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『暗闇から世界が変わる ダイアログ・イン・ザ・ダーク・ジャパンの挑戦』発刊記念トークショー(全4記事)

人は最後に何と言って死にたいか 終末期看護のプロが聞いた、最もシンプルで難しい言葉

まっくらやみのエンターテイメント「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」を知っていますか? 1988年にドイツで生まれたこのイベントは、現在までに32カ国、800万人を超える人々が体験しています。今回、1999年から日本でダイアログ・イン・ザ・ダークを運営しているDialog in the Dark JAPAN CEOの志村真介氏が、著書『暗闇から世界が変わる〜ダイアログ・イン・ザ・ダーク・ジャパンの挑戦〜』(講談社現代新書)の発売を記念して、代官山 蔦屋書店で開催されたイベントに登壇。同じく運営に関わる志村季世恵氏、アテンドを務める川端美樹氏と共に来場からの質問に答え、今の日本に足りないものや、暗闇をポジティブに活用するダイアログ・イン・ザ・ダークの魅力、人が死ぬ間際に残したい言葉など、さまざまなテーマについて語りました。

TSUTAYAで探した歌をプレゼント

志村真介氏(以下、志村真介):そろそろ時間ですね。

志村季世恵氏(以下、志村季世恵):最後にちょっとみきティから。

志村真介:プレゼントをいいでしょうか。

志村季世恵:みきティって、というか、みきティだけじゃなくアテンドたちみんななんですけど。友達になるのが本当に上手なんですね。

私たちは、例えば暗闇で、障害者の疑似体験をしてくださいと言いたいんじゃないんですね。それは、たったの90分では無理なことだと思うんです。たったの90分でとかっていうのは。

だけれども、私たちは友達になれると思っているんですね。出会うと、こういうことができるのかとか、こんなにすばらしい感性があるんだ思いますし、出会うことによって友達が増えるんじゃないかと思ってるんです。

みきティは、そういう場を作ったり、友達作るのが本当に上手なんです。そんな気持ちを込めて、今日は歌って終わったらいいなと思って、先ほどお願いしました。みなさん、大きな拍手を。(拍手)

(会場拍手)

川端美樹氏(以下、みきティ):じゃあ、みなさん目を閉じて聞いていただきたいです。

(磯部俶・作詞作曲「遥かな友に」歌唱)

(会場拍手)

みきティ:みなさん、ありがとうございます。今日、さっき「歌える?」と言われて、どうしようと思いながらも、この曲にしたのはエピソードがありまして。

この曲はすごい好きなんですけど、磯部さんという早稲田大学の文学部を出た方が合唱をやっていた時に、学生がとても落ち着きがない合宿の時に、みんなのために作った歌なんです。歌っていても懐かしさを思い出すような、本当に心が温かくなるような感覚があるんです。

あるときこの曲を聞いて、どうしてもまたこの曲聞きたい、自分で歌ってみたいと思ってCDを借りにTSUTAYAさんに行ったんですけど、歌詞もほとんど知らないし、曲も全然知らないし、題名もわからなくて。

それでカウンターに行って、「すみません。全然何の曲か分からないんですけども、借りたいCDがあるんです」と言って、きょとんとしているお兄さんの前で歌を歌ったことがあるんです。そのときは「わかりません」って言われましたけど(笑)。それを今日、ここに来て思い出しました。

ダイアログ・イン・ザ・ダークのテーマはどう決めているか

大西真那氏(以下、大西):本当にありがとうございます。まだまだずっと聞いていたいお話がたくさんあるんですけれども、時間もあと10分と迫ってきていますので、みなさんからいくつかいただいた質問をご紹介したいと思います。

まず、「ダイアログ・イン・ザ・ダークは季節によってテーマがあると思うんですが、テーマはどういう仕組みで決めているのでしょうか。あと、そのテーマに沿ってアテンドの方はどういう訓練をされているのか」という質問が来ています。

志村季世恵:これは私が答えますね。別にこういうふうにしようというのはなくて、ただ四季を感じていただきたいなと思っています。せっかくこの日本に暮らしているんですけれども、どうしても私たちって五感が閉じがちですよね。暗闇は五感を再生できる場なので、その状態に合わせて、人と関係性を持ちやすいものをコンテンツに入れていこうと思っています。

アテンドとは結構いつも戦っています。「そんなのできない!」と言われるんですけれども、私は「絶対できる!」と思ってやっています。みきティは、いつも「できるできる!」と言ってくれているんですね。

みきティ:新しいものをやってみたいタイプなので。

志村季世恵:そんな感じで答えになっていますでしょうか。仕組みはあまりないですね。こんな感じで、考えてるだけなんです。

日本人は減点法で評価しすぎている

大西:あとは、「ソフト面でもハード面でも色々あると思いますが、日本の社会に向けて感じる課題などありますか?」という質問が来ております。

志村真介:多分ですけど、今日来られている方は年齢層が色々あるので、それぞれの受けた教育は違うと思うんですけども。

自分たちは減点法で評価しすぎていますよね。人のいいところを褒めるのではなくて、減点する。特に自分のことはさておき、人の悪いところを指摘するのが非常に上手ですよね。それを努力して、その部分を改善して、今に至っています。

でも暗闇の中だと、これまで16万人以上が体験されていますが、人の悪いところを話されることは聞いたことがないんです。その人のいいところとか、これいいねっていうところばかり。

例えばみきティたちと街で会っても、みきティに対して「ありがとうございます」という言葉はあまり聞かれないかもしれない。なぜかというと、助ける側と助けられる側が確定してるからなのです。

でもお金を払って体験していただいた方は、暗闇の中に入ってみきティたちに助けられ、みきティがいてくれて良かったとみきティたちアテンドに「ありがとうございました」言って帰られます。こういうことって他にもありますが、まだまだ少ないのです。

暗闇の中で、別に目に見えるモノの提供は何もないし、お金と交換したものは目に見えないモノです。でも「みきティと出会えて良かった!」と直接みきティに言うこと自体で、お互いが成長をしていると思うんですね。目が見えないからこんなことができないだろう、という減点法ではないなんだと思います。

誰にでも対等に接することの難しさ

大西:ありがとうございます。続いて全く違った質問ですが、「真介さん、季世恵さんを好きになった一番の理由を教えてください」というのが来ています。

(会場笑)

志村真介:今日は取材に入っていただいてるんですけど(笑)。

いくつかあるんですけど、一つだけここでお伝えすると、彼女は誰にでも対等なんです。あと何ヶ月という命の人も、超お金持ちの人も、権力を持ってる人も、障害があるといわれていて存在すら危うい人も、みんな同じなんです。

でも、見栄えが気になったり、立場が気になったりして、自分を含めて、そういうことってなかなかできないですよね。このダイアログ・イン・ザ・ダークは、それの一つのきっかけになるんです。

暗闇の中は、お金持っていようが何をしようが関係なく、ただの一人の命が集まるだけなので。その対等性という点で、「ああ、こんなが人いるんだな」と思っておりまして。

だから、術後一年が経過しちょっと元気になりはじめると人を無意識に区別し始めたり、また走り出したりしているんですけど、べらぼうに怒られてます(笑)。

志村季世恵:そうかなぁ?

(会場笑)

志村真介:まあ、そういう関係がいいのではないかと思ってますけども(笑)。

本当に結婚した当初、去年なんですけど、生活は老人介護状態なんですよ。自分は寝たきりで、何もできなくて。その状態の中で、そうであっても、そうでなくても、対等であったことが一番すごいなと思ったりして……おりますよ?

(会場拍手)

人はいつでもどこでも変わることができる

大西:ありがとうございます。お三方へ「座右の銘を教えてください。明日からのパワーにさせていただきます。何か好きな言葉などあれば教えてください」という質問も来ています。

志村真介:自分は、「人はいつでもどこでも変われる」ということを自分の中心に持っていまして。ひょっとすると、今日の話を聞いても、「聞くだけじゃ何も変わらないんじゃないか」とお思いになるかと思うんですけど、変われるんです。きっと。

三浦雄一郎さんの息子さんで、三浦豪太さんという方がいまして、彼が暗闇の中に入って、「これはすごい」と言ったんです。「動物は暗闇を嫌がっていたし、人間は二足歩行しながら火を持って、そして言葉を持って、暗闇を明るくすることによって文化度を上げてきたし、都市生活が生まれた。でも、そのネガティブな暗闇を初めてポジティブに平和利用したのがダイアログ・イン・ザ・ダークだ」と仰る。

だからこのダイアログ・イン・ザ・ダークは、革命的なプロジェクトだと思うんです。でも、自分が暗闇が大好きな人かというと、みなさんと同じように、そうでもないんです。ときどき「暗闇好き」という人がいるんですけど、そうじゃないんです(笑)。

ただの暗闇はあまり好きじゃないです。でも、みきティたちがいる、みなさんと共に入る暗闇は大好きなんですよね。そこに何かヒントがあったりするんだと思います。

なぜかというと、そこに具体的に出会うことによって、人がそれぞれ経験を持ち寄って交換する、概念を交換して対話する、その対話の中で、それぞれが変われるから。

幸せは自分の中にある

みきティ:私はもともと思っているんですけど、「幸せは自分の中にある」ということが全てかなって思いました。

ちょっとだけ短くお伝えすると、さっき真介さんも言ってましたけど、例えば私が街を歩くと、「大変ですよね、頑張ってくださいね、目が見えないのに偉いですね」みたいに言われるんですよ。「こんなに一人で歩けて偉いですね」って。

でもそれが誰の基準かというと、見えてる人の視点で、「見えないあなたでも、見えている私たちのように歩けて偉いですね」ということだったりするんです。

でも、私は偉くも何でもなくて、自分が工夫して歩いたりとか、自分が何がいいかなってことを見つけたりしているだけで。

私も途中で見えなくなって色々工夫はしてきたし、確かに見てなくなって、正直不便だなって思うことはあったんですけど、でもそれは全然不幸じゃなくて。

暗闇の中で、最初は「すごい怖い! もう人と話すどころじゃない!」となってる人が、人と話して、暗闇を体験すると、どうして「ありがとう」と言ったり、「人と話したい」「人が好きだったんだ」「自分って、こんなに信じられるんだ」という気付きを持つようになる。

それが私の日常であるダイアログ・イン・ザ・ダークの中にあって。誰かがくれる幸せとか、棚ぼたの幸せってすごくうれしいんですけど、でも、自分は「今の私って申し分なく幸せだな」と思って生きているんです。

そういうふうに自分の気持ちを思うことが自分も幸せだし、周りの人と一緒に楽しい日常が作れるかなと思っているので、それは私の中で確信的に思ってることです。

(会場拍手)

大西:ありがとうございます。

1日何回「ありがとう」と言っている?

志村季世恵:座右の銘と違うかもしれませんけど、私はお看取りする方に、一番最期の時に、「何を伝えたいですか? 何を言って最期を迎えたいですか?」と聞くんですね。

そうすると、みなさん大体必ず決まって「ありがとうって言って死にたいです」って言うんですよ。

私、「ありがとう」という言葉って本当にすごいなと思っていて、1日何回言ってるかなって、いつも考えているんです。

もう一つ、「生まれてきて良かったね」というのを、自分にも相手にも言いたい。それをずっと私の中で通していきたいですね。どんなときでも。

「ありがとう」と「生まれてきて良かったね」ということを毎日感じれる状態でいたいんです。時々は、私だって「死んじゃいたい」と思っちゃうことがあるんですよ。それでも、そういうふうに思う状態を待つ。

そういうことが自分の中にあればいいんじゃないかなと思っていて、座右の銘とは違うけど、一番シンプルで、一番尊くて、一番難しいけど、一番簡単な二つの言葉を、いつも大事にしようと思っています。

ありがとうございます。

(会場拍手)

隣りに座った人から関係づくりを始めよう

志村真介:本日はありがとうございます。一つ提案があるんです。こういうイベントって、1時間とか1時間半で、話をする側と聞く側が固定化しますよね。これってダイアログのようで、ダイアログじゃないんですよね。

例えば、今日1時間半隣に偶然座られた人との関係が、このまま終わりますって言った瞬間に、ばらけてどこかいなくなっちゃうわけですよね。これって非常にもったいないけど、季世恵さん、なんとかして?

(会場笑)

志村季世恵:はい、わかりました(笑)。1回、目をつぶってみてください。それで目が見えてたんだけど、見えない状態にしますね。お隣の人のお顔をはっきり見ていて、どんな洋服を着ていたのか覚えている人は手を挙げてみてください。

そうなんですね。本当にね、みきティ、10人もいないですよ。これくらいに、実はみなさん人のこと目では見ていないんです。でも感じることはできるんですね。なのでまずは感じてみましょう。

両隣の人の手を握ってみてください。恥ずかしいけど、目をつぶったまま。手が温かい人もいれば、冷たい人もいるかもしれない。ここの空調が寒かったのかもしれない。暖かかったのかもしれない。そういうふうなことは、触らないとわからないんですね。

今日お隣同士でいて、ありがとうございましたねっていう感じで、きゅっと握ってほしいんです。はじめまして、みたいな感じで。場を一緒にして作ってもらって、ありがとうございます。

そして、そっと目をあけてみて、おもむろに顔見てみて? もう、忘れないですから。こういうことが関係性の始まりかなと思っています。じゃあ、今日はこの状態で、ありがとうございました。

(会場拍手)

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