2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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『要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑』著者で、SNSを中心にライフハックや仕事術などを発信しているF太氏。今回は「無理なく生きるコツ」をテーマに、自身の経験を踏まえたアドバイスを送ります。本記事では、働きながらメンタルを守るために大切な“考え方”について語りました。
山本沙弥氏(以下、山本):コールセンターで働かれたということですが、またここでもドラマがあったんでしょうか。
F太氏(以下、F太):そうなんですよ。「自分にできることってコールセンターしかない」「後がない」と思ってその仕事を選んだんですよね。派遣だったので指定された職場に行って、でもそこを3ヶ月でクビになっちゃうんです。
山本:これはけっこう驚きですね。
F太:そうなんですよ。僕の中では「もう後がない」と思ってこの仕事に就いているので、すっごくがんばったと思うんですよ。それこそ危機感をすごく感じながら。
勉強すること自体は嫌いじゃないので、座学はめちゃくちゃ成績が良かったから期待をされるわけじゃないですか。その期待を胸に電話を取ることになるんですが……。
今でも忘れないんですが、たぶんその電話をかけてきてくださった方はおじいちゃんだったと思うんですけど「いや、あの、携帯電話が使えなくなってね」みたいな感じで話し始めたんです。
その瞬間、何を聞いたらいいかがぜんぜんわからなくなっちゃって、頭がすっごい真っ白になっちゃったんですよ。本当にテンパってしまって。
わかる人はわかってもらえると思うんですが、本当にテンパると頭がシュワシュワしてくるんですよね。テンパったことがある人は「ああ、あれか」って思ってもらえると思うんですが、シュワシュワしてきてしまって、本当に何を言っていいかわからなくなって。
とりあえず保留して、隣でその対応を聞いている上司に向かって顔面蒼白で、「これ以上対応を続けられないです。対応を交代してもらえますか?」というふうに話をした時の上司の顔は、本当にいまだに忘れられないですね。
山本:うわ、ありますよね。どんな感じでした?
F太:本当に期待していた人がまるで役に立たないどころか、「こいつ大丈夫か?」という不安の元凶になってしまった瞬間であり、僕自身も「この仕事しかない」と思っていた仕事すらうまくこなせないことをまざまざと突きつけられた瞬間だったので、二重の意味でかなりつらい瞬間だったんですよね。
山本:聞いている方で(同じような)経験のある方もいるんじゃないですかね。私も経験したことがある気がして、なんか今めっちゃ胸が痛いです(笑)。
F太:それ以来、明らかに「仕事ができない」「大丈夫か?」という扱いを受けるようになった感じがするんですよ。
山本:ラベルが貼られた、みたいな。
F太:そう。自分自身にラベルを貼られちゃったなという感覚があって。それはつらいことだし、「しょうがないな」とも思いつつ、いったん自分に貼られた評価を覆すのってすごく大変だなと思います。
山本:そうですね。(視聴者コメントで)「コールセンターで同じ経験があります」とおっしゃっている方がいらっしゃいます。
F太:それ以降、上司が僕に電話を取らせるのを怖がっているのもすごく伝わってくるし、今思えば「そりゃそうだよな」と思うんですよね。お客さんを怒らせたとして対応をするのは上司だし、そのつらさもわかるんですが、不安な気持ちを抱えて指導を受けている僕もすごくつらい。
マジで誰も得しないというか、誰も幸せにならない環境だったんですが、3ヶ月の試用期間が経った時に「F太さんは、ちょっとこの仕事は向いてないかもしれないですね」ということで、ありがたいことにクビになったんですよね。
本当にあの当時はつらかったんですが、今であれば「3ヶ月という試用期間があって本当に良かったな」と思います。お互いに辞められない、引くに引けないというのが、たぶんすごくつらい何かを生み出してしまうんだろうなという感じはありますね。
山本:なるほど、ありがとうございます。
山本:一方で、次の段階ではまた別のコールセンターが。
F太:そうなんですよ。「この仕事(コールセンター)も無理なんかな」と思ったんですが、他にやれることも思いつかないから別の職場を紹介してもらったんです。携帯電話やパソコンの使い方がわからないとか、トラブルが起きた時に電話をかけてくるサポートデスクで、仕事内容は(前の職場と)まったく同じなんですよ。
仕事内容は同じで別の職場に行って、また3ヶ月間の研修を受けて、まったく同じ内容だからほぼ満点なんですよね。座学はすごく成績がいいから期待される、みたいな。すごく同じことをしてるという怖さがあって。
いざ電話を取るってなった時に、やはり頭が真っ白になっちゃって。「うわ、同じことをしているな」と思って、隣の上司に「ちょっとムリかもしれないです」と言ったんです。ただ、2つ目の職場の時は上司が対応を交代してくれなかったんですよね。
「大丈夫です。まずは本人確認から始めればいいから、その人の名前やメールアドレスを聞いてください。やり方がわからなかったら、保留にしてまた聞いてください」みたいな感じで、僕のたどたどしい案内を無理やりにでもやらせる感じで対応を続けさせてくれたんですね。
ベテランがやったら10分で終わるような簡単なことが、本当に2時間ぐらいかかったと思います。付き合わせてしまったお客さんには申し訳ないなと思うんですが、2番目の上司は、たどたどしいながらも僕がちゃんと仕事をするのを「がんばっているな」と捉えてくれたんですね。
だからすっごい時間はかかるんだけど、ある程度ちゃんと経験を積ませてくれたというか、クビを切らずに経験を積ませてくれたんです。
F太:ある程度仕事に慣れてくれば、ちゃんと座学で学んだことも活かせるようになるし、もともと知らない人と話すのは苦手じゃないので自分の強みも活かせるようになって、仕事もちゃんとこなせるようになってきた。気づいたら、そこの職場では「F太くんって要領がいいんだね」と言われるようになったんですよ。
山本:前の会社では「要領が悪い」と評価されて、次は「要領がいい」と評価されたんですね。
F太:そうなんですよね。まったく同じ仕事なのに、職場が違うだけでこんなに扱いが変わるんだというのが、自分の中ではけっこう衝撃で。じゃあこれを自分で選べたかというと、絶対に選べなかったんですよ。職場1では上司が自分と合わなくて、職場2ではたまたま上司と僕の相性が良かっただけです。
今だから言えることですけど、じゃあその上司がすごくいい人だったかというと、実は必ずしもそうではなくて。その上司も、相性が合わない人にはけっこう冷たいタイプの人なんですよ。わりと塩対応するというか。
僕はたまたまその人と相性が良かったから目にかけてもらっただけであって、そういうのを見ていると、本当に就職ガチャって怖いなと思ったんですよ。
そういう経験もあって、要領がいい・悪いとか、何かが得意だ・苦手だというのって、自分自身の中で決めているように思うけれども、意外と周りの環境で決まっているものなんじゃないかなって思い始めたんですよね。
山本:確かに。
F太:同じようなことで悩んでいる方の悩みを聞いていると、すごく理路整然と話すし、わかりやすい話し方をするなって思うような人でも、そういうことに悩んでいたりします。
F太:もちろん、仕事が上達するためにはちゃんと努力も必要だし、上司からのちょっとつらいフィードバックも必要だとは思うんですが、そういうのを真摯に受け止める。
試行錯誤や努力が必要だということは否定はしないんだけれども、「ここじゃないところだったら自分は評価される可能性もある」「自分自身の今の評価は、たまたまこの場所だからある評価なんじゃないかな?」というのは、頭の片隅に置いておいてほしいなという思いがあって。
僕が書いた本は『要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑』という名前になっているんですが、タイトルの「思い込んでいる人のための」というところに、そのへんの思いが込められていて。
仕事ができる・できないとか、要領がいい・悪いというのは、思い込みの可能性がある。そういうのを頭の片隅に置いた上で悩むのは、それこそヘルシーに悩むためにはすごく必要なことなんじゃないかなと思っていますね。
山本:ありがとうございます。その後、その会社では管理職になられたんですね。
F太:そうですね。自分の中では電話を取る仕事は得意だったんですが、職場って、なかなか同じ仕事をずっとは続けさせてもらえないんですよね。
長くやっていると、どうしても管理職的なことや新人育成をやらされるんですよ。たぶんみなさんも心当たりがあると思うんですが、プレイヤーとしてそこそこうまくできていても、いざ管理職になるとやるべき仕事がぜんぜん変わっちゃうんですね。これは本当に知らなかった。
F太:「自分の得意なことを教えるんだからできるだろう」と思っていたんですが、管理職になった途端にやるべきことがガラッと変わってしまって、残業もものすごく増えちゃって、「ここで僕の得意を発揮できなくなっちゃったな」と思ってそこの仕事は辞めることにしました。
この時期はけっこうつらかったんですが、向いていると思っていた仕事を教える側に回った途端に、「あの人、教え方がちょっと」みたいな感じで見られているのがわかるわけですよ。
すごくつらいなと思っていたんですが、こういう時に役に立ったのがTwitter(現X)。それこそ、グチみたいな感じでツイートしちゃったら身バレして炎上しちゃうから、職場で起きたつらいことをTwitterで変換する。
「こういうことってあるよね。でも、こういう時にこういうふうに考えると楽だよね」みたいなことを、Twitterでつぶやいていたんです。そこでけっこういろんな人に読んでもらったり、いいねやリツイートとかしてもらえて。自分がこっち側の世界にいたので、それで僕のメンタルはすごく助けられたな思っていて。
山本:すごいですね。
F太:自分自身の居場所みたいなものを、3つは持っておくのがすごく大事なんじゃないかというのをここで感じましたね。
山本:仕事と家庭なのか、別のコミュニティなのか。
F太:そうですね。仕事と家庭・家族というか、忙しい時ほど職場と家庭の往復になっちゃうじゃないですか。「職場の考え方っておかしいよ」という気持ちがあっても、どうしても職場と家の往復だと、「おかしいよ」って思いつつも、自分自身でも気づかずにその価値観に染まっていってしまうんです。
山本:わかります。
F太:「この職場っておかしいよね」という相談を職場の上司や同僚にしても、やはり解決しないんです。同じ価値観の中で、同じ物差しの中で相談しても、その外には抜け出せないんですよね。
「言うて、この時代にある程度の残業は仕方ないよね」みたいなところに落ち着いちゃうから、本質的な問題の解決にはならないなと感じていて。そういう時に必要になってくるのが、家や職場以外のところでものを考えられる避難場所。そういう意味で、3ヶ所ぐらいが必要な気がしていて。
そこで「自分は今、こういう状況でさ」という話をすると、「いや、それは労基に相談したほうがいいんじゃない?」みたいな、けっこう当たり前のアドバイスをもらったりして、「相当自分っておかしい環境にいたのかもしれないな」ということに気づけるというか。
山本:確かに。
F太:でも実際、渦中にいながら「自分の職場環境は明らかにおかしい」という客観的な意見をもらったとしても、じゃあアクションを起こせるかというと別の問題なんですよね。
別の問題だとしても、「おかしいかもしれない」という頭の片隅を作ってくれる存在があることによって、メンタル的に巻き込まれすぎずに済む感じがあるんですよ。引き留めてくれるものを置いておくという意味で、居場所を複数用意しておくことがすごく大事なんじゃないかなと思いますね。
山本:確かに。ありがとうございます。経歴のところにまた戻ると、Twitterを使って退職されたとのことですよね。
F太:そうですね。退職を決めることができたのも、自分の中で「もしかしたら『何かを書く』ということを中心にして、仕事を作っていくことができるんじゃないか?」という思いがありつつ、桶に水が溜まっていくみたいに、「ここの仕事は合ってないかも。続けるのはキツイかもな」というのがどんどん溜まっていったわけですよね。
ある時、「これは無理だな」と思う瞬間があって。だからある意味、「もう無理だ」と思った瞬間がターニングポイントになるのかもしれないんです。
たまたまそれが最後の一滴だっただけで、一滴一滴がたまった結果、何かがきっかけとしてターニングポイントは起こるものなんじゃないかなという感覚があるんですよね。
山本:それで、SNSで生きていくことにされたと。
F太:そうですね。Twitterを使って、自分自身の情報発信や文章を書くことで生きていくと決めました。
イベントを作って人を呼ぶやり方もぜんぜんわからなかったから、自分と同年代で同じようなことをしている人を探して近づいて、その人のイベントに行ったりして、「一緒にイベントをやってみませんか?」と声をかけて。
コンテンツを持っている人や経験もある人に声をかけて、「僕はTwitterでお客さんを呼ぶことができるかもしれないし、一緒にやってみませんか?」という感じで乗っからせてもらうという基本戦略で今まで生きてきた感じがあるんですね。
本を一緒に書いた方が小鳥遊さんという方なんですが、小鳥遊さんともそういう感じで知り合って。小鳥遊さんは大人になってからADHDという診断を受けられた方で、どうしても出てしまうADHDの特徴をExcelを使ってカバーしたという話がめちゃくちゃおもしろくて。
山本:すごいな。
F太:そうなんですよ。僕自身にも役に立ったし、たぶんこういう話って必要な人がすごく多いんじゃないかなと思って、一緒にイベントをしました。そのイベントにはけっこうたくさんの人が来てくれたんですが、ある時そこに編集者さんが来てくれて本になったという経緯があるんですね。
基本的にはそんな感じで、コンテンツを持っている人に声をかけて一緒にやるという、だいたいツーマンセル、スリーマンセルみたいな感じでチームを作って今まで仕事をずっとやってきたんです。
コロナがあって、みんなが本を読むようになったという追い風もあって、おかげさまでたくさんの方にこの本を読んでもらえた感じがあります。
山本:私も読ませていただきました。
F太:ありがとうございます。
山本:(笑)。
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