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辛酸なめ子の「善行ビジネス講座」第2回 ゲスト平松昭子氏(全5記事)

ファッションブロガー平松昭子のN.Y.珍道中

漫画家・コラムニストの辛酸なめ子氏が「ビジネスにおける運気の高め方」を紹介する「善行ビジネス講座」。第2回である今回は、人気イラストレーターでファッションブロガーとしても活躍する平松昭子氏をゲストに招き、知られざるイラストレーターの仕事事情を語りました。「普段Webで見ることのできない写真」を元に語られるプライベートなエピソードや、辛酸氏ならではの切り口で迫る業界の裏側は必見です。本パートでは「ハイブランドの服を着ると運気が高まる」「買わなくてもその場にいるだけで、いいエネルギーが」など、辛酸氏独自の運気向上法が紹介される一方で、動画制作も行う平松氏の作品紹介や、フランツ・カフカの日記やメモを漫画化するという世界初の試みに際し、同氏が作品作りの中で意識したポイントなど、ビジネスの側面についても語られました。(第2回辛酸なめ子の「善行ビジネス講座」より)

kate spadeコンテスト受賞でニューヨークに

辛酸なめ子氏(以下、辛酸):ファッションブログをやっていらっしゃるんですよね?

平松昭子氏(以下、平松):はい。

辛酸:これが、そのkate spadeの?

(出典:平松昭子)(出典:平松昭子)

平松:そうです。これがkate spadeコンテストの2回目で。

辛酸:受賞した人とニューヨークに? 

平松:はい。1回目は20代の子が多かったんですけど、2回目は30代が多いんです。その理由は、1回目20代の子たちが本当にプレスの方の言うことを聞かないんですよ。月に確か2、3本は記事を上げなきゃいけないんですけど、平気で上げない人がいたりとか。

3ヵ月に1回バッグをいただけるんですが、バッグだけもらって全然記事書かない人がいたり。20代は元気すぎてケイト側も困っちゃったみたいで、2年目はもうちょっと大人のブロガーです。でも皆さん、かわいいですよね。

辛酸:かわいいですね。バッグは好きなものを選べるんですか? 

平松:選べないんですよ。ケイト側が選んでくれて、それを持って。ニューヨークのコレクション会場ではデザイナーのデボラさん(デボラ・ロイド氏)にお会いできて。

でも、このツアーも大変だったんですね。最初空港で、kate spadeさんのファッションの代理店の方がいろいろ仕切ってくださったんですけど、2、3年前はブロガーの地位が本当に低くて。

辛酸:そうだったんですか? 2、3年前のほうがブロガーの地位が高いような気がしてたんですけど、海外では違ったんですかね? 

平松:そうですか? 海外でも日本人の組織の中で動くと、もう全然。でもまあしょうがない。認知度が低かったのかなって思いました。

辛酸:そうですね。

20代のモデルもいつかは太る

平松:でもパーティーでは、スタイリストのブラッド・ゴレスキーと出会えてよかったです。

辛酸:その照明はすごくkate spadeっぽいですね。

(出典:平松昭子)

平松:ピンクでね。

辛酸:これは?

(出典:平松昭子)

平松:そう、これもすごくカッコいいモデルさんがいたので、私も片言の英語だったんですけど、話しかけて仲よくしてたら20代のブロガーちゃんたちが「平松さん、楽しそうね」って言って、取られちゃって。

辛酸:その人、取れたんですか?

平松:それで多分次の写真が、自分と年が合う方たちと仲よくね(笑)。

(出典:平松昭子)(出典:平松昭子)

辛酸:全然違いますね、格好が。

平松:そうなんです。40代は若い子とパーティーで、楽しんじゃいけなくて(笑)。でも、楽しい人たちですよ。彼らもきっと40歳になれば、ああやって大きくなりそうですよね。

辛酸:そうですね、すぐ太る傾向かもしれないですね。

(会場笑)

平松:そんな気がして(笑)。

ハイブランドのフロアでは、何も買わなくても運気が上がる?

平松:あと、これはkate spadeじゃないんですけど、DIANE VON FURSTENBERGのダイアンが来日するっていうので。

(出典:平松昭子)

平松:これは仕事じゃなくて、ダイアンを本当に何年も、ものすごい買って。

辛酸:ああ、そうなんですね。

平松:1回お客として呼んでもらえたパーティーでした。だからお客としてダイアンに会えて、(でも)仕事にはつながらない。お客はお客なんだなって、すごく身に染みました。「いくら服を買っても仕事にはつながらないんだ」っていうのが、このケイトと比べてわかったときでした。

辛酸:でも、こうハイブランドの服を着ると、何かやっぱり運気が高まるとか、そんな気もするんですけど。

平松:そうですよね。なめ子さん何かで、「ハイブランドのデパートとか、フロアはすごく運気が上がるようなスポットだ」って書かれていたような気がします。

辛酸:そうですね。買わないにしてもその場にいるだけで、何かすごくいいエネルギーが。

平松:何かキラキラしていますよね。

辛酸:はい。

平松:多分デザインもすごくよく考えられていて、やっぱりそこからコピーされたものは、どうしてもバランスが崩れていくので、やっぱりバランスの崩れたところは居心地がね、悪いですし、そういうことかなって。

「ファッション×イラスト」で新しいジャンルを開拓

平松:これが動画ですね。

(映像開始)

辛酸:平松さんは、動画も作れるというのが、やっぱりすごいですよね。

平松:ありがとうございます。

辛酸:すごくかわいいです。

平松:こういうアニメとか漫画とか動画も、バンドを一緒にやっていた知人が「ファッションアニメとかやったら?」と、いつも言ってくれて。それも大きいのかなって思います。

辛酸:ファッションアニメですか。

平松:ファッションアニメって、ありそうでないかなって。

辛酸:ソフトは、Macで作っていらっしゃるんですよね?

平松:はい、Macです。

(映像終了)

得意分野にフォーカスする生き方は潔い

(ケリー・ウェアスラー氏の紹介ページが表示される)

辛酸:こちら、私は知らなかったんですけれども、ケリーさんという……?

平松:ケリー・ウェアスラーっていう。

辛酸:すごいおしゃれなデザイナーですね。

平松:ホテルも(デザインしています)ね、はい。

辛酸:インテリアも、洋服もデザインされる方なんですか? 

平松:そうなんです。初めて知ったのが、マガジンハウスから『Casa BRUTUS(カーサ・ブルータス)』で。ホテルの特集があったんですけど、そこでこのケリー・ウェスラーが1ページぐらい出てて「え、この人誰?」と思って検索しても、あんまり当時は情報が出てこなかったんです。

ずーっと追いかけてたら、1人日本人で(追いかけている人がいて)。やっぱり追いかけている人は、いろんなところから写真を集めてブログにアップしていたんで、それを楽しみにしてて。今はもう彼女のWebサイトもいつも更新されているので、何でも情報が(入ってくる)。

辛酸:(これは)やっぱりご本人? 

平松:はい、本人ですね。

辛酸:すごいきれいですね。

平松:はい。多分年も同い年ぐらいなんですけど、彼女はファッションブランドも数年前に立ち上げているんですが、やっぱりファション界は厳しかったのか、私もニューヨークに行ったときお洋服を見つけて買ったんですけど、すぐ撤退しちゃって。インテリアだけにまた絞って。そういう生き方とか、潔いなとかね。

辛酸:インテリア、すごいすてきですけども。

平松:うん。お店も本当にすてきで、日本にもできてほしいんですけど、日本人にはちょっと高いの。

辛酸:それなりに、高そうですものね。

平松:うん、ちょっと高いかな。

辛酸:平松さんは本人に会ったことって?

平松:いえ、まだ会ってないんですが、いつか会えそうな気がするんです。だからそのために(勉強しようと)。kate spadeのデボラさんや、ダイアン・フォン・ファステンバーグに会ったときにほとんど英語がしゃべれなかったので、今日なめ子さんにいただいた『なめ単』って、皆さん持ってますか?

辛酸:全然。それでそんなに勉強になるかわからないですけど。

平松:どうですかね。

世界初の試みとしてカフカの日記を漫画化

辛酸:あと新刊、こちらを収めるということですよね。

(出典:飛鳥新社『マンガで読む 絶望名人カフカの人生論』)(出典:飛鳥新社『マンガで読む 絶望名人カフカの人生論』)(出典:飛鳥新社『マンガで読む 絶望名人カフカの人生論』)

平松:この新刊が飛鳥新社さんから先月の終わりぐらいに出た、フランツ・カフカの日記やメモを漫画にしたもので、原作は頭木弘樹さんが2011年に書かれて、それを自由に漫画にさせていただきました。

辛酸:はい。何かすごい勢いがあるタッチの。こちらは何で書いていらっしゃるんですか? 

平松:これは鉛筆で。

辛酸:濃いですよね。

平松:そうなんです。濃い鉛筆で。今回初めてなんですけど「え? これ、ラフなんですか?」って言われちゃいそうなものなんですが、ラフだって言われないようにすごく構造を意識して。

これを描いている前か、描いているときか忘れちゃったんですけど、画家のCBAさんに、コンポジション教室というのをマンツーマンで開いてもらって、白と黒の構成のレッスンを計4回やってもらいました。

辛酸:このトーンの貼り方がおもしろいですよね。

平松:これも位置を間違えたら、すごく気持ち悪くなっちゃったりね。大きいドットって、ちょっと虫っぽかったりしますので。そういうのもおしゃれになるように(考えて)。

やっぱり最初お話をいただいたときに、「おしゃれな漫画本にしてください」っていうお話もちょっとあったので。ファッションブロガーですし、おもしろい漫画を描くのが得意なんですけど。ただおもしろいだけじゃなくて、「粗いタッチだ」ってTwitterでもちょっと書かれてたんですけど、粗いんだけど粗くないっていうか。

今までの私が描いてきた漫画は雑だったなってすごく反省して。今回は自分にしかできない、誰もやったことのない漫画を描きたくて。

なぜならこのカフカの小説は、映画や漫画になっているみたいなんですが、メモや日記が漫画になるっていうのは世界初だっていうのも聞いてて、私も本当に世界初みたいなことがしたくて。だからスクリーントーンじゃなくて、マスキングテープをね。

辛酸:マスキングテープを貼っているんですね!

平松:そうなんです。スクリーントーンは、プロの漫画家さんが本当にすごいテクニックでやっていてかなわないので。

辛酸:こういう透明のがあるんですね。

(出典:飛鳥新社『マンガで読む 絶望名人カフカの人生論』)(出典:飛鳥新社『マンガで読む 絶望名人カフカの人生論』)

平松:透明のがなかったので、マスキングテープを何枚か貼ったのをスキャンして、それをPhotoshopのレイヤーで(貼りました)。

辛酸:自分で、すごいですね。

平松:アシスタントさんにやってもらったりして。今まで漫画は分業でやってたんですよ。だからページによっていろんなタッチが交ざっちゃったんですが、今回は全部自分で描きたかったというのもあったので。

時間的なことも、ペン入れ作業を省きたいというのもあって、鉛筆で何とか仕上げにいけないかなっていうのも試行錯誤して。でも結局ペン入れするのと同じぐらい時間はかかりました。

辛酸:そうですね。ここまで構図とか、影とかをつけていると、時間かかりますものね。

平松:あと、スキャンした後の濃淡もものすごくこだわったんで、本当にアシスタントさんに何回も何回もやり直しをしてもらって。みんなよく頑張ってくれて。

辛酸:鉛筆だと、もうちょっと薄い感じになってしまいますよね。

平松:そうなんですよね。

辛酸:濃い、はっきりコントラストが出て。

平松:また、濃くしちゃうと、今度は汚れまでが浮き出てしまうので、そこも全部消してもらったりして。

辛酸:じゃあ、すごい作業ですね。

平松:そうなんです。だから、ざざーって描いたようで、実はものすごくこう細かく計算して、仕上げました。

現代にはカフカと同じ、絶望を抱えた人がいっぱいいる

辛酸:ちょっと(内容を)見ると、カフカは精神的に(弱くて)幻覚が見えるとか、そういう感じの人だったんですか?

平松:幻覚が見えていたかどうかはわからないんですけど、メモとかを読むと、本当に幻覚っぽい表現が多かったので、妄想に近いというか。だからすごくイメージは広がって、描きやすかったです。

辛酸:耳がとがっているんですね。

平松:そう、耳がとがっててちょっと宇宙人っぽい。だから何かね、生きるのが大変そうだったんですけど、もし今の時代にカフカがいたら、似たような人がいっぱいいるんじゃないかなって思います。

辛酸:こう絶望しているような? 

平松:はい。

辛酸:そうですね。じゃ、そういう人に読んで(もらいたい)?

平松:はい。そうでもいいですし、周りにそういう人がいてそういう人を好きになっちゃった女性に読んでもらったりとか。あと、私も自分の中にすごくカフカっぽいところがあったのでそういう新しい発見も(ありました)ね。

(出典:飛鳥新社『マンガで読む 絶望名人カフカの人生論』)

好きなことをやり尽くす人はビジネスに向かない

平松:これは、予告を作って。

(映像開始)

(映像終了)

辛酸:すごくポイントが押さえられているんですよね。

平松:この音楽も、コンポジション教室をやってくださった画家のCBAさんが、このために作ってくれたんです。

辛酸:すごい合ってますね。

平松:カフカは「手紙魔」なんですよ。今の時代で言うとメールばっかり送って、会うのは嫌だっていう。自分の世界を大事にしすぎちゃうんですね。徹底しているところがあります。

辛酸:最終的には、幸せになっていくんですかね?

平松:そこがね、最後は死んじゃうんです。死んじゃうっていうか、結核になって40何歳かで亡くなっちゃうんですけど。本当に彼は、最後はもう好きなようにやったんじゃないかなって。

辛酸:好きなようにというか、やりたいことだけやっているみたいな。

平松:だから今回のテーマ「善行ビジネス」の「ビジネス」という部分で、好きなことをやり尽くして早く亡くなっちゃう人たちは、ビジネスがあんまり得意じゃなかったのかなってね。

辛酸:そうですね。器用すぎてないんですかね。

平松:あと、コミュニケーション能力もビジネスはすごく大事なので。そういうのをサポートしてくれる奥さんとかがいたらよかったのかな。ただ、きっと言うこと聞かなそうですよね。

カフカはいつも女の人がいたんですけど、「カフカのために」って(女の人が)言っても聞かなそうな気がして。最後はやっぱり見守って、支える人が多かったのかなって思いました。

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