2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
レム睡眠も超大切!? 世界的権威が新提言「睡眠は、私たちに何をもらすのか?」#2(全1記事)
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入山章栄氏(以下、入山):『浜松町Innovation Culture Cafe』、今週も常連さんの株式会社オンギガンツ代表取締役の松田雄馬さん、そしてお客さまに筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構機構長、教授で株式会社S‘UIMIN(スイミン)代表取締役社長の柳沢正史さんをお迎えしました。
松田さん、柳沢さん、どうぞよろしくお願いします。
松田雄馬氏(以下、松田)・柳沢正史氏(以下、柳沢):よろしくお願いします。
田ケ原恵美氏(以下、田ケ原):松田さんのプロフィールです。松田さんは大学院修了後、NEC中央研究所に入所。東北大学と脳型コンピュータプロジェクトを立ち上げ、博士号の取得を経て独立されました。
2017年にはオープンイノベーションを支援する合同会社アイキュベータを設立し、共同代表に就任。その後、株式会社オンギガンツに社名変更し、代表取締役に就任されました。
入山:というわけで松田さん、今週もよろしくお願いします。
松田:よろしくお願いします。
入山:松田さんは「浜カフェ」の常連でいらっしゃって、先週もまたおもしろい話をうかがいました。松田さんが作られているオンギガンツという会社がどういう会社か、もう一度教えていただけますか。
松田:株式会社オンギガンツというのは、みなさんもご存じだと思うんですけど、リンゴの木を見て万有引力を導き出した、16世紀の科学者のニュートンさんの名言からもじった社名なんです。
入山:オンは「上」で、ギガンツは「巨人」だから、つまり「巨人の肩に乗る」ということですね。
松田:そうなんです。
松田:ニュートンさんは、「自分自身は大した研究者ではないかもしれないが、かつての巨人たち、すなわち先人たちの知恵を借りてそのさらに上を見ることで、見晴らしのいい景色で世界を見ることができた。だから、自分にはいい発見ができたんだ」とおっしゃっています。
今はデジタル時代なんて言われてますが、いろんな情報が氾濫する中で、巨人の肩の上に立っていい景色から情報時代を見渡すと、1歩落ち着いて生活ができるんじゃないかということをスローガンにしてます。
会社としては何してるかと言いますと、私自身はいろんな大きな会社さんの技術顧問やコンサルティングをさせていただいてるんですが、まずは社会全体を眺めましょう、その上で自社を眺めてみましょうと。
そうした時に自分の会社の価値がわかって、今やるべきことがわかってきて、デジタル時代に備えることができるというか、無二の打ち手ができるということで、まさに会社を1つの体のように捉えています。
その大きな視点で見た時に、今はどこの部分が悪くなっていて、それをどういうふうに循環させていけば「体」という能力が発揮できるかということを、人材育成の観点も含めてやらせていただいてます。
入山:なるほど。というわけで、ぜひ今週もいろんな話をよろしくお願いします。
松田:よろしくお願いします。
田ケ原:続いて柳沢さんのプロフィールです。31歳で渡米し、テキサス大学サウスウェスタン医学センター教授と、ハワードヒューズ医学研究所研究員を2014年まで24年にわたって併任。2010年に内閣府最先端研究開発支援プログラムに採択され、筑波大学に研究室を開設。
2012年より、文部科学省・世界トップレベル研究拠点プログラムの国際統合睡眠医科学研究機構の機構長、教授に就任されました。活動は国内外で高く評価され、これまで紫綬褒章、文化功労者などに加え、2023年はGoogleやFacebookの創業者らによって創設されたブレークスルー賞の受賞も決まっています。
入山:というわけで柳沢さん、今週もよろしくお願いします。
柳沢:よろしくお願いします。
入山:日本を代表するというか、日本の睡眠研究においては本当にトップオブトップの方に今回も『浜カフェ』に来ていただいています。
先週、柳沢さんの学者としてのおもしろい経歴をすでにいっぱいおうかがいしたんですが、今はS‘UIMINという会社の社長もやられてるわけですよね。S‘UIMINというのはどういう会社なんですか?
柳沢:ありがとうございます。「スイミン」ってふざけた名前の会社なんですが、ローマ字で「S‘UIMIN」と書きます。日本人って本当に睡眠不足で、世界一睡眠不足の国です。私はもう、日本の国力が睡眠不足のためにそがれていると信じてるんですが、実際にそういうデータもたくさんあるんです。
入山:なるほど。
柳沢:国民の4人か5人に1人は、真剣に睡眠で悩んでいると言われているんですよね。だけどよく考えてみると、睡眠の悩みって一人ひとり違うし、万人に共通する簡単なソリューションってなかなかないわけです。
カスタマイズされた、その人に最適なソリューションを見つけるには、まずはその人の睡眠の様態がどうかを見なきゃいけない。きちんと睡眠を測ろうと思うと、いわゆる頭の表面に……。
入山:(器具を)着けてやらざるを得ない、ということですね。
柳沢:そう。「睡眠ポリグラフ検査」と言うんですが、それを医療レベルでやろうとすると入院検査になっちゃうんですね。頭から足の先まで20ヶ所ぐらいにいろんなセンサーや電極をつけて、スパゲッティのように電線に囲まれた状態で、しかも寝慣れない部屋で寝る。だから、その人の本来の睡眠が計れないんですよ。
もちろん、それでもいろんな病気の診断には役に立つのでやられているんですが、ぜんぜんキャパシティが足りなくて。
株式会社S‘UIMINで私たちがやりたかったのは、自宅ないしは出張先のホテルでもいいですが、自分がいつも寝ている部屋で、脳波レベルのきちんとした睡眠の質の変化まで含めた正確な睡眠測定ができるサービスをやろうと。
入山:すごい。
柳沢:鏡の前で、おでこと耳の後ろの3ヶ所にほとんど重さのないシール状の電極をペタッと貼り付けるだけで、レム睡眠とかノンレム睡眠とか、(睡眠)サイクルがどうなってるかとか、その人の睡眠の様態を自動的にレポートします。
柳沢:さらに今はAIで、「あなたの睡眠はこうで、年齢と比較してここが問題かもしれなくて、こうしましょう」みたいなサジェスションまで、半自動的にできるようになっていて。そういうサービスをやっています。
入山:すごい。
田ケ原:体内年齢みたいなものがわかるんですね。
柳沢:そうですね、そういうのもやろうと思えばできますね。今はやっと事業が立ち上がって、日本全国の100ヶ所以上を超えるクリニックや検診センターで導入されています。
今はまだ消費者に直接デバイスを売るかたちのビジネスじゃなくて、病院なり検診センターに行くと、オプションとして「睡眠を測ってみませんか?」というかたちでやれるサービスですね。
入山:なるほど。
柳沢:それからもう1つ重要なのは、研究開発支援。今は「スリープテック」と言うぐらい、あらゆる業種のメーカーさんが睡眠に興味を持ってるんですよ。
飲み物でもいいし、サプリでもいいし、寝具でもいいし、パジャマでもいいんだけど、そういう製品を使ったら本当に客観的に睡眠が良くなるかを測ってあげるサービスです。
入山:「睡眠は、私たちに何をもたらすのか?」ということで、今週は「睡眠とビジネス」というテーマでお話をしたいと思います。
日本は睡眠不足の国なんだとおっしゃってくださいましたが、あらためて柳沢さんにおうかがいしたいと思います。
アメリカのシンクタンクのある調査によると、寝不足による日本の経済損失を金額換算すると15兆円だと言われてるわけです。日本のGDPは400兆円か500兆円ぐらいなので、けっこうな割合ですよね。
田ケ原:そうですよね。
入山:数パーセントぐらいの損失です。
柳沢:3パーセントといわれていますね。
入山:ですよね。逆に言うと、睡眠がしっかりとれるだけで日本のGDPは3パーセント伸びるんですよ。
柳沢:そうです。その通りなんですよ。みんながきちんと寝れば、即座に3パーセントの経済成長が約束されている。そういう国なんですよ。
入山:(笑)。
田ケ原:すごすぎる。
入山:それを目指されてるわけですね。
柳沢:そうです。こんな国は(日本以外に)なくて。
柳沢:これはランド・コーポレーションという有名なシンクタンクの調査なんですが、彼らは先進5ヶ国を同時に比べています。
アメリカもけっこう悪かったんだけど、それでも睡眠障害による経済損失が2パーセントぐらい。ヨーロッパなんか1パーセント台なんですよ。だから日本は本当にやばい。
それからおもしろいデータがいろいろあって、国民の平均睡眠時間。単なるアンケートじゃなくて、ちゃんと客観的に測った睡眠時間と国民1人あたりのGDPを散布図にしてみると、きれいに右肩上がりの相関があるんです。要するに、経済的に豊かな国ほどよく寝てるんですよ。
入山:つまり、因果関係はまだ確実ではないけど、日本がちょっと貧しくなってきてると言われてるのは、もしかしたら日本人が寝なくなってきてるからじゃないかと。
柳沢:まったくその通り。しかももっと厳しいのは、日経新聞か何かにもグラフが出てたんですが、国民1人あたりの労働時間1時間あたりの生産性と、今の国民の睡眠時間を比べると、本当に日本はすごく低くて。生産性が低くて睡眠時間も短い。そういうきれいな相関があって、たぶん寝ないとやばいんですよね。
入山:今、睡眠不足が日本を滅ぼしかけてると。
柳沢:……と、私は思ってます。
入山:松田さん、この柳沢さんの仮説はどうですか?
松田:おっしゃる通りで、これは睡眠だけじゃないですね。特に日本は都市社会なので、休む場所と働く場所の区分もできてない。ということを考えると、あらゆる意味でオンとオフの切り替えができてないんですよ。
ビジネスを考える時に、昨今の潮流も含めて考えた時のキーワードを1つお話ししたいんですが、「バイオフィードバック」という言葉です。
入山:バイオフィードバック。
松田:これは何かと言うと、まさに先ほどの柳沢先生のお話のとおり、睡眠のことがデータでわかってくるようになりました。IoTデバイスと言いますが、いろんなセンサーを使うと、人間の体の中の状態や自分ではわかっていないことが客観的にわかったりすることが、めちゃくちゃ増えていきます。
例えば今、自分が発声をしていて、これがいい声なのか・悪い声なのかって自分ではわからないじゃないですか。でも、例えばランプがあったとして、いい声の時はランプが赤く光って、悪い声の時は違う色に光ると……。
入山:それがすぐにフィードバックされるってことですよね。
松田:おっしゃる通りです。
入山:つまりIoTで声が検知されて、「いい声だよ」「今、調子悪いよ」というのを出してくれる。
松田:まさにそうです。
入山:なるほど。
松田:そういうふうにセンサーの力をうまく使って、いい状態になるようにしていく。睡眠のことがわかってくると、生活全体が自分の理想の状態と比べてどうなのか、いい状態に近づけるためにどうすればいいかもわかってくると思うんですよね。
入山:めっちゃおもしろい。
入山:睡眠ビジネスという時に、柳沢さんが特にこのへんに注目してほしいとか、今はここにすごく注力してるというのはどこになりますか?
柳沢:やっぱり「気づき」ですね。日本人の5〜6人に1人は治療が必要なレベルの潜在的な睡眠問題を抱えている。
いわゆる睡眠時無呼吸なんかが有名ですが、無呼吸は治療が必要なレベルの人が1,000万人いると言われているんですよ。だけど、実際に治療してるのはその1割以下ですよね。
それがいい例なんですが、とにかく睡眠問題を潜在的に抱えてる人はたくさんいるんだけど、ほとんどの人は自覚してないんですよ。
入山:寝てますから、そもそも気づいてないですもんね。
柳沢:そうなんですよ。株式会社S‘UIMINのビジネスとしても、気づきを与えるというのは本当にすごく大事です。そうしないと我々の計測サービスも伸びないし、それがすごく大事だっていうことが、今さらのように最近わかりました。
入山:なるほど。
入山:松田さん、今の柳沢さんの話はどうですか?
松田:「気づく」というところが本当に大事なところです。私がよく言っているというか、私自身の研究のど真ん中って実は意識の研究なんです。
入山:難しいところだ。
松田:はい。AIの研究をしてると、結論自体はすぐ出ちゃうんですよ。今後AIが進歩していった時に、AIが人間を超えるのか・超えないのかとか、人間と同じようになるのかという議論がよくされますが、実は超えられない壁が1つあって。まさにそれが「気づく」ということなんですね。
(「気づく」というのが)意識の源泉なんです。よく私が動画でお見せするのですが、ゴミ収集ロボットはゴミを自動運転で拾うので、まるで意識があるように見えるわけですが、彼らが失敗した後に何が起こるかがすごくおもしろい。
当たり前だけど、人間でも失敗する。当然、AIも失敗を繰り返していってレベルアップしたら、だんだん失敗しないようになるじゃないかという言い方をよくされるんですよ。
それを見てしまうと、「やっぱりAIも人間に近づくよ」というふうになっちゃうんだけど、そうじゃなくて「失敗した瞬間」に着目してほしいんですね。
松田:実は彼ら(AI)って、失敗した時にはもう我関せずみたいな感じで、ありもしないゴミを拾い続けるんですよね。一方で人間は失敗した時に、「あ、やっちゃった」って思うわけですよ。ここがすごく大事。
入山:「やっちゃった」というのが、気づきだっていうこと?
松田:まさにそうです。これは、現状の自分自身を認識できてるってことなんですよね。
入山:主体性があるってことなんですね。
松田:おっしゃる通りです。自分はこう生きたい、何かをしたいという思いそのものが、成就できてるのか・できてないのかを認識できる。先ほどキーワードとしてお話ししたバイオフィードバックは、まさにそこに絡めています。
1つの気づきが得られるということは、勝手に頭が回り出すわけですよ。「じゃあ睡眠改善しよう」もそうだし、「睡眠だけじゃなくて、生活のこういうところを見直していこう」みたいなことが、無意識レベルで起こるんですね。
柳沢:「行動変容」ってやつですよね。
柳沢:医学の分野では有名な話があって、50年以上前に日本のオムロン社が世界に先駆けて自動血圧計を作って、それを家庭用の血圧計として世界中で普及させたんですよ。
その結果、高血圧医療が根本的に教科書が書き換わって、正常血圧の値も違っちゃったし、なによりも脳卒中が激減したし、ものすごく良くなったんですね。
最近になってエビデンスが出てきたんだけど、その人のベースの血圧、朝一番の血圧を毎日ちゃんと測るだけで血圧が下がるんです。まさにフィードバックですよね。自分の状態を見える化することで行動変容が起こるので、これはすごく大事な部分です。
松田:もっと俗っぽいやり方で、ダイエットをする人がまずは記録をしていくだけで、ちょっとずつ自分で意識が切り替わるってよく言われますね。
入山:僕も課題はあるんですが、太ってる人の課題って体重を計らないことですからね。
松田:おっしゃる通り。自分を振り返らないんですよね。
柳沢:ちなみに、ダイエットの最大の敵は睡眠不足なんですよ。
田ケ原:へぇ~。
松田:おもしろい。
柳沢:これも医学的にはものすごい強固なエビデンスがあって。寝不足になるということは、当然寝てないわけです。
起きてる時間が長い分1日のカロリー消費は増えるんですが、食欲が増してそれ以上に食っちゃうんです。しかも睡眠不足だと、高カロリーのものを欲するようになる。「寝る子は育つ」って言うけど、よく寝る大人はシュッとするんですよ。
入山:なるほど。寝ます!
(一同笑)
松田:GDPも上がると(笑)。
入山:もう少し柳沢さんにおうかがいしたいんですが、まさに今は睡眠ビジネスが世界中で期待されている一方で、課題や乗り越えなきゃいけないことは何ですか?
柳沢:私が思うに、これもやっぱり「気づき」だと思いますね。要するに、睡眠が大事だということをより多くの人が意識すればするほど、睡眠関連のビジネスは当然伸びる。さっきから言ってるように、より良い睡眠に対するソリューションって、万人共通のものはないんですよ。
入山:本当に。
柳沢:一人ひとりにカスタマイズしなきゃいけなくて、そこをどうやってやっていくかが課題だと思います。
入山:松田さんはどうですか?
松田:一人ひとりに寄り添って、いい睡眠のスタイル・生活スタイルを築いていくことって、ビジネスマン界隈で話題の「人的資本」に直結すると思うんですよね。
健康の状態も含めて、一人ひとりの生活の状態が良くなっていくとパフォーマンスも上がって、結果として会社の成績が伸びるということです。
まずは一人ひとりが「自分がいい状態かどうか」がわかるようになって、「もっとこうしたい」「こういう生活がしたい」ということに自覚的になっていけばいくほど、会社の成績は良くなると思っていますね。
入山:僕も経営学者なのでいろんな会社を見ていて、確かに今は「健康経営」という言葉が出ています。従業員の健康にもっと気を遣おうという会社はいっぱい出てきてるんですが、正直睡眠の話はそんなにしないですね。
柳沢:でもね、経産省が出しているの社員の健康問題のデータなんですが、肥満も含めた食の問題がある人、運動の問題がある人、それから睡眠・休養に問題のある人(を比較すると)、会社から見た社員1人あたりの損失リスクは睡眠のエフェクトサイズが10倍なんですよ。
入山:つまり、その影響度ってことですね。
柳沢:(食の問題がある人、運動の問題がある人と比べて)効果サイズが1桁違うので、ものすごく睡眠は大事。
入山:圧倒的に睡眠だと。
柳沢:確かこれは慶應大学のデータなんですが、社員がよく寝ている会社のほうが利益率が高いというデータも出ちゃってるんですよ。
田ケ原:えぇ~!
入山:なるほど。そう考えると、冒頭でおっしゃったように、日本のGDPの3パーセントを減らしてるのは本当に睡眠かもしれないですね。
柳沢:本当にそうですよ。僕は、失われた30年は睡眠不足のせいだと思ってるので。
入山:タガエミちゃん、お二人に質問はどうですか?
田ケ原:日本と世界で比べると、スリープテックの領域はどのぐらい進んでるというか、どうご覧になってるんですか?
柳沢:一つひとつの製品を見てると、やっぱりアメリカとかヨーロッパの一部は一回り早いというのはあるんですけど、彼らのほうが本当にビジネスとして進んでるかと言われると、実はそんなに差はないんじゃないかなと思いますね。
やっぱり難しいところで、単純にダイレクトトゥーコンシューマーの消費者ビジネスにしちゃうと、結局は「ちょっと1回使ってみて終わり」になっちゃうんですよね。
入山:つまり、消費者に直接そのまま届けても(あまり効果がない)。僕もよくありますが、睡眠にいいよっていう製品をついつい買っちゃうんだけど、三日坊主で終わっちゃうので。
柳沢:そう。そういうのが多いから、先行して出てきた製品はなかなか浸透しない。
入山:ポイントはそこなんですね。つまり習慣化というか、まさに行動変容。行動を改めることが課題で、欧米もテクノロジーはあってもそんなに進んでいないと。
柳沢:進んではいないです。
入山:むしろ柳沢さんは、気づきを与えることで行動変容を促すことが本丸だと思っている。
柳沢:そう。そこまでやらなきゃダメだと。
入山:なるほど。
柳沢:健康経営1つとっても、ほんの数年前までは「社員の健康と生産性をトレードオフ」みたいに、本音ではトレードオフのような考え方をしてる経営者が多かったと思うんです。
ここに来てやっと、社員の健康やメンタル、休養や睡眠をとることが業績につながるってみんな気がつき始めたところですよね。そのへんはまだ、日本は後進国だと思いますね。
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