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青山裕企(全5記事)

「恥ずかしくてずっと隠れてた」スクールガール・コンプレックス初展示の思い出を青山裕企氏が語る

「水中ニーソ」で知られるデザイナー・映像作家の古賀学氏が中野・Bar Zingaroで毎月開催しているトークショー「月刊水中ニーソ」。2015年5月に開催されたイベントでは、『スクールガール・コンプレックス』や『ソラリーマン』で話題の写真家・青山裕企氏をゲストに、作品作りにおけるコンプレックスの役割や、思春期の頃の過ごし方などについて語られました。「嫉妬」や「黒い歴史」を原動力に36冊(当時)もの写真集を出版してきた青山裕企氏が語る「コンプレックス」とは。

メガネをかけることで、ちょっとマイナスの状態にしている

青山裕企氏(以下、青山):メガネかけてるから、全然違うように見えますけど、青山裕企です。よろしくお願いします。

古賀学氏(以下、古賀):はじめまして。

青山:はじめまして。完全に初対面。

古賀:ガチンコの、はじめましてなんですよね。

青山:はい。さっきチラッと話しましたけど、本当にはじめましてですよね。

古賀:メガネかけてるんですね。

青山:2ヶ月ぐらい前からメガネに変えました。もともと小学校の時はメガネだったんですけど、ずっとメガネは嫌いで、それこそメガネにコンプレックスを持っていて。おしゃれメガネみたいなものに反発心を持ってたんです。

古賀:今日も会場にメガネいっぱいいますもんね。

青山:そう。あまり敵を作る意味はないんです。でもだからその……しまった、さっきお酒を入れてしまったんですよ。

古賀:いやいや大丈夫。僕も実はコンタクトなんですよ。

青山:本当ですか? でもメガネをかけるっていうのは、そういう自分のコンプレックスを「スクールガール・コンプレックス」で撮っていったら、どんどん解消されてきている自分がいて、何か自分はもっとコンプレックスにまみれていないと駄目になるんじゃないかなと思って。

でも人から見ても、何のことだかわからない。ただ「あ、青山さんもおしゃれメガネですか?」とか思われちゃうんですけど(笑)。そうじゃなくて、自分としてはメガネをかけることで、ちょっとマイナスの状態のつもりなんです。

「スクールガール」の最初の展示のときは隠れていた

古賀:突然ですが、やっぱりコンプレックスがあることが重要なんですか?

青山:そうですね。僕の場合は、自分自身の思春期の頃の女性に対するコンプレックスっていうのは、作品に入れています。

古賀:最初の作品の『スクールガール・コンプレックス』がそうですよね。

青山:そうですね。あとでまた伺いたいなと思うんですけど、作品って、例えば「水中ニーソ」をこれだけずっと撮ってる人って異常だと思うんですよね。

古賀:まあね(笑)。

青山:「何で?」みたいな。でも絶対それには理由があって、言ってるか言ってないかはともかく、絶対あるんですよね。単純におもしろいからだけでも続かないんですよ。普通はこんなトークイベントを月刊でやろうとは思わないんだから。

古賀:毎月展示したりもしないですよね。

青山:ですよね。だからたぶん、本人にしかわからない、もしかしたら本人すら気付いてないパターンもあるかもしれないですけど、理由があると思うんですね。

だから僕は、この『スクールガール・コンプレックス』っていうのは自分のコンプレックスを撮ったつもりだったんですけど、結構ベタなコンプレックスだったから、「あ、わかる、わかる」みたいな。

古賀:共有してもらえたコンプレックスなんですね。

青山:そうです。だけど最初はマニアックなコンプレックスで、こんなことは自分しか思ってないんじゃないかと思ってたんです。

古賀:撮っていた当時ですか?

青山:はい。だから展示も、最初の最初に展示したときは恥ずかしすぎて。それが2006年から2009年までですかね。本も出てないし、Webにもアップしていないから、もう恥ずかしすぎて、ずっと隠れてたんです。展示やってるのに。

古賀:在廊してるのに?

青山:在廊してるのに、ずっとバックヤードから見てた。

古賀:(笑)。その青山さんが恥ずかしいですね。

青山:恥ずかしい。本当に恥ずかしくて。女の子から引かれると思ったんです。

古賀:引かれましたか?

青山:それが思いのほか引かれなかったので、自分が思ってたのと違う捉えられ方をしてるってわかって。「わかる、わかる」みたいな。それで「あ、わかるんだ?」って思って。

羨ましい人生を過ごしてきた人とは違う

古賀:『スクールガール・コンプレックス』の本が出た時に、発明だと思って。女の子の目も見れない男の子の視点を、そのまま撮ることができるんだって思いました。

青山:あれもすごい緊張しながら撮ってたんです。最初の頃は特に。何かもう、後ろめたさと。だって異常ですよね? 制服を着た女の子を。これはやっぱり、この10年結構変わったんですよ。

古賀:はい。変わりましたね。

青山:やっぱり相当変なことですよ。何か女の子呼んで(撮影して)。しかも僕人見知りなんですよ。だから女の子と、そんなに上手く喋れないんですよ。

古賀:今もですか?

青山:今もそう。少しは慣れましたけど。だからそれで制服着てもらって、太ももとか足を撮ったりとかって、もう犯罪ですよね(笑)。でもそれを真剣にやってたし、ちゃんと説明してやってて。

古賀:冷やかしでやってたら、たぶん上手くいってないでしょうね。たぶんですけど。言っていいのかあれなんですけど、偽青山裕企がいっぱい出たじゃないですか。

青山:ありましたね。

古賀:青山さんと同じモードっていうか、後ろめたさとかがあって撮ってるやつは、それでもいいんですけど、中には本当は後ろめたくない職業カメラマンが青山さん風に撮ろうとしたやつがいっぱいあるじゃないですか。あれってトリミングは確かに似てるけど、だいぶ違いますよね。

青山:そうですね。だから、ああいうの見ると、羨ましい人生を過ごして来たんだろうなって(笑)。思春期もそれなりに女の子といいこともいっぱいあって、かつ大人になってから、また女の子呼んで、楽しく撮影して。ダブルでいいじゃないですか(笑)。

ちゃんとした男性には敵うわけがない

青山:だからこういう、古賀さんもそうだと思うんですけど、いわゆるフェティッシュな作品を撮ってる写真家、カメラマンっていうグルーピングをされた時に、会わない方がいいパターンもあるんですよね。だから僕も最初に(今回のイベントの)お話しをいただいて、一瞬迷ったんですよ。

だけど、もちろん写真集とか作品とかもずっと見させていただいてて、やっぱり今回お話をしたいなと思ったのは、同じ匂いを感じるところがあって。それもまた、今日まさに証明されたのが、さっきの「曖昧☆美少女アート展」の最後の、女の子4人の中央で(小さくなってる写真)。あれがたぶんピークっていうね(笑)。

古賀:ハジケられない。

青山:そう。そのあとに何かがない。そこで終わってるんじゃないかなっていう。「ありがとうございました」みたいな。わからないですけど、そんな気がするんです。

古賀:もっとハジケてる写真もあるんですけど、それはクラブイベントでVJをやって、そこで完全に酔っ払って、その後VJ機材を全部山手線に置いて帰るっていう事件をやったときで(笑)。そのくらい酔っ払わないと、はっちゃけられないぐらい。

青山:なるほど。いや、いいんですよ。別にいいんですよ、真似とか。最初はちょっと反発してたんですけど。やっぱり反発してたんですよ。そんなのをネット上に書いたりして、それに対していろいろあって。賛否もあったりして。

それでひとしきりいろいろあって思うのは、やっぱりどこまで行っても、思春期の頃に満たされなかった異性に対する思いは、撮って、撮って、コンプレックスが解消されてきて、慣れてきたとは言っても、自分の中では変化かもしれないけど、さっきの話みたいに思春期の頃から単純に満たされてる男子、男性にはね。ちゃんと女性とお付き合いしてきてる、正常って言ったらあれですけど、ちゃんとした男性には敵うわけないし。だからもう嫉妬でしかない。

思春期の記憶を誤魔化そうとしている?

古賀:10代には戻れないし。

青山:戻れない。永久に戻れないから。でもある意味で、戻れないから撮り続けられるから、いいんですよ。

もう叶えられないから。今も、フェティッシュな話でもないんですけど、「彼女写真」っていう連載をやってて。それは高校生とのリアルなデートを、さわやかな感じで撮ってるんです。それを毎月やってるんですけど、僕が高校生の時にデートをしたことがなかったから、したことにしたいっていうか。

古賀:妄想デート。

青山:そう。妄想して、「ああ、こういうデートしたかったな。むしろ、したかもな?」ぐらいの感じで、何とか記憶を(誤魔化そうと)。でも年を取るとだいぶ忘れるじゃないですか、思春期のことは。

古賀:だいぶ忘れてますね。

青山:黒い歴史も忘れるから、自分の脳内では、誤魔化せるかなと思って。

古賀:誤魔化せてます?

青山:全然(笑)。駄目ですね。でも、だから撮れるっていうのもあるから、ある意味大丈夫かなと思うんですよね。古賀さんもよく言われませんか? かわいい女の子と水中で水着とかで撮って、間近で見たりとかしてると。かわいい女の子がいっぱい来て、「古賀さ〜ん! 撮ってくださいよ〜!」みたいな。いいですよね。傍から見たら。

古賀:傍から見たら、とてもいいですよね。撮り始めた頃からは考えられないことが起こってるってことですよね。

青山:それは作品を撮り続けていく上では、すごいいいですよね。撮りやすくなるので。たぶん最初はすごく苦労されてたんじゃないかなと思うんですけど。

古賀:無理でしたね。

青山:でも水中撮影はずっとやられてますよね?

古賀:はい。

青山:だからそこから、女の子にニーソを履かせて撮って。僕の作品の最初もそうですけど、「何それ?」って言われてたところから、今は「水中ニーソ」って認知されていって。作品を作るうえでは、もう恵まれすぎてるし、それは当然、各々の功績だと思うんだけど、でもその先には……。いや、何もなくていいんですよ? 実際何もないし、何もなくていいんだけど。

だから別に、女の子といいことはないんです。いいことはないってことが言いたいのかな? わからないけどね? 僕、酔ってないですからね! だいたいいつもこんな感じのことを、イベントで喋ってるんです。

青山裕企全著作解説

古賀:今回青山さんの著作リストを作ったんですけど、本当にすごいなと思ってて。

青山:ありがとうございます。

古賀:僕自身は、本当に、『水中ニーソ』が書籍化されたのは半分青山さんのお陰だと思ってて。

青山:いやいや、そんな。

古賀:「フェティッシュ写真集」みたいなグルーピングの説明をする時に、よく青山さんの名前を使わせてもらってるんですけど、10年ぐらい前まで、本屋さんにはエロ本とタレント本しかなかったじゃないですか。写真集の棚そのものがなかったりすることも多くて。

青山さんより前にも、何人かやっぱりフェティッシュ写真に属する方はいらっしゃるんですけど、でもそれはタレントを撮るとタレント本だし、そうじゃないとエロ本の片隅に置いてあったものが、青山さんの本から徐々に棚として独立を始めて。

あと結構抜け落ちてる視点としては、実はどんどん出版の規制が厳しくなっちゃって、この10年で結果として書店にエロ本がなくなっちゃったっていう。あるのは写真集っていう棚と、タレント本の横にあるタレント写真集っていう状況にここ10年でなったんですけど、その棚があるお陰で、僕がばら撒いてた写真を「書籍化しませんか?」っていう話になっていったような気もするんで。今回青山さんの著作リストをまとめさせていただいたら、本当にすごくて。

青山:順番に出るんですか?

古賀:順番に1stから、36thまで並べてます。

青山:ありがとうございます。自分の著書を歴史順に見るのって、主催のイベントでもやったことないですね。この資料いただきたいぐらいです(笑)。

『ソラリーマン』と『スクールガール・コンプレックス』はつながっている

古賀:2009年って1冊しか出してないんですよね。

青山:そうです。これが最初の本で、僕は『ソラリーマン』『スクールガール・コンプレックス』を2006年から同時平行で撮ってたんです。しかも書籍化もほぼ同時に決まりまして。2008年に2つの作品を同時に展示したんです。

古賀:え!? 同じところで?

青山:別の場所なんですけど、同時期に。そうしたら、それぞれにオファーが来たんです。奇跡的に。そんななかで、僕の考えとしては『ソラリーマン』を絶対先に出したいっていうことだけは決めてたんです。

っていうのは、どちらの作品も、もちろん真剣に取り組んでいるわけですが、『スクールガール・コンプレックス』を先に出して、こういう写真を撮る人っていうふうに狭くカテゴリー化されるのも、ずっと長く活動を続ける上で、ちょっと偏りすぎるかなと思ったので、まず『ソラリーマン』を出すっていう順番で。

あと、この2冊の本の判型・サイズを、完全に一緒にしてるんです。僕の中ではテーマは一貫してまして。一見、全然違う作品に見えるかもしれないんですけど。

古賀:出した出版社は違うけど、判型を一緒にしたんですね。

青山:そうなんです。サラリーマンも女子高校生も、スーツ・制服といったように、あるコスチューム・衣装を身に着けることで、日本の社会の中でありふれた存在になる。そして、ありふれ過ぎていて、目に留まらない。画一的に見えてしまうと思うんです。

サラリーマンは特にそうだし、女子高校生も、「制服着たら女子高校生だよね」っていう決められたイメージで見てしまう、みたいな。そんなふうに記号的に見える被写体をテーマにしているんです。

ということで、本のサイズなどから、作品の一貫性を伝えているんですね。

作品と企画の違いとは何か

『思春期』。谷郁雄さんとのコラボです。『スクールガール・コンプレックス』と平行して撮影していました。男子の妄想というより、女子の叙情的なイメージで、よりエロティックな雰囲気で撮影しています。自分の中では、『スクールガール・コンプレックス』の1と2のあいだ、1.5みたいな感じです。

『絶対領域』。僕は、2006年から『ソラリーマン」と『スクールガール・コンプレックス』しか、作品としては撮ってないんです。ですので、これは作品ではなく、本のための撮影ということになります。

古賀:これは作品じゃなくて、仕事って感じなんですか?

青山:企画ですかね。

古賀:企画。

青山:はい。受け止め方は自由なので、作品でもいいんですけど、自分の中ではあくまで、区別しているということですね。でも企画だからおろそかにしてるわけでもなくて、ましてや作品の方が偉いわけでもないんですが。全力で『絶対領域』を撮りまくりました。

古賀:企画に応えるんですよね。

青山:そうですね。

古賀:これって企画は、編集者が考えるんですか? それとも青山さんが?

青山:これまでの本は、ほぼオファーをいただいて撮ってます。最近の本で、自分から企画を持ち込んでっていうのも出てきましたけども。

古賀:じゃあこの当時は一迅社の方が。

青山:そうですね。

青山『UWAKI』。これは吉高由里子さんのフォトブックですね。

古賀:最初のタレント本。

青山:これも『スクールガール・コンプレックス』の展示の時に、マガジンハウスの編集の方が見に来てくれて、「吉高由里子さんの本を撮りませんか?」って言われたんですけど、「失礼ながら伺いたいのですが、青山さんは顔などお撮りになるんでしょうか?」という話で(笑)。まあ、そう思われますよね。でも普通に(顔も)仕事で撮ってたので、「撮りますよ」って。

古賀:『スクールガール・コンプレックス』が2006年に展示してた時点で、青山さんご自身は、既にカメラマンだったんですよね? 普通に仕事で撮って。

青山:そうですね。ただ、独立して2年目とかなので、まあ、細々とですね。

古賀:普通に、受け仕事をいっぱいやってたんですか?

青山:そうですね。

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