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デジタルファブリケーションの未来図(全3記事)

"ヘンタイ"日本人が3Dプリントの未来を切り拓く? デジファブとビジネスの融合を探る(後編)

最近よく聞かれるようになった「デジタルファブリケーション」という言葉。3Dプリンターなどの登場により、これまで工場で高いコストと長い時間をかけなければできなかった「ものづくり」が手軽にできるようになりましたが、それによって私たちの生活や創作活動はどのように変わるのか? その道の先駆者たちによるわかりやすい解説と、その可能性についての熱い議論をお届けします。

海外のデジタルファブリケーション事情

田川:ありがとうございます。いろいろ俯瞰していただいて、議論がしやすくなりました。ここからは、僕から御三方に質問をしていきたいと思います。この流れは日本だけではなく、世界で同時多発的に起こっているじゃないですか。アメリカを中心として、ネットの拡張形として、ファブが来ている、という話もあるし。世界のホットスポットでこんなことが起きているとか、そのなかで日本がどんな役割を果たしてきたのか?

特に、他では起こっていないことが、ここでは起こっているとか、こんな形で世界を触発しているとか、そのあたりの話を教えてもらえますか?

小林:シェイプウェイズというところが、今、3Dプリンティングのサービスのなかで、すごく着目されていると思います。ニューヨークの周り、特にブルックリン、あの辺に3Dプリンター周りが集中しているんです。非常に面白くて、普通に考えたら土地の単価もめちゃくちゃ高いんですけど、面白い人たちが集まってくる周りに、それが可能になっていたり。

ブルックリンって、もともと工場地帯だったけれども、それがダメになり、そこをアーティストやデザイナーが立ち上げて、というところがあります。メーカーポッドっていう3Dプリンターのメーカーも、そこのビルの地下とかからスタートしている。そこからスピンアウトした人たちが、周りに出てきたりとか。

ひとつには、工場といっても、めちゃめちゃ広い場所が必要なわけでもない。むしろ面白いことが起きる近くにいるほうがいい、みたいなのは、かなり特徴的だと思います。ブルックリンで「Solidoodle」というのを買ったんです。それが届くまでに、3か月くらいかかりました。今週は5人雇いましたとか、今週は何台作りましたとか、今ここまで来ています、とかのレポートが次々と送られてくる。

普通だったら、労働単価が安くなければ成り立たないと思っていたのが、まあそうでもない。そこは注目すべきところだと思います。日本の話をすると、光造形方式の一番最初の特許出願者が日本人だ、という話があります、それが1980年代です。

それはさておき、3Dプリンターといわれるものは、あまりやってきていなくて、中心地はアメリカとイスラエルにあるんです。それ以外の削るもの、レーザーカッターは、日本のなかでもすごく優秀な機械がたくさんあります。たぶん、みなさん気が付いていないけど、普段の製品でも、当たり前に使われてきました。ファブラボでも出てきたRoland DGが、デスクトップでできるのを出しており、「デスクトップファブリケーション」という言葉を彼らが使ったのは、割と最近、2002年かな、が一番最初なんです。

実は1980年代、最初からテーブルトップで作る、みたいのは出てきていて。3Dプリンターブームだけ見ていると、外からやってきたのを、さあ僕たちどうしましょう、黒船が来ました、みたいな話になっちゃうんですけど、案外そうではなく、お互いが影響を与え合うなかで出てきている、という状況にあると思います。

田川:なるほど。僕はプロダクト系から来ているので、プロダクトの加工機って、たとえばファナックとか、世界のほとんど、何割という加工機を持っているわけじゃないですか。今までのネット系文化は、特にアメリカシリコンバレーを中心に出てきたと思うのですけれども、デジタルファブリケーションの世界の話は、どちらかというと、ゲームやマンガに近い。僕らは気が付かないけど、独特な、文化的に芳醇な棚床みたいなものを持っているから、もっと面白いことが起こるんじゃないかと思っています。

興味深いのは、アメリカも西と東でカルチャーが違うじゃないですか? こういうディスラプティブなものって、大体西から出てくる。でも、今回のは東中心。MITがあるからかもしれないけれど。田中さん、実際に行かれていたし。どうしてそこが震源地になったのか、というところはどうですか?

田中:MITは機械とかの歴史があるので、ハードとソフトの融合みたいな研究があったと思います。このあたりから出てきたのだと思います。完全にサービスやウェブだけではない、ということは最初から考えていて、それが花開いたのだと思います。世界の話をすると、そこからインド、南アメリカ、アフリカに飛び火して。

田川:インドには何か理由があったんですか?

田中:そうですね。インドと共同研究が始まったんです、2000年くらいから。そのときに、そのための拠点としてファブラボを作ろう、というのをやっていて。実際このような技術がどれくらいディスラプティブなのか、というのを確認するために、世界の周辺の地で研究をしようと。そのようなアプローチだったんです。

田川:ファブラボには、独特のポジションがあります。帝国的なところでしかできなかった製造業が民主化していく、みたいな。そういう文脈もあったのですか? テクノロジーを、届かないところにマイクロに埋め込んでいくような。

田中:あったと思いますね。D-LabというのがMITの中にあって、2000年の前半くらいから、技術を周辺の地でどこまで利活用できるのか、ということを始めた。学生にも非常に人気がありました。皆、技術を使ってどこまで社会問題を解決できるのか、ということに関心を持ち始めていたので、その流れと符合して、アフリカ等に点火していった。

田川:なるほど。林さんは世界中見られているじゃないですか? 「日本、ここが変だぞ、面白いぞ」というような点はありますか?

"ヘンタイ"日本と3Dプリンティングの相性

:数々のマッドサイエンティストを含め、日本って、いい意味で変態みたいな人が多いじゃないですか? さっき画像に出ていたけど、バレンタインのチョコレート。女性が自分の顔をスキャンして、チョコレートに自分の顔を立体模型にしてプレゼントする、という。変な発想を持っている人が日本はたくさんいて、そういう人たちが、ファブラボ、ファブカフェに集まってきている気がします。海外にもうまく話題を発信していければいいんでは、と思います。医療でも、日本はたくさん面白い事例を作れていると思います。

田川:この流れが始まったということは、社会的なコンセンサスとしてあると思うのですが、次のレベルにシフトするために、何が必要ですか? たとえば、製造業に入っていくとか、製造業を置き換える別のものが立ち上がる、というときに、何をやるとそれが起きると思いますか?

小林:製造業は、今の日本の産業のなかで、すごく大きな割合を占めていると思います。確か一番大きいのは、自動車や建設。たぶん、スマホとかのビジネスって、ここにいる方にとってはすごく大きく見えているかもしれませんが、ふりかけと同じくらいらしいんですよ。大きいところを無視するわけにはいかない。「資産があるところと、どう繋がっていくのか」という視点が、常に重要だと思っています。

SONYとか、いろんなメーカーがありますけれど、ああいうところはインフラみたいな感じになっていくのかもしれないです。町工場ってよく持ち上げられますが、現実としてそんなに体力なかったり、いろいろ問題があったり。たとえば、そういうところを新しく使って何かしよう、という人と、どうコミュニケーションすればいいのかというときに、知識を全然持たないソフトウェアの人とやろうとすると、結構大変です。

そういうときに、たとえば3Dプリンターが間に入ってコミュニケーションするツールになるだろうし、今までできていなかった製造を可能にするために、今あるものに組み合わせるみたいな。敵として来ているのではなく、新しく取り込める新しい技、というふうになるといいなと思います。

日本って「開国する」ということをやったときに、文化的に侵略されないで、いかに自分の国を保ちつつだけど開くか、みたいな超難しいことをやってのけた……というのは、ドラッガーも指摘していますが。今回のような流れが来たときに、それをうまく取り込みつつ、自分たちを変えていくようなチャンスになればと思います。

ただ、製造業って、重工長大産業の象徴だ、というディスカッションがあるなかで、その人たち自身の考え方も変えなくてはいけない。そのきっかけのひとつに確実になるのでは、と思います。

田川:オールドエコノミーの人たちと仕事していると、資金調達から販売流通まで、という大きな流れでいくと、企画はできるだけ秘密にして社内でやって、それで大きく投資をして、というフォーマットになっている。それと今ここで起こっていることって、本当に違うと思います。

一番違うと思うのは、なぜ皆がネットで多く時間を過ごすようになったかというと、コミュニケーションがそこに介在している。そして作る、ということ。そのあたりのレイヤーが、じんわりシェアされながら進んでいく。そしてサイクルがすごく早く回る、というのがあると思います。そのあたりをうまく取り込んでいけるような、新しいスタイルができるといいと思うのですが、田中さんどうですか?

今はまだコミュニケーションの道具だけど、アイデア次第でビジネスに

田中:「創造性の新しい形」ってスライドに田川さんが書かれていたのに、すごく興味があります。僕の大学のメディアセンターは、本来、本を読むところなのですが、ここに3Dプリンターがあってですね。学生がこれで何をするかな、と見ているわけです。今年の4月から、この3Dプリンターが自由に使えるように入ったんですけれども、ほとんど毎日稼動していて、皆、iPhoneケースなんかをダウンロードして出したりしています。

常にメディアは双方向で、消費と生産が両方できる、というのが定義だと思います。半分くらいの学生はシンギバースとかからデータをダウンロードして、それを出す、ということをしている、これはフィジカルコンテンツの視聴だと思います。

田川:これは先ほどから仰っている、メディアになる、という話ですよね? 結局、デジタルデータで設計データは流通するけれど、最終的に出力しなくてはいけないから、メディア的なそういう切り口で捉えている、ということでしょうか?

田中:これは、YouTubeの映像を見ていることと近しい、ひとつの行為で、もうできあがったデータをダウンロードして……。

田川:ディスプレイのピクセルみたいな?

田中:そうです。ただ、何人かの学生は、自分でデータを作って発明品を作るんです。

たとえば、一眼レフの最初のキャップをよく紛失する、ということで、こういう風にまとめられるようにしたりとか。これは小学校の字の宿題が出たときに……。

田川:これいいですね(笑)。すごくディスラプティブ(破壊的)ですね(笑)。

田中:1回で3回書けて(笑)。

田川:こういうことを考える小学生が出てくると、すごくいいですよね。繰り返しは悪だ、みたいな(笑)。自分で作る、遊ぶ、想像とか、すごく近いところにあるのだけれど、今は上から降ってくるみたいな(笑)。そういうのがちょっと極端になっているじゃないですか? 日本の初等教育も、作るってそんなに大きな、ね? 工作とかはあるけれど……。もう少し、小さなころから、大人になるまで、どっかの誰かが作ってくれているんだ、というところを引っぺがしていくことはできないかな、と思ったりするのですが。どうですか?

小林:ちょっと前に話題になった、トースターをゼロから作った人がいましたよね? RCAの学生で。秋葉原に行って、部品集めて作るとか、そういうレベルではなくて、鉄鉱石を掘りに行くところからスタートした、みたいなのがあって。僕、すごく好きな話なんです。自分たちの周りにあるサプライチェーン、それがないと成り立たないだとか、そうやって作るのも、工作として手技で作るのと、スマートフォンみたいな製品はギャップがありすぎて想像できない。その間が実はこうなっているんだよ、というのは、確かに早い段階で必要だと思います。

それが今、できるようになりつつあります。たとえば、オートディスクとか、すごい勢いで自分のところのツールを無料化していますが、あれで新しいコミュニティを全部ぶんどろう、みたいなことがはっきりあって、面白いです。たとえば、CADツールも単体で動くだけではなく、クラウドで連携します。

クラウドで連携するといっても、単にそこに置けるだけではなく、何人かがコラボレーションして、誰かが作ったデータを直す、みたいなこともできる。たとえば、小学生が作ったやつで、すごくアイディアはいいのだけれど、そのままやったらポキっと折れてしまう。

じゃあそれをたとえば、田川さんが「ここはこうすればいい」と直したりとか。大きな、新たなコミュニティとして可能だと思います。単にツール作るとか、教育プログラムだけではなく、そんな大きな生態系ができたら面白くなるのでは、と思います。

田川:面白いですね。「こんなビジネスありえるんじゃないか」とか「こんなビジネスやりません?」とか、皆でアイデア出せればと思うのですけれど。

:これから、あらゆるものが何らかの形で関わってくると思うのです。一番「俺は関係ない」って言っている人ほど、実は一番ワイルドなアイデアを持っている気がします。ただ、そういう人は興味がなくて、そもそも、ここにはいないと思いますが、そういう人をいかに説得するか、だと思います。

今の3Dプリンターは、まだまだ、実際に最終的な製品を作るには遠い存在じゃないですか? 今はコミュニケーションの道具だよね、という話をしていて。さっきの杉本医師も、結局あれは患者とのコミュニケーション。ガンの手術はこういうふうにやって、ここを切るというのを見せると、一発で納得してくれるとか。

リアルの非効率をいかにデジタルで置き換えられるか

ちょっと、これを見てください。iPhoneのケースで、内側に歯車みたいなの入ってますよね? これ1回のプリントでマルチマテリアルで印刷していってできあがったものが、iPhoneにぴったりはまるのはもちろんなんですけれども、歯車がくるくる回り始める。最初から組みあがった状態。これまでのものづくりだと、バラバラな部品を組みあげるのですけれども、これが組みあがった状態で回るものができる。

しかも、昔のものづくりは外側から形を作っていったのが、内側とか外側とか、関係ないんですよ。これまでと全く違った造形のものができあがる。いろんな人が試していくうちに、だんだん、すごい使い方が発見されるのではと思っています。3DSystemsは、とにかく安くして、いろんな人に使ってもらおう、と狙っていると思います。ユーロモールドでびっくりしたのは、こんなものも今、3Dプリンターによって復活しているんですよ。

パソコンとか買うと、4隅に入っている緩衝材。緩衝材は最近、だんだん使われなくなっていたらしいのです、どんどん発泡スチロールに変わっていって。いちいちパソコンの箱のサイズに合わせて、厚さが違うものを作るのって大変だったらしいです。それが3Dプリンターで、紙の型が簡単に作れるようになったので、また復活し始めている。こういった、地味な用途がたくさんあります。

あまりビジネスとして儲からないかもしれないけれども、あ、こういうところも3Dプリンターなんだ、ということが増えています。100個くらいやっているなかで、突然1個くらい、ボーンと突き抜けるものが出てくるんでは、と期待しています。それが何かは、まだわからないですけれども。

田川:そうですね。Amazonとかも、リアルをビジネスに取り込んで、すごく強いじゃないですか? ネット系も、リアルの非効率の部分を置き換えられる部分は置き換えていく、ということになっていくと思います。

在庫を持つために、ずっとさかのぼっていって、サプライチェーンの手前の側で、すごく予測をかけながらビジネスをコントロールしたりしますが、たとえば、部品の在庫とか、交換用の部品とかを、一手に引き受ける部品在庫ビジネスみたいな。たとえば、全国のインターチェンジに、デジタルファブリケーションの規格を並べたような拠点があって、今だと卸しのどこどこにあるのをパッキングして、それを送って、それを営業が届けに行く、みたいなのを、全部中抜きしてくれるような。メーカー、もしくは大量生産をやっているところは、そこから手を放して。部品レベルを水平で吸収していって、そこで大きなマージン取っていくビジネスとか。

非効率がほうぼうにあるので、置き換えられる部分を、デジタルに置き換えていくことによって、ものすごく進むと思います。材料や燃料も、無駄に使えない時代に入っていくから、そこに、このようなテクノロジーを使っていくというのは、教育とかコミュニティから派生して、もっと大きなスケールになっていくときに、何かいろいろ出てくるんじゃないかと思います。

ファブを前提としたサービスの可能性

小林:少し前に話題になったティーンエイジ・エンジニアリングという、スウェーデンの会社が自分とこの補修部品3Dデータを公開して、「あとじゃあ自分でプリントしてください」ということをやりました。1個数ドルくらいなんですけど。大体、補修部品はそのくらいの値段なので、ありだよね、と。今、岐阜県に住んでいますが、いろんなものを作っている人がいるのだけれど、住んでいても知らないこととかもあって。

次のビジネスとして、どんなものがあるか? プリミティブなアイデアなんですが、「クローズアップ現代」に出たときに僕の顔作ったのって、正面と横と2面、写真撮っただけなんですよ。あとはここからここまで何センチ、というデータを送ればあのお面ができる。ペットボトルキャップは全周撮っているのですが、顔だけだったらスマホのアプリで簡単に作れると思います。

モデルデータを作って、近くにあるKinko'sやコンビニ等にあるプリンターで出しましょう、というのもローカルな方法。鎌倉とかに住んでいて、近所にこういう職人がいるよ、ちょっとその人のところに行ってみようか? ということになるとする。それで行くと、ボタンをポチっと押したら出てくる、という単純なことではなく、そこの人とやりとりする必要がある。

すべてのものを作るのをAPI化すると考えたとき、3Dプリンターは簡単にAPI化出来ます。シェイプウェイズとか、叩けばすぐプリントできます。でも、鎌倉の一刀彫の職人を叩こうと思ったら、それはデータを送ってもダメで、間に誰が入ったらできるんだろう? みたいな。自分たちの周りにある文化、リソースを再発見していけるようなアプリ。それが顔なのか、ボトルキャップかはわかりませんが、そういうアプリなんかいいな、と思っています。

田中:僕は最近、ウェブサービスを作っています。これはGoogleみたいな、立体形状のサーチというのをやっています。ネット上からこの形と似た形を探してこい、みたいな。自然言語のサーチは、全部Googleに抱き上げられてしまいましたけど、立体形状のサーチはまだない。

田川:これは何なんですか?

田中:これは、この三角形と似た形を、ネットから探してくるんですよ。3次元形状をサーチするものです。まだまだやるべき研究は、たくさんあります。ファブを前提としたウェブのサービスが、もっといろんな可能性があるのでは、と思っています。

田川:会場のほうから、これ聞いてみたい、というのがあれば。

古くからの製造業とのコラボレーション

質問者:What would you have in discussion with the traditional manufacturing? Or how would you collaborate with traditional manufactures? Especially, in Japan, Taiwan, or China? (古くからの製造業についてどうお考えですか? 日本、台湾、中国の古くからの製造業者とは、どのようにコラボレートしていけばいいでしょうか?)

小林:それは大きな問題だと思っています。たとえば、金型産業が日本にたくさんあります。削って作っている人、鍛造で作っている人、たくさんいると思います。そこと、ソフトウェアから流れてきている人たちを結びつけるのは、非常に難しい。今までだったら、そこにオーダーする人は設計データを作る人が当然持っているべき知識があると思います。たとえば、型をつくって抜くときに勾配がなくてはいけない、とかを、常識で持っているところを、そういうのを知らない人がやるというのは難しいのかもしれない。

でも、その間に入ってくるギャップを埋めるようなツールって、ビジネスチャンスなのかもしれない。言葉で話してもわからないのだけれども、簡単にモデルみたいなもの、それこそ3Dプリンターで出したものを使ってコミュニケーションをするとか。間のギャップを埋めることで、ここまで積みあがっているリソースを使う、という方法があると思います。

田中:"破壊型イノベーション"という言葉がありますよね? 融合型イノベーションが必要だと思います。うまく強みを組み合わせて生かしていくようなことを、やっていけば。日本にしかできない、ファブリケーション文化というのと繋がってくるのですが、うまい組み合わせを考えていきたいと思います。

:原雄司さんが、皮とか、木目とか、そういうものをスキャンして、プラスチックであるにも関わらず木のような触り心地、皮のような触り心地になる技術を、ずっと作っていました。「その技術を何か応用できないか」と相談されていて、トリニティという、iPhoneアクセサリメーカーでデザイン、おしゃれにこだわっているところに紹介したら、この「次元」というケースができあがりました。

どういうふうに作るかと言えば、3Dプリンターでミクロン単位のすごく細かいプロトタイプを作ります。実際プリンターで1個1個の製品を作っていたらすごく時間がかかってしまうので、そこから金型を起こすのは日本でトップクラスの金型職人。日本の金型職人でないとできない、細かい精度レベルで金型を起こして作った、という製品です。

まだまだ、3Dプリンターが実際のマニュファクチャリング、最終的な製品を作るところまでいくのは時間がかかるので、それまでは金型職人とコラボできる領域があると思います。古い職人たちのなかには「どうしよう」と悩んでいるだけの人もいる一方で、3Dプリンターとか、こういった新しい製造のやり方とうまい組み合わせの仕方を模索している人も増えている。まだ答えはないけれども、これが出てきたらいいな、と思っています。

田川:これ、実は専門家から見てもすごいことで、業界で今話題になっているテクノロジーです。プラスチックの表皮を、こんなに表現力豊かに加工した例は、世界でもほとんどない。世界中のプロダクト作っている会社が、この技術に注目しています。これは日本ならではの展開ですよね。

時間となりました。この分野のご意見番的、御三方でした。未来のことも話せて、僕も本当に楽しめました。ありがとうございます。3人に大きな拍手をお願いします。今日は、どうもありがとうございました。

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