2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
羽田圭介氏(全1記事)
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司会:羽田さんおめでとうございます。
羽田圭介氏(以下、羽田):ありがとうございます。
司会:受賞のご感想を一言お願いできますでしょうか。
羽田:まず、そうですね、何が起こったかわからないという感じがありまして(笑)。芥川賞4回目の候補だったので、1年前に候補になったばかりだったので、いろんなことに慣れ過ぎていて、受かっても落ちてもあまり感情って変わらないかな、と思っていたんですけど。
やっぱり受賞したのは初めてだったので、こんなに高揚感があるのかっていう、その予想外の高揚感に驚いているっていう感じですね。
前にも芥川賞は3回落ちて、野間文芸新人賞が2回落ちて、大藪晴彦賞が1回落ちていて、デビューしたのが河出書房新社の文藝賞で、素人がプロになるための賞は受賞して、それでプロになったんですけれど。
プロが書いた作品の中から選ばれる、プロが書いてプロに選考されて選ばれる賞は今まで6回全部落ちたんで、プロの方に選んでもらう賞で受賞できたっていうのが、それがまずとても嬉しいです。
司会:それでは質疑応答に移らせていただいきますが、質問なされたい方たくさんいらっしゃると思いますので、なるべくお一人ひとつの質問に限らせていただきたいと思います。挙手をお願いします。
(羽田氏、スマートフォンで会場の写真を撮影)
(会場笑)
司会:後ろの女性の方。
記者:フジテレビ報道局の『真夜中のニャーゴ』のカトウです。羽田さんおめでとうございます。
羽田:ありがとうございます。
記者:受賞の瞬間は、どこで知らせを受けましたか?
羽田:銀座のカラオケボックスで、作家さんとか編集さんとかと一緒にいました。
記者:何を歌われていたんですか?
羽田:ちょうど誰も歌ってなくて、長嶋有さんの提案で、受賞したら聖飢魔Ⅱの『WINNER!』という曲を歌うって決めてたんですよ。10日前くらいにそういう話になったんですかね。聖飢魔ⅡとかX Japanとかオジー・オズボーンとかをみんなで歌ってたんですけれど。
みんな疲れてきて、なかなか6時半とかになっても電話こないんで、7時すぎても電話こなくて、「これなんか、いやな予感するな」と言った誰も歌ってない時に、電話がきて受賞というメッセージをいただいた、という感じですね。
記者:おめでとうございます。
羽田:ありがとうございます。
司会:ご質問のある方、どうぞ。では、真ん中の眼鏡の方。
記者:読売のマチダと申します。すいません、今回介護の問題が小説のテーマの1つだと思うんですけれど。
あらためて受賞されて介護の問題に関して、どういうふうに感じたかというのと、羽田さんにも年をとられたおばあさんがいると聞いたんですけれども、何かおばあさんとかご家族に受賞を受けて何か言いたいことがあれば、メッセージを1つ教えてください。
羽田:え? 言いたいことっすか? 介護問題について言いたいことは、何っすかね? 介護問題どうこうというか社会的なことを何か言いたいのではなくて、結果としてそういうテーマを内包する感じで。
距離感の問題をすごい考えていたんですね。最近いろんなメディアとか論調でも「右か左か」とか、「高齢者対若者」みたいな対立構造を作る言説がもてはやされるという時に、それってなんでそんなに幅を利かせるのかと考えた時に、例えば敵対とか憎んでいる相手の顔が見えないからなんだろうな、というところですね。
例えば地元から離れて祖父母と離れて暮らす人達って、老人の姿、顔っていうのがあまり見えていないと思うんですよ。だからこそ、自分とか若い人たちは自分と関係ない年上の世代のことを、あの人たちはすごい優遇されているっていう感じで、簡単な二分化された構造を作ってしまうと思うんですね。
それは縦じゃなくて、横のつながりでも同じで、世界中どこでも自分が住んでいる国と近い所と仲悪くなったり、しやすいと思うんです。アジアでもヨーロッパでも。
それって近いと言っても離れていて、特に日本だとどこに対しても海が必ず隔てているわけですから、相手の顔を見ないで何か言うってことはすごい簡単だと思うんですよ。身体性とか実態がないまま憎むべき相手というのを作って、簡単に言ってしまう。
それは相手の顔が見えないと、簡単に言えてしまう。相手の顔が見えた時にどういう行動をとるか、っていう。異なる価値観とか時代を生きてきた人たちに対して、顔を見える状態でどんな行動を起こすか、っていうことを書こうと思いました。
なので、介護問題とか高齢化社会をどうこうという感じではないです。
司会:よろしいでしょうか?
記者:何か言いたいことは。
羽田:いや、別に言いたいことはないです。
司会:続いてご質問の方。では前の方。
記者:NHKのイケハタと申します。自分と同じ若い人が、高齢者に対して歩み寄るべきなのではないかというメッセージをおっしゃっていましたが、実際にご自身の本を若い人に読んでもらって、どんなふうな事を感じてもらいたいとお考えですか? 若い人に向けたこの本を通したメッセージがあれば教えてください。
羽田:先ほど申し上げたことと重複するんですけど、何かをちょっと不満を感じる相手とか、なんとなく憎しみを覚える相手、自分より優遇されているって感じで妬みの対象とか、自分と比べておいしい思いをしている相手を責めるっていうことを、顔が見える相手、その人に接近してその人の素性を、感情を理解したところで、
果たしてその時に自分がどんなことを考え、どんなことを言ったりできるかっていうことを、相手の顔を知るっていうこと。一言でいうとそれに尽きますね。
司会:よろしいでしょうか? 続いてご質問がある方。
記者:ニコニコのタカハシです。現在ニコニコの生放送で中継をしております。20万人の方がご覧になっています。ニコニコ動画はご存知でしょうか?
羽田:はい、存じ上げています。
記者:はい、ありがとうございます。今視聴されているユーザーの方からいただいた質問を代読したいと思います。愛知県20代の男性の方からの質問です。
「29歳無職です。『ワタクシハ』、だったりとか今回の作品もそうですが、羽田さんの作品は同じ世代のわたくしたちに向けられているような気がします。29歳無職の僕に、メッセージをお願いいたします」
(会場笑)
羽田:それは本を読んでくださいとしか言いようがないです。口で伝えられることは、小説で書かないので。小説でしか書かないことを書いているので、こちらから是非読んでくださいとお願いするしかできないです。
記者:ありがとうございます。
司会:他に。
記者:サンケイスポーツのモリオカと言いますが、おめでとうございます。同時受賞した又吉さんについてはどういうふうに思ってらっしゃるか、またどういう言葉を交わしたのかをお答えいただきたいと思います。
羽田:わたくしはですね、まず又吉さんの『火花』を3回メディア上でおすすめ本として紹介しているんですよ。
まず1つ目は文春から出ている『CREA』という雑誌の中村文則さんと対談した特集がありまして、そこでお互いのおすすめ本を紹介するっていう所で、そこでまず僕のおすすめ本で『火花』をとりあげさせてもらったんですね。
そのあと、新潮で書評を書きまして、フジテレビ報道局という所でやっている『真夜中のニャーゴ』という番組があるんですけれど、それは毎週歌人の加藤千恵さんと一緒に本とかを紹介したりして水曜日にやっているんですけれど。
その中で4月の3回目の放送でわたくしの紹介本としてその時も『火花』を30分くらい紹介させていただいたので、本当におすすめした本が受賞して良かったな、というふうに思っています。
(会場笑)
司会:よろしいでしょうか、続いてでは、眼鏡の方。
記者:読売新聞のウカイといいます。羽田さん先ほど文藝賞の話がありましたが、贈呈式の時に確か学生服を着ていた記憶があります。
非常に若くして文学の世界に入って、その後就職してまた辞めてやってきましたけれど、この間苦しかったこと、書く事の大変さとかはあったのか? そしてこれからさらに賞をとって、どんなふうに書いていこうと思っているのか、抱負などをお伺いできればと思います。
羽田:そうですね、高校時代にデビューして18歳になる直前に文藝賞受賞してデビューしたんですけれど、その頃何もお気楽な状態でして。その後大学に入ったんですけれど。大学生で実家暮らしだったんで、何もそんなに焦ったり苦しいということはなかったんですね。
会社員生活を1年半やって、辞めたのが6年くらい前で2009年の夏とかなんで。そこからマンションを買って6年間専業作家としてやってきたんですが、3年くらい前ですかね、一時期ちょっと苦しいなと思った時がありまして。
公務員になったほうが良いんじゃないかと本気で思って、公務員をやっている友人に相談したりとかいろいろしてたんですよ。それが確か27歳ぐらいで、公務員になれる上限が27(歳)か28(歳)とかそのくらいだったと思うんですよ。
試験受けるとしたらあと1、2回ってところで、「あ、本当にここから勉強したほうが良いんじゃないか」と迷ったりしてたんですよ。そんな時期もあったんですけれど。ただ、それって芥川賞とるかとらないかの問題じゃないと思うんですよね。
小説を書く、生みの苦しみがあるだけで、生みの苦しみでなかなか書けないでいると、当然原稿料も単行本としての印税も入ってこないっていう、経済的な事っていうのはあとからついて回る事なんで、創作でけっこう困って、経済的にも困ってというのが3年前で一番困っていたかもしれないです。
ただ、まあそれも徐々に克服していって、去年くらいから作家としての仕事が軌道に乗り始めたという感じなので。自分は2003年の10月とかにデビューしたんで、12年やれているだけで、苦しくないほうなのかな、と。
今出版不況の中で、生き残るだけでも大変だと思うので、自分は売れていない時でも、結構恵まれているほうなんだなというふうに思っているので、そんなに暗い気持ちになった時は、すごく短い期間しかなかったかもしれないですね。
記者:今後の抱負は?
羽田:抱負ですか? 芥川賞の候補になったという連絡が先月あった時に、これから1カ月平常心でやっていけるかなとか、一瞬思ったんですけれど、やることって変わらないんですよね。
受賞したら、取材とかで忙しくなるって「芥川賞、直木賞受賞したら一気に忙しくなって、小説を書く暇がないよ」といろいろな人に言われていて。
じゃあその間に受賞すると仮定したら、今のうちに小説書いておかなきゃなと思いましたし、受賞しないで落選したらという事をシュミレーションしても、落選したらまた次の小説を書いて、それで何かを挽回するしかないな、って。
やることって、小説を書くことしかないんですよ。だから意外と周りの人の反応が変わるということがあっても、小説家がやることっていうのは小説を書くのみなんで、やることは変わらないな、小説を書いていくだけだなというふうになおさら感じますね。
司会:よろしいでしょうか? 続いて他の質問の方は、よろしいですか。それでは最後に羽田さん、一言何か感想とかコメントがございましたら。
羽田:一言っすか(笑)。すいません、何も一言で言い表せられないんで、小説とかエッセイとかでいろいろ表現していきます。
司会:ありがとうございました。
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