2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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茂木健一郎氏(以下、茂木):DaiGoって今(2014年当時)20代後半?
DaiGo氏(以下、DaiGo):今、26才です。
茂木:26か。俺、小学校の時にすごいことがいくつかあって。これひょっとしたら知ってると思うんだけど、オリバー君っていう人間とチンパンジーの合いの子っていう触れ込みで日本に来日して「オリバー君の花嫁募集!」とか言って。なんかすげー人間の女の人がオリバー君の、っていうのがなんか…。
そのオリバー君ってその後アメリカで引退して、時が経てば経つほど普通のチンパンジーになってたりするんだけど……(笑)。
DaiGo:みたいですね。一時期なんか実験施設に送り込まれて救出されたとか……今は平穏に暮らしてるみたいな。
茂木:そうそう。あとアントニオ猪木vsモハメド・アリってのがあってさ。これはもうメチャクチャで、ヘビー級チャンピオンのモハメド・アリがアントニオ猪木と対決するっていう時。俺中学生で、土曜日だったんですよ。
確か12時からで、学校終わったらみんな一斉に家にダッシュして「うあああ」(懸命に走るポーズ)って。それで見たのね。
それともう1個。謎のアミン大統領って、すごい大量虐殺して冷蔵庫に死体が入ってるみたいな噂のウガンダの大統領がいて。アミン大統領をアントニオ猪木と戦わせるっていうわけがわかんない企画があったんですよ。
DaiGo:誰がやったんだろうそれ(笑)。
茂木:いや、それでこの3つはある共通の1人の人物がやってて。康芳夫(こうよしお)さんって人なんですけど。この康芳夫ってのは小学校の時、俺にとってはDaiGoの言葉でいう「メンタリスト」だったわけ。つまりなんか心が動いたわけよ。
いまだに鮮明に「オリバー君」を覚えてて、染色体の数がチンパンジーと人間の中間なんです! とかもっともらしく(TVが)言ってるわけ。「オリバー君、来日!」とかいって飛行機から(チンパンジーが)降りてくるんだよ。あれどうやったんだろうな……。ま、いいんだけど。
とにかく康芳夫さんがやったらしくて。アントニオ猪木vsモハメド・アリもそうだし、アミンが猪木と対決するって今の感覚でいうと金正恩が(アミン大統領)。
DaiGo:それ実現したんですか?
茂木:いや。しなかったんですよ、それが。しなかったんだけど計画が発表されただけでなんかワクワクするっていうか。だから今の番組でいうと……あれかなDaiGoが金正恩とメンタリスト対決するみたいなイメージかな。(視聴者が)「えぇ!?」みたいな。
DaiGo:それ、勝ったら勝ったで大事なものを失いそうな気がしますけど(笑)。
茂木:なんか世界が揺らぐのよ。「えー、世界ってひょっとして僕が思ってたとこと違うとこだったのかなー」って思えるようなイベント。それがオリバー君であり、猪木対vsモハメド・アリであり、アミン大統領のプロレスデビューみたいな。
だから「メンタリスト廃業宣言」ってそういうことかなあ、とも思っているんだけど。いわゆるスプーン曲げたりとかフォーク曲げたりだとか色当てたりだとか、マジックの領域でのメンタリストの活動もあるんだけど、それこそすごい関心持ってるようだけれども。
茂木:ヒトラーなんかもある意味ではすごいメンタリストだったってことでしょ。
DaiGo:実はヒトラーの演説を指導した人はメンタリストだったんですよ。
茂木:まじっすか。なんて人ですか。
DaiGo:エリック・ヤン・ハヌッセンって人なんですけど。元々パフォーマーとして僕と同じようにメンタリストやってたんですけど、独特の喋り方とか説得力の作り方、人の転がし方をヒトラーが見て感銘を受けて「ぜひ指導してくれ」って言って抱え込んだんですよ。
茂木:え、そうなの!?
DaiGo:そうなんですよ。でもナチス政権が成立した後に出生がユダヤだってことがバレて暗殺されちゃうんですけど。結構歴史の陰に。
DaiGo:元々メンタリストがエンターテイナーになったのは1948年からなんですよね。イギリスでペディングトン夫妻っていう夫婦がいて、ラジオを通したテレパシーをやったんですよ。
奥さんがラジオ局にいて、旦那さんが街に出て行って何か物を持つと。それが何なのかってことを奥さんにテレパシーで伝えて、奥さんがスパッと言い当てるっていうのが最初だったんですよ。
それより前は基本的に大衆扇動だったりだとか、あとは占い師とか、偽霊能力者たちが使ってた方法だったんですよ。まあそのほうが儲かったんですよ。説明責任がないですから。
僕もよく「メンタルの話をしてお金儲けしてるんじゃないのか」とか言われるんですけど、僕、本当に儲けたいんだったら霊能者やったほうが儲かりますからね、それで言うなら(笑)。
だからあとはやっぱり歴史上の人物だとスターリンの陰には、これはもう超能力者として名前が出てくると思うんですけどヴォルフガング・ミッシングという人がいて、彼も催眠を使ったりとか。
あとはマッスルリーディングですね。筋肉の動きを読んで数字を当てたりだとか、そういうのが結構得意だったと言われてるんですね。
その人はスターリンの腹心でKGBとかの教官とかもやったって言われてる。
茂木:へぇ~。じゃ「歴史の陰にメンタリストあり」って感じだね。
DaiGo:そうですね。ラスプーチンも僕はそうだったんじゃないかなと思ってますけどね。彼はロシア皇帝にものすごく取り入って仲が良くなったんですけど、ロシア皇帝の息子が血友病だったんですよ。
血が止まらない病気ですね。それで血が止まらない時にラスプーチンを呼んで、ラスプーチンが祈祷を捧げると血が止まる、と。
茂木:そうか。逆に言うとさ、メンタリストって権力に近付いた時っていうのはさ、その人にとってもリスクあるってことだよね。ヒトラーの例もそうだけど。
俺が子供の時にプロレス好きなやつがいたんですよ。シマムラって言うんだけど。プロレスって一時期は一般紙のスポーツ欄にも載ってたわけよ。
野球の結果はこうです、100Mの決勝の結果はこうです、っていうのと同じくらい「今日のプロレスの勝敗は?」って。
ところがそのうちにみんなが「あれはなんかシナリオがある八百長らしいぞ」みたいな空気になっていって、プロレスが一般紙に載らなくなったんだけど。
だけど、シマムラが俺に聞くんですよ。真顔で。小学校6年のありったけの想いを込めて。「茂木さん、プロレスって八百長だって言う人いるけど、君はどう思う?」とかな。意外とプロレスファンとしての『ゴング』とかさ、そういうのを読んでる男ですから。俺その時にすごく心に残って。
ガチと、相撲でいえば八百長とガチンコとの違いを潔癖に分ける人っているけど、どうも世の中ってみんな真ん中あたりなんじゃないかなって気もしてて。
DaiGo:そうですね、基本的に日本人は特殊で。僕は一応メンタリズムを日本に初めて持ってきた人間なんですけど、イギリスとかアメリカとかロシアだとかフランスとか、いろんなところで流行ってるんですけど。
日本に持ってくるときに一番障害になったのが、その日本人独特の潔癖さです。
茂木:潔癖さだよね!
DaiGo:そう、つまり正しいものじゃないと受け入れないっていう科学的証明だったりとか、どちらかというと社会的証明が大事なんですよね、日本人はね。
茂木:わかるわかる、お墨付きね。
DaiGo:そうですね。だからそこをどう作るかってところで今までこういう不思議なパフォーマンスは、メンタリズムにしろ、占いとか霊能力者にしろ、マジックでもなんでもそうなんですけど。いわゆる証明がなかったんですよ。だからそこが……。
茂木:いや、だからさ。メンタリストって概念がさ、まだ日本にないんだと思うよ。
DaiGo:訳語がまずないですからねえ。
茂木:ないんだよなあ。Mr.マリックなんかが出てきたときは、あれは超能力者って触れ込みで。演出上のこともあったと思うんだけど、出てきたじゃない。
メンタリストっていうのはさ、もっと「人の心を動かす」っていう非常に明確なミッションがあるわけじゃない。人の心を動かすという視点で見たらさ、ガチの戦いもプロレスもそんな変わんないわけじゃん。
やっぱ猪木の戦い見ると俺たち「あー」ってなるわけだよ。
この前、日本刀の男がいたんですよ取材で。そしたら本当に真剣だらけなの、そこ。国宝級の真剣がいっぱい置いてある。やばいとこなんだけど。
で、そこの親父が言ってたんだけど「茂木さんあの、時代劇でよく斬りあいやってるでしょ、あれ全部ウソですから」って。
「時代劇、当時どうやって戦ってたか知ってますか?」って。「足元の石拾って投げるんですよ」とかって(笑)。確かに。
だってそのほうが当たったら痛いし、大ケガするし。だから時代劇のこれ(斬撃)はフィクションで、実際には石投げ合ってたんじゃないかって(笑)。でもそれだとあんまりドラマチックじゃないよね。
DaiGo:うん、だから目的の違いですよね。戦いだったら勝つことが目的だから、石使っても勝てるんだったら使ったほうがいいけど、大河ドラマとかだったら楽しませることが目的だから。だからああいう(斬り合いの)演出になるんですよね。
茂木:だから「ガチなものがいい」というのは、なんかすごく貧しい世界。いきなり石投げだしちゃうみたいな。(メンタリズムは)そういうものであるってことを現代の日本人はわかったほうがいいのかもしれないね。
DaiGo:お伺いしてみたかったんですけれども、脳科学的にも0か1じゃないじゃないですか。
茂木:もちろん。
DaiGo:ファジーな部分があるから人って豊かな感性を持ってて、いろんなものが表現できると。あといろんな感覚を持てると僕は思うんですけど。そういう脳科学的な観点から見てどうなんですかね、その日本人の潔癖的に分けるの。
茂木:よくないと思うよ。例えば、科学界だと繰り返しスキャンダルがあって、そもそも「NATURE」とか「science」に10本とか論文出してて「もうこれは間違いなくノーベル賞候補だ」ってやつのデータが全部ねつ造だった。みたいな大スキャンダルが。
ベル研究所だったかな、我々の中でもハーバード大学のすごい有名な教授がいて、もう誰でも知ってるような研究してるんですよ。ところがそこの研究室のデータが10年くらい経って、ねつ造されたものだってことが発覚しちゃって。
そういうケースが時々出てくるんですよ。元々科学ってちゃんと取ったデータでも、例えばミリカンの油滴実験でもそうだけど、実はちょっとデータがずれてたけど、ちょっと均してたって話があって。
そんなに簡単に科学の世界でも何が真実で何が真実じゃないかって分けられないからね。科学でさえそうなんだから。
DaiGo:そうですよね。もう解釈の問題も出てきますもんね。
茂木:そうそう。ましてや社会的な事実でさ、誰かが。例えば田中角栄さんが。こないだ俺、長岡の仕事で行った時に浦佐に田中角栄の銅像が置いてあって、何もないところにいきなり駅があるから、これ田中角栄作ったんだなって(思った)。
彼はロッキードで捕まったけれども、いまだに田中角栄ってじゃあ悪い人だったのかってわかんないよね。全部合わせたら。
DaiGo:そうなんですよね。だから僕はすごく思うのは総合的にたぶん見てないと思うんですよ。つまり1箇所だけでも悪い点があったらNGとするのか。
それとも、じゃあ何もしない。悪いことも良いこともしないトップとたくさん良いことをしたけど時々悪いことをしているトップと。
どちらのほうが国益になるのかって考えたら、ちょっとそれはどっちなんだろうって感じにはなりますね。
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