよ。でも、22時に家でくつろいでいるとしたらリラックスの時間なので、ちょうどいいですよね。
石田:さっきハイパフォーマーの1日の図で示したとおり、自律神経が副交感神経優位になるのもだいたい22時ぐらいなので、自律神経にとっても認知機能にとっても、22時がとてもリラックスにいいところなんですね。
ここからすぐに睡眠して、明日も6時に起きれば認知機能もストレスも復活して、翌日も朝からフルパフォーマンスで働けます。また翌日も起床から12時間以内のパフォーマンスが保たれている間に働いて、パフォーマンスが下がってきたら眠るという生活をすればいいんですね。
ところが眠るのにちょうどいい22時を過ぎて、例えば20時間後の2時まで起きているとどうなるかというと、覚醒状態がちょうど免許取消レベルと同じくらいになるんですね。
認知機能が低下しているだけではなくて、自律神経にとっても矛盾しているので、動脈硬化や自律神経失調の原因になります。夜更かしして残業するのがいかに馬鹿馬鹿しいかということがわかると思います。
1日の連続覚醒時間と累積の睡眠負債でも、同じ程度にパフォーマンスが低下することがわかっています。ちょっと表が見にくいんですが、こちらはパフォーマンスの逆数になりましたので、上に上るほどパフォーマンスが下がっていくという図ですね。
これが20時間、つまり20日間で1時間ずつ睡眠負債を溜めても、負債のない状態から起きて20時間経っても、同じように泥酔状態になるということがわかっています。
例えば毎日4時間、毎日6時間、毎日8時間眠っていると、じわじわとパフォーマンスが下がっていくわけですね。平日6時間睡眠を5日間という方は多いと思うんですが、6日目の朝には起きた瞬間から免許取消レベルの認知機能しかないんですね。8時間のところも見ていただきたいんですが、8時間(睡眠)でもじわじわパフォーマンスは下がっていくんです。
この研究では(パフォーマンスが)下がらない睡眠時間は8時間16分ということが計算で出ましたので、8時間睡眠を続けている方も土日は9時間寝て負債を返済していただくと、免許を取り消されないレベルで仕事ができるということですね。
石田:もっと恐ろしいのがこちらの図です。横軸が同じで、四角とかダイヤのプロットは同じ人たちなんですけれども、眠気の自覚なんですね。
4時間、6時間(睡眠)だと覚醒度やパフォーマンスはどんどん下がっていって、4時間と6時間でギャップがある。ただ、4時間、6時間(睡眠)の人たちを見ていると、2、3日経つと4時間と6時間の差もなくなるし、日を追うごとに差がなくなってくるんですね。
よく考えるとわかりやすくて、目覚めた時からもう寝ぼけているので、自分の眠気がよくわからないんですね。自分の眠気もよくわからない状態の認知機能で仕事をしているわけですから、この状態ではとても感情マネジメントまでは難しいかなと思います。
人間がトップパフォーマンスで活動できる時間は起床後10時間程度です。一般的な就業時間は、休憩1時間を挟んで8時間程度。通勤に1時間かかるとすると、トップパフォーマンスで残業することは不可能なのはもう明らかです。
パフォーマンスを高めたいなら、ともかく睡眠負債がある人は返済すること。できるだけ睡眠負債をしないこと。どうしても負債してしまったら、一刻も早く返済することが大事です。もうこれはお金と同じですね。借りないのが一番、借りたらすぐ返す。借りる前にきちんとマネジメントして、借りないで済む生活をすることが大事です。
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