2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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森田さえ氏(以下、森田):2個目なんですけど、「過去のことで思考がグルグル繰り返してしまう時の対処法を教えてください」という質問をいただいています。
下園壮太氏(以下、下園):これも「私の性格の悪さは昔からです」というように、鬱っぽくなると過去を見る時も自分のネガティブな部分とか、ダメなところとか後悔するところをずーっと考えてしまいます。
過去のことを強く思う時、何がスイッチがオンになっているかというと、実は先ほど言った4つの「自責感」「無力感」「不安感」「負担感」のうちの「不安」なんです。不安は、将来を先読みをする機能です。
将来いろんな怖いことが起こるんじゃないか。特に弱っているから「こんなことが起こるんじゃないかな」って。これを今どうしてこうなったのか、それをどう避けるためには何をすればいいか考える時に、私たちは過去に答えを求めちゃうんですよ。
原田知都子氏(以下、原田):「今までどうだったかな?」という感じで。
下園:そうそう。「あのことが原因なんだ」「ここでこういうことをしたから」と。さっきのメールの話でも、「今日来るの?」と聞かれた時に、「私が前回こんなことでちょっと遅れてなんとかしたから、きっとこうなっているんだ」みたいに必ず思うわけです。その時に、「私が中心になって場を盛り上げた」ということなんて、思い出さないわけよ。
森田:思い出せない(笑)。
原田:いいことは思い出せないんですね(笑)。
下園:ネガティブなことばかりに焦点を当てて、それを思い出してしまうという機能がオンになっていると思ってください。それってもう過去のことだし、思いついても実はどうしようもできないことなので、これもできたら中断しちゃうといいんですが、それが難しいよね。
森田:難しい。
下園:不安というのは、自分の命を懸けて自分の未来のシミュレーションや過去検索をしているので。だけど理性では「そんなことない。そんな悪い人たちじゃない」ってちょっと思っている部分もあるんです。その理性を活かして、不安の思考、後悔の思考を、ちょっとでいいから止めてみる。そういう発想をしてください。
例えば、自分が集中してしまうような魅力的なこと。最近そういう意味で効果的なのは「スマホ」だと思うんだよね。スマホでいろんなことを見たり、TikTokとか動画を見たりしたら、不安から距離を取れるよね。
これは人によってぜんぜん違います。「TikTokなんか見たらぜんぜんダメです」という人もいれば、「ランニングしていたらOK」という人もいるんだけれども、「ランニングをしててもずっと考えてしまう」という人もいたり、「料理をしたら全部忘れられます」という人もいるんだけども、「料理をしてても考えるという人」もいるわけです。
だからとにかく自分でいろいろ工夫して、何かを考えてしまうモードの時に、一時的にでも止める力のあるツールを開発しておくことです。
森田:私、落ち込むとスマホをチマチマ見るのが大好きなんですけど......例えば家事とかをやっていたら思考は止まるし、そのあとは「ああ、部屋がきれいになってよかった」って思えるんですけど、TikTokとかを見たあとは「ああ、やってしまったな」って、ちょっと落ち込んじゃうんですよね。
下園:何か悪いことしたような気分になるんですね(笑)。
森田:そうなるということは、やらないほうがいいんですかね。
下園:何に罪悪感を感じているのか。ご自分のこれまでの経験値とかいろいろあるから、例えば「漫画を見たらなんとなく悪いことしている」と感じる人もいるわけよ。
森田:うーん! ちょっとわかるかもな。
下園:それはお母さんたちから怒られたからかもしれない(笑)。
下園:何に罪悪感を感じるかもやってみないとわからないので、4つの偏りを刺激しない、トータルで一番いいことを探すんです。この時、自分が何かをやった時に評価をするわけです。これは良かったかな、悪かったかなと。その時のコツがあります。
森田:コツ。
下園:まず「完全に不安や嫌なことを忘れられる」って思わないこと。
森田:あ、いいんだ。忘れられなくても。
下園:不安は命懸けの反応なので、簡単には忘れられないんです。不安を忘れるためには、自分が攻撃されなかったという一定の時間が必要なんです。その間はバックグラウンドで、ずーっと不安が流れていると思ってください。
テレビをずっと見てたら疲れる。だから時々違うのを入れるわけ。例えば今、僕はコップを持っています。このコップを「一日中持ってください」と言われたら、どうですかね。
森田:腕が疲れるかも。
下園:それが(途中で)「置いていいですよ」と言われたら、けっこう持てるんだよ。これが「中断する」ということなんです。
森田:うーん。
下園:中断の効果。だから「これをやったから不安から解放された」というツールではない。中断しながら不安をやり過ごしていくためのツールだと思っていただくと良いと思います。
森田:コップを捨てるんじゃなくて、置いておくだけというのが中断。
下園:そうです。力を抜く瞬間を作る。不安をちょっと分断する。これだけでもだいぶ楽になるはずです。
森田:わかりました。ありがとうございます。
森田:3つ目の質問です。「いろいろと学んでいるものの、やはりコミュニケーションには疲れます」という質問が来ています。「特に理不尽な怒りを、平気でぶつけてくる人が周囲にいて疲弊してしまうのですが、どうしたらよいのでしょうか」という、これはわかるな(笑)。
原田:合わない同僚の人がいたり、いろいろあるみたいなんです。苦手な人とうまくいかないとか、向こうが攻撃的ということなので。
森田:自分の努力でどうしようもない人は、どうしたらいいんでしょうか。
下園:これは大変だよね。人間社会、大変なんだよ。
森田:(笑)。どうしたらいいんでしょう。
下園:これも僕が言うのは、どれも解決策がないということなんだけどさ(笑)。みなさんが思うような解決策はないということです。なぜかというと、自由社会なので相手がいるわけじゃないですか。根本の話をすれば、嫌な人から距離を取るのが一番というか、もうそれがすべてなんですよ。
わかり合おうとか、自分でコミュニケーションによってうまくやろうという範囲は努力してください。でも、合わない人も一定数はいるわけです。努力が通じない人もいるんです。私たち、どうしても「がんばってうまく仲良くしていきたい」という思いがあるじゃないですか。でも無理なものもあるんです。
森田:私、どれくらいまで努力したらいいんだろうというのを、いつも失敗するんですよね。読み間違えるというか。「もうちょっとがんばってみようかしら」というので。
下園:森田さんなんか、さっき僕が言った2段階でがんばり続ける人だから。
原田:素敵な笑顔で。
森田:(笑)。笑顔だけど。
下園:その自分なりの限界を見出すのが、「生きていく」ということなのよ。子どもの頃からずっとこのタイプにはこうだ、このタイプにはこうだ、そして我慢して自分が折れていたらこんなことになるという試行錯誤をしながら、だんだん年を取ってきたら「もういいわ」みたいな感じに、どこかで線が引けると思ってください。
だからそういう意味で言うと、それぞれの1回1回のタスクというか、チャレンジというか大変さ、トラブルは必ず身になるんですよ。どこまでだったらがんばれる。このがんばり方をしたらちょっとこういうデメリットがあると(わかってくる)。
原田:ものすごく理不尽な影響を受けて、どこまで我慢してどこで反撃してというのは、それは1つ絶対の答えがあるわけじゃなくて、経験してちょっとずつやっていくしかない。
下園:その時に、ちょっと気をつけておかなきゃいけないことがあって、その作業はできるだけ2段階の上までにやっておきたいことなのよ。
原田:あまり(気持ちの)落ち込みが激しくない時に。
下園:うん。2段階の下、2段階から3段階に落ちると、判断が狂っちゃうんだよね。その一番の例が、会社を辞めたらいいのに、人生をやめちゃうみたいな。
原田:この3段階の一番下の「もうダメ」になったらダメなんですね。
下園:そう。こうなったら冷静な理性というのがほとんど働かなくなってくるんですよ。
森田:なるほど。
下園:複雑なチョイスができなくなります。いろいろ苦しんでがんばるんだけど、糧になるようながんばりをするのもできるだけ2段階の上。もし2段階の下ぐらいになっていたら、なかなかどう行動していいかわからない。
下園:どんどんどうしていいかわからない状態が強くなってきますから、そうなったらやはり人の力を借りるしかないんですね。
森田:人の力というと、例えばどんな人ですか。
下園:例えば誰でもいいの。僕はよく言うんだけども、人は決して1人で生きていくように設計はされていないのね。サイなんて皮が5センチくらいあるらしいよ。だからサイは将来矢が飛んで来ようが何しようが、あまり考えなくて済むんです。でも人間ってちょっとしたことで(皮も肉も)切れちゃうじゃん。
まして大きな体もないし。だから人間は相当不安でシミュレーションをして、丁寧に丁寧に危険を避けながら、同時にマンモスとかサイとかもっと大きい奴を仕留めるために、仲間でコミュニケーションを取って、集団の力でやっつけてきたわけだよ。
だから1人になった時、人間ってめちゃくちゃ弱いわけ。コミュニケーションを取りながら、つまり助け合いながら問題を解決していく。そういう設計をされているんです。私たちはつらい時に涙を流しますよね。そうしたら周囲がビクッとして「どうした!?」と見てくれるんですよ。これも助け合いの自然なメカニズムなんです。
そう考えた時に、自分の単独の能力でいい選択ができない闇落ちモードになった場合は、もう人の助けを借りるようにしなきゃいけないんだけど、一方で現代社会では、人の助けを借りることがあまり練習されていない。
森田:「頼らないほうがよい人」みたいなイメージがありますよね。
下園:そう。そうなっちゃっているんだよ。だからヘルプを出すのがどうしても遅れがちになります。そして誰に出したら、どういうリアクションをしてくれるのかわからなくなるわけ。
森田:そうなんですよね。
下園:一般的には、親が面倒を見てくれるという人がすごく多かったんですよ。僕のカウンセリングでも、会社でちょっと調子が悪くなったら「実家へ帰るか」というのが、20年くらい前までは定番だったんだよね。実家に帰って自宅療養しようかというのがね。
森田:まあ! へえ。
下園:(笑)。今は「まあ!」ということなのよ。
森田:疲れそうと思っちゃった。今。
下園:今は「実家に帰ろう」と言って帰る人はすごく少なくなった。だから支援を求める先が開発されていないのが、現代社会のちょっとした特質だと思います。
その対策は2つあって、1つは世の中いろんな専門家がいるわけで、例えば僕みたいなメンタルヘルスの専門家。親とか友だちとかだったら、いろいろ逆に面倒くさいところがあったりするわけだよ。だからぜんぜん関係ない他人だけど、いろんなメンタルヘルスの知識がある。そういう人にヘルプを求めるというのが1つです。
もう1つは、日頃から「このことについてはあの人が頼りになるかもしれないな」「このことについては親戚のおばちゃんが頼りになるな」とか、自分なりにあたりを付けておくというか、イメージの中でリスト化しておいて、そういう人にはお歳暮とか年賀状とか出しておくと。
森田:ふだんからのコミュニケーションをしておく。
下園:もう困った時だけじゃダメなんです。人間というのはお互いさま。
森田:そうかも。
原田:ちょっと戦略的にそこは大人としてやっておくんですね。
下園:そう。少なくとも1人では生きていけないスペックだということは、覚えておいていただくといいと思いますね。
森田:お歳暮って、古き良き今は廃れた日本の文化という感じがしていたけど、そうじゃなくて、ふだんは交流できない相手と交流を作るきっかけみたいな意味合いがあるんですね。
下園:やはりパッと相談できる人って作っておかなきゃね。
森田:確かにそうですね。私、そういう人がいないかも。
下園:お歳暮でも送っておけば、突然来ても、「ちゃんとお歳暮送ってくれているよね」という。
森田:「ハムありがとうね」みたいな(笑)。
原田:私、先生にお歳暮送らなくちゃ。
森田:私も送らなくっちゃ(笑)。原田さんにも送っておこう。
原田:みんなに送ろう(笑)。
下園:そういう僕自身は、お歳暮とか年賀状とかやらないタイプなんだけど(笑)。
(一同笑)
原田:私も年賀状やらないタイプ。ダメですね。
下園:いずれにしてもコミュニケーションとか、お歳暮とか年賀状に変わるいろんな交流があれば、当然力にはなっていくので、現代風の交流のチャンネルを、相談ができるチャンネルを持っていただくといいかなと思いますね。
森田:なるほど。コミュニケーションに疲れる、勉強しているけど疲れるというのは、もう自分で勉強して解決しようとしないということですね。自分で解決しようとしないというか。
下園:そこのテーマに行くと俺がまた語るよ。
(一同笑)
下園:ぜんぜん質問にいかないじゃんね。
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