2024.10.10
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DJフクタケ氏(以下、フクタケ):なるほどね。今回クラブミュージック視点というところで、クラブミュージック業界の人であるアボカズヒロ君が聴いて、このCD(『ヤバ歌謡3 音頭編』)ってどう感じました?
アボカズヒロ氏(以下、アボ):『ヤバ歌謡』シリーズって全部がそうなんですけれども、「レアなものがリイシューされてうれしい」っていうタイプのものじゃないのがすごい重要だなって思ってて。
例えば『ヤバ歌謡2 TVテーマ編』とか、「サザエさん」が入ってるんですよ。「サザエさんって、どうやったって聴けるものじゃないですか。なんだけれども、それがどうMIXされてるかっていうことのほうが重要になっていて。今って、「体のいいリイシュー」としてのDJ MIXとかMIX CDってものもあるなかで、すごく真摯にDJというもののあり方を示しているMIX CDだなと思うんですが。
僕としては、(FLOWER TRAVELLIN' BANDの)『SATORI PART2』が入ってるのが。音頭解釈で、しかもモップスに挟まれた形で、モップス、FLOWER TRAVELLIN' BAND、モップスっていう流れ。ここ超大好きですね。
フクタケ:ここは結構聴きどころかもしれませんね、今回のMIXで。やっぱりそこに反応してくださる方も結構いる。民謡文脈じゃないところで音頭を取り入れた、GSからニューロックの流れですよね。ニューロック楽曲の中の音頭要素みたいなものを。
アボ:その音頭っぽいものとか、日本っぽいものっていうのが、FLOWER TRAVELLIN' BANDのこの曲(『SATORI PART 2』)に関して言うと、トリップ感覚というかサイケデリックカルチャーとも結びついていたんだろうなあっていう。
フクタケ:これは無縁じゃあないですね。
アボ:ジョー山中さんの「ワルなところ」が出ているというか。
フクタケ:(笑)。
アボ:でもおもしろいのが、サウンドシステム解釈で言うと、FLOWER TRAVELLIN' BANDがツアーをしますと。ロックフェスティバルの黎明期ですけど、野外でPAを組むときに、日本の中でPAのノウハウがあんまりなかったときで、日々試行錯誤でやってたんですけども。
どうすれば人が一杯集まるところにデカい音を届けられるんだっていうノウハウは、今のほうが一杯いろんなテクノロジーがあるんですけど、そこでPA第1次世代みたいなエンジニアさんたちがいて。
そこの中で若い衆みたいな感じにいたのが、浅田(泰)さんっていうLife Forceとかでサウンドデザインやってる方で。DOMMUNEのサウンドシステムのデザインもその方ですし、あとは名古屋のMAGOだったり、いろんな音がいいクラブの音響の現場のサウンドデザインは、わりとその浅田さんって方が手がけていることが多いんですが。
そのFLOWER TRAVELLIN' BANDの『SATORI PART2』が『ヤバ歌謡』に入っていて、それをDOMMUNEでもプレイされたっていう。
フクタケ:発売日の7月8日にDOMMUNEで音頭特集っていう形でやらせていただいて。トークと一緒に私がDJをやって、音頭オンリーで4時間ぐらいやったんですけど。そのサウンドを作ってたのがFLOWER TRAVELLIN' BANDのPAを若いころにやっておられた方と。繋がる感じがありますね
アボ:いきなりタイムスリップして、「グンッ!」ってワープする感じ。すごい体験としてはおもしろかったですっていう、すごい重箱の隅をつつくような感想ですけど。
フクタケ:いやいや。でもやっぱ何かね、いろんなものがこの2015年、音頭っていうものに収束してきてる感じはちょっとありますよね。いろんな音頭もののリリースが増えているっていうこともそうですし。
今回の音頭編も、実は去年(2014年)にリリースしようとしてたんですよ。準備は去年していて。ただ、季節商品で夏出すものだっていうのもあって、ちょっと準備的なところで時間がないなっていうところで、1年待って晴れて今年出せたっていうのもあって。
そしたら、たまたま去年TBSラジオの(ライムスター)宇多丸さんの番組でご一緒した大石始さんが、『ニッポン大音頭時代』っていう素晴らしい書籍を出して。何かこう、世の中が音頭に近づいてるタイミングというか。
アボ:そうですね。世相はすごい反映してる気がしていて、今、「踊って良いのか、踊って悪いのか」みたいな話がいろいろあるじゃないですか。
『東京音頭』ってみなさんご存知だと思うんですけど、『東京音頭』の元ネタっていうのがあって、『東京音頭』って元々『丸の内音頭』っていうものだったんですよ。『丸の内音頭』は、丸の内の百貨店が自分ところの浴衣を売るために、そこの敷地で盆踊り大会をやって、そこで歌うために作られたっていう。
フクタケ:プロモーションソング的な側面があったんだね。
アボ:それをレコード化するにあたって、丸の内だけだと売れないから、東京とか各地のことを歌詞に足して、『東京音頭』にしたっていう経緯があるんです。
アボ:それは浴衣売りたいっていうだけじゃなくて、要は人が一杯集まると警察から怒られてしまうっていう。
フクタケ:集会の自由がなかったからね。
アボ:だから盆踊りという体にすれば、皆で集まって騒げるじゃないかっていう、完全にレイビーな。
フクタケ:レイブ的発想で。
アボ:完全にクリミナルジャスティスとスクワッドパーティって感じのマインドじゃないですか。
フクタケ:なるほど(笑)。言ったら、市民のガス抜きとしての。
アボ:「こうすれば踊れるぞ!」っていう。その「こうすれば踊れる」っていうことをいろんな人が考えてる状況って、今とすごくリンクしてる気がしてるんですよ。「次どこでパーティできるかな」みたいな。
外とか箱とかを飛び出していろんなところでパーティした人っていうのが、結構アンダーグラウンドには多くて。「どうもあそこの無人島のキャンプ場がいけるらしい」とかいう話をしてるのと、すごく近い感覚があるなって。クリミナルジャスティスとそれに対抗するレイバーの知恵比べみたいな。
フクタケ:結構規制が厳しいところでも、「一晩中盆踊りやってるんですよ」って言ったら意外とOKだったりする。
アボ:ラブパレードとかも、最初はデモじゃないですか。今もサウンドデモとかもあるけど、あれってもちろんデモもあるけども、集まってデカい音を出すとか、音楽楽しいみたいな部分が、ないわけでもないですよね。
その2本の軸になったときに、皆が踊れる、やっぱりそれを皆求めてるんだっていうのは、普遍的な感情として、ずっとあるんだろうなって思って。
アボ:そういうところで、純粋な話、日本から発信されるローカルビートっていうものが、ついぞなかったと。僕たちはもうずっと、どこかで外国人になりたいという思いがあってクラブカルチャーに行ったところもあったので。
フクタケ:日本語のもの自体が良しとされてなかったというか、かけると怒られるみたいな時代も、昔はありましたけど。今でこそ和モノとかJ-POPとか、普通にかけられる現場も増えましたけど。確かにそう考えるとね。
アボ:その中でやっぱり、シカゴからこういう音が出てきたりするっていうこともふまえていくと、やっぱりこれから、楽器や和太鼓とかにこだわらなくても、音頭のフィーリングっていうものは強烈なダンスビートとして皆の心を揺さぶる、すごい有効な音楽だと思っているので。ここで1つ、ondobeat.netとかフクタケさんが取っちゃって。
フクタケ:俺が取んの?(笑)
アボ:うん。英語のポータルサイトを作って「音頭はこういうもので、こういうリズムパターンである」っていうのがあると、黒人とかが拡大解釈したり勘違いして、「俺も音頭作ってみたんだけど」とか言って、MPCで作った音をSoundCloudとかに「#Ondo」ってタグで上げ始めたら、結構やばいんじゃないかなっていう。
フクタケ:俺がサウンドクラウドに上げてる音頭MIXは「#Ondo」にしてるよ。
他にあるのか知らないけど、でもそういうのが自然発生的にというか、勝手に解釈した音頭が増えてったら、また新しい展開が。アボ:打ち込みの、いわゆるビートミュージックとしての音頭っていうのが、すごい誤解を生んでくれると。誤解がないと絶対広がりようがないと思うので、誤解と拡大解釈をたくさんされながら、いろんなところに出ていったら、相当おもしろいことになるんじゃないのかなって。
今、日本で英国のゲットーベースミュージックをやってる若い連中が、音頭のビート感を取り入れた音を作りたいってって、すげえ頑張ってるらしいんですよ。
フクタケ:自分たちの解釈でもう1回音頭を捉え直すような流れはいろんなところで起きてるってことだよね。実際音頭の音源も、同じ日に岡村靖幸さんのリミックスで『東京音頭』っていうのが出たりとかね。これも7インチ切られたり、ある種現場対応的なこともふまえたフォーマットで出たりみたいなことも考えると、なかなかおもしろいことになってきたなあっていう。
アボ:なってきましたね!
フクタケ:最初3年くらい前にアボ君に、無茶振り的に「音頭でDJやって」って言われたときは、ちょっと飛び道具的に周りの人は捉えてたじゃないですか。半笑いというか。
アボ:そうですね(笑)。
フクタケ:こっちは全然その気はなくて、ちゃんとクラブミュージックとして踊ってもらおうと思ってやってたんだけれど。でもそれが3年経って、ちょっと状況が変わってきたっていうのは、確実に感じますよ。いろんなところから声かかるようになったし。
アボ:もう、1曲何がかかったじゃなくて、繋がりで楽しむようになってますよね。本当に純然たるダンスミュージックとして。元々純然たるダンスミュージックになるんですけど。
フクタケ:元々踊るための音楽ですから(笑)。
アボ:あとはもっと新譜が出ると良いですね。
フクタケ:確かに。
アボ:マスタリング的にも、要はノベルティ音頭のほうが録音が新しかったりするからロー(低音)が一杯取れるっていう。
フクタケ:そうそう。
アボ:だけど現場の体験としては、実は伝承音頭の本当の生のやつは、もっとエグい音が鳴ってる可能性あるじゃないですか。そこの再現性の高い、それこそデカいスピーカーでも鳴らされることがあるんだぞっていうことをふまえた上でのマスタリングとかで、古い音頭も聴きたいですよね。リマスターとか聴きたいし、新作も聴きたいです。
フクタケ:それはプロジェクト化すると良いのかもね。1曲だけどっかで出るんじゃなくて、そういうのが続けてリリースされることで、それらを使ったDJがいろんなところでプレイするみたいなね。
アボ:フクタケさん的にも新譜とかバンバンかけたいわけじゃないですか。
フクタケ:もちろん。出たらかけますね。
アボ:いわゆるレアグルーヴだけで音頭をかけたいわけじゃなくて。だから完全にエレクトロビートなんだけど音頭としか言い様がないようなトラックとかあったら。
フクタケ:そうだね。だからそういうのがガンガンリリースされて、ここのHMV record shopさんみたいなところで、「うわ、新しいの出てんぜ!」って言って買いたいわけですよ。
アボ:最終的には棚ができて欲しいですね。
フクタケ:「音頭(ONDO)」っていう棚がね。
アボ:我々、今日は棚はないのに音頭トークしてますけど。音頭の棚ができると良いですよね。
フクタケ:それを期待しつつ。
アボ:重要柔軟な音楽だもんで、結構おもしろいと思いますよ。頭が柔らかければ。
フクタケ:トーク的に、そろそろ締めないといけないんですけど。
アボ:フクタケさん、何かお知らせとかあるんですか?
フクタケ:とりあえず、もうお買い上げいただいている方も多いと思うんですけれど、『ヤバ歌謡』シリーズをぜひ聴いてみていただければなと。
音頭に限らず、歌謡曲とか普段聴き慣れている音楽とかを、クラブミュージックの解釈で聴くとこんなふうに聴こえますみたいなエクスキューズというか、「おもしろいっすよ」っていう提案だったりもするので。
入ってる曲が知ってる曲だから聴かなくていいやじゃなくて、知ってる曲が入ってるからこそ聴いたほうが良いみたいな部分もあるので。ぜひちょっとお手にとってみたり、試聴できるところでは聴いてみたりしていただければ良いかなと。
アボ:あと、サウンドシステムでの音頭体験っていうところで言うと、手前味噌であれなんですけれども、僕が企画制作してる渋谷のDimensionというクラブがあるんですけれど、そこはVOID acousticsというサウンドシステムが入って、それは上から下までズバーンって鳴るシステムなんですけども。
そのサウンドで鳴るフクタケさんのプレイを体験していただけると、音頭の本当のエグいところがわかるんじゃないかと。
フクタケ:渋谷のDimension、前にアシッドパンダカフェっていうクラブがあった場所にあるお店なんですけれど。そこで声優レアグルーヴという、声優さんの曲をレアグルーヴ解釈でかけるSweet Sling Singaporeというユニットがありまして。彼らのパーティで明日、音頭セットのDJをやります。
アボ:19時から22時まで。終電前なので、ぜひとも来てください。
フクタケ:あと深夜でよりラウドな音が出るところだと、8月14日に同じくDimensionで「Dimension夏祭り」というのを23時から深夜やって、そのときは終電前よりも音がね。
アボ:他のテナントに気にせず音が出せる時間なので。この間も、フクタケさんが音頭をかけたらビールのグラスが割れたので。これ本当だよね!
フクタケ:あれはおもしろかったよね。
アボ:音頭でグラスが割れるんだっていう。その体験をしてみて欲しいんですよね。嘘だと思って、騙されたと思ってて良いから。
フクタケ:ビールのグラスが割れるほどの音頭体験した人はこの中にほとんどいないと思うので、よろしかったらぜひ、Dimensionというところで鳴らしている音頭を体感してもらえたら、音頭観が変わると思います。
アボ:今日僕らが話した話って、もしかしたらフワッと聞こえてしまった部分があるかもしれないんですけれども、音頭でビールのグラスがガンッって動く体験を1回していただけると、「なるほどそういうことだったんだ」とわかるかなと思いますので。ぜひとも。体験ばかりは、言葉ではなかなかね。
フクタケ:難しいところがありますけれど。またイベント出演の情報は私のTwitterとか、ユニバーサル・ミュージックのDJフクタケ公式ページとかでインフォメーションさせてもらいますので、いずれかチェックしていただければという感じです。(DJフクタケユニバーサル・ミュジック公式)
このあと実践編というか、DJセットを用意していただいているので、DJのほうもやらせていただきます。
お時間の許す限り楽しんでいただければと思います。じゃあ。トークのほうはこれで一旦終了させていただきます。今日はありがとうございました。
アボ:ありがとうございました。
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