2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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加藤貞顕氏(以下、加藤):組織の経営にも関わる話だと思うんですけれども、目の前の小さな目標をクリアしていくというのはすごくいいじゃないですか、みんなのモチベーションも上がるし。
いきなり1位になるのではなくて、あいつを潰すぞみたいな、内的な動機で動けますもんね。マネジメントにもすごく役立ったやり方ではないかと思います。
川上量生氏(以下、川上):勝たないと意味がないので、そういう意味では僕らは常に弱い相手と戦うのが好きなんですよ。自分のサイトの半分以下ぐらいの、弱いサイトと戦うのってね、世の中に知られてやるというのは格好悪いじゃないですか。
だからね、こっそり戦うんですよ。こっそり潰すという。これが僕の趣味で、モチベーションになって今までサイトが大きくなってきたのですね。ニコ動もそうですよね、ニコ動も実は仮想敵にしていたのはYouTubeではなくて、日本国内にすごい小さなサイトがあったんですけれども、僕はそればっかり見ていたんですよ。
加藤:へー、それ知らない。
川上:そうなんですよ。
加藤:似たようなものがあったんですか?
川上:ありましたね。僕の仮想敵はスティッカムとか、そのときにあったサイバーエージェントさんのサイトとかね。そういうのを仮想敵とかにしていましたね。
もうとっくに抜いていたんですけどね。始めて1ヶ月もしないうちに抜いているんですけれども、それをずっとどうやったら潰せるかというのを頑張っていましたね。
加藤:どうしてそういうやり方をするんですか。絶対勝つから? 勝てるから?
川上:強い相手と戦うと長引くじゃないですか。ゲームってやっぱりすぐ終わりたいじゃないですか(笑)。そうすると、延々と続くゲームはやりたくないですよね。だってYouTubeを潰そうなんて言ったらね、本当。
加藤:人生賭けないと。
川上:人生賭けて多分ね、勝てないんですよ(笑)。
加藤:(笑)。
川上:そんなゲームしたくないですよね。
加藤:なるほど。それはまさにこの本とすごい繋がってきたんですけど、最初に、ボードゲームで勝つ方法はルールブックを読み込んで、良い抜け道を探すことだっていう話がありましたけど、まさにそれをやってらっしゃるわけですね。
川上:そうですね。だから勝てる戦いを設定するんですよね、超楽な勝負に挑んで。そういう意味では意識は高くないですよね。絶対に勝てる相手。
加藤:ちょっとニコニコ動画のお話をうかがいたいんですけれども、ニコニコ動画を始めたときって、そもそもそんな勝つ気で始めたのかっていうのが、実はすごい疑問でいて。「ニコニコ動画」っていう名前が、勝つ気で始めた感ないじゃないですか。これはどうなんですか?
川上:ニコニコ動画は、そういう意味では、目の前のすごい弱い敵と戦うんですよ。でもね、全体のストーリーはすごい壮大にするんですよね。僕の中で考えていたのは、ニコ動が成功しちゃうじゃないですか。
成功しちゃうとどうなるか。テレビ局にまず睨まれる。それで日本の音楽業界とか、芸能界にも睨まれる可能性があると。最終的には、やっぱりアメリカに睨まれるんじゃないかとかね、そこまで心配するわけですよ。そしたら、それこそ暗殺されるんじゃないかとか。
加藤:堀江さんみたいに捕まったりとか。
川上:それぐらいまで心配するんですよね。そこから逆算して、そうならないようにするためにはどうしたらいいかって考えるんですよ。それで、目下のところでは超弱い敵と戦うっていう(笑)。
加藤:ニコニコ動画っていう名前にすると、ちょっと大きくなっても、その人たちにそんなに嫌われないで済むのかなみたいな。
川上:いや、嫌われないっていうより、多分ね、偉い人たちがいる会議があるじゃないですか。例えばテレビ局だとしますよ。テレビ局の偉い人たちがね、ネットは酷いと。YouTubeは本当許せないっていうふうなことが、きっと会議ではそんな話をされているんでしょう。
その時に、その会議を想像して、ニコニコ動画っていうサイトもあるんですよって誰か若いやつが言うじゃないですか。そうするとね、きっとその場の空気はすごくちょっと重くなると思うんですよね。「お前、何わけのわからんこと言ってるんだ」と(笑)。
加藤:(笑)。
川上:ニコニコ動画っていう名前、言うのが恥ずかしいですよね。「ニコニコ動画が敵なんです」って言った瞬間に、自分の価値が下がるじゃないですか(笑)。こいつの言っていることは信用できないっていうふうな感じに、やっぱり周りから思われますよね。それが狙いでしたよね。
加藤:本当に最初からそんなこと考えてたんですか?
川上:本当にそうですよ!
加藤:すごい(笑)。
川上:本当にそうですよ。だから胡散臭い名前を付けようっていう話をして。
加藤:本の後ろのほうに1行ぐらい書いてあって、なぜって思ったんですけど、そんな理由なんですか(笑)。
川上:そうですね。だからニコニコローンとかね、すごい怪しいじゃないですか(笑)。
加藤:普通大きくしていく過程で、政治家の人とかに出演依頼とか、ちゃんとした人たちに出演依頼すると、ニコニコ動画っていう名前で僕はすごい苦労しているんですって、その時おっしゃってて、そりゃそうだろうなって思ったんですけど、そういうデメリットはあんまり逆に考慮しなかったんですか、その時に。
川上:デメリットっていうか、僕らの中では、ニコニコ動画って酷い名前じゃないです。これを国会で言わそうとか、そういう目標とか立てるんですよね。国会の質問か何かでニコニコ動画っていうのを言わすとか、あとは国会議員の大臣の答弁とかで、ニコニコ動画って発音させるっていうね。そういう辱めを受けざるを得ないっていう状況になると面白いなと思って。いや、もう国会で出てますよ。何度も出てますよ。
加藤:出てますよね。
川上:全然出てますよね。特に首相が言ってますからね。
加藤:はい。
川上:総理がニコニコ動画とか言ってますからね(笑)。
加藤:今、将棋本やってらっしゃるじゃないですか。羽生さんとか森内さんみたいな棋士の偉い人とかがニコニコ動画って言ってるのを見ると、僕はどうしてもちょっと何かこう微妙な気持ちになるんですけど(笑)。
川上:冒涜ですよね(笑)。
加藤:でも、すごいこと言ってるなって思っちゃいますよね。
川上:起こってる事実が信じられないですよね。ニコ動を好きな人のことを、ニコ厨って言いますけど、だってもともとニコ厨とかって、実はニコチン中毒のことだったんですよね。
加藤:そっかそっか、そうですね。
川上:みんな忘れてますけど(笑)。多分ニコチン中毒のことって思ってる人は少ないですよね。
加藤:そうですね、ニコ厨はそうでしたね。
川上:だから、そういう言葉を奪うとかっていうのも僕らの目標で。
川上:僕ら実はすごいしょうもないことを目標に掲げているんですよ。
例えば、スペースシャトルの中継とか、アメリカの海外中継に力を入れてたんですけど、その時に僕らが立てていた戦略的な目標っていうのがあって、それはホワイトハウスのメディアパスをゲットするっていう目標だったんですよ。かっこいいじゃないですか。
ホワイトハウスに入るためのパスが貰えたらかっこいいよねっていう、それが目標で。結局、テンポラリーのものは貰えたんですけどね。その時の目標っていうのは、オバマ大統領に何mまで近付くかっていう。
それは毎回報告させてたんですよ。最初は50mくらいとか、色々なメディアの中でも1番後ろのほうだったんですけれども、それが段々近くなっていって。1回うちのクルーの横を通り過ぎた時があって、その時は1.5mだったんですよ。その時にもし襲い掛かっていたら、歴史を変えられていたかもしれないですよね。
加藤:そうですね(笑)。
川上:そういうようなところにいるっていうのが、実は海外におけるうちの戦略的な目標だったんですよね。
加藤:戦略的な(笑)。
川上:だって他の目標、例えば黒字化とかね、あんまりにも遠すぎて目標にならなかったんで。だから常に、オバマ大統領に今回は何mまで近付いたのかっていうのは報告させてましたよね(笑)。
加藤:(笑)。まさにルールを変える思考法ですね、それは。
川上:そうそう、オバマに近づくっていうゲームには勝ったってことです(笑)。今回は成功だってことにするんですよ。そうするとやる気が出るじゃないですか。
加藤:あ、でも本当そうですね。マネジメントってそういうもんですよね。皆に目標達成してもらって。
川上:達成して、本当にそれが目標として正しいのかなっていう疑問は置いておいて。
加藤:ちょっとブロマガの話をうかがえればと思うんですけれども、今ブロマガっていう、メルマガをブログでも見られるっていうサービスをやってらして、こないだ10万人超えたんですよね。
川上:はい、超えました。
加藤:そもそもどうして始めたかっていうとこをちょっとうかがってもいいですか?
川上:1番最初に始めたのは、こういうこと言っていいのかわかんないですけれど、メルマガってその時まぐまぐさんしかいなかったんですよね。まぐまぐさんってシステムが古くって。
1社しかいないから、例えばメールが分割して送られてくるってすごい不平があったんだけど、一向に要望しても直してくれないと。これはやっぱり競争が無いからだっていうふうに思った人が何人かいて、そういう方からドワンゴも有料メルマガをやってくれって、ずっと言われてたんですよね。
主に津田大介さんとかね(笑)。堀江さんからも言われたような気がしますけど、色んな人がメルマガが競争するプラットフォームができないかっておっしゃっていて、最初、僕はあんまり興味なかったんだけれども、たまたま僕自身が、それとは別に、ネットでクリエイターとか発信する人が、お金が儲かる仕組みっていうのができたらいいなっていうことを、その時たまたま考えてたんですよ。
加藤:ブロマガ自体はニコニコの流れで考えてらっしゃったんですか?
川上:そう。ニコニコの流れで考えていて、今、ネット発の有名人とかって結構出てますよね。それってどういうことなんだろうっていうふうに考えると、これって例えば、巨大なジャニーズだったり、巨大なAKBとか、巨大な吉本みたいなものと、似た構造にあるなと思ったんですよね。
例えば吉本とかだと、契約してる芸人さんって多分数千人いるんですけれど、その中で食えてるのって多分200人くらいとかなんですよね。それで、AKBとかって何人いるのかわかんないんですけど、あれ48かけるいくつかいるんですか。
加藤:多分相当いますね。
川上:3、400人くらいいるんですかね。ジャニーズとかって何人いるんですかね。
加藤:全然わかんないですけど、そんぐらいはいるんじゃないですかね。
川上:100、200とかでしょ。でも、要するに日本の中の芸能界でも、主要な位置にいるところでも、数百人の下のほうですよ。多分500人はいないんですよ。それぐらいの人数が食えてるっていうのが、プロの世界なんですよ。
だとすると、アマチュアの世界で、僕が目標にしたのは1000人なんですけど、アマチュアの世界で、ニコ動で、1000人食えてる人がいたら、それは、そこからのクリエイターを排出する凄いプラットフォームになるなと。
中身はともかく、1000人食えてるっていうのが重要で。数っていうのはどっかで力になるだろうから、それが例えば2000人とか作ったら、ネットから出てくる人達のほうが強くなるなって思ったんですよ。
だから第一目標として、食える人をとにかく1000人作ろうと思ったんですよね。そのために、メルマガっていうのはあったほうがいいなっていう。どうせやるんだったら、それもマルチメディアのプラットフォームにしようっていうのが、僕が最初にやったことですよね。
加藤:なるほど、そういう発想で。そうですね、もともと動画もあったから、生放送とかとも繋げて、文章を発行してっていう、そういう流れがまとめて作れるなって思ったんですね。
川上:そうです。
加藤:でも、始めて1年くらいで10万人ってめちゃくちゃすごいですよね。
川上:そうですね。多分メルマガの世界ではまぐまぐさんよりはもう多いと言われてますよね。
加藤:メルマガの人数って、ぱっと聞いて多いか少ないかが、本とかの数と比べるとわかりにくいんですけど、堀江さんが1万何千人とか言われていて、ただ、1万何千人ってすごいんですよね。
1万何千人いると売り上げだけでも1億超えるし、単純に毎月1万人だから、本でいうと2、30万部くらいのヒットを出したような状態が、メルマガの1万何千人っていうことだと思うんで。
だから10万っていう数は、おそらく100万部ヒットみたいな、200万部ヒットみたいなクラスの数字にもうなってるっていうことですよね。
川上:そうですね。例えば今、10万人の平均の単価って550円くらいなんですよね。平均550円として、1000人いると月55万円じゃないですか。そしたら実際の手取りで見ても、30数万円の収入が毎月入ってくるわけですよ。こういうことを考えると1,000人集めたらその人は食えるわけですよね。
加藤:そうですよね。
川上:今、確かブロマガで1,000人以上の方は30人ぐらいいると思うんですけれども。
加藤:そんなにいるんですか。
川上:ニコニコ動画で30人以上は食えているわけなんですよ。ニコ動が払っているクリエイター奨励プログラムとか色々あるんですけれども、僕らが計算しているところによると、ニコ動からの収入だけで食えている人って全体で100人超えているんですよね。
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