2024.10.10
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『脳神経外科医が教える 一生疲れない人の「脳」の休め方』(実務教育出版)刊行記念 「寝ても疲れの抜けないアナタへ。今年こそ「脳内休息革命」で人生を変えましょう!」(全6記事)
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小谷俊介氏(以下、小谷):本日は、『一生疲れない人の「脳」の休め方』という、なかなかすごいタイトルなんですけれども。こちらの本の発売記念ということで、私ども実務教育出版と紀伊國屋書店新宿本店さんとで、著者でいらっしゃる菅原道仁先生の講演会を共催させていただきます。
今回、アットホームな感じで進めたい、ということで。担当編集の私、小谷俊介と、本書の著者でいらっしゃる菅原道仁先生と、この本の執筆・取材でご協力いただいたライターの小松田久美さんの3人で座談会を行いつつ、参加者の方からの質問への回答を織りまぜながら進めさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
先ほどお配りした質問シートがあると思うんですけれども。後ほど、そちらにお書きいただいた身近な脳に関する疑問とかお悩みとか考えなどを取り上げて、先生に直接お答えいただきたいと思っています。めちゃめちゃ貴重な機会になると思いますので、ぜひ積極的に協力していただけるとありがたく思います。
ではさっそく、著者の菅原道仁先生とライターの小松田久美さんにお入りいただきたいと思います。拍手でお迎えください。
(会場拍手)
菅原道仁先生は患者にとって最高の人生をサポートする脳神経外科医として八王子の脳神経外科「菅原脳神経外科クリニック」を開院され、ほぼ3年になられます。それまでは、救急病院での勤務医として激務の中、いろいろな方々の手術などを不眠不休でやってこられました。
今も、若手の方々と一緒にそういった脳に関係する疾病の治療や、病気にならないための予防医療に従事されています。どういったことが脳の致命的な病気になるのかとか、そうならないような生活習慣を、根本から治療していくといった試みをなさっています。テレビだと、『スッキリ!』とか『PON!』とか『ホンマでっか!? TV』とか。『ホンマでっか!? TV』で先生をご覧になった方、いらっしゃいませんか?
みなさん、恥ずかしがって。
(会場笑)
ピンクのネクタイがすごく印象的でした。また、来月3月12日にTBSの『名医のTHE太鼓判!』という番組にドクターの1人として出られますので、ぜひ3月12日、テレビでまたお目にかかっていただければと思います。
小谷:また、菅原先生は本も数冊書かれていまして、ベストセラーも書かれている作家でもいらっしゃいます。今、取りざたされている脳に関して、こうして近くでプロフェッショナルにお話をうかがえるというのは、本当に貴重な機会だと思います。途中でもかまいませんので、ぜひバシバシ、ご質問などしていただければと思います。
隣にいらっしゃるのが、この本でライターとして先生の取材とご執筆を行っていただいた小松田久美さんです。この本以外にも10冊ほど編集協力で取材をしていらっしゃいます。ご自身でも今、本を企画・提案するという形で、新たなライターの形でお仕事をされていらっしゃる新進気鋭のライターさんです。ぜひお見知りおきください。
では、さっそく始めさせていただきます。(菅原氏に)まず最初に一言、ご挨拶をお願いいたします。
菅原道仁氏(以下、菅原):はじめまして。菅原です。今日はこんなにもたくさんの方に来ていただいて、すごく嬉しく思っております今日は「脳の休め方」とタイトルにはあるんですけれども、他にもみなさんにとって興味深い脳についてのお話ができればいいな、と思っています。
みなさん、八王子に行ったことあります? (都内なのに)本当に豪雪地帯なんです。
(会場笑)
菅原:この間の1月の時の雪は、本当にすごかったです。クリニックの前も10センチくらい積もって、けっこう大変だったんですけど。
この場所で2年半前に開業させていただいて、ずっとそこで働いておりまして、今に至ります。その前はずっと救急病院で働いていたので、くも膜下出血とか脳梗塞とか。まあいわゆる、みなさんがよく報道とかで目にする病気を治療したりしていました。
今は頭痛、めまい、物忘れの方を中心に。高齢の方から若い方まで、診察させてもらっているんですけども、そのなかで多い相談ごとは、ストレスに関係することです。やっぱりみんな忙しいんだな、疲れてるんだなというのをとても実感しています。
菅原:問診票ってみなさん病院で書くじゃないですか。実は、書いていただいた問診票を見ただけで、この人が認知症か認知症じゃないか、だいたいわかってしまいます。
コツをお話しすると、「自分が物忘れかもしれない」といって問診票を書いている人はたぶん認知症じゃないです。認知症として治療が必要な方というのは、家族に連れてこられているのに、「自分は大丈夫だ」と思っている人なんです。
なので病院で、「先生、私、自分が認知症なんじゃないかと心配なんです」というお話を聞くと、この人はたぶんストレスを抱えてるんだろうなと感じます。過度なストレスを抱えていて、物忘れと同じような、認知症みたいな症状が出る方が多いので。
今回、小谷さんから企画をいただいて、やはり疲れている人がたくさんいらっしゃるので、その人たちを少しでも救う一助になれば、ということで書かせていただきました。
小谷:はい。先ほど、「認知症」という言葉が出たので、ちょっと思い出したんですが。会社を出る前に、Yahoo!ニュースをちょっとクリックしたら、ちょうど認知症の記事がありまして。言葉の組み合わせのショッキングなやつで「スマホ認知症」という言葉が今増えている、という記事なんです。
その記事を読まれた方、いらっしゃいますか? 何なんですかね。「スマホ認知症」って。
菅原:私も、今日ここに来るまでの中央線の中でその記事を読んできました。ちょっと扇動的な造語ですね。スマホだけで認知症になるわけではない。だけど、先ほどお話ししたように物忘れを訴える方が増えているのは事実。みなさん「物忘れするんです」「記憶できないんです」と訴えてくるんですが、記憶ができないわけじゃないんです。「思い出せなくなっている」のが実際のところなんです。
小谷:忘れるのではなく、思い出せなくなっている。
菅原:だから、「あれあれあれ」なんです。
小谷:ああ、なるほど。
菅原:「ほら、あの人!」とか。テレビでタレントとかを見た時に、名前が出てこない。だけど本当に認知症で記憶できなければ、その人を2回目に見たとしても、実際記憶してないわけですから、「この人、知ってる」ということにすらならないはずなんです。
「あれあれ?」となっているということは、記憶はしているわけです。だけど思い出す力が足りてないという。
菅原:それはなぜかというと、私たち社会人というのは、残念、というか嬉しいことでもあるんですが、「試験がない」からなんです。
小谷・小松田久美氏(以下、小松田):ああ。
菅原:学生の時は定期試験があって、そして受験があってというように、節目節目でそういうことがあって、自然に「思い出す訓練」をしていたわけです。
小谷・小松田:はい。
菅原:「英単語100個覚えました!」と先生に訴えたって、思い出して書けなければ0点なんです。「昨日、すごく覚えたんです、覚えたんです」と言うんだけども、書けなければ0点。だからあのテストというのは、実は「思い出す力」をはかるテストだったんです。
小谷:ああ。記憶力じゃなくて、思い出す力。
菅原:そうです。
小谷:なるほど。
菅原:私たち社会人というのは、幸か不幸か「カンニングし放題」なんです。わからなかったらGoogleで検索をしたり、隣の人に聞いたりするわけです。そうすることによって、思い出す癖がだんだんなくなってきている。
小谷:ああ、なるほど。思い出すことって、確かに減っていますね。
小松田:なかなか、ないですね。
小谷:しないですよね。
菅原:みなさん、携帯電話を持ってない時代を思い出してください。友達とかの家の電話番号を、20件くらいは覚えていたと思うんです。あれは、電話で実際に手を動かしてかけていたからです。
小松田:はい。
菅原:つまり、思い出していたんですね。だけど今はもう、短縮されてしまって、スマホでだいだい2クリックすれば、かけられちゃう。だから最近の10代は、自分の携帯電話の電話番号を覚えていない人が多いそうです。なぜなら、自分にはかけないから。
小谷:そうかもしれない。
菅原:自分の電話番号を表示しながら履歴書に書いたりするそうです。ですから、思い出す癖をもっとつけた方がいいということで、「スマホ認知症」というセンセーショナル単語がニュースになっていたんでしょう。思い出すことが減っているということはつまり、アウトプットする機会が少なくなっているわけです。
情報だけがどんどん入ってくる。情報を入れること自体はすごく大事なんですが、情報を見て自分が理解して「ああ、なるほど」で終わっちゃうからダメなんです。それをアウトプットする癖をつければ、そういった「あれ」「それ」というのはだんだん減ってくるはずです。
そもそも僕は、そんな単純な記憶というのは、これからの世の中には不必要になってくるんじゃないかなと思っているので、僕はもう諦めています。調べればすむ話なので。
小松田:はい、確かに。
菅原:だから別に、英単語1つのスペルが「r」か「l」かなんて、本当はどうだっていいわけです。それよりも大事なのは、何かクリエイティブなことをしたり、楽しいことを考えたりする方。だから、脳の使い方が学生の時と社会人の時とはちょっと違うのかな、と僕は考えています。
小松田:はい。
小谷:ああ。そういう意味では、例えばTOEICとか英検とか、そういう試験を受けるために勉強するというのは、またこれは思い出す、試験場で思い出すという意味ではよいことですか?
菅原:それがその人の人生に役に立つならやればいい、ということです。だけど、大事なのは英単語を覚えることじゃなくて、外国人とコミュニケーションを取ることでしょ?
小松田:ああ、目的が大事なんですね。
小谷:英語で仕事をしたりとか。
菅原:英語で仕事をするからTOEICで800点とか何百点を取るというのを目標にするのはいいんですが、本当はその先を想定した方が続きます。
小松田:うーん。なるほど。
小谷:そうですよね、確かに。試験後に忘れちゃったら同じですもんね。
菅原:そう。だからみなさんも、「自分はちょっとしたことは忘れがちだけど、アイデアをひらめかせたら世界一」って思ったりすればいいんじゃないかなと思います。
小松田:はい。だから、物を覚えられないことをあまり悲観する必要はないと?
菅原:はい。まったく悲観することはありません。世の中には集合知があるわけですから。インターネットとかで調べればいい。ただそれを鵜呑みにするのではなくて、自分で正しく理解するかは大事です。
小松田:はい。
小谷:そういった意味では、ブログとかFacebookとかで理解した情報を咀嚼して発信するのはいいんじゃないでしょうかね。
菅原:ああ、そうですね。学生時代、勉強していた時にもあったと思いますけど、自分1人で黙々とやるよりは、人に教えたりしたほうが印象深く覚えられたりするじゃないですか。そういうのは、脳科学的にも理にかなっているんです。
小松田:ブログも、教える行為ですもんね、わかりやすく伝えるという。
菅原:そうですね。そこでわかりやすく自分なりに考えを表現するというのは、非常に有効だと思います。
小松田:わかりました。
小谷:私たちにとって大事なのは、記憶する力よりも思い出す力、ということですね。
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