2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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白戸翔氏(以下、白戸):ここで、はるさんにご質問が来ています。「自分のやりたいことが多くて、子どもとの時間が減ってしまう罪悪感が消えません。やりたいことはやりたい。でも子どもにも時間をかけたい。そのへんのバランスはどう取っているのでしょうか?」というご質問です。どうでしょう?
尾石晴氏(以下、尾石):このご質問よくいただきます。そもそも論として「1日24時間しかない中で『子どもと自分のやりたいこと』『仕事』『家事」のすべてを100パーセント満足いくまでやるのは、けっこう難しい」と思ったほうがよいです。
じゃあどうするか? というと、私はやっぱり「トレードオフ思考」が大事だと思っています。何かを得るには、何かを差し出さなきゃいけないわけですよね。
「子どもとの時間がすごく大事で優先度が高い」って思うなら、自分の時間は差し出さなきゃいけない。「いや、自分の時間も欲しい」って思うなら、その分、絶対に何かの時間を減らさなきゃいけないですよね。それが「子どもとの時間」かもしれないし「家事の時間」「仕事の時間」かもしれません。
私の世代って、両方を欲しがる人が多いんですよ。たぶん優等生思考なんだと思うんですが。「完璧にできることが偉い!」って、周りから思われている世代なんですよね。「子育ても完璧、家事も完璧、仕事もして、妻としても完璧」という。
今、育休中に勉強するブームがありますけど、私はあまり賛成しないんです。「MBAを取ったら偉い」とか「子ども連れて留学したら偉い」という風潮は、私はよくないと思っています。それは、やりたい人がやれば良いのであって、わざわざ(育休中の人が)そこに合わせることはないと思います。
要は、24時間しかない中で、優先度をきちんとつければ覚悟が決まると思うんですよね。自分の中で何を優先すべきかよくわかっていないから、子どもと遊んでいる時は「自分のやりたいことができなかった」と感じるし、自分がやりたいことばかりやっていると「子どもとの時間が減っているな」と変な罪悪感を覚えてしまう。
「トレードオフ思考」と「優先度づけ」をしたら、そこは覚悟を決めて、仕事する、遊ぶ、のが良いと思います。
尾石:どうですか? 若宮さん。
若宮和男氏(以下、若宮):本当にそうだと思って。時間術に関して、はるさんの本『やめる時間術 24時間を自由に使えないすべての人へ』の冒頭にあるとおり「時間がない生活は自分がない生活」だと思うんですよね。
共働きで子持ちの30~40代は、自分のために使う時間が1分もない人が多数います。さっきのMBAの話も、いろんなことにチャレンジしたり、学んだりすること自体はすばらしいと思うんですけど。やることがいっぱい積み重なった時って、自分がどんどん減っていく、自分の隙間がなくなるみたいな感覚になりますよね。
僕も今は「アート思考」とかやっていますけど、10年ぐらい前は大企業で出世レースの中にいて、いっぱいいっぱいでした。最近よくそういう状態を「過呼吸」と読んでるんですがが「もっともっと!」と息を吸おうとすると、過呼吸になって呼吸が浅くなる。1回フーッてめちゃくちゃ吐かないと深呼吸できないみたいなことですよね。
特に今は情報も多くて、周りのことばかりで自分がなくなっちゃう。さっきちょっとご紹介した「LetterMe(レターミー)」は、弊社の「Your」から西村(静香)さんという方が立ち上げたサービスで、来月の自分宛に自分が手紙を書くというものなんです。
翌月それを受け取って、また来月の自分に手紙を書く。これをやっているユーザーさんから一番いただく声は、「(それまで)失われていた自分を大事にする時間ができてきた」なんです。
さっきはるさんもおっしゃっていましたが、優先順位なんですよね。本当はそこまで必要じゃないことでも、目の前にあると「やんなきゃ」思考になってしまう。それを手紙に書いて1回体から離すことで、本当にやりたいことかどうか? の取捨選択ができるようになる。これはあると思います。僕もわりと手放すのが苦手だったんですけど。
尾石:本当ですか、そう見えないです(笑)。
若宮:大企業時代は強制的にあれもこれもやって、プロジェクトがバーンと空中分解してしまったこともあって。「これは変えていかないと」「もうこれじゃ無理だな」と思って、マネジメントや自分の働き方を変えたんです。
1回引き算するとか、手放す(ことが大事)。はるさんのメソッドを参考にして、すごく楽になった方がたくさんいると思います。しかも「本当はこれをやりたかった」って、自分にもう1回出会い直せるんですよね。とはいえ、手放すのは怖いので、全部持ったままの方が多い。そのせいで、実はグッて窮屈になっていると思うんです。
若宮:はるさんご自身はどういうきっかけで、引き算したり手放したりできるようになったんですか?
尾石:私は、ものすごく欲張りな会社員だったんですよ(笑)。「あれもこれもやって、評価も欲しい、自分の希望のポジションも欲しい、給与も昇進も欲しい」みたいな。外部でも勉強したり、あれこれと欲張りな会社員だったんです。
しかし子どもを産んだら、今までは自分のコントロール下にあったものが、どんどんコントロールできなくなっていくんです。やれていたことがやれなくなると「自分がダメだからできないんだ」「私の効率が悪いんだ」と(自分を責めて)。
それが続くとどうなるかというと、最終的に、本来は夫婦で分担するべきことを「やっていない、手伝わない夫が悪い」って思うようになるんです(笑)。「あの人は好きなように仕事をしているのに、なんで私ばっかりこんな目にあうんだ」と。いや、子どもはかわいいんですよ。でもそのひっかかりに、ずっと家ではイライラしてしまったり、不機嫌であったり。さらに仕事でもそれなりのパフォーマンスを出さなきゃいけないという。
育休が明けて半年ぐらいそんな会社員生活を送っていたら、夫から「なんでそんなに毎日不機嫌なのか?」って聞かれました。私は「全部お前のせいだ!」って思っているんです(笑)。でも、ふと気づいたんですよね。じゃあ(夫に)「お前のせいだ」と言って、仮に夫が仕事を辞めて家に入ったとする。それで幸せになれるのか? というと、たぶんなれないだろうなって。
その時に、私はいろんなものを全部欲しがっているけど、とりあえず何かを捨てたり、優先度をつけたりしなくてはと思いました。つまり「1~10番まで(優先順位を)つけたら、私の24時間では1~6までしかできない。だから、7以降は人に渡すか捨てるかしないといけないんだ」と気づきました。
そこから半年間やってみて、ダメだったら会社を辞めようと思いました。優先度をつけて、仕事を捨てたり、子育てのこだわりを捨てたり、あと夫への「お前が全部悪いんだ」って気持ちを捨てたり。ちょっとずつ捨てていって、気づいたら半年後には「ああ、仕事を辞めなくてよかった」という気持ちで会社に行っていました。
まあ人間追い込まれて「もう持てない」って思ったら捨てるんだなっていうことが、よくわかりました(笑)。
尾石:若宮さんも大企業に勤められていた時、いろんなものを持っていらっしゃったと思うんです。それをちょっとずつじゃなくて、わりと豪快に捨てられて、大きくキャリアチェンジをされているように私からは見えるんですが、それはどういうきっかけだったんですか?
若宮:いやもう本当、大事故みたいな感じになってというか(笑)。さっきキャリアのところでも話したんですけど、建築を学んだり、アートの研究をしたりして、修士(を取得してから)、NTTドコモに新卒枠で入ったんですね。
「新入社員です!」っていう時に、もう30歳だったんですよ。「ぜんぜんフレッシュじゃねえな」みたいな(笑)。これはもう爆速で出世しないと、年かさなだけだと思って、すごく汲々(きゅうきゅう)としてやっていてですね。
さっきのはるさんの「夫さんに不満が出てきてしまう状態」とけっこう似ていて。自分は爆速で効率よく、PDCAの「P」に合わせてやっていきたくて。「こうやるんだ」「これが正解だ」って思い込んでいました。だからチームで仕事をしている時は、他の人が全員“劣化コピー”というか、マイナス(要素に見えて)。
「これが俺が思うとおりいってないのは、お前がちゃんとやらないからだ」みたいな。もうクソですよね。そういうマインドになってしまって。結局それって、自分が我慢していて余裕がないから(他の人に責任)転嫁してしまうんですよね。
出世レースをやったことがある方はわかると思うんですが、途中から減点方式になっていくんですよね。「失敗したらこの出世レースから外れてしまう」と。
別に外れたとしても、さっきの轍の話のように、いくらでも走るところはあるわけなんですが、「ここから外れたら終わりだ」みたいな感覚にだんだんなってきて。僕はプロジェクトのリーダーだったんですけど、チームの人たちはそんな人と一緒にやりたいわけないですよね。
それでボワーンと空中分解して、もうメンタル(崩壊)の一歩手前になって。「会社行きたくないよ」って2日ぐらい無断欠勤をしてしまったり。
尾石:まさに、さっきおっしゃっていた「自分と他分」の「他分の枠」に、気づいたらどんどん(入っていた)。人間って自分のことをすごく過信しているので「私はそんなことにハマらないわ」とか「私は他人のものさしなんて使ってないわ」って思っている。私もそうですけど、そういう方が多いと思うんですよね。
いざ余裕がどんどんなくなっていくと、気づいたら他分の型にはめられている。それって大いにあるんじゃないかな。
若宮:ニーチェが「脱皮しない蛇は死ぬ」っていう言葉を残しているんです。その感覚、すごくわかるなと。他分って、外から押し付けられたものだけじゃなくて、自分の1回できた型が、角質みたいに殻になって(他分化する)こともけっこうあって。
さっきの轍にしても、最初はないわけじゃないですか。そこでの成功体験があるから、再現性と言って何回も通るようになる。そのうち、自分が見つけたはずのやり方だったのにそこから抜け出せなくなったりもする。
過去の自分まで他分化してしまうのを、どう乗り越えるか、どう脱皮するのか? 難しいですよね。そういう意味で、アート思考の根っこには、動的に変化していく感じがある。
他の人だけじゃなくて「自分が決めたルール」にとらわれて、かなり苦しくなっているのに、ずっと続けてしまう。当時の自分にとってはすごく大事だったけれども、今時点ではそうじゃないことってあると思います。
意外と自分も他分化してしまうことがけっこうあって。今の日本社会で起こっている「オジサン的問題」っていうのも(そうだと思います)。みんなが最初からオジサンだったわけじゃないので。(昔は)フレッシュにものごとを考えて、それによって経済を成長させてきたと思うんですね。
(過去の自分が)殻になっていることに気づくのがまず難しいし、それを剥ぐのも痛みをともなうし、勇気がいることだと思います。
尾石:慣性の法則ですよね。進み始めるまでは良いんだけど、それを横から止めるのってすごくエネルギーがいりますから。「もうこのまま乗っとくか」となりがちだなって思いました(笑)。
若宮:本当そうなんですよね。「やめる選択」って(力を使う)。慣性の話でいうと、等速直線運動をしているのは、物理的には止まっているのと同じなんです。加速度が0の状態だから、実は力を発揮していないんですね。さらに加速するか、止まるかする時のほうが加速度が生じて、力を使うんですけど。
だからスーッと動いていると、動いている気がしちゃう。物でも人間でも慣性とか、もっと言うと「惰性」がそうだと思うんですけど。
尾石:逆に子育てをしてると「慣性の法則」がなかなかなくて、日々変化があります。子どもってエネルギーが3ヶ月前とは違うし、日々いろいろ移り変わっていく。毎日脱皮しているようなものですよね。親側がその脱皮にうまくついていけなくて、その変化を楽しめてなかったり。こっちの余裕がなくて、変化をうまく受け入れられてないなって思う時があるんですよね。
例えば、さっきの「自分の時間」の話もですが、やめるもの・捨てるものを決めないと、もう全然余裕がない。もうビチビチにいろいろ詰まっている時に、子どもが伸び盛りでギャーギャーしていると、すごく疲れてしまう。遊んであげたいのに、遊ぶ余裕が親の方にない。
私は「子育ては親育て」だと思っているんです。親側の余白の作り方と、子どもが持っている余白を、お互い観察し合うと、良い相乗効果というか、良いエネルギーが生まれるって思うんですよね。
若宮:いやあ、すばらしいですね。本当、難しいです。僕もこんなアート思考だとか言っていますが、今これを隣の部屋で見ている子どもたちに「お前が言うな」って刺されそうな感じですけど(笑)。
僕は今、けっこう家にいるので、子どもに勉強を教えたり、一緒に何かを考える時に「じゃあワークショップをやろうか」と言うんです。僕らめちゃくちゃ「お家ワークショップ」やっていると思うんですけど。
でも急いでいる時、例えば3時からテレビ会議がある、ミーティングがあるとなると、(ワークショップの)途中から、思ったところに着地しないとイライラしてきちゃって。「もうさ!」となって、楽しめなくなったりして。
勉強でもそうなんですが「お前たちはわかってない」とか、結局は「親が言うことが正しい」っていう方向にもっていっちゃったり。その度にものすごく反省するんですけど。
親と子の余白を観察して、お互いに楽しみ合いながら、親も「初の親」として成長するプロセスを楽しめると良いなと思いつつ。時々ハマりますね。やっぱり焦ってる時にハマるのかな。
尾石:親側の大きな問題って、余白だと思うんですよね。その「3時に会議」っていう縛りがなければ、若宮さんももっとお子さんと付き合えると思うし。私も「この時間に家を出なきゃいけない」っていうのがなければ大丈夫なんです。あと「早く寝かせなきゃいけない」とか「宿題を先にさせなきゃいけない」とか。
わりと柔軟な考えであったとしても「こうしなきゃいけない」みたいに、親の変な責任を勝手にセットしていることが、私はけっこうあるんです。「私の都合で子どもを動かそうとしているな」ってちゃんと気づいて、ペリッと皮を剥がすように今努力してるんですよね(笑)。
白戸:質問が入っていまして。今の話に通じると思うんですが「どうしたらお互いの余白を見つけることができますか?」ということで。何かコツがあれば、お二人のご意見をお聞かせください。
尾石:お互いっていうのは、子どもと親っていう意味ですか?
白戸:そういう意味だと思います。
尾石:私は結果的に働き方を変えました。会社員を卒業して、現在は、朝5時半からオンラインヨガのレッスンをして、昼はスタジオレッスンや原稿書きなどしているので、夕方の4時ぐらいには仕事を終えるようにしています。まあ時間的には、けっこう働いていると思うんですけど(笑)。
私は働き方を強制的に変えてしまったので、4時までに終わらなかったら子どもが寝た後に仕事を移動させることもできます。会社員だと無理でした。できるだけ子どもといる時に予定を入れないことを、余白作りとして気をつけています。
あと、子どもにあんまり習いごとをさせていないんですよね。私はボーッとする時間が大事だと思っていて。うちの息子は、帰宅後にボーとしながらLaQ(ブロック玩具)を1時間や2時間も組み立てたり、4コマ漫画を延々とA4の紙に描いたりしてます。
そういう経験って大人になるとできないじゃないですか。ついスマホ見ちゃうとか、つい予定入れちゃうとかで。際限なく没頭するということを、幼少期の5~6歳から小学校3~4年生ぐらいまで(に経験してもらいたいんです)。
私自身も、親が共働きで忙しかったので、放っておかれた部分もけっこうあったんです。その幼少時に何度も読んだ本や、同じことを何回もやったことが、けっこう染み込んでいるなと思っていて。その(ボーッとする)時間を意識的に作るようにしています。
習いごとを入れないことで、子ども側としては(ボーッとする時間ができる)。親としても、習いごとの送迎がなくて、遠い所にはあまり行かないから、自分の時間が確保できるんです。
尾石:若宮さんは何かされていますか?
若宮:僕も(やっていることが)2つぐらいあるかな。1つは、さっきのはるさんの話にも通じるんですけど、結局その余白のタイミングが(親と子で)合わない時もあるし、ずっと余白状態でいるのも無理なんですよね。
やってみると、自分の余白時間じゃないのに、牛乳がバシャーンとこぼれているとか謎の緊急案件があったりで、わちゃわちゃしがちだったり。
うちの会社は基本「出社という概念」がないので、もともとリモートワークなんですけど。子どもも今、緊急事態宣言で半分は学校に行かないで家にいたりする。そんな時、親も子も「自分の時間」を確保して。「そこは話しかけない。邪魔をししない」と明確にする。それ以外は、お互い干渉しても、話しかけても良いことにする。
親も子も「ここは絶対ダメ」っていう時間はあると思います。それをキツキツで決めるよりは、1日の予定として最初にシェアする。お互い「この時間とこの時間は干渉しない」と決めて、他はオッケーとか、メリハリをつけるのが1つ。
あと最近やっているもう1つ。余白って時間的なことだけじゃなくて、価値観の余白もあると思うんです。最近、心がけているのが「子どもと同じことを一生懸命やってみる」こと。親って、子どもには「なんかしなさい」と言うのに、自分はやらないってことがよくあるじゃないですか。
そうすると、僕がおかしくなった時みたいに、子どもをマイナスで見るようになるんです。うちの娘は小説を書くのが好きなんですが、僕が内容についてコメントすると「お父さんは小説書いてないのに」って言うんですよ。だから「お父さんも書くよ!」って言って、僕も小説書き始めました。
それでお互いに交換して読んで「どこが良かった?」「感想は?」と聞くと「『すごくつまんない』ってほどでもないよ」と娘が(笑)。その婉曲表現なに? とか思ったりするんですけど。
自分もやってみると、思いどおりいかないことも含めて(理解できる)。僕は、うちの会社が複業を推奨した時も「自分も複業をする」というルールを課して、複業をマネジメントしたんです。それと似ていて。自分もそこをストラグル(葛藤)していると、相手への、有り体に言うと尊敬であったり、それぞれの価値観の余白みたいなものが受け入れられると思いますね。
尾石:すごく素敵です。時間割、逆の発想が良いですね。さっきおっしゃっていた「ここはお互い、話しかけない時間にしよう」って(決めることは)、けっこう大事だと思います。大人は、その時間にやりたいことができるし、子どもだって話しかけて欲しくない時間って絶対あると思うんですよね。
そもそも、親って話しかけられたら絶対に反応しなきゃいけないと思っているけど、(そうでもないのかも)。子ども側もそうですけど。そういう(お互い話しかけない時間を)設けるって、逆の発想で良いですね。
あと、親も一緒に小説を書くのも良いなって思いました。私は逆で、よく「お母さんはできないから、ちょっとやって見せて」みたいに「教えて」ということが多いんです。私も(子どもがやっていることを)一緒にやって、どのぐらい子どものほうができるかっていうのを、味わってみたいと思います(笑)。
若宮:僕、今は本(『ぐんぐん正解がわからなくなる! アート思考ドリル』、『ハウ・トゥ アート・シンキング 閉塞感を打ち破る自分起点の思考法』)を出しているし、こういうビジネス分野の実務的なことは得意ですぐ書けるんですが、フィクションを書く才能がまったくないんですよ。もう何回書いてもすげぇつまらないから、何にもなっていないのに、5年前ぐらいに筆を折ったんです。
「もうフィクションはやめた」って言っていたんですけど、でもやっぱり書いてみようって(笑)。相変わらずおもしろくないわけなんですが、「それもそれだな」というね。
実は去年、まさにコロナがあって、子どもも全然学校に行けなくなって両方(が家にいる状態)になった時に、リモートワークにすごく慣れていたはずなのに家の中がギスギスしはじめたんですよ。
尾石:ちょっとそわそわしますよね。「普段はいない人がいる」ことに(笑)。
若宮:子どもは子どもで、親側の“間”がわからないから「いつ話しかけても怒られる」と思っちゃうんですね。こっちはこっちで「いやいや、そんなずっと不機嫌でいるわけでもないのに」と思うんだけど、自分のタイミングってわからないじゃないですか。
そこで、はたと気がついたのが「余白って白紙とは違う」ということ。図があるからこそ、余白がはっきりわかる。きちんと決めておくものがあれば、他の時間は余白なんですけど、その前にやっていた「全部自由です」みたいなものは、余白じゃなくて白紙なんだと。
それで、(自由な白紙のはずなのに、子どもから)ピンポイントに「じゃあここは?」と聞かれると、「今はだめ!」と押し返していたので。余白を作るためには実はちゃんとタスクの時間(を設定することが大切で)、はっきり線引きすることで余白がやっとできるのかなと思いました。
尾石:お互いの余白を見える化しておく、ということですね。
若宮:そうですね。
尾石:聞いている方は「これは幼児だと難しいんじゃないか」と思われたかもしれません。私は、子どもが小さい頃に「砂時計」を使っていたんです。(育児をしていると)もうどうしても手が離せない時ってあるじゃないですか。洗い物中で手がびしょびしょだとか「ねーねー」「え、今!?」みたいな時(笑)。その時によく砂時計をぽんと置いてました
「これ(砂)が落ちきったらお母さんは聞くからね」というのをやっていたんですよね。そうすると、子どもはその視覚情報で「あ、これが落ちたら話せるんだ」と理解できるようで。お子さんがまだ幼児で線を引くのが難しいならば、物理的に見えるもので心を落ち着かせてあげて、お互いに余白を確認するのも良いですね。
若宮:すごい。それは良いですね。
白戸:それって何歳ぐらいですか?
尾石:(子どもが)2歳頃には砂時計を使っていたと思います。2~4歳くらいはまだ文字も読めないし、時間の概念がすごく薄いんですよね。彼らは「今」を生きている。みんな「今ここボーイ」と「今ここガール」だから(笑)。だから砂時計、けっこう使っていたのを思い出しました。
お互いに余白を共有し合うのに3分の砂時計。3分の余裕があれば、親もトイレとか行けますもんね。なかなかトイレに行けないから(笑)。
若宮:パツパツになっている荷物をおろしていく時に、砂時計を使うのが良いですよね。軽やかになるための仕組みを作るのがすごくうまい。思いつくのがすごい(笑)。
尾石:いえいえ。私は片付けの資格(ライフオーガナイザー)を持っているんです。モノの片付けって結局、心の片付けと一緒なんですよね。心が片付いていない人は、何が大事かの優先度が決められないし、不安なのでどんどん、モノを溜めてしまうし、捨てられない、という状況になるので。片付けについてしっかり学んだのが、1つの要因です。
あと、私はヨガをずっとやっているのも大きいです。ヨガって、やっぱり「足るを知る精神」をすごく植え付けてくれるんです(笑)。それによって思考の整理がうまくなったと思っています。
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