PR2025.11.27
数理最適化のエキスパートが断言「AIブームで見落とされがちな重要技術」 1,300社が導入した「演繹的AI」が意思決定を変える
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石田:ストレスについて、いいとか悪いとか感じるのは感情ですが、ストレス自体は感情ではありません。ストレスは刺激です。刺激には、物理的なものや化学的なものもありますが、社会的なものや心理的なものもあります。
刺激によって交感神経が活性化して、ストレス反応が起こります。反対に、交感神経を活性化させる刺激がストレスだと言うこともできます。
自動的に起こる生理的な反応のほかに心理的な反応、つまり感情が生じることもあります。この場合は感情マネジメントとの関わりが出てきます。交感神経の反対の働きをするのが副交感神経で、自律神経はこの交感神経と副交感神経のトレードオフで体の調節をしています。
例えば、夏場にクーラーの効いた部屋から炎天下に出る。温度、湿度、照度といった物理的な環境が瞬時に大きく変わりますし、皮膚温だけじゃなくて私たちの脳の体温、深部体温が上がるんですね。一気に嫌な気分になるし、体も汗ばむ、脈拍も増える、呼吸数も増える、血圧も上がる、体力は消耗する、これが交感神経が活性化している状態です。
暑くなくても、上司にネチネチ嫌なことを言われている時ってなんか嫌な汗が出ますよね。これも交感神経が活性化しています。感情は、ネガティブになっている状態ですね。
例えば、趣味でホットヨガをする時も体は同じ反応をします。体温が上がって、汗をかいて、呼吸数や脈拍が増えて、血圧も上がっています。交感神経は活性化しています。でも、なぜか爽快ですよね。同じ汗でも、いい汗をかいたと思うか嫌な汗だと思うか。これの違いは感情なんですね。
これを表にしてみたら、さっきの「ムードメーター」の表と同じです。いい気分と悪い気分が逆なんですが、まさにこういうことなんですね。エナジーがあるというのは交感神経優位の状態で、人間が攻撃をする時の状態ですね。
ストレスがあるかないかというのは、交感神経が優位なのか、副交感神経が優位なのかで決まるんです。ストレスがあるから気分が悪いわけではなくて、ストレスがあって気分がいい状態、ムードメーターの黄色い状態もあります。別の研究では、この黄色の状態の人が一番長生きするというエビデンスもあるくらいなんです。
石田:実際に人間がストレスの力を借りて交感神経優位になるタイミングは、命に関わる狩猟とか外敵との戦い、あるいは子孫を残すために異性にアピールする場面です。一世一代、いつも以上のパフォーマンスを出したい時ですね。
だから、好きな人の前に出るとドキドキしますよね。ただ、嫌いな上司の前に出てもドキドキするんですね(笑)。どちらも交感神経活性は上がっているんです。
「パフォーマンスを上げる」という目的のため、ストレスがかかると副腎からコルチゾール、アドレナリン、ノルアドレナリンなどのストレスホルモンが分泌されて、ストレスホルモンが各臓器に働きかけていろんなことを反応を起こします。この身体反応は本能に組み込まれた生理的なプログラムなので、私たちがコントロールすることはできません。
ストレスホルモンはこうやって人体のパフォーマンスを上げるので、化学的に合成されたストレスホルモンがアスリートのドーピングに利用されてしまうこともあります。
石田:ストレスとパフォーマンスの関係として、ヤーキーズ・ドットソンのこの法則が有名です。ストレスは変化で、その変化に適応するために人間はパフォーマンスを高めていきます。
一番左は、学生から社会人になって、プレッシャーですが「報酬に見合う貢献をしよう」とがんばりながら、ストレスをかけながらドンドン伸びていく段階ですね。ストレスの負荷はだんだんと上げていくのが好ましいです。
仕事を始めたては「もうちょっとできるのにな」と、退屈に感じることもあります。ただ、負荷が上がってきてちょうどいいところを経て、まだまだここから「これは本気を出さないとまずいぞ」というレベルになってくる。ここが一番いいところですね。そのストレスに適応するために、人はパフォーマンスを上げていきます。
このようにストレスとパフォーマンスは、右に行けば行くほどパフォーマンスが上に行くというふうに相関することがわかっています。ところが仕事の性質や本人のパーソナリティによって、ストレスとパフォーマンスの関係は変化します。
アスリートは、ここから「ゾーン」とか「火事場の馬鹿力」と呼ばれるような、無限に新記録を出すような特別なところまでパフォーマンスを上げていくんですね。
ゾーンとか火事場の馬鹿力がよいというわけではなくて、一番大事なのはストレスが落ちてしまうほうに行かないことです。退屈な仕事でストレスがかからないと、ストレスが増えてもパフォーマンスが上がらないということも体験してしまうので、できれば水色部分に居続けることが大切です。
(パフォーマンスが)上がるのか下がるのかはストレスの絶対的な性質や量ではなくて、本人の現在の力量やパーソナリティなど、ストレスを受ける側の個人的な要因によるんですね。
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