2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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鎌田英治氏(以下、鎌田):さて、お三方それぞれの質感がある不動心の話でした。ここからまた戻りまして、いかにしてそのご自身なりに考えている不動心を育んでいくのか。howの話に入りたいと思います。
石橋さん、先ほども入りましたが、自分の本質を見いだす、あるいはそれを確認し続けることに対して、どんな行いをやってきましたか。
石橋義氏(以下、石橋):知命社中の最後の振り返りのレポートを、昨日の夜にまたちょっと見返したんですよ(笑)。そこには、「自分の軸はいったん定めたけれど、これは常に見直していかなければならない」「いろいろな人、経営者の方、さまざまな知見を持っておられる方と出会ってお話しをすることによって、それを確認していく」みたいなことが書いてあったんですね。
それを今、日々実行しているかというと……一度定めたところからは、なかなか簡単に動くものでもないと思いますが、その確認はまた改めてしていかなきゃいけないな、と思っていますね。
鎌田:自己内対話と、常にそれを晒しながらチャレンジする感じでしょうか。
石橋:そうですね。あとは自分の軸に従って、以前にいろいろ学んだ、自分の理念・使命・ミッションみたいなものを話す。これは知命社中の中で言語化をして、社長就任したときに社員全員の前でやったんです。
その後、個別に8人から10人ぐらいずつ集めてグループ討議みたいにして、まず話すというか、対話会にするんです。みんなに1回話を振って、そこで自分の思いを語るようなことも繰り返しやっています。
それをもうかれこれ5ヶ月くらいやっていて、自分で話して、その反応が返ってくる中でまたそれを確認していく、みたいなこともやっています。そうすると「自分は本当にそう思っているか?」ということも確かめられるし、それが伝わるんですね。
鎌田:キーワードは明瞭な言語化と、それをパブリックコミットというか、外に出すことで自己内対話(になること)。そういうことなんでしょうか。
石橋:そうですね。
鎌田:なるほど。じゃあ愼さん、お願いできますか。
田中愼一氏(以下、田中愼):今、「自己内対話」「言語化」という言葉がありましたね。これはすごく重要なポイントだと思っています。先ほど言った3つの心の働きはどうやって得られるのかについて、日々苦労している話をしますと、1つはやはり、コミュニケーションは呼吸みたいなものだと思うんです。
呼吸を意識すると、基本的に健康になります。実はコミュニケーションも同じで、コミュニケーションを意識すると、人間は元気になるんですよ。これはどういうことかというと、コミュニケーションは単に発信だけじゃなく、3つの機能の連鎖なんですね。
「受信する・発想する・行動する」。行動は発信と置き換えてもいいですが、いずれにしても「受信・発想・発信」です。この連鎖をどれくらい回せるか、ここを意識できるかどうかによって、人間は元気になるんですよ。
重要なのは、すべてを決める受信のところです。なにを受信したか・なにを認識したか・なにを考えたか・どういうことをイメージしたかが、即発想につながります。そして発想したものが行動につながる。つまり発信につながるわけです。
基本的にこの一連の連鎖は、今まさに鎌田さんがおっしゃったように、外との関係性を構築します。一方、自分の内側の1つの意識、さらには無意識の世界に近いところ、生きてきた中で自分自身が培ってきたストック……ビッグデータみたいものですよね。そこに対して影響を与えるんです。
そのためには、この3つのプロセスを回して、発信のときは言語化して口に出すことがすごく重要です。口に出すことによって、自分以外の人にもメッセージが伝わるけれど、一方で口に出すときは、自分に対しても訴えかけているんですね。
よく家庭教師が子どもに教えていると、教えれば教えるほど自分の頭の中が整理されることがあります。あれは結局自分で言葉に出すことによって、自分とも対話しているわけです。
だからコミュニケーションは、相手との対話と同時に、自分との対話をすることがものすごく重要です。とくに先ほど言った心の働きを得るためには、自分との対話が基本になります。
今、日々やっていることは、例えば最初に誰と対話をするかが重要なので、そこで慣らし運転をやるんですよ。家ではなるべく左脳を動かさないようにしていますが、会社に行ったときには誰と対話するかを選んでいます。
「今日はあいつと対話しよう」と決めて、そこで慣らし運転をする。こうすることで相手に対してメッセージを出すと同時に自分自身に対しても思い込みを作るというか、自分の心の働き方に影響を与える。これは必ずやっています。必ず1人にはやったほうがいい。
でも、その時々でどうしても会話が成り立たない相手もいますから、それは外さないといけない(笑)。
(会場笑)
ある程度相手は選んでください。もちろん(面と向かって)そんなことは言いませんよ。ということをやっています。
田中愼:それからもう1つは、朝起きて2時間くらいは、左脳をなるべく働かせないようにしています。要するに、テレビやメールを一切見ない(笑)。
そのときは右脳を中心にやっていきます。例えば、体を動かす・声を出す・イメージする、この3つを一緒にしたルーティーンを作ってそれを回すと、左脳を働かせられないんですね。
これにどんな効用があるかというと、経験上ですが、寝ている間は人間の無意識がけっこう働いてくれているんです。僕の表現で言うと、これは無意識との対話です。無意識は、寝ている間にずっと働いてくれています。朝起きてから1、2時間ぐらいは、そこで得た物がダウンロードされるタイミングだと感じています。
それはなぜかというと、シャワーを浴びているときに(アイデアが)スポーンと降りてくることがありますよね。悩んでいたことに対して突然イメージが湧いてきて、「こうだ!」という。僕の場合、これは朝起きてからの2時間で起こるんですよ。
だから降りてきたものは全部メモしておきます。降りてきたものはすぐに消えますから、気づきがきたら即、メモに取っていく。
これは犬の散歩でもけっこうですし、声を出すこと、呼吸法など、やり方はいろいろあります。僕なりのルーティーンを作って、だいたい1時間半くらいのルーティーンでこなしていますね。
もう1つは、「自分のストーリーを持つ」ことがすごく重要です。人に語るためではなく、自分に言い聞かせるためにストーリーはあるんです。とくに自分の心はものすごく不安定なものなので、毎日自分の心に対して言い聞かせるような(ストーリーが必要です)。
これはルーティーンの中にも取り入れていますが、常に自分でストーリーを作る。ストーリーは「先を見据えて・自分の過去を意味付けて・今を語る(行動する)」という3つの要素からできています。だから、未来から始まって、過去にとんで、現在になるんですね。
どういうことかいうと、未来は先ほど言った信念や使命感、そういうものがすごく重要になります。そこに対して「そうだな」と思う気持ちはすごく大切です。
過去にはどんな意味があるかというと、過去の事実を変えることはできませんが、過去の意味付けは変えられるんです。人間はその意味付けだけで元気になるんですよ。だから毎日、自分の過去を意味付けして、今を元気にし、今を行動し、語っていく。寝ているときは別ですが、起きているときは絶えずこれをやります。
そして、自分のストーリーを進化させていくことが重要なんです。その時々に出てくる場面がありますよね。みなさんは毎日、いろんな場面に遭遇しているわけです。その場面を自分のストーリーの中で「これにはどういう意味があるんだ」と考える。
例えば先ほど利典さんが、「隣の人がマイクを持って質問した」「自分が質問しなきゃいけないんじゃないか」というお話をされましたよね。そんなふうに、1つの経験や事象が自分にとってどういう意味があるのかを追求していくんです。
経営をしている場合は、ずっとそういう場面ばかりなんですよ。その場面が自分にとって、あるいは自分のストーリーにとってどういう意味があるのかを一生懸命意識しながら、自分のストーリーを肉付けしていく。そういうプロセスをやっていると、僕自身は元気になるんですね。
鎌田:いろんなキーワードが浮かびましたが、1つはクリエイティブルーティーンですよね。松井(秀喜)にしろ、イチローにしろ、一流の人たちは求道者のように、自分のルーティーンを1つ決めている。そして、その中で練度を上げていく。
あとはコンセントレーションですね。身体知みたいなものにもすごくこだわっておられる。先ほど僕は「心の働きは自覚的ではないか?」という問いをしましたが、クリエイティブルーティーンで練られた心はしかるべき反応をするのだなと感じました。
それと同時に利典さん、たぶん修験道の世界もそれに近いのかなと思います。ぜひ利典さんなりに、今のような話の中でhowの話について、なにかアドバイスをいただければと思います。
田中利典氏(以下、田中利):僕はすごく時間が気になる人でね。あと3分ぐらいしかないんですよね(笑)。
(会場笑)
今日、僕は2つのことを言いに来たのですが、今の質問について語るとそれを語れないので、ちょっとだけ今の話を受けて語ります。今は情報が溢れていますが、情報は血肉にはならないんです。情報が血肉になるのは、それがストーリーになったときです。
今、ストーリーの話をなさいましたが、物語は自分の血肉になっていきます。情報は流れるものですから、自分の中で情報を物語にしていくことは大事ですね。今はそういうことをおっしゃったと思うんです。
今日、私がここで言おうとしたことは、1つはみなさんのお話とも重なりますが、人生の本質は「つながり」にあるんです。夫婦は、奥さんと旦那というつながりが、夫婦という本質を作るわけです。親子もそうで、本質はつながりです。夫婦という本質も、親子という本質も、実は定かではなくて、人間は全部つながりのほうにこそ、本質があるんです。個々のことに本質はないんです。
つながる中に本質があることを知っておく。いろんな場面でいろんなことが起きたときに、それを心に留めておいていただくと、いろんなことに対応ができるのではないか。
人間は、ついつい「これに本質がある」と思ってしまいます。そうすると結局、固執してしまう。仏教では「妄執」とか言います。
「空(くう)」も、実はつながりなんですよ。それぞれに本質はなくて、つながりの中に本質がある。それは犬や猫にはわからないかもしれませんが、人間はそうやって生きている。人生の本質はつながりにある。今日はこの話を1つしたいなと思って来たんです。
田中利:もう1つは、これだけ爆裂的に世の中が変わって、私たちの価値観が産業革命以降、近代を迎える以前のものと、随分変わりました。その近代以前の価値観を持っているものは少ないですが、実は宗教は近代以前の価値観を守っていて、未だに宗教は近代以前の価値観で生きているんです。
どういう価値観かというと、宗教の世界では指南書の1つとして、親鸞聖人の『教行信証』という表題の本があるんですよ。ところが、これは浄土真宗だけの教えではなくて、宗教は全部「教行信証」なんです。教えがあって、行いがあって、信があって、証明されるという世界なんです。
今の社会は違います。「教行証信」なんです。仮説があって、実験をして、証明されないと信じないのが、今の社会の価値観なんです。でも、よく考えると、この世の中で証明されたことは、わずかなんですよ。
「証明されていないことを信じるのは馬鹿じゃないか」と言うけれど、万象の中でわずかしか証明されていないことしか信じないほうが、よっぽど馬鹿だと思うんです。
リーダーは信念を持たなければいけない、というお話があると思います。それはそうなんです。誰でもすることを、80パーセントの人が信じてからやったのでは、もう遅い。10パーセント、20パーセントのときに、「自分はこうだ」と、0パーセントのときに自分が「こうだ」と思う信念を持ってやることが大事です。
ですが、これは「教行証信」では実現しにくいです。これだけ世の中が変わっていても、人間がやることはさほど変わりません。誰かにについていく人たちの考えなら「教行証信」の世界の価値観でかまいません。
しかし、世の中をリーダーとして生き抜いていく。そういう人たちは、どこかで「教行信証」の世界を持っておいたほうがいいのではないか。今日はこの2つを考えてきたので、それだけはお話しさせていただきます。
鎌田:「つながり」と「教行信証」。非常にわかりやすいですよね。みなさんの表情がだんだん仏のように見えてまいりました。
(会場笑)
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