2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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三枝孝臣氏(以下、三枝):プロフェッショナルしか出せなかったようなコンテンツが、だんだんいわゆるユーザー側というか、素人さんでも出せるようになってきたっていうことについては、皆さんどういうふうに思われます?
池澤あやか氏(以下、池澤):最近、ECサイトもそういう流れですよね、STORES.jpとか。良くもあり悪くもありますよね。人が増え、母数が増えることで売れていた物も売れなくなったりとかするし、物を買うっていう、もともと1つのパイだと思うんですよ。
そこをみんなで取り合っているところを、またみんなでそのパイをわける必要が出てくるから、それだけ減っちゃうっていうデメリットもあるけど、色んな人が物を売れるっていうメリットもあるので、そこらへんがすごい難しいなと思って。
森永真弓氏(以下、森永):確かアニメのDVDって年間100万本とかそうやって売れる数が大体決まっていて。要は、私も含めたアニオタのお財布が決まっているので、それこそメガヒットが出ちゃうと、そっちにもうほんとゴボッと持っていかれて他が自動的に落ちちゃうとかって、よくあるので。
三枝:マーケット全体の問題ですよね。そういう意味でいうと、森永さん、最近のCocoPPaについてぜひちょっとお願いします。
森永:CocoPPaっていうのはiPhoneとかAndroidの着せ替えができるサービスで、FacebookとかTwitterとかGoogleのアイコンを好きに変えて壁紙も変えてみたいなことができちゃって。日本で作っているサービスなんですけど、海外のほうでどちらかといえば流行っていて、ちょっと楽しそうだなと思って。
しかも、誰かプロが作った着せ替えパターンを選ぶんじゃなくて、自分で好きなように作ってあげられる。なので、私もちょっとやってみようかなと思ってやり始めたんですよ。TwitterとかFacebookだとやっぱり文字がつくから、日本語だと日本人の文化圏になっちゃいますよね。でも本当にイラストだけだから、完全にグローバルで。
今はペンギンで色々と作ってるんですけど、そうすると「ペンギンバージョンのNetflixのアイコンを作ってくれよ」とかのメッセージを、英語とかドイツ語とか、あとは読めないロシア語とかで、コメント欄に送ってくる人がいて。もうGoogle翻訳を駆使しまくりですよ。
西村真里子氏(以下、西村):すごい、すごい!
森永:それで頼まれたものを作ると、「海外ではこういう画像加工アプリが流行っているんだ。ピックスアートって初めて知った」とか。使い始めると、確かに流行っているだけあって、「超便利!」みたいな感じで。
自分の勉強にもなるし、色々とやってみて。CocoPPaは人気が出るだけで、全然儲かったりはしないんですけど、今度それをやっているうちにLINEのスタンプが出るようになって。これは夏バージョンとかいって、ビールを飲んでたりとか。その他になんか寝苦しいペンギンがイルカとはだけていてみたいなやつとか(笑)。
そういうのを作っていたりしていて。1番右の上から2番目は、ゲリラ豪雨っぽくないとか(笑)。
こういうの作ってアップすると、私はそんなに頑張ってやっていないんですけど、この絵かわいいとか、この絵ちょっと刺さるとかっていうと、ものすごい一般の方でも売れたりとかしていて、そういうのってなんか楽しいなと思って。
西村:面白い。リクエストする人たちは、もう購入してからリクエストしてくるんですか?
森永:LINEの場合は、もうひたすらアップするしかないので、どうしようもないんですけど。CocoPPaの場合は、1つのアイコンにメッセージが付けられたりとか、その本人に要請を送ったりとかできるので。
去年なんかは、ちょうどひとしきり作った後、デザインは同じなんだけど、全部作るとうざいかなと思って主要なやつだけクリスマスバージョンで、赤と緑だけの色変えたやつを出しといたら、他のやつも作ってくれとかといって、いきなりグローバルのコミュニケーションになって……。
三枝:でも、それは課金にはならないんですよね。
森永:課金にはならないんですけど、何か面白いなっていう。私、CocoPPaは熱心にはやっていないんですけど、ちゃんと運営側からこういう広告のお仕事を請けませんかという依頼もあって、多分それでちゃんと収入になってる人も恐らくいらっしゃるんですよね。
三枝:そうするとやっぱりクリエイティブがどんどん広がっていって、クリエイターが参加できるようになっていくっていう。それは、1つの大きなポイントですよね。
森永:あと私が面白いなと思ったのは、CocoPPaってすごい人数がいるはずなのに、クリエイターのトップ100をクリックすると国旗が出てきて、どこの国の人かわかるんですけど、9割ぐらい日本人なんですよね。
ユーザーは圧倒的に海外の人の方が多いはずなのに、絵を書いてる人は、台湾の方とかちょっといるぐらいで9割ぐらい日本人ですね。やっぱり日本人ってイラスト書くの大好きだし、だから才能の発揮場所が日本人にとって、実はすごく増えているんじゃないかなっていう。
三枝:そういう意味でいくと、割と日本のクリエイティブって日本の中で消費されることが今まで多かったじゃないですか。それが、マーケットが世界に広がるように、世界に向かって日本のクリエイティブが外に出てくるっていうのは、こういうシステムがあることで全然違ってくる感じですよね。
森永:だからYouTubeとかもそうだし、あとはPixivとかCocoPPaもそうだし、あまり言語が関係なくコミュニケーションできるやつは、突然世界がボーンと繋がるなっていう感じが……。
池澤:今、漫画なんかも無料で読めるプラットフォームもすごい増えてきて、コンテンツを無料にするのが当たり前みたいな風潮に最近なってきていると思っていて。それってクリエイターにとって本当にいいことなのかっていうのが、最近すごいもやもやしています。
西村:いいかどうかはわからないですけど、やっぱ色んな人が作れる分だけプレゼンテーション能力とかセルフプロデュースじゃないけど、そういうのが必要になってくるのかなという気がしますね。
誰かが囲ってくれるとかじゃなくて、ちゃんと自分自身をプロデュースできるかというのも、クリエイターには求められてるのかな、なんて思ったりもしますけど、皆さんどう思いますか?
及川紀子氏(以下、及川):そういうプロだとかアマだとかじゃなくて、クリエイターってそもそもなんなんだろう、みたいなところが正直あって。自分の肩書きは一応クリエイターでやっているんですけど、じゃあクリエイターって何かって考えると、誰でももうなれちゃうようなものになってきたりしていて。
考えていて思ったのが、ちゃんとワクワクするものつくれている人がクリエイターなのかなと思って。私は2人組で一緒にやっている人がいて、その人とも話していたんですけど、芸術家の人とか、昔のピカソとかわかんないですけど、そういう人たちも当時は芸術家って呼ばれることが嫌だったんじゃないかとか。
例えば宮大工とかすごいじゃないですか。ものを作っているし、それを見ていてワクワクするって思った。じゃあクリエイターなのかっていったら、でも大工。もしかしたらそれが何年か経った時には、それがクリエイターとなっているかもしれないなと思って。
今、こうやって色んな人がものを作ったりとかして、インターネット上に沢山上げているんですけど、じゃあそれがどこまで残ってくんだろうってことを考えた時に、あまり残らないのかな、というのが私の考えで。
ただ消費されるだけっていうことで、私はそこですごい心配になっていて、やっぱクリエイターっていうものが、もうなくなっちゃうのかなって感じがしちゃうんですよね。絶滅しちゃうっていうか、善し悪しがわからなくなっちゃうのかなっていう感じがするんですよね。
その感覚として、「これかわいい、だからこれ買う」とかっていう直感的なもので買うっていう感じなんですけど、でも、例えば伝統の職人とかになってくると、ただひたすらに40年以上、漆を塗り続けている人とかは、多分、1週間とか2ヶ月とか2年とか漆をパーとやっただけでは、絶対越えられないものがあると思うんですよ。
及川:私もそうですけど、今はパソコンとかイラストレーターとか使えるようになったら、なんかわかんないけど、デザインできるような気持ちになっちゃうんですよ。それって多分みんなそうで、こういったデジタルのガジェットとかアイテムを使うことによって自分は物が作れるんだっていうふうに思い込んでるけど、それってじゃあ本当にクリエイティブなのかっていうところとか、「デザイナーなの?」って言われると、そこってすごく違うと私は思うんですよね。
ただ単純にパソコンがすごいだけなんですよ。私は思うけど、このMacが超すごくて、私自身はすごくないんだけど、それをちゃんとわけて考えられたらいいなと思うんですが、わけて考えないで、自分があたかもすごいできると思っちゃうと。もちろんこの中には、本当にできる人もいると思うんです。
だけど、そこを混同しちゃったりすると、やっぱり違うのかなというか、それは本当のプロの人には失礼に当たるというか。そこは本当にわけて、ちゃんと敬うじゃないですけど、ものづくりの考え方を持っとかないと、日本にあるようなものは、なくなっていっちゃうような気がして……。
それはすごく心配なんですよね。デジタル大好きだし、ガジェットも好きだけど、それに踊らされているような感じがすごくするんです。
西村:なるほど、踊らされています(笑)。
三枝:そういう意味で言うと、割と本当にビックガジェットの大きいものってすごいしっかりしたクリエイティブのものと、割と消費的に色んなものが、広がっていくものができて、昔あったミドルマーケットみたいなものが、だんだん無くなって両極端になってというような印象はあったりします?
西村:ミドルマーケットっていう認識があんまなかったかもしれない。
三枝:なるほどね。
森永:お金の面で言ったら、実は人生上のすごい後悔があって。別に自分1人が何かやったわけじゃなくて、1995年に私は大学1年生だったんですよね。その時からインターネットを始めて、ホームページを作るバイトとか山のようにいっぱいあってという時代に、学生だから安い価格で受けちゃうんですよ。
私とか、私の仲間とか、その世代のインターネットでホームページとかデザインとかプログラミングできる人たちが、本来だったらもっと多くのお金を取るべき仕事を安価で受けちゃって、業界の価格をすごく下げてしまったっていう後悔が実はすごくあって。
「Webは安くできるはずだ、できるはずだ」って言って、価格競争を学生が自ら仕掛けちゃって、どんどんお金を下げていっていたという自覚があって。ちゃんとクリエイターに払われる対価みたいなものを上げることを一生かけて、私はやんなきゃいけないなと、後悔とともに思っているところがあります。
及川:ニューヨークとかと価格が全然違うっていうのにすごく驚いて、知り合いがクリエイターとしてニューヨークで働いていて、すごい大きい家に住んで、「なんでそんななの?」って聞いたら、それはクリエイティブが最も大事にされる部分だからっていうふうにその人はおっしゃっていたんですけど。
日本だと、クリエイティブってそんなに大事にされなかったりする部分だったり。何かの模倣しているものというものは、それはクリエイティブじゃないと思うんですよね。そういう模擬で済ませちゃって、あとはデザインをちゃんとやってみたいな感じになって……。
森永:なんかデジタルは安いから、安くしきれたほうが格好いいとか、イケてるみたいな風潮が……。それはクリエイティブに対してはデジタルであろうとなかろうと、ちゃんと支払われるべき対価というか尊敬があるから、対価がついてくると思うんですけど。
そこがデジタルであるっていうだけで抜けているのは、ちょっとなぁ、と思うのと、あとさっきパソコンを持っていると何でも作れるような気分になるっていう意味で、ちょうどパソコンが普及してきた時代に、私は国立大学のデザイン学科に在籍していて、大学のすごい良い先生が、お父さんお母さんを呼び集めて、「あなたの娘さん息子さんは、国立大学に入ったから学費がかからないはずです。パソコンを買ってあげてください」って。
みんな一応パソコンを買うんだけども、課題は、実はできるだけ手でやれって言うんですよ。パソコンの中でやるとパソコンのソフトを考えた人が考えている範囲でしか、ものが発想できなくなるから。ぎりぎりまでは手と頭で考えて、パソコンはそれを実現するための道具だっていうふうに取り扱わないと、発想の幅が狭くなるよ、といっていて。
当時のパソコンは、道具扱いくらいで良いものなんで。でも今だと、パソコンがないとできないものとかもあるので、大分違ってきているとは思うんですけど、なんかそういうやり方をデジタルに触る時にぎりぎりまで機械に頼らないで考えるっていうのは、私は割と大事にしているかもしれない。
西村:すごく良い話。
及川:私、ロワシーっていうグループをやっていて、ボードゲームが出ているんですけど、そのボードゲームを考えた人っていうのは、超パソコンが好きで、デザインは全部イラレでやっちゃうみたいな感じの人なんですが。
ボードゲームのことを考える時だけは、絶対に全部自分で木も削るしシールも貼るし、全部自分でやってるらしい。そうやってやんないと多分、ボードゲームとかっていうシンプルで単純なずっとやり続けられるようなゲームの仕組みを作るとかってなった時には、手で本当に感覚的にちゃんと自分の頭を使ってやらないと難しいんだろうなとかって思って。
なんか私も考えてみようかなって思って、イラレで先にデザインしようと思うと、全くわかんなくなっちゃって、「もう無理だ」と思って。紙にやっぱり書いたほうが、すごい良い。
三枝:でも、さっき西村さんがおっしゃったみたいに、ぎりぎりまで人間の頭の使えるところの幅を広げていくっていう意味で、ツールとしてこういうものが広がっていくというのは、ある種……。
森永:ここから先は、これが手助けしてくれるって思いながら、考えるのとこれどうやって400個も手で作るんだろうと思いながら考えるのは全然違う。
西村:確かに。
池澤:頭の中のイメージを実現するものであって、そのアイディアは、本当に頭で考えなきゃいけない。ただのツールであるという考え方、捉え方かなと思いますね。
三枝:人間性の一番大事なところですね。
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