2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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衛藤信之氏(以下、衛藤):例えば、ある奥さんが相談に来られて「うちの主人がぜんぜんしゃべってくれない」と。僕が「寂しいんですよね」と言おうと思ったら、「いや、寂しくないです」と。「ん? 寂しくない?」。
「衛藤先生、私は社内恋愛で結婚して、うちの主人は本当にいい人だったんです」。「目上の人や先輩、上司と、気を遣う人はどこにでもいるじゃないですか。でも、私たち女性スタッフにも部下にも気を遣う人で、あぁ、本当に気を遣う人なんだなと」。
「初めてのデートの時も、『ここのお店でよかった?』とか『こんな料理でよかった?』とか。私は何を食べたっておいしいと思う人なので、『そんなこと気にしなくていいわよ』と」。
「そういう感じで、自分の先輩だったんですけど、『ある意味この人、心休まることがないんだ』と思っていました。ご両親が厳しい人で、常に気を使わないといけない中で生きてきたそうです。結婚した時も、『この家具でよかった? この家でよかった?』って、私にいちいち聞いてくる。『本当にこの人は力が抜けないんだな』と思っていたんです」。
「でもここ4~5年、私が『あなた』としゃべりかけても、テレビを見ながら『ははは』と笑っている主人を見た時に、『やっとこの人にも気を遣わない人ができた。そう、私がそういう人になれたんだ』と思うと、衛藤先生、私うれしくて」。
「だから、無視されたり、私がしゃべりかけてもテレビを見て『ははは』と笑っていたりする姿を見ると、感動するんです」と言われたんですね。これはすごいですね。
だいたいうちの相談に来られる人は、「夫がしゃべってくれない。しゃべってくれないということは、愛が冷めたということですわ」。「いやいや」みたいなね。
ところが、「夫がしゃべってくれない。あぁ、しゃべってくれないくらい安心できる家庭を私は作って、気を遣わない家庭を作れているのね」と。
「子どもが学校に行かない。学校に行かない子どもを抱えた家庭は不幸である」と思い込んでしまうと、どんどん不幸になる。でも、例えば星野源さんにしても、小栗旬くんにしても、今お笑いの中で中堅になってきた千原ジュニアさんにしても、学生時代に不登校の時期があった。宮本亜門さんもそうです。NHKの『100分de名著』の伊集院光さんも学校に行けなかった時期がある。
僕は、いい高校・大学に入って理想的に親の期待に応えてきた子で、社会に出てからドロップアウトして自信を失って引きこもっている子もカウンセリングしていますし、子どもの時にすったもんだして親にすごく迷惑をかけて、「あの子、どうなるんかね」と言っていた子が、会社を起こして「僕は親に迷惑をかけたから、あの親だけは見捨てられないと」言ってがんばっているのもいっぱい知っています。
そう考えると、「学校に行っていない子どもを抱えた家庭は、問題家族だわ」と言われてしまうと、「今そう思っていらっしゃるんですね」としか言いようがない。それは永遠不滅の原理ではなくて、先のことはわからないわけですね。
「仕事で失敗した。でも失敗してからがビジネスですわ」という人と、「失敗したことで、これから真っ暗になっていく」という受け取り方しかできない人がいて、うまくいかない人と一緒にいると、どんどんうまくいかなくなります。
人間関係って磁石と同じで、たぶん、うまくいかない者同士が集まるんですね。だいたいそうですよ。「何かいいことない?」「ないない」「ないよね」「そうそう」みたいなね。
だから、そういう人と一緒にいると安心するんですね。安心するからうまくいかない人たちといつも一緒にいて、「世の中ってこんなもんなのよ」と言い合う。
僕が先ほど言った「出会いが大事だ」とは、自分と似たような人と出会っていると、ビリーフとかスキーマとか受け取り方が固まるからです。だから、なるべく日頃自分が出会わない人と出会う。それが僕は、自分の中で世界を変える唯一の方法かなと思います。
そのためには部屋の中にいてもダメなので、東京メンタルヘルス・スクエアさんのこういう勉強会とかに参加する。なるべくいろんな人たちの受け取り方の癖、楽しんでいる人、成功している人と一緒にいる。
「成功している人」というとちょっと語弊がありますね。成功していても、「成功しなければいけない、成功しないと自分は価値がない」「リムジンに乗ることが成功で、誰も見てくれなかったらハッピーじゃない」と思う人は成功の奴隷なので、僕はそういうのを成功とは言わない。
「本当の成功者」は自分で自分の機嫌を取れる人だと思います。こういう人は、たぶんどんな人と結婚したって楽しめる。
「相手が幸せにしてくれる」とか「夫が」とか「妻がこうだったら」という条件付きで人と結婚する人は、条件がズレてくると、「裏切られた」とか「こんなはずじゃなかった」と、やがてストレスになるわけです。
だから僕は、基本的に結婚する前から1人で楽しめる自分を作っておくことが、一番大事だと思います。
会社に入ってもそうです。やりにくい上司がいた時に、「やりにくい上司、あんな上司に囲まれた僕は、転職を失敗した」と思うから、苛立つわけです。
僕はやりにくい上司がいた時に、「このやりにくい上司に対応できたら、結婚した先の舅がこういうタイプかもしれないから、今のうちの練習だ」「会社だったら辞めたらおしまいだ」と思います。「挨拶しても無視される。理想的なボスキャラだ」みたいに、普通に受け取り方を変えるだけで、急に練習になってしまいます。
この間、僕はYouTubeで、「自分は挨拶して、相手は挨拶してくれなかった。どうやったら幸せになりますか?」という話をしたんですね。
幸せになる方法は、コンビニに行ったら「こんにちは。ありがとう」と声をかけるとか。お店でごはんを食べたら、厨房に向かって「ステキな料理でした。ありがとうございました」と声をかけるとか、高齢者がバスに乗ってきて、「よかったら座りませんか?」と言ってみる。そうしたら、十中八九「ありがとう」と言ってくれます。
「もし言ってくれなかったら損じゃないですか」と思う人は、損な生き方をしているんですね。十中八九言ってくれない人に自分がやさしくしたということは、それだけ天に宝を蓄えたんです。
そう考えると、「あ、そうか。こういう人に挨拶して、僕はそれでも機嫌がよくいられるのは、天に宝を蓄えて、小結なのに横綱を倒したくらいな金星だな」と思うのか、「挨拶したのに、なんであの人は挨拶しないの? 絶対に私、あの人には挨拶しないから」と言って、それで完結して人生が終わってしまうのか。
そう考えると、機嫌がいい人って、向こうの反応にかかわらず、自分がどう楽しめるかを知っている人です。「あぁ、そうか。挨拶してこなかったら、天に宝を蓄えたんだな」と。挨拶して「ありがとうございます」と言われると、プラスマイナスゼロです。すでに得ているので、「あぁ、チャラか」と思うんですね。
でも、挨拶したのに無視されたら、「うわ~すごい。天に宝を何円くらい蓄えられたかな?」と思う。僕はいつも、変な人を見るとその人にやさしくして、無視されたり変に攻撃されたりしたら、「すげ~俺、けっこう貯金通帳貯まってるわ」と思うんですよね。
このように、受け取り方を変えて楽しんでいる人がいます。一方で、「衛藤先生に言われたように、幸せになれると思ってあの人に挨拶したのに、あの人は私に挨拶してくれなかった。より不愉快になりました」と言う人がいます。
それは「挨拶したら挨拶すべきである」という受け取り方にこだわっている人ですよね。そういう人はたぶん、気分がその都度相手によって振り回されるので、常に気分はダッチロール(飛行機が横揺れしながら蛇行すること)を繰り返すだろうというのが、僕の考え方ですね。
どこの職場に転職しようが、誰と結婚しようが、どんな子どもが生まれようが、子どもが不登校になろうが楽しめる人は楽しめる。
でも楽しめない人は、すべての出来事に対して、「あの人が悪い」とか「この人が悪い」とか「これさえなければ」と、全部「出来事」にしてしまう。そうすると、出来事さえ変わればいいので、「だから恋人を変えるんです」とか「転職するんです」と言う。
今、転職ブームですけど、はっきり言うと転職してうまくいっている人は1割か2割です。もうデータが出ていますよね。7割くらいは「前の会社のほうがよかった」と言っています。そう考えると、転職したところで、環境を変えたところで、内側を変えていなかったら、たぶんうまくいかない。
4人奥さんを変えた人がいますけど、その人が「別れたい」と言った時のセリフを僕は一生忘れない。これは20代の時のカウンセリングですけど、「先生、今の女房に比べたら、まだ最初の女房のほうがマシでした」と言われたんですね。本当にびっくりしましたね。たぶん20人変えたって、きっとこの人は「最初の女房のほうがマシだった」と言うのかなと思いました。
うまくいかない人は、どこに行ってもどういう状況に変わっても、心を鍛えていなければ永遠にうまくいくはずがないんでしょうね。だからなるべく、機嫌がいい人・楽しんでいる人の受け取り方をマスターしてください。それをモデリングといいます。
例えば、仏教の禅の坊主とか、大谷選手とか、「あ、そういう受け取り方にしよう」「あ、そういう考え方にしよう」「そっか、そういうことか」と思ってマネするんですね。それをただネットで見て、「へぇ~」とか「そっか、そういうこと大事よね」で終わらせるのではなくて、まず実行する。
道に迷っている人がいたら、「時間があったら声かけてみよう」とか、高齢者が乗ってきたら、「どうぞ、よかったら座りませんか?」と言ってみるとか、コンビニに行ったらまず挨拶して、「ありがとう」と言ってみるとか。
僕は、「退屈と感動は遠い距離ではないですよ。一歩踏み出すか踏み出さないかですよ」という話をしているんですね。ですから、そういったところに意識を向けていただくといい気がしますね。
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