2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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古賀:たまに間違えたまとめサイトとかで、「フェチ本まとめ」みたいなところに、『ソラリーマン』も入ってるじゃないですか。
青山:出てます、出てます。
古賀:フェチじゃないですよね(笑)。
青山:フェチとは何かっていうことですよね。『スクールガール・コンプレックス』とか「水中ニーソ」は、フェチと言ってもいいと思うし、別にそれで全然ありですよね。
じゃあ『ソラリーマン』は何フェチかと。でも聞いてみると、おやじフェチとか、枯れ専とか、いろいろあるんですよね。だから、もう何でもフェチになるんです。
ということなのかもしれないですね。何でもかわいいって言えて、「キモカワ」って言えるぐらい、「かわいい」が広いように、「フェチ」ももう、何でもあり。
古賀:何か、エロいとか萌えるみたいな要素さえ見つかれば。
青山:そうですね。じゃ、フェチってエロいのかっていうと、またね。
古賀:ちょっと違いますもんね。
青山:だからフェチって言ってるものは、エロいだけじゃないし、むしろ、多分極めるとエロくなくなってくるんじゃないかなと思っていて。
古賀:トークイベント「月刊水中ニーソ」のひな型になってるのが、去年『水中ニーソプラス』を出した時に、菊地成孔さんと松永天馬さんとお話ししたやつで。菊地さんって、15年来お付き合いがあって、真正の水中フェチなんですよ。
「水中ニーソ」を見ながら、「ノンケにはわかんないよ」みたいな話から始まって。ただ、わかるように組み換えをしたのがこの本で、みたいな説明する一方で、菊地さんは「フェチにとってSEXは3番以下だから」って言うんですよ。
青山:なるほど。
古賀:2番がいまだに気になってるんですけど(笑)。
青山:そうですね(笑)。そこは奥深いものがありますね。その辺が一般的に現象として出るのは、10年、20年先かもしれないですね。
古賀:そうですね。だからフェチにとっては、むしろ直接的なエロを入れたせいでフェティッシュじゃなくなっていくみたいなことがあるじゃないですか。
青山:そう。『絶対領域』も研究していったら、本当に「領域」に見えてきて。僕は元来、子どもの頃から算数フェチなんですよ。数字とか算数とか図形とかに異常に執着してまして。公文式をずっとやってたんですよね。計算ドリルとか。
だから、『絶対領域』を撮ってる時も、撮影してても、本当に領域に見えてくるから、動かしてて、「あ、すごい! ここの2本が平行になった!」とか「この角度が90度だ!」とか思いながら撮るようになっちゃって。だから本質的には全然エロじゃないけど、ゾクゾクしてるんです。
古賀:なるほど。興奮があるんですね、ちゃんと。
青山:すごいんです。でもその次に何があるかっていうと、わからないですね。
古賀:興奮してるだけ(笑)。
青山:そう。「高まる」っていう。
古賀:「平行になった!」「同じ幅になった!」(笑)。
青山:さっきのモテる男の子を見て「うわー」って思ってたりとか、何か高まって、でもそのやり場がないっていうのが、僕一番ポイントかなと思ってて。やり場がないものって、写真にしやすいんじゃないかな、みたいな。
古賀:なるほど。
青山:でも写真に撮っても、それが解消されるわけじゃないんですよ。
古賀:「うわー」っと高まった思いを定着させるところまではできますよね。
青山:そうですね。でも、それによって解決しないっていう感じはあるんです。
古賀:観客が受け止めて、続きを……みたいな世界っていうことですよね。
青山:そうですね。だって、誤解もいっぱい受けるじゃないですか。まあ、それは誤解を受けやすいジャンルだし、受けても全然いいという気持ちにはもうなりましたけど、でもそれは当然で、勝手に「うわー」って高まって定着させてるものだから、わかるわけないですよね。究極的には。
古賀:作家側にも結論なんか出てないですよね。
青山:そうなんです。もちろんその中で、モチーフがベタであれば、わかった気にはなるけど、でもそれも結局わかってないんです。本当は。
『絶対領域』の本を出して、「わかりますよ」って言っても、絶対共通してないんです、理解は。僕は、この図形的なところに本当は「うおー!」って言ってるんだけど、でもそれはわかるわけないし、わかって欲しいわけでもない。
わかって欲しいと思います? 「この水中ニーソの魅力、お前らわかれよ!」とか。
古賀:そうでもないですね。
青山:ですよね。でも、そういうものだと思うんですよ。
古賀:ネットでみんな言葉を吐くのが簡単になったので、まずわかろうとするじゃないですか。さすがに「水中ニーソ」をずっと続けてるので減ったんですけど、出てきた当時は本当に悪口がすごい量あって。ただ、それが結果的に宣伝になっていったんですけど。
まずは「ニーソ」って言った時に、絶対領域信者みたいな人たちから苦言がありましたね。ある意味、絶対領域が全廃されたわけじゃないですか。「領土問題」って呼んでるんですけど(笑)。
青山:確かに。スカートとか、上側ないですからね。
古賀:取っ払っちゃってますからね。1冊目は競泳水着なんですけど、2冊目は普通にビキニがガンガン出てきて。そうなると、「ニーソの魅力がわかってない!」みたいなことを言われるんですけど。
ただ、別にこっちは沈黙するしかないんですけど、独自で「ニーソが好き」みたいな人たちが、「お前らが好きなのは絶対領域であって、ニーソではない」みたいに喧嘩になってて(笑)。
青山:でもそうですね。わかります。ニーソ好きは多いんですよ。女子に。
古賀:女子にね。
青山:ニーソは好きで履いてるけど、絶対領域は好きなわけじゃないっていう人はいます。だからわかりますよ。そういう意味で、さっきの『絶対領域』だと、『絶対領域』について考えないと、駄目だろうなと。
古賀:ニーソについて考えるわけじゃないですもんね。
青山:そうです。ニーソについては編集の人に考えてもらいました。だからニーソ選びは、僕はタッチしてないです。領域の多様性とか、領域については、すごい考えたんですけど。
だからあの本を、領域だけ取り上げたら、ちゃんと全部違う領域になってるんです。まあ、そんなことはどうでもいいんですけど(笑)。でも、そうしないとね。
古賀:当時は、「絶対領域信者たちが見ている」っていう意識があるわけじゃないですか。
青山:そうです。そうだし、やっぱりライトな層、ライトなファンにも、コアなファンにも、やっぱり愛される写真が撮りたい(笑)。
でも企画っていうのはそういうことなんですよ。企画ということは「俺がやりたいようにやる」じゃないんですよ。大前提として。それは作品でやるものなんです。作品集で、自費でもいいから出せばいいんです。『ソラリーマン』と『スクールガール・コンプレックス』の作り方はそうなんです。もう、自分がやりたいようにやるんです。基本。
なんですけど、『絶対領域』とかは作品ではないので。
古賀:観客の目がちゃんとあって。
青山:本当そうです。
古賀:これすごいですよね。全部並べてるので。
青山:ありがとうございます。何か嬉しいです。冗談みたいな話で、36冊目出した時、36歳なんです。来月37歳にして37冊目を出すんです。
古賀:おめでとうございます。
青山:いえ、とんでもないです。あと1つだけ言っておきますね。本の印税って、すごく安いんです。そこだけ覚えて帰ってください(笑)。
古賀:写真集で儲けてるわけではないということですね?
青山:はい。何か「印税生活ウハウハですね〜」って言われたりするけど、本当にウハウハではないので。
古賀:だってこれ、隔月以上のスピードですよね。
青山:さっき言ったように、どれもすごい全力でやるから、あんまり儲けを考えずにやってしまうんですね。だから本当に、やればやるほどお金が減ってるんじゃないかなっていうぐらいなんです。
特に作品はそうですね。『むすめと!ソラリーマン』とか、北海道から沖縄まで2年以上かけて、いろいろ回って撮ってるんで。
古賀:印税ではどうやっても。
青山:そう。まあ、お金の話はいいと思うんですけど、一応、この流れで見ると何か、ウハウハ感が。
古賀:ウハウハ感がありますもんね。
青山:そう。過剰な誤解だけ、解いておきたくて。
古賀:今のところ『ソラリーマン』で始まって、『むすめと!ソラリーマン』までなんですね。
青山:そうです。また次から新しいのが出てくると思いますけれど。
古賀:全然違うんですか?
青山:次がどうなるかは、まだ自分にもわからないですね。
古賀:あと、ギャラリーを作られて。
青山:そうですね。7月にギャラリーをオープンしますので、どうなるんでしょうね。ちょっと今いろいろ考えてますけども。もしかしたら古賀さんに展示を依頼する側になる可能性もありますし。
古賀:展示も、全然儲かりはしないじゃないですか。
青山:しないです。
古賀:ついでに、あまり人を見せる機会がないので出しますけど、たまたま僕と青山さんと共通の知人がいて。知人っていうか、『スクールガール・コンプレックス』の担当編集が、僕の担当編集でもあるっていうか。担当編集じゃないですね。編集者とデザイナーっていう関係であって。
青山:すごい繋がりなんですよね。
古賀:そうですよね。実は青山さんと初対面なのが意外なぐらい、被ってるものがいっぱいあって。さっきの「紅リサーチ」もそうですけど。
これは今ガッツリやってるわけじゃないんですけど、「COMIC CUE」っていう雑誌があって。僕自身が「水中ニーソ」の人として、前に出過ぎちゃったのであれなんですけど、実はデザイナーなので。
98年のこれは横山光輝さんのやつを使ってるんですけど、ここからしばらく、コミック雑誌なのに、表紙の絵も僕が書いてるっていう、めちゃくちゃな時期があって。
青山:これ、(担当編集の)堅田さんのアイコンになってますね。これはご存知の方もいっぱいいると思うんで、ここで繋がる場合もありますから。「水中ニーソの方が」ってなるんですよ。そういう繋がり方はおもしろいですよね。
古賀:で、出たばっかりの田中圭一さんの『神罰1.1』も装丁させていただいて。前やった装丁を直しただけなんですけど。
青山:デザインもできるっていうのは、もう心底……。僕は本当に写真しかできないので。「水中ニーソ」って、やっぱりブランディングがすごいなと思うんです。フォントとかも。あのフォント見ると「水中ニーソ」だって思うし。
こういったブランディングがあるからこそ、ここまで広がりを見せてるっていうのもあると思うんです。当然。写真の良さもありますし、絶対それはあると思っていて。
古賀:たぶん、その良く知らない人から見ると、超適当な企画に見えるんですよね。まあ、超適当な企画なんですけど、作品であって企画ではないので。
企画で考えると、どんどんわからなくなるじゃないですか。今やっぱり、みんなわからないと不安になるので。
『スクールガール・コンプレックス』は、青山さんがおっしゃるように、ある意味ベタな部分があって、理解しやすいっていうのがあったんですけど、「水中ニーソ」は理解しにくい。
でも、正体を知らないと、やたらちゃんとしたデザインとかで出てるじゃないですか(笑)。なので、そのごっちゃぶりに戸惑うっていうか、本当に売れてるかどうかは置いといて、売れてる感だけはあることに不思議がってる層はいるみたいですよ。
青山:でもそれって、僕が思うのは、人間ってそういうもんだろうなって思うんですよね。それって、誰でも、やっぱり例えばいくら喋って、いくらお仕事で付き合っても、わからないですよね、その人のことは。
でも作品って、実はこういうことを考えながら、こういうことに執着してるんですってことを、もう言っちゃう、発表しちゃうっていうのが作品、作家なので。
でも別に人間みんな作家ではないので、やっぱりそういうのを出すっていうのは、非常にリスキーなんです。失うものが多いし、出さなくても生きていけるし。積極的に出したいっていうタイプの人もいますけどね。
古賀:青山さんは2006年に制服の写真を飾った時に、在廊してたけど隠れてたんですよね(笑)。
青山:そう。とりあえず女子はドン引きするなと思って出してたんですよね。だけどその時はもう結婚してたから、「まあ結婚してるし、いっか!」と思ったんですよね、最終的には(笑)。
もともと別に何もないですけど、「別に女の子から嫌われたり、キモイって思われても、いいじゃん! 結婚してるしね」と思って、何とか心を静めてたんです(笑)。
でもやっぱり、作品として出したいと思ってました。
古賀:結果的には、青山さんは出して良かったんですよね?
青山:そうですね。本当にそうですよ。
古賀:出してなければたぶん、全然違う人生なんですよ。
青山:本当にそうですね。結局、出すべくして出したとも言えますし、出さなかったら今はもちろんないっていうのは、もちろん何でもそうだと思いますけど、そうです。
でも、単純に出せば出すほどいいんだということに気付きました。作品としては。それこそ、ドン引かれれば引かれるほど、いいのかもしれません。さっきの、それが宣伝になるってあったじゃないですか。でも、わかる人はいるんですよね。
古賀:「痛さ」みたいなものを内蔵してないと、何となく格好良くなくなっちゃったじゃないですか。格好悪いって思われたくないとか、痛いって思われたくないと思って守りに入ったものの格好悪さってすごいじゃないですか。
青山:そうですね。結局、どこまで引かれても、大丈夫なんですよね、今。たぶんこれを20年前にやったら、もっとまずかったかもしれないし、20年後にやったら、今さら何も響かなかったかもしれないし。
だから時代とのマッチングっていうのもあるんですけどね。そうは思います。だから、やっぱり出したもん勝ちだとも思いますし。よく言われたのは「いや、俺も似たようなこと考えてた」みたいなことを。
古賀:なるほどね〜。
青山:「……うん」と思うんです(笑)。だから「僕も似たようなことを考えてた」って(笑)。そうなんですよ。
古賀:やったもん勝ちという、カルタ取りみたいな世界ですもんね。
青山:それはそうです。
古賀:そう言えば、「水中ニーソ」でエゴサするとゴロゴロ出てくるのが、「水中ニーソがあるんだったら、ほにゃららもあっていいじゃない」っていう、「俺の考えたフェチ」みたいなところを書く人がかなりいるんですよ。
青山:例えば水中タイツとか、アレンジ版みたいな。
古賀:そう。アレンジ版みたいなものを書く人がいるんですけど、書いちゃわないで、こっそり撮りためれば、話題になるかもなのに、もったいないねっていうような気はしますよね。
青山:そうですね。やっぱり言葉に出ちゃうってことは、撮る必要がないんですよね。
古賀:そっか。
青山:続けていくものの強さというか。活動を重ねれば重ねるほど、作品の力も強くなっていくっていうのは、私も実感しましたので。
古賀:『ソラリーマン』とか、今すごい強度ですからね。
青山:まさにそういうことだと思うんですよね。もちろん何も起きないかもしれないですけど、でも極論を言えば、別に誰からも何の話題にもならなくても、撮り続けるんです。それが作品ならば。
古賀:イヤイヤやってるわけじゃないですもんね。
青山:流行る、流行らないは関係ないんですよ。僕も最初の頃はそうですよ。別に当たると思ってやってるわけじゃないし。
古賀:友達減るとか言ってましたもんね。
青山:お金は減るし、マイナスしかない。けど、やりたいからやるしかないっていうか。
古賀:やらないと死んじゃうんですよね。
青山:たぶんそういうことだと思うんですよ。自分にとって切実なんです。
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