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「アイデアノート・エディット」先行発売記念トークイベント(全3記事)

クリエイターが描いた「アイデアノート」の中身とは

2015年7月11日、銀座伊東屋で開催された「アイデアノート・エディット」先行発売記念トークイベントにれもんらいふ・千原徹也氏、バンド「相対性理論」の元メンバーで、現在は企業CMのプロデュースなどを行う真部脩一氏、クリエイターエージェント・佐藤詳悟氏の3名が登壇しました。本パートでは吉本興業で10年間マネージャーを務めた佐藤氏が「株式会社QREATOR AGENT」を創業するまでの経緯や、所属クリエイターとして活動する千原氏・真部氏が考える「クリエイティブ」の定義について意見が交わされました。(「アイデアノート・エディット」先行発売記念トークイベント「クリエイティブなアイデアの出し方って!? by QREATOR AGENT」より)

クリエイターのアイデアの引き出し

司会:ありがとうございます。ちょっとお題を変えてみようかなと思います。佐藤さんも含めて、皆さん普段お仕事とか家庭でこういう問題があったときにこうしたらいいかなとかいろいろ考えると思うんですけど、なかなかいつも通りのやり方が抜けなかったりするんじゃないかなと思います。

そういったときに、普段みんなが「かわいい!」って思うものとか、「うわっ!」って感動するものとか、「ぶっ飛んでんな」みたいなことをつくっている3人から、どういうところにアイデアの引き出しを求めていっているか。アイデアのネタ探しみたいなものをお一人ずつ簡単に言ってもらって、そこからディスカッションできたらなと思います。最初、千原さんから。

千原徹也氏(以下、千原):急にこっちに(笑)。ネタ探しですか?

司会:ネタ探しにどういうところに探しに行くんですか?

千原:やっぱりどこからヒントを得るかが一番大事じゃないですか。僕は事務所に本とか雑誌とか買うんですけど、いつも買ったものとか並べているものはリハビリ作業にしてるんですよ。

司会:リハビリ。

千原:朝起きて脳みそが回っていなかったりとか、あと何かおもしろいアイデア考えなきゃいけないなと思うのに全然何も思いつかないときとかに、ペラペラめくるとだんだんテンションが上がってきてクリエイティブな脳みそになっていくんですよ。だからそれ用に置いているという感じで。

そうなってきた段階で、子どもの頃に観た映画とか中学生のときに買ったレコードとか、そういうものを結びつけていって、そこからリスペクトの意味を込めて参考にするというか。そういうのがネタになることは多いですけど。

司会:ありがとうございます。たぶんファッションというところと、昔の映画みたいなちょっと違うなというジャンルがあると思うんですけど、あえてそういう違うところから常に紐付け作業を無意識に、意識的にも、やられているのかなと。

千原:そうですね。やっぱり遠ければ遠いほどおもしろいアイデアが出てくるんじゃないかなと思うんですけど。

自分の好き嫌いがひっくりかえる瞬間

司会:ありがとうございます。真部さん、どうですか? そういう全然違うジャンルから引っ張ってきたりとか、ご自身の普段のネタ探し含めてどんな感じで考えられてますか?

真部脩一氏(以下、真部):僕は本当に生活のなかで順不同でインプットしていって出てきたものが身になっているもの、ぐらいに考えています。

司会:意識的に情報を取りにいったりとかってあるんですか? 曲づくりに対して。

真部:曲づくりに対してですか。わがままな話なんですけど、結局自分の興味の対象じゃないと血肉にならないので。自分の純粋な好き嫌いを尊重しないと意味がないじゃないですか。

ただ、そんななかで自分の好き嫌いがひっくりかえる瞬間というか自分の嫌いなものが好きになったり、好きなものが突然嫌いになったり、「ん?」って思ったり。そういう瞬間に価値があると思っていて。

そういったものを自分なりに掘り下げていくっていうのが自分にとっての外部からの刺激を受けるということかなと思っています。

司会:ありがとうございます。たぶんこれ本当ビジネスでも使えるなと思っていて。自分の好きなテーマだけだとそのアプローチしかできないけど、自分の嫌いなものってたぶん違うアプローチで行われているから最初嫌いだと思うんですけど。そういうのでビジネスに関してもアプローチするとおもしろいかもしれません。

ネタ探しは「人と会うこと」

司会:佐藤さんは実際に自らつくっているわけじゃないですけども、その人たちと一緒に何かをつくるとか、引きあわせたりしながらビジネスを考えていると思うんですけど、普段「つくる」に対するヒント探しってどういうところでしているんですか?

佐藤詳悟氏(以下、佐藤):僕はわりと人にすごい会うので。

司会:それ自体が?

佐藤:そうですね。うちでいうと今90〜100人ぐらいの方のお手伝い、コミュニケーションをとらせていただいていて、これからもっと深くコミュニケーションをとらせていただくと思うんですけど。業界というか職業が一緒の方がいないというか、全然バラバラなので、そういう人たちのお話聞いているだけでも。

脳科学者と町工場のおじさんなのに「最近流行ってるもの何ですか?」って聞くと(2人とも)「最近『かわいい』ってきてるんでしょ?」って言ってたり。全然違うのにそういうふうに言ってるってことは「かわいい」ってくるじゃん、とか。いろんな人と会う機会があるので、それがインプットとしてはかなり自分としてはくるかなと思いますね。

僕はつくる方々をお手伝いする側なんですけど、僕たぶんすごい無責任なんですよ。クリエイターの人たちと「この人たちとやる」って決めたらもう任せるっていう。

それって芸人さんとやってたときも、例えばロンブーさんで『笑っていいとも!』のレギュラー取りました、もうそこから任せるしかないっていうか。それがうまくいこうがうまくいかなかろうが、ご本人たち次第になってしまうので。結構そういうところがありますね。ちょっと話がずれましたけど、「人と会う」ということですね。

司会:いろんなジャンルの人と会うことがネタ探しですと。

佐藤:そうそう。

司会:人によっていろいろなアイデアの取り方はあると思うんですけど、独自のやり方やってとか、佐藤さんみたいに人に会うとか。そういうところからチャンスが見つけられるかもしれないですね。

アイデアの種を整理・共有する方法

司会:今回「アイデアノート・エディット」っていうノートのこともありまして、普段皆さんアイデアの種を探して「こんな感じだ」って考えて、それを整理する作業とかイメージ図にしたりする人が広告業界の人は多いんじゃないかなと思っていて。普段どんな感じでアイデアを整理しているか、見える化しているかを今度は真部さんから、お願いします。

真部:プロデュースという作業はすごく説明がしやすくて、選択肢をつくってそれをつぶしていく作業なんですよ。

「ドラマって何だろう?」と思うと思うんですけど、僕のなかではまず何らかの葛藤があって、それがどういう形であれ、例えば陰陽いずれかに昇華されるときに感動なりドラマが生まれると思っているんですね

そこでプロデューサーという仕事は技術を使ってわりと意図的に葛藤をつくり出してあげて、それを消化させるプロセスを持っている葛藤作成装置みたいな人っていうふうに自分は考えてますね。

司会:ありがとうございます。音楽家の方の頭の中は聞くことがないと思うので、かなり貴重な時間をいただきました。千原さんのほうでも、たぶん同じだなって思うところとこれ全然違うなって思うところと、アプローチはバラバラだと思うんですけど。

千原さんはどんな感じで自分の考えたアイデアを紙に落としているか、みんなにわかりやすく説明するときに使っている手法とかってありますか? 

千原:LINEあるでしょLINE。LINE使ってます。

司会:LINE使うんですか?

千原:はい。

司会:スタンプとか。

千原:スタンプも使います。僕のアイデア共有LINEがあるんですよ。スタッフとの。うちのスタッフ4人と僕の5人のLINEなんですけど。思いついたこととかたまたま書いた絵とかを写メに撮って、そこに流すんですね。

僕はメモで自分に持っておいたりとか、iPhoneのメモとかに入れてもそれ自体を忘れるんですよね。書いてたことを忘れちゃうので。誰かに言ってもらいたいっていうのがあって。

司会:そのアイデアに対しての感想を。

千原:そうです。うちのスタッフみんなにも、アイデアとかを千原がどういうときにどうやって考えてるのかっていうことも知ってもらえるのもあるし。あと、自分でおもしろいなって思った絵とかをノートに描いて写メ撮ってそこに流しておくと、「いいですね」っていう人もいるし、何の反応もないときもあるんですよね。何の反応もないと、「ダメなんだな」とか。

おもしろかったらみんな、事務所に僕が戻ったときとかに「あれ、千原さんすごいですね。あの絵」とかって言ってくれたりとかして。アイデアの中身を共有しているうちに、実際に何かの仕事が来たときに「あの絵とかどうですか?」という話を振ってもらえるのもあるので。

司会:アイデアの引き出しを他人にまかせるというか。

千原:そうですそうです。

司会:でも送るまでは結構アナログなんですか? パソコン使わずに。最初のラフ案とかは。

千原:そうですね。アナログですね。例えば、道歩いていてビルと空があって、ビルと空の構図がポスターになるなと思ったらそれを撮っておいて流したりとか。あとは無意識に描いた絵で、あとで見たら結構おもしろかったりしたやつを撮ってみんなのところに流したり。

司会:おもしろいですね。瞬時に描いてすぐ相手の引き出しに入れておいて、いいなと思ったら出してもらうと。

千原:そうです。5人いると誰か覚えている(笑)。それに遡れますしね。だからLINEは今欠かせない感じになってますね。

紙とペンによるアイデアの発想

司会:私個人的な話なんですが、MacBookAirを使っているんですけど中身Windowsなんですね。キーノートすら使わないっていう人間で。「クリエイティブに見えるかな」って思ってMacBook Air持ってる人間の1人なんですけど。

僕も実は昔広告にいて、ずっと紙にバーって書いて、真部さんがおっしゃってたアイデアを見える化してから、ちょっと整えてパワポにするみたいな。

自分の頭のなかのイメージを一番身近な手という相棒がペンで描いてくれるっていうので、紙ってすごくいいなと思っていて。「アナログ人間置いていかれるな」と思いながらも、2、3ヵ月前にアメリカのニュースをのぞくといいニュースがあって。

シリコンバレー、あるじゃないですか。最先端の。GoogleとかAppleに勤めている親御さんが一番通わせたい小学校って、皆さん何だと思いますか? 

最新のデバイスを使って、テクノロジーとかいろんなことを学べる学校かなと思うんですけど。実は紙とペンしか使わせない小学校が一番人気があるんですって。GoogleやAppleの人は技術がすごいって知ってるじゃないですか。でもあえて紙とペンっていう発想にフォーカスしている学校に今入れているらしくて。MacBook Airそんなに使えてなくてよかったなっていう、ちょっと個人的な話なんですけど。

「アイデアノート・エディット」のコンセプト

司会:今回「アイデアノート・エディット」の発売を記念したイベントでもありますので、そちらを開発していただいた責任者の方に来ていただいています。

佐倉さんのほうからアイデアノートってなんぞやっていうところから、どんなコンセプトで生まれたものか、ちょっと簡単に説明していただけますか?

佐倉:初めまして。マークスの佐倉と申します。日本人って「自分はクリエイティブじゃない」と思われる方が多いらしいんですよね。しかし、「アイデアノート・エディット」のコンセプトは、「クリエイティブは才能ではない。誰もが正しいツールを使い、やり方を磨けばクリエイティブ力を育てることができる」。その正しいツールとして、このノートをつくりました。

ノートは3つの特長があります。1つ目はヨコ型。なぜヨコ型かというと、人間の目は左右にあるので、左右に(長く)あるほうが、全体像をひと目でつかみやすく、情報を分析したり、構想の組み立てに適しているのです。

2番目に付箋。付箋はいろんな企業で使われることの多いブレインストーミングのツールです。ノートにセットアップしたこの付箋を使って、個人でひとりブレストでアイデアをたくさん発散したり、そのアイデアを分類したり、仲間とシェアすることができます。

3番目がドットセクションです。思考はビジュアル化するほどまとまりやすいという点から、図表を描きやすいフォーマット設計になっています。実際3人の方に使ってみていただいたので、ぜひ使っていただいた感想をお聞きできればと思います。

付箋を利用した佐藤氏のアイデアノート

司会:事前にいろいろ書いていただいたようなので。実際お三方に使っていただいたノートです。これは佐藤さんですね。佐藤さん、どうですか? アイデアノートを使ってみて。

佐藤:僕書かないとだめなんですよ。全部。

司会:手書きで。アナログ人間ですね。

佐藤:はい。ものすごく書くんですけど。それで、付箋をよく失くすんですよ。これ、付箋が付いてるので失くさなくて済むっていう。ここのところにToDoとかをやれると、この資料をどんどんできるので。今まではできなかったらばんばん捨ててたんですけど、それをこの付箋によってアップデートできるようになったという。

司会:カスタマイズしやすくて使いやすいということですかね。千原さんなんか、LINEのグループに放り投げてたアイデアの引き出しをここに残せそうな感じですよね。

千原:はい。

曲づくりの過程をメモした真部氏のアイデアノート

司会:じゃあ、真部さんのもあるんですよね? 今回は何を書いていただいたんですか?

真部:歌詞ですね。僕もペンを持って手を動かさないと書けないほうです。特に歌詞は。

司会:歌詞。出しても大丈夫ですか?

真部:大丈夫ですよ。これは個人的なストックなので。僕、すごいこのノートいいなと思って。表紙が固いんですよ。僕、机を持ってないので。

司会:机ないんですか。

真部:机の上に鍵盤を置いちゃってるので、書くスペースがないんですよ。だから、パチンとクリップの付いた板みたいなのの上に乗せてやってたんですけど。表紙が固いのがすごい使いやすいなと。

司会:必要なくなりますもんね、パチンが。

真部:それが1つと。付箋って今まで使わなかったものなんですけどすごくいいなと思ったのが、僕は歌詞を書くときに書きながら思いついた順に書き足しをしちゃうので、書き足しをする分の空白をあらかじめつくっておかないといけなかったんですね。整地して、というか。

それを全然意識せずに思いついた順に書いて貼れるというのがすごく便利だなと。今画面に映っているのが、テーマ決めですね。

司会:テーマ。曲のテーマ決めってことですか?

真部:曲は新曲って書いてありますね。新曲の歌詞決めはこんな感じでやってますということなんですけど。

佐藤:こんなの(なかなか)見れないですよ。

真部:これ曲ないとよくわかんないと思うんですけど。1行目にだいたいこんな曲だよなっていう説明をレファレンスを挙げて書いてますけど。こういう感じの曲にどういうテーマで書き始めて、そこからどう脱線していこうかなっていう段階で、まず具体的な中心線としてのテーマを決める作業ですね。

なので、一応構成をメモった上でAメロBメロのだいたいの感じを決めて。1個だけキーワードを決めて。これ「アゲアゲでストイック」って書いてあるんですけど、ドラムのビートが硬質でストイックな感じに聞こえるビートだったので、ストイックから1個テーマを決めようかなと思って。いっぱい、上の黄色の付箋に。

司会:「修行」とかありますね。

真部:「僧侶」って書いてますね。あと「ストイック 厳格な父 娘さんを僕にください」って(笑)。

司会:ストイックですね(笑)。

真部:そのなかから、決めフレーズになりそうなものに乗る言葉を探していって。「皇居ランナー」というのがすごいいいなと思って。

(会場笑)

司会:降りてきたんですね、「皇居ランナー」が。

真部:なので、このワードでいこうっていうところまで決めましたっていうのがこのページですね。

司会:こういうふうに考えるんですね。おもしろいですね。ここの構成はよくてストイックのテーマ出しがちょっと違うなと思ったら新しいのを貼ったりすれば……。

真部:そのときにも付箋をもう1枚上から貼っちゃえばいいのですごくいいなと思いました。

タクシーの車内で描いた千原氏のアイデアノート

司会:ありがとうございます。じゃあ千原さんはいかがでしょう?

千原:これですね。

司会:すごいですね。これはどんなテーマというかコンセプトのものを描いたんでしょうか?

千原:こういうの毎日描いてるんですよ。ノートの良さを言いたいんですけど、さっき言ってた固いというの、僕も言おうと思ってたんですよね。僕、絵をどこでも描けるというのがすごく大事だと思って。テーブルないところもあるし、タクシーのなかとかすごい揺れるじゃないですか。

司会:タクシーのなかで描くんですか?

千原:描きます描きます。

佐藤:これタクシーで撮ってますよね。

千原:これタクシーで撮ってます(笑)。

司会:本当ですね(笑)。タクシーですね。

千原:あとグリッドがね。ドットが付いてるじゃないですか。僕フリーハンドでものを全部描いてるんですけど、ドットが付いてるというのをすごく目標に据えて。

司会:それはバランスを見られるということですか?

千原:そうですね。Lとかはドットを繋いで描いてるんですけど。あるのとないのとでは全然絵のタッチが変わってくるので、それはすごくいいなと思います。あと、こういうのをスタッフにまた渡すんですよね。今こんな脳みそを(している)僕はと。

司会:持ってるよと。覚えとけと。

千原:そういうときにペリペリペリとちぎれるタイプのノートなので、すごくいいなと思ってるんですけど。こういう絵を普段書き溜めながら、「千原さん、何ですかね、これ?」とかみんなに言われながらやってますね、毎日。

司会:ちなみに2人とも固いのがいいっておっしゃってたんですけど、そこも計算なんですか?

佐倉:今の仕事をされる人たちは、オフィスだけが仕事場ではなく、どこでも仕事されるので、そんな方々アイデアの相棒、という意味で固さは考慮しています。

司会:そうですね。プラス、大きすぎてもタクシーで書けないですし。

千原:タクシーでも書いています。どこでも書けるっていうのは絶対的条件じゃないですか。僕の場合、絵を描いていくということが伝えることだったりするので、微妙な揺れとかズレが書き直しになっちゃったりして。そういう意味ではドットが付いてるとか固いとか、絵を描きやすい条件を満たしているノートだなと思って使っています。

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