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不機嫌な自分をやめるために!認知行動療法の専門家 中島美鈴先生新刊『脱イライラ習慣! あなたの怒り取扱説明書』発売記念【無料オンラインイベント】(全6記事)

昔の知り合いに今の自分を知られたくない… 理想の自分になれないしんどさを手放すヒント

『脱イライラ習慣! あなたの怒り取扱説明書』の刊行を記念して開催された本イベント。認知行動療法を専門とする臨床心理士・公認心理師の中島美鈴氏が、「怒り」を感じにくくするための「考え方」と「しかけ」を紹介します。本記事では、プライベートなことも根掘り葉掘り聞いてくる人や図々しい振る舞いをしてくる人への対応策をお伝えします。

家族など身近な人へのイライラを抑えられない

中島美鈴氏:次の質問です。「職場では怒りをコントロールできるが、家族など身近な人に対してはイライラして当たってしまい、本音で話し合えません」ということですね。家族って本当に鬼門なんですね。どうしてもなにか話し合うべき事項があったら、ファミレスとか人目があるところにみんなで出かけていって、ご飯でも食べながらというのは王道かもしれません。

早朝の大手ハンバーガーチェーン店とかコーヒーチェーン店って、揉める話をしている家族っぽい人たちがけっこう多いんですよね。親の介護についてとか、遺産相続とか。「あ、けっこうみんな外で話すんだな」と思うけど、あれはたぶん家の中だと、もっとひどくなるからなんでしょうね。

私はけっこうそういうのに出くわすことがあって、「うわぁ、大変や」と思うんですけど、あれは外でして、やはり安全だったと思いますね。第三者を入れて話すのもいいと思います。

あとは子どもの側として……あ、どっちなのかな。これは20代の方だから、「家族」というのは親とかを想定していらっしゃるのだったら、この質問者さんが30代、40代、50代となってくると、親もどんどん年を取ってくるんですね。

そうすると、どういうことが起こるかというと、けっこう頑固になるとか、感情的になるとか悲しい変化を遂げる親も増えてきます。そうすると、ますますわかり合えない事例が発生するんですよ。たぶんもっとイライラするようになるんですね。けっこうそういう話はよく聞きます。

なので、こちらが「親はここまで、親なりの意見を述べているのであって、私の意見とは完全に一致はしないな」とか、「親の期待どおりには生きていないのさ。ごめんね」みたいな、距離を保つような認知を用意されるといいのかなと思います。

「こんなはずじゃなかった」と悩む40〜50代

次の質問です。「『昔の知り合いに今の自分を知られたくない』『店員に自分の存在を認知されたくない』など、とにかく『私』を知られると思うと苦しくて怖い。自分が理想の自分より社会的に成功していないせいなのかな。日常行動や仕事に支障が出ているので、楽になる方法が知りたい」ということです。

これは自分に対するイライラになってくれたほうがまだ良かったぐらい、すごく失望しているような感情が読み取れるなと思います。「自分の理想と違う。こんなはずじゃなかった」みたいなのは20代によく聞く悩みで、次によく聞くのは40~50代なんですね。

ここまでワーッと適応するように勢いで駆け抜けてきたんだけど、はたと立ち止まって、「あれ? なんか私って、結局何者にもなっていない」とか、「こんな中年になる予定じゃなかった」みたいなことがあるんですよね。

この場合、年齢的に目指すといいのは「開き直り」です。「けっこうこれでイケてるじゃん」と励ますよりは、「いや、こんな私も自分の一部」と、あるがままの自分を受け止めるんですね。

とにかく自分への嫌悪感がすごく伝わってくる文章で、この方の場合がどうかわからないんだけれども、例えば「部屋がいまいちきれいになっていない自分」がいたら、20代だったら、「きれいにしなきゃ。汚い自分は駄目だ。もうちょっと理想を目指してがんばろう」みたいな思考パターンでいいんですけど。

40代ぐらいになったら、「ああ、散らかしちゃうよね。これはしょうがないよ。これも含めて私だけどね」というほうが、すごく体力的・気力的には優しいんじゃないかな、ふさわしんじゃないかなと思うんです。それを「中年のふてぶてしさ」と言われればそのとおりなんですけれども、「ここからがんばるぞ」みたいな気力はちょっとなくなってきませんか? どうですかね?

なので、理想の自分よりは、今の自分をもうちょっと「捨てたもんじゃないじゃん」とか、おちょくってみる。「こんなもんさ」みたいな感じで受け入れる方向にいけたらいいなと思いますが、いかがでしょう。そんなに駄目ですか? 社会的な成功とか、自分の理想が本当に幸せの定義でしょうか? そこから問い直してみてもいいかもしれません。

ズケズケと質問してくる人にイライラ

次の質問です。「自分のことを根掘り葉掘り聞かれるとイラッとするのはなぜか」。これは先ほどの「人と人との境界線」の話ですよね。「普通はそんなに聞かないでしょう」ということも、根掘り葉掘り聞く人もいますよね。「出身高校はどこ?」とか、「聞いてどうするんだろう?」と(笑)。「年収いくら?」とかも、なかなか聞けないのにズケズケと入ってくる人は入ってきますよね。

これはやはり侵入されているんですよね。侵入されている側も同じぐらい図々しく、「あなたは?」と聞けたらイーブンで、2人とも境界線を飛び越えても気にならないタイプなら意外とイラッとしないと思うんですけど、一方的に飛び越えられるからすごく嫌なんですよね。

この方ができることといえば、「ここに入ってこないで」と、スルーする。もしくは拒否する、上手に笑顔でかわすというテクニックでしょうね。なので、「えー、ちょっとそんなに根掘り葉掘り聞かれたら照れるな」とか、「いやいや、そこはちょっともう秘密で」とか、空気を乱さない程度のスルーなセリフをいくつか用意しておけば、便利は便利ですね。

それでもバーッと来るんだったら、「いや、それはプライベートだしさ」と、ピシャリと答えられる力も必要なんでしょうけれど、毎回毎回真顔で答えづらいじゃないですか。「まあまあまあ」とか、いくつかレパートリーがあると、生きやすいかなと思います。

「図々しい振る舞い」をしてくる人への対処法

「親切にすると調子に乗って図々しい振る舞いをする人がいてムカついちゃいます」。例えば何でしょうね?私が思いついたんですけど、例えば「旅行のお土産を買ってきました」と職場で配っていて、「へえー、中島さん、大分に行ったの」とか言って、お煎餅かなにかを配るじゃないですか。

調子に乗った1人に、「大分といったら、やっぱ○○がおいしいよね。次に行った時はそれを買ってきてよ」とか言われて、けっこう図々しいリクエストだなという感じですかね。それぐらいならムカつかないですか? きっと、もうちょっと深刻なレベルで、図々しい振る舞いをされていたのかもしれませんね。

「ちょっと車に乗せてあげたら、毎回乗って当然みたいな顔をされた」とかですかね? これもけっこう境界線の話で、「1回乗せる分は私は許可したよ。でも、2回目は違うよ」みたいなことを伝えていけるといいですよね。でも、1回乗せると、「え? この間いいって言ったじゃん」みたいな前提ができちゃうんですけど。

こういう時こそ、相手と自分の立場をちょっと入れ替えてみてください。自分がもしも誰かの車に乗せてもらって、「次もお願い」と言った時に「え?」と言われただけで、普通の人ならちょっとドキッとして、ドギマギして「ごめん、図々しかったよね」ってなるじゃないですか。

それをやらない相手なんですよね。となると、「けっこう自分とは感覚が違うな」みたいな。これで押されたまま付き合っていくと、ものすごく不平等なことになります。

「いやいや、今日はちょっと急いでいるから」とか、「すごく体調が悪いし、うつしそうだし」とか、よくわからないレパートリーをいくつか用意しておいて、ちょっと調子に乗った図々しい振る舞いは、2回目からシャットアウトするといいんじゃないでしょうかね。かわす能力も、少しトレーニングしていくといいんじゃないでしょうか。

ムカつく必要はぜんぜんなくて、「違うよ」と教えてあげるというイメージです。そうするとこっちもイライラしないし、「ここまでですよー。違いますよー。はい、お客さま、こちらまでです」というイメージで教えてあげてください。

「不機嫌をコントロールする」という考え方にモヤモヤ

「ADHD(注意欠如多動症)と怒りの収まりにくさに関連はありますか?」というご質問です。衝動的・突発的な怒りだとしたら、その衝動性をコントロールする力は、比較的ADHDの方は弱いことがわかっていますので、怒りがバーッと弾けて爆発して、言うべきじゃなかったことを言ってしまったり、出すべきじゃなかった手が出ちゃったりするのはあるかもしれませんね。

ただ、そういう突発性の怒りはADHDで説明できるんですけれども、長年積もりに積もった、グワーッと熟成していく怒りは、またちょっとADHDとは違うのかなとは思います。

次の質問です。「『不機嫌を相手に伝えない、表に出さない』という方向性にモヤモヤしています。不機嫌をコントロールするより、『今こんなことでこう不機嫌になっている(例えば体調不良などで)』と、言葉などでフラットに伝えられないかと考えるのは不自然ですか?」。

いいと思います。私も賛成です。アンガーマネジメントは、「イライラを相手に伝えないこと」が目標ではありません。イライラに気づいた上で、暴力とか暴言とか怒りの爆発みたいなことで伝えなきゃいけないわけじゃない。

この方が書いているように、「私はこういうことで不機嫌だよ」とか「こうしてほしいよ」「ここからはプライベートの話だから、入ってきてほしくないよ」みたいに、言葉で伝えるのがゴールです。なので、合っていますよ。アンガーマネジメントのゴールはここです。

これをフラットに、大真面目な顔で言えない人が多いので、相手の期待を裏切るやり方とか、いくつか変化球を織り交ぜましたけれども、これができるなら、一番正統派でいいのかなと思います。

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