2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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司会:まず3人の方に自己紹介をお願いしたいと思います。クリエイターエージェント代表佐藤氏から簡単に自己紹介をお願いします。
佐藤詳悟氏(以下、佐藤):クリエイターエージェントの佐藤と申します。今年の1月までずっと吉本興業で働いていました。
10年間ぐらい吉本にいて、最初の6年間ぐらいはマネジメントをやっていました。芸人さんでいうと、ナインティナインさんとか。あと長かったのはロンドンブーツ1号2号、ロバート、ハリセンボン、COWCOWとか。
ナイナイさんのマネジメントを1年やって、ロンブーさんのマネジメントを5年間ぐらいずっとやっていました。最後の3年間ぐらいは、吉本のなかでもわりと新規事業のような部署にいました。
例えば、吉本のなかにパパの芸人さんたちがいっぱいいて、パパ芸人だけのエージェントをつくりました。車メーカーさんがファミリー向けにプロモーションをしたいときにそのエージェントを通していただいて、僕らのチームが吉本のパパ芸人たちをキャスティングして、全国の車の販売店さんにトークイベントをやりにいくとか。
あとは、ファミリー向けのカメラの商品をプロモーションするような番組をつくらせていただくとか、最後の3年間はそういった複合的なものをやっていました。
そういうときにベンチャーの経営者の方とか職人さんとか、クリエイティブな方々にお会いする機会がすごく多くなってきまして。吉本のときに、そういった方々から相談を受けていたのが、「書籍の話が来たんですけど、印税ってこれで合ってますかね?」とか「テレビの番組に出たいんですけど、何とかしてくれませんかね?」とか。
そういう個人の方で、「自分がもう少しこういうふうに大きくなりたい」とか「自分がやっているビジネスをもう少し大きくしたい」という悩みがあって。
この時代って、テレビに出てスターになること以外に、例えばWebとか広告代理店とかそういったところに活躍する場が増えてきている時代なので。
そういったときに、事務所に所属すると専属で全部やってくれる代わりに、仕事を全部通さなきゃいけないという空気があって。
個人の方がもう少し大きいことをやりたいときに、簡単に軽く相談できる会社やプロデューサーの人たちが今の日本国内にはいないなと。自分が吉本にいたときにすごく思って。
それで今年の2月に吉本を辞めて、専属マネジメント会社ではなくて非専属のエージェントとして、真部さんも千原さんもそうですけど、『情熱大陸』とか『プロフェッショナル 仕事の流儀』に出てきそうな個人の方、研究者の方や経営者の方、会社員の方も契約させていただいています。
そういった個人の方々の営業やプロモーションのお手伝いをしている会社をつくらせていただきまして、5ヵ月ぐらい経ちます。
司会:ありがとうございます。では続いて真部さん、自己紹介をお願いします。
真部脩一氏(以下、真部):ミュージシャンの真部脩一です。
司会:よろしくお願いします。
(相対性理論の『地獄先生』が流れる)
司会:いま流れているのが、真部さんがつくられている曲でして。ちょっと聴いていただければと思います。これはプロデュースを全部やられているんですか?
真部:いや、これはバンドなんですよ。
司会:これって真部さんがいつつくられた曲ですか?
真部:これはたぶん2008年ぐらいだと思います。
司会:そのバンドの活動を終えてからは、企業のCMの音楽などをつくられていると。
真部:はい。企業CMや他のアーティストさんのプロデュースや楽曲提供を主にさせていただいております。
司会:ありがとうございます。では千原さん、お願いします。
千原徹也氏(以下、千原):れもんらいふというデザイン会社をやっておりまして、広告のデザイン、CDジャケットのデザイン、たまにミュージックビデオを撮ったりとか、あとは本の装丁とか。デザインと名の付くものはなんでもやるみたいな感じの会社をやっています。
これ、出ているやつの説明をしますと、最近原宿のキャットストリートにオープンしたアディダスのお店の広告ビジュアルなんですけど。アディダスのショップ自体は日本にできるフラッグショップになるということで、一番大きなお店なんです。そのお店自体をどうするのか、どんなお店にするのか、というところから一緒にやっていきました。
川上未映子さんという小説家の方がいらっしゃいまして、彼女の本の装丁とかもやっています。彼女に日本の若者に対する言葉とかをいただいて、それをグラフィック化してお店の看板にしたのがこの仕事です。
司会:ありがとうございます。今回、日頃いろんなカテゴリで活躍しているクリエイターの人たちと一緒に、佐藤氏を中心に企んでいる会社で……ここで挨拶が始まりましたけど(笑)。
千原さんはアドリレーションというカテゴリのなかで、先ほどのアディダスとかメガネのメーカーのプロモーションビデオとか、いろいろなところに携わられている方です。
真部さんは先ほどお見せしたように、もともと「相対性理論」のメンバーだったので、ああいう楽曲とか、今は企業のCMとか。普段音を聞かないところってあまりないと思うんですけど、そういったところでクリエイティブなるものを使いながら、皆さんとの距離を縮めていく仕事をされている方です。
司会:そんないろんなクリエイターの方たちを会社として手伝っている佐藤さん。会社が動き出して5ヵ月間の話もそうですし、もともと吉本でいろんなぶっ飛んだことをやった(ロンドンブーツの)淳さんとかを見ているなかで、何かを生み出している人、クリエイターの魅力ってどこにあるんですかね?
佐藤:クリエイターさんのすごいところって、具体というか……。例えば道路をつくるときに、そこが水でグチャグチャになっていたらそれをきれいにすることはできるんですけど、プロデューサーって具体的に道路を敷くっていうところのイメージがなかなか見えない部分があるんです。
それをクリエイターの方々は、千原さんだったらデザインというところ、真部さんだったら音楽というところで、具体的にユーザーの方々に届けるものをつくれるというのがあります。
僕が今クリエイターと呼ばせていただいている方々は、そういうクリエイティブなものをできる方々を呼ばせていただいているので。まだいないんですけど、農家の方やお医者さんもいわゆるクリエイターだなと思っていて。
それは僕自身がすごいざっくりな人で、具体がないっていうコンプレックスがあるんですけど。なので、そういった具体的なモノをつくられる方々をクリエイターだと思っています。
司会:ありがとうございます。世の中的にもちょっとオシャレなものとか、目に付くものがクリエイティブなんじゃないかっていうイメージはあると思うんですけど、決してそんなことはなくて。農家の方でも、新しい作業方法を見つけ出したとか、近所のおばちゃんの上手い活用の仕方を考え出したら、それはもうクリエイティブだと思うんですね。
たぶんいろんなところにクリエイティブって落ちていて、それをクリエイティブって呼んでいないだけで、創造することって生まれてくるんじゃないかなと思います。
司会:うちと全然違うカテゴリで活躍している方なので、3名に再度格言的なところから聞いてみたいなと思います。ちょっと大喜利になっちゃうかもしれないんですけど、クリエイティブって何ですか?
千原:広いですね。
司会:絶対広いなって言われると思ったので(笑)。ちょっと佐藤さんのほうからクリエイティブって……。
佐藤:僕ばっかりしゃべってますよ(笑)。僕はクリエイターじゃないので。吉本にいた時点では自分が「クリエイターになりたい」と思ってたんですよ。
ただ、例えば番組をつくっているクリエイターの方がいて、その方って編集所に4日間とかこもれるんですよ。自分が好きなものを具体的につくるために。僕って、編集所とかパソコンもそうですけど、1時間とかも無理なんですよ。何かを完成させるためにやるというのは。
そのタイミングで僕はクリエイターは無理だなっていうコンプレックスで、だったらそのクリエイターの人たちを助けるためにプロデューサーになろうってこの10年ぐらい頑張ってきたんですけど。たぶん僕が言うクリエイティブと皆さんが言うクリエイティブって全然違うと思います。
司会:真部さん。大喜利になっちゃうんですけど、クリエイティブとはどうなんでしょうか?
真部:今回初めてこういうお題が出たことで、自分が普段「クリエイティブって何だろう?」って考えたことがなかったなと思って。僕はミュージシャンと呼ばれる職業に就いてから何かをつくることを始めたタイプの作家なので、モノをつくるということがあまり身近になかったんですよね。
なので自分がそういう立場に置かれて、何を原動力に、何をモチベーションにモノをつくっていってるかを考えたときに、結局最終的にシンプルな言葉なんですけど「感動」になっちゃうというか。
すごい単純な話なんですけど。ただ、感動ってすごく振れ幅があるものだと思っていて、感動の理由というか自分のなかの感動の動機みたいなものを掘り下げる作業、それを洗練していく作業、それを商品化する作業を自分は今していると思っています。
司会:ありがとうございます。私音楽はずぶの素人でアレなんですけど、音楽って常にどこでもあるものだし、自然に耳から直接脳に働きかけるちょっと魔法っぽいものがあるのかなと思っていて。そういう価値を決められないものをつくっている作業って、本当にクリエイティブなんじゃないかと思っていて。
実際にそれを表現してお客さんが感動してくれたり、感動するためにどうしたらいいかというのは結構具体的に論理的に考えられるんですか?
真部:僕は「グッとくる」と呼んでいるんですけど。「グッとくる」ための作法だったり技術を駆使したりということが1つのクリエイティブだと思いますし、先ほど佐藤さんがおっしゃられたゼロイチでものをつくる、もしくは1を10にする、1とAなりBなりを足して全く新しいものをつくる、見たこと聞いたことのないものをつくるというのに共通している要素だとは思っています。
司会:ありがとうございます。じゃあ千原さん、いかがですか?
千原:僕よく聞かれるんですよ、これ。「クリエイティブって何ですか?」って言ってね。さっきクリエイティブも振れ幅があると言ってたんですけど、僕らがやっているのは世の中にどれだけ刺さるものをつくっていくかみたいな作業が多いので。僕がいつも言ってるのは、クリエイティブとは「人に優しく」っていう。
司会:人に優しく。どういうことですか?
千原:その気持ちが大事だなっていう。優しさ。広告をつくるときもそうなんですけど、結構グロいのとかそういうのってインパクトが出るんですよ。ちょっと血が出ているとか、ちょっとおっぱい出てるとか。そういうのはインパクトあるんですけど、優しさがないなと思うんですよ。
本当にいろんな人に共感してもらって、それをつくった人も見る人も、みんなが幸せになるってことが一番大事だなと思っているので。
それを考えると、普段からみんなに感謝の気持ちと優しい気持ちを持って仕事するのが一番大事だなと思って……。
司会:すごい領域に話が(笑)。
佐藤:お二人ってモノをつくられているときに受け取る人を具体的にイメージするんですか?
真部:僕はしないというか、してもしょうがないというか。何と言ったらいいか難しいんですけど、共有することを目的につくっているわけではなくて、あくまで創作の目的は商品化なので、そこに至るまでのゲームメイクが僕がクリエイターとして想像力を働かせる領域だと思っています。
マスとしてリスナーを扱うことが自分なりのルールなんですね。それとは別に、真部脩一個人としては1万人いたとしたら2人ぐらいに「これ超わかる」って言ってもらえたら、それだけですごいうれしいですけど。
佐藤:千原さんは?
千原:僕は結局依頼を受けてやる仕事のほうが多いので。広告自体、2人に満足してもらえればいいっていうことだと怒られちゃうんですよね。たくさんの人に届いてもらいたいっていうのがあるので。
真部:届けるのは届けたいですよ(笑)。心から。
千原:僕も個人的には、あの人がいいって言ってくれたらいいなとかはあるんですよね。そういう意味でターゲットを絞っているのはあるんですよ。おかんが喜んでくれたらいいな、とか。そういうのはあるんですけど、やっぱりターゲットを(クライアントに)決められることのほうが多いんですよ。
例えば「ファッションブランドのカタログをつくってください」ってなったときに、「20代後半のOLさんのこの冬に気持ちが刺さるようなもの」とかってね。向こうから言ってくるので。だからそういう人に届くようにって。ものごとはだいたいそうやって考えてやってますね。
佐藤:真部さんも課題があることってあるんですか? 広告のときはあるってことですかね?
真部:千原さんももちろん、クライアントさんありの仕事とご自身のお仕事と両方あると思うんですけど。やっぱりクライアントさんのあるなしでアプローチは変わってきます。ルールの設定権が自分か他人か、ということなんですけど。
司会:事前に真部さんに話を聞いておもしろいなと思ったのが、音楽の方って自由奔放に音楽というものをつくるんじゃないかなと思ってたんですね。勝手なイメージですみません。でも逆に、あえて制限を付ける、あえて軸を設定してから音楽を発想するって言ってたんですけど、そのへん教えてもらってもいいですか?
真部:僕は自由自在にモノをつくれたことがないのかな。だから、ベーシックな中心線が必要なんですよね。それはお題だったり、要求だったり。それがない場合は自分ででっち上げたルールみたいなものが必要だなと思っていて。中心線からの脱線の具合で自分のセンスというとアレですけど、バランス感覚みたいなものをとってるというか。
僕は広い原っぱで「何してもいいよ」って言われても遊べないので。「じゃあサッカーやろうよ」って言って途中からサッカーじゃなくなっていくとか、ボールを手に持っていく、みたいな。そういう遊びが自分にとってやりやすいという感じなんですけど。
司会:ちょっとそこが個人的に意外だったので。皆さんもいろんな業界で働いたりしてますけど、何か1個軸を決めてみると、そこから脱線したときにおもしろいかもしれないです。そういった意味で、千原さんは考えるときにいつもやる方法とか道筋とかってあるんですか? アートディレクションでお題をもらったときとかに。
千原:これもいつも言ってるんですけど、広告とかCDジャケットとかいろんな仕事来るじゃないですか。クライアントによってはすごいシリアスなものもあるし、すごいポップなものもあるんですけど。
僕に依頼をいただいているっていうこと自体が1つの軸だなと思っていて。すごいシリアスな広告なのに何で僕に来たんだろうってときもあるんですけど。
そういうときにいつも軸にしているのは、広告って「本格的」とか「シズルがある」とかあるんですけど、僕はいつも「かわいい」ってことに重点を置いて、とにかくかわいいって思えることをベースに仕事をするっていうのが僕の基本的な軸ですね。
司会:かわいいっていうのは具体的にどういうかわいいのジャンルですか?
千原:あの……「かわいい~」みたいな。
(会場笑)
よく街歩いているとみんな言うでしょ? 他に何のコメントもないのに、「かわいい~、これ」みたいな。それを言ってもらうってことが大事なんですね。
司会:ぶっちゃけ考えてる人のプロセスとかどうでもいいから「かわいいな」「かっこいいな」みたいな、そういう……。
千原:「かっこいい」じゃないです。
司会:「かわいい」ですよね。
千原:そうです。プレゼンテーションでクライアントさんにプロジェクターを使って説明するんですけど。
もちろん広告ってロジックがしっかりしていないと人に刺さらないので、「今世の中がこうでこうなってるから今これなんです!」みたいな感じで説明しながら絵を見せるんですけど、その説明がぶっ飛ぶぐらいクライアントさんみんなが、女の子が「かわいい~、やりたーい」って感じになってくれると勝ちだな、みたいな。
司会:どうでもよくなりますもんね、かわいければ。
千原:そうなんですよ。だから、感覚的にそう思ってもらえることが。それは別にかわいい女の子の写真じゃなくても、かわいい女の子の絵が描いてなくても、何か心のなかにかわいいって感じてくれるっていうことをいつも目指してやっています。
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