「退屈な仕事」をすると、休息してもストレスが回復しない　睡眠の専門家が語る、自律神経のバランスが乱れる原因 [2/2]

真面目な部下ほど上司とのミスマッチが起きやすい

石田：どんな人もパフォーマンスが向上から減衰に変わる、ヤーキーズ・ドットソンの法則の頂点に当たるストレスレベルがあります。睡眠を挟むと、そのストレスレベルを日々引き上げていくための準備ができます。ストレスがあるから不眠になるのではなく、睡眠があるからパフォーマンスにつながるストレスのレベルを引き上げられるのです。

令和の世界でこれを証明してくれているのは、大谷翔平さんですね。彼が睡眠を大切にしているのも、彼が毎日アップデートしているのも周知の事実です。ここまでが、感情マネジメントのための睡眠マネジメントのためのストレスのお話でした。池照さん、ここまでで何か気になることとかはチャットに（コメントは）ありますか？

池照佳代氏（以下、池照）：ありがとうございます。みなさん、今まで聞いたところで「ここはもっと質問してみたい」「少しこんな疑問が湧いた」とか、感想があったらぜひチャットにも入れてください。陽子先生、ありがとうございます。

ストレスってそういうことなんだなと、初めて知った部分がすごく多いんですが、私がちょっと気になったのは、上司と部下の関係の認識のミスマッチってありましたよね。私も会社員時代を考えると、まさにこれに尽きるなと思ったんですよ。

上司はおそらく私を育てるためにやっているんだけど、私としては「勘弁してくださいよ」って思いながらやっていた部分がとてもあったなと思います。まさに、この感情の行き違いを互いに表明しあえる関係をつくるのが「感情マネジメント」なんです。

先生はふだんから産業医として現場にいらっしゃると思いますが、この認識のミスマッチはどうやったら防げるものなんでしょうかね？

石田：そうなんです、ミスマッチが起こってしまうと逃げるしかないので、起こらないように防ぐしかないんですよ。今、チャットにも「僕も部下側でした」って書いてくださった方がいるけれども、部下はやはり真面目なんですね。

池照：真面目でしたよ。

石田：そうなんです、ミスマッチを起こす部下ってけっこう真面目なんですよ。だから、「こいつ（上司）はぜんぜんわかってないなぁ」って思っちゃえば楽なんですけど、上司の期待にも応えたいし、上司から見ていい部下でありたいと思うので、ミスマッチを埋めようとしてしまう、だから疲れてしまうんですね。

余裕のあるうちに「上司の力量」を測っておく

石田：（上司と部下のミスマッチが）起こらないようにするのは難しい。ただ、上司が「あなたの考えと部下の考えは違う可能性がある」という可能性に気づくことは大切ですよね。

私、これはシナリオに1回書いて消したんですが、「俺さまがお前を成長させてやる」みたいな熱血エリート上司タイプにけっこう（ミスマッチが起きることが）多いんですよ。でも反対に、何か（部下に）言われたら嫌だからといって何もしないネグレクト系上司のほうが最悪は最悪なんですね。

なので上司には、（パフォーマンスが）上っている途中で、下る前の余裕のある時に、「こういうストレスは好きだけど、こういうストレスは好きじゃない」っていう、コミュニケーションを取ることが大切ですよね。

「こういう言い方をしたら、この上司はこう来るな」っていうイメージトレーニングを、よけられる時にやっておく。（パフォーマンスが）落ちてからは何もできないので、上っている最中にできるだけ上司の力量を測っておく。

池照：上司の力量を測っておく（笑）。

石田：（笑）。その余裕がなくなったら、ともかくやはり「逃げる」ですね。

池照：確かにそうですね。「感情マネジメント」は感情のキャッチボールでもあるので、投げる、受け止めるに加えて、かわすもある訳です。

石田：上司が自ら学んで、「もしかしたら俺が間違っているんじゃないか？」「あいつがキャッチできなかったのは、俺の投げ方が悪かったんじゃないか？」って思うことは絶対にないんですよ。

池照：（笑）。そうなんですね。残念だ。

石田：絶対にないので、その上司と仲のいい別の上司とかと関係を作っておくことも大事かなと思いますね。

池照：なるほど、ありがとうございます。

「自分のやり方で評価されてきた人」が陥りやすい思考

池照：さっき（講演開始前に）みなさんにやっていただいたムードメーターってありますよね。私はあれを必ずいろんな会社さんでチェックインに使いますが、けっこうよく聞くのが「みんな俺と同じだと思っていた」っていうことなんですよ。

例えば、金曜日の午後は自分はとても調子がいいというリーダーがいたら、「金曜の午後なんて、これから休みなんだから調子がいいのは当たり前じゃんってずっと思っていた。でも、そうじゃない人もいるんだということに、ムードメーターをやり続けてやっと気づきました」って言う上司がけっこう多いですね。

石田：そうなんです。特に自分のやり方で評価されてきた人って、自分が間違っているかもしれないとか、間違っているんじゃなくてあなたは正しいんだけど（他の）人は違うかもしれない、というところに想像が至らないんですよね。

池照：確かに。

石田：なので、「自分は難しい仕事に応えられるのが楽しいから部下もそうだろう」と思ってしまって、実はそれがいじめになっていることに気づかないということが往々にしてあります。

池照：なるほど。

石田：今日来ている方は、上司のほうが多いんじゃないかなと思います（笑）。

池照：なんとなくそんな感じですね（笑）。

石田：みなさん、ぜひ持って帰っていただければなと思います。

池照：ありがとうございます。こういうことに対して、感情マネジメントの中ではどうやってやっているかというのも、後ほどみなさんともディスカッションできればなと思っています。