2024.10.10
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マニアが創る「サブカル発症の地」ナカノ解体新書(全1記事)
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荻野健一氏(以下、荻野):ナカノ流マニアゼミナール、今日は第1回ということで、マニアとは何かということからやっていこうと思います。
テリー植田氏(以下、テリー):普通だったら有料ですよね、こっから。
荻野:もちろんです。
杉山司氏(以下、杉山):学費を払わないとね。
テリー:今日は特別ですよね。
荻野:これは今日、ここにも来ている東京工芸大学の学生側が立てた、パトレイバーだっけ?
杉山:イングラムね。
テリー:この間、新宿に来ていました。
杉山:そうそう、その前に(中野に)来てました。
荻野:中野の面白いのはこういうので平気で立てちゃうところ。中野の哲学というのは、すべての思想に対して中庸である、異質な文化に対して寛容であるということなんですよね。
テリー:ドMだってことですね(笑)。
杉山:イングラムを立てるときも結構大変だったんです。花壇を千切って。
荻野:千切って、千切ってね。入らないんです。
杉山:中野経済新聞では、実は「イングラム立たず」という記事を用意していたんです。そっちの方がアクセスが多いので。でも「立つ」という記事になりました。
荻野:区役所あげて協力してもらってね。非常に寛容であるということです。で、これが多分「ナカノ流」であろうと。中野はすべての思想に対して中庸であって、異質な文化に対して寛容である。このあと説明していきますが、これをナカノ流としましょう。普通のサブカルチャーって、「何とか流」ってないんですよね。ひとくくりにするようなものは。でも中野は、何をやるとしてもナカノ流とついてくる。
基本的にはナカノ流のエリアというのは、伝統的なものと新しいものがまじり合っているのが面白いところですね。サブカルの聖地としては中野ブロードウェイがありますよね。これは皆さんわかっていると思います。
テリー:天ぷら屋さんと村上隆さんがまじっているような(笑)。
荻野:アイドルの聖地としては、中野サンプラザですよね。これは王道ですよ。さらにディープなやつを繰り広げる場所としては、中野北口エリアというね。
テリー:駅も綺麗になりましたね。
荻野:でも北口は変わらないですよね(笑)。ここで夜な夜な飲みながら、月2回ぐらい朝まで飲んでるっていうことを昔やっていましたね。
テリー:もうやらないですか?
荻野:もう体がもたないよね……。
荻野:そういうナカノ流のエリアが、まずあります。さらに、ナカノ流マニアのテーマとしては、完成されたものではなくて、荒削りな文化を愛を持って見守るというのがナカノ流のマニアではないかなぁ、というふうに考えまして。
これまで、いろいろ熟成されてきた中野文化の歴史に彩られたサブカルチャーの進化を通じて様々なことをやっていくということで、「中野マニアが語る町、ナカノ流マニア」。これをまず、一つのテーマとしましょう、と。
ですからさっきみたいに様々なものがあるんだけど、あることに対して、とある千代田区の町は排他的なんですよ。
テリー:とあるって、(千代田区って)言っちゃってるじゃないですか。それは(今日の取材に)J:COMが入ってるのにdisっていいんですか?
(会場笑)
荻野:千代田区の、ある町ですね。通称、◯◯◯っていう町なんだよね。そこは非常に問題点が多くて、電気の売っている店がいっぱい並んでいる、と。そしてそこは、オタクという人たちをあまり好きではない。
ということで、歩行者天国にしてもコスプレでパレードもできないし、様々なことが排他的であると。中野はどっちかっていうと「コスプレパレード? いいね〜」ということで、させてくれる。という面では、ナカノ流のマニアというのは、愛を持って見守ってくれていると。
テリー:だって(中野の隣の)高円寺なんか、よそ様の県の阿波踊りをやっていますからね。どれだけやさしいんだって話で。高円寺の方がやさしいかもしんない。
荻野:そうですね。で、今、中野のサブカルチャーをどういうふうに捉えようかなと思っていて、この進化論を作っていかなきゃなと思っていますね。江戸東京の文化っていろいろ分岐点あるんです。これ、真面目な話なんです。
テリー:学術的な真面目な話で大丈夫なんですか?
荻野:はい、本業ですから。関東大震災で焼け出されて、浅草の文化が銀座に移ってきますね、銀座が栄えていきます。さらに戦後の焼け野原から湧き上った闇市が、某千代田区にあるわけですね。
さらに東京オリンピック後に高度成長期とサブカルが生まれてくるんです。これを一個一個説明していくと一個一個授業になるので、ちょっと軽くしますけどね。
さらに東北の大震災の後に、ちょっと今、変化があったのは、生活文化が変わってきたことと、皆アジアを見始めてきているということ。アジアと融合が始まっているのが、今なんですね。
で、次の東京オリンピックの後の日本のポジションニングが非常に大事なところです。
テリー:日本のポジショニングまで。
荻野:そうそう。ここが大事な所で、じゃあ中野はなんだっていうと、「マニア」でしょと。アキバは「オタク」でしょ、池袋は「オトメ」でしょ、とね。
杉山:乙女ですっきりしました。腐女子じゃなかったですね。
荻野:新宿はごった煮のところが良いですね。要はこの3つのサブカルチャーを繋いでいきたいなって思って、今、そのプロジェクトがスタートしたばかりなんで、ここでも説明しようと思いますが、これをもって海外に伝えていきたいなと思っています。
テリー:なるほど。
荻野:というのが、この分岐点なんですけど、東北震災の後にやっぱり皆さんアジアというものが大分見えてきて、さらに東京オリンピックの後に何が起こるのかっていうのが、サブカルチャーの進化になっていくんですけど。
なんでこれを出したかっていうと、江戸時代でも同じことがいっぱい起っているからです。震災とか大火災で、江戸の文化が一回滅びるんです。で、幕府から「贅沢禁止令」が出る。
何が始まるかっていうと、鼠と灰と茶の服以外着ちゃいけませんと言われる。その色を縦に並べることで、ねずみ色見えるというのが出てくるんですね、それが、江戸の小紋で、それを江戸では「粋」というんですね。
ですから幕府とか、こういう大災害が起こった後に、政府が緊縮財政をやった後に新しい文化が生まれるのが東京なんです。
荻野:この分岐点があるから、日本のサブカルチャーって伸びて来たのかなっていうのが非常に面白いところで。で、江戸東京文化が1950年くらいまでありました。50年以降にサブカルの創世記があるんですけども、漫画というのが、だんだん大人が読むものになってきたと。
その後にですね。70年代の途中ぐらいからライフスタイルというのが生まれてきますね。例えば「ポパイ」とか「オリーブ」とか「ブルータス」とか。
杉山:おしゃれ系ですね。
荻野:それまでは、「主婦の友」を読んでいた人たちが「an・an」とか「non-no」とか読み始めて、ライフスタイルになってきたんですね。さらにニュートラとか、ハマトラとか、新しいトレンドを大学生が作るようになってきた。それが70年代の初め。ここにサブカルの創成期が生まれてくるんですが、その後、80年にまんだらけができるんですね。それができて、そこからマニアの生活が始まってくるんですね。
杉山:早いですね。
荻野:中野は早かったです。80年代、90年代にそれが中野で繋がってくる。2000年代になってきたときに、何となく中央線が繋がってくるんですね。例えば高円寺だったら、トークショーがいっぱいやれるとか、劇団があったり、ライブハウスが多いとかね。阿佐ヶ谷にも、なんかいろいろでき始めましたよね。
杉山:そうですね、アンティークとか多いですよね。
荻野:阿佐ヶ谷も、阿佐ヶ谷ロフトっていうトークショーのディープな場所があります。何度か行ったんですけども、すごいトークがいっぱいされているっていう。
杉山:放送禁止みたいなのも。
荻野:それもあるし、マニアックやつが結構ある。吉祥寺は、どっちかというと、わりと漫画で成功した人がそこに住んで。
杉山:楳図(かずお)さんとか。
荻野:中央線の文化が面白くなってきたなぁというので、何年か僕らも研究したんです。
荻野:で、それが今度はアジアとどう繋がっていくか。これはサブカルチャーの大きな課題ですね。面白かったのは、去年の大学院で、タイの留学生が「日本オノマトベが面白い」って言うんです。
オノマトベって分りますか? 擬音語とか擬態語なんですけど、タイで漫画を読んでいたら、ストーリーはわかるけど、全然面白くない、と。でも日本に何年か住んで国に帰って同じ本を読んだら、感情が湧いてくるようになってるんですね。「ドキドキ」という言葉の意味がわかる、と。
そういうふうに、アジアが日本を見てくれている。海外の人が日本を見て、不思議なことをいっぱい感じてくれているわけ。ここが面白いところで、ここが東京オリンピックの後にできてくる、新しいところ。それがグローバルにむかっているという。それは今作らなきゃいけないでしょ?という話をしているんです。
それを図解するとこうなります。
これを真面目に言うと、知のスパイラルといって、一橋大学の野中先生という人が、1977年に『知識創造企業』、「ナレッジクリエイティング・カンパニー」という本を出したんですね。これは世界中でうけたんです。その時に出てきた「知のスパイラル」というところにサブカルチャーを入れたという話です。
テリー:その時の本にサブカルチャーは入ってたんですか?
荻野:いや、僕がサブカルチャーを当てはめて、今研究しているっていう話です。だいたい世の中って(図右下の)カオスの状態から始まるですよ。最初は文化も何もないんです。そこで潜在的にあったものに、誰かが気づくんです(図左下)。で、アーリーアダプターがくっついてきて、「これ面白そうだね」というところから始まるんですよ。
これが最初のニッチな文化なんですね。これをメディアが取り上げると、急にメインストリームに上がって、マジョリティになってくるんです(図左上)。テレビで特集されました、とか。
で、メディアが出てきてプロデュースされることによって、ハイカルチャーとしてブランディングができてくる(図右上)。
ここまで来ると完成されてくるんですね。問題は、完成されると、大体若い子が反発してカウンターカルチャーが生まれてくるんです。
杉山:面白くなくてね。
荻野:「あれだめだ」「そんな未来は欲しくない」と言って、新しい文化を作る。そうするとまたカオスの状態(右下)になってくる。このスパイラルが回っていくんですね。
荻野:このマニアゼミナールでは、このスパイラルの左下の部分を見つけ出していこう、と。今はネット社会なので、さらに、世界中に広がりやすいんですよ。いきなり左下から右上に来ちゃうんですね。今までは、国内で流行ったものが海外に出て行く。
杉山:回転も早いということなんですね。
テリー:同時進行なんですね。
荻野:同時進行で、これが時間差で回ってくる状況になるわけですよね。問題なのは、そのポピュラーになったもので、某経済産業省はここ(図の上半分)しかいらないというわけなんです。
杉山:某って、経済産業省って言っちゃってるじゃないですか(笑)。
テリー:あのしょうもないクールジャパンね(笑)。
荻野:(経済産業省は)ここ(図の上半分)に15億を入れようという話をしたんです。
テリー:それは、いいじゃないですか。
荻野:僕らがやらなきゃいけないのは、お金出してもらうために、ここ(図の上半分)に上げていかなきゃいけないんです。
テリー:なるほどね。説得していかないといけないですね。
荻野:そう。それを中野発でやりたいなと思っています。
テリー:なるほど。
荻野:という、サブカルチャーの文化スパイラルを作るのが中野であろう、と。
テリー:じゃあ、今日は「ここが起点になる」っていう大事な会合だったんですね。今、それを気づきました(笑)。
荻野:サブカルのスパイラルを作っていくためには、発症の地にならなきゃいけない。これはコスプレパレードのイベントなんですけれども。ちなみにモデルして出てるのはうちの研究員です。
杉山:今日は来ていないんですか?
荻野:今日来ていないですね。大体、約束した2時間後に来るんだよね。
杉山:その現場を見たことがありますよ(笑)。待ちぼうけをくらっていましたね。
テリー:まあ、才能ある人は、そういうもんですよね。
荻野:QQ(中国のメッセンジャーソフト)のフォロワーが30万人いて、中野のことを一生懸命発信してくれているんですよね。
テリー:自らもアーティストであって、物を作ったりっていうね。日本語もペラペラですよね。
荻野:日本の漫画で学びましたって言ってね。彼女も日本語学校に行かずに全部漫画で覚えたんで。
杉山:みんなそうなんですよね。
荻野:この写真は、MAGフェスタのコスプレパレードですね。その時にしていた格好をそのまま入れただけなんです。まぁ、わりと天才系の子で、面白いことをいっぱいやってくれるので、このイベントにもいろいろ出てもらおうかなと。
サブカルチャーは、発症すると、伝播経路がちゃんとあるんですね。まずは、新型のバイラルが発生してくる。それを発症すると、広域連携してパンデミックになるですよね。炎上したりとかもするんですけど、このスパイラルの中で大事な広域連携をしていかなきゃいけない。
まずは中央線を繋いで、同じものを見つけ出していき、それを海外の同じようなものを持っているところに広げていかなきゃいけない。
これが大事なところで、このトレーサビーティがちゃんとできなきゃいけないのでサブカルの伝播のトレーサビリティをやっていきましょうと。
テリー:外国人観光客の方は中央線のラインが面白いっていう意識はもっていらっしゃるんですか?
荻野:最近だんだん、中央線のガイドブックが外国語ででき始めてきて。
テリー:ああ〜。ありますね。ヴィレッジヴァンガードで売ってますね。
荻野:この間、吉祥寺をぷらぷら歩いていたら、韓国人の観光客の方から「この店どこですか?」ってガイドブックを見せられまして。
テリー:そうかと思うと、新宿にいると、ガイドブックに載ってるクソまずい回転ずし屋さんを「どこだ?」ってよく聞かれるんですよ、アルタの裏にある回転ずしのまずいところで、それおいしいと思うのかっていつも思うんですけど、載っているんですよ。でも、僕らもハワイに行ったら行くじゃないですか、知らない所ガイドブックを見て。だからそこの導きが正しくないと、いかんなぁと思いましたね。
荻野:やっぱり、その文化が眠っている商店街を可視化していかなきゃいけないので、そこが中野経済新聞の役割なんですよね。まず、可視化すること、その地域のコミ二ュティを作りだしていくこと、これによって初めて人が集まってくる場所作りができる。
そこを物語化をしていき、コンテンツ化していき、コミニュケーションデザインを行う事で知的をもしかしたらなっていく、今日、東海大学の学生さんたちが来ているんですけども、そこの先生がカワイ先生というシティプロモーションの大家なんですけが、その先生と月2回勉強会をしているんですよ。サブカルチャーの伝播を一緒にやったら面白いよねって話をしたんです。
杉山:それは、なんか生まれそうですね。
荻野:というところで、ちゃんと学術的にも真面目にやっていこうかなと。これはだいぶ前から作っているやつなんですけど、こういうふうな中野にある各団体が割と仲がいいんですよ。
例えば、パトレイバーを立てたいと言うと、この人たちが皆動いてくれているんです。「やりたい」と言えば、多分1週間くらいで完全立つまで行きましたからね。警察とかも動かしたり、区もそうだし、整備課とか、後は警備とか、そういうのですね。
この新しい面を発見して、さっきの図のAwarenessのところから始まって、マニアとともに育てるのが中野。真ん中にオール中野最適化連絡協議会っていうのがあるんです。
ここにすべての情報、すべての人間関係とかが集まってくる。そういうのを作っていただいたんでなんです。それが機能している感じですね。
杉山:一番大事なのは、中野区の広報がちゃんとやってくれているので。
荻野:そうそう。今日いらっしゃっていますから言っておかないとね(笑)。
杉山:今日も無視しないでいらっしゃっていただいていますので大丈夫です。
荻野:今日のお題としては、中野マニアの憲章を作っていきたいなと思って、今、仮のものを出しています。中野で文化交流を行うあらゆるジャンルのマニアが、それぞれの活動をスムーズに行うため、互いを尊重し合い、異文化コミニュケーションを活発に行えるように規制を緩和し。ここ大事ですよね。規制を緩和。ここを国家戦略トップの中に入れていこうかなと思っているんですよね。
杉山:そうですよね、ここは是非入れていただきたいです。
荻野:新しい文化の芽を育むために区内外の多種多様な団体や組織が連携できるように横断的に情報共有を行うものとする。というのがマニア憲章ですね。このあたりを今後グローバル展開として広げていきたいなと思っていて、これを軸にいろいろな話ができたらいいなと思っています。
當麻篤氏(以下、當麻):これ、背景の宇宙みたいな絵は関係あるんですか。
テリー:スターウォーズっぽいですよね。
杉山:スターウォーズ(笑)。
荻野:とりあえず、SF大会をここに持ってこようと思っていて。さまざまなマニアの団体を中野に誘致しようという。そういうのも含めて、今、考えています。
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