【3行要約】
・デジタル化で従来メディアの価値創造が課題となる中、異なる分野の実践者による対談が実現。
・集英社「ジャンプ+」編集長の籾山氏とニッポン放送プロデューサーの冨山氏が、10年の試行錯誤を経た成功体験を共有。
・伝統ブランドを維持しながら、デジタル時代の新しい価値を段階的に構築していくことの重要性と難しさを語りました。
共通点の多い二人の初対面トーク
入江美寿々氏(以下、入江):みなさんこんばんは。番組MCの入江美寿々です。『混沌前夜』。この番組は、ビジネス書の出版社であるクロスメディア・パブリッシングによるPodcastです。コンセプトは、ずばり「こっそり世界に楽しいカオスを生み出そう」です。世の中を少しだけカオスな方向に変えてしまいそうなビジネスパーソンや、クリエイターのお二人をお招きしてお話ししていただきます。
初回のお客さまは集英社のマンガ誌アプリ「少年ジャンプ+」編集長の籾山悠太さんと、『オールナイトニッポン』統括プロデューサー(※収録当時)の冨山雄一さんです。よろしくお願いいたします。
籾山悠太氏(以下、籾山):よろしくお願いします。
入江:初めまして!
冨山雄一氏(以下、冨山):よろしくお願いします。
入江:そして、お二人も初めましてなんですよね?
籾山:はい。
冨山:そうです。
入江:(笑)。
籾山:でもなんか、名前の雰囲気が似ているなと(笑)。
入江:名前の響き、似ている部分がありますよね。
冨山:そうですね。経歴も「似ているなぁ」と、勝手に思っていますね。
入江:先ほどお話ししていたら、年代もすごく近かったと。
籾山:年齢も、ほぼ一緒でしたね。
冨山:僕は2004年に仕事を始めているので、たぶん1個学年は上なんですけど。「辿ってきた道が近いなぁ」と非常に思っていますね。
「少年ジャンプ+編集長」 籾山悠太氏
入江:じゃあ、いろいろと共通点もありつつ、今日は違う分野の話をしていただけるということで、非常に楽しみにしております。それでは簡単に、お二人の経歴を紹介させていただきます。
まず、籾山悠太さんです。株式会社集英社「少年ジャンプ+」の編集長、デジタル担当でいらっしゃいます。2005年に集英社入社、「週刊少年ジャンプ」編集部、デジタル事業部などを経て、「少年ジャンプ+」の創刊に参画。漫画編集と並行して、「ジャンプルーキー!」、「MANGA Plus by SHUEISHA」などのデジタルサービスの立ち上げに携わっていらっしゃいます。
そして(2025年)5月9日には、戸部田誠さんが取材されたノンフィクション作品『王者の挑戦 「少年ジャンプ+」の10年戦記』が発売されます。今ちょうど、目の前にも、本がありますね。
籾山:はい。「ジャンプ+」が2024年の9月で10周年になったんですけれども。その10年間を戸部田さんに取材していただいて、本にしてもらいました。
入江:私も少し読ませていただきました。「籾山さんのエピソードもたっぷり入っているなぁ」と(思いました)。みなさんにもぜひ読んでいただきたいと思います。
ニッポン放送メディアプロデュース部の冨山雄一氏
入江:続いて、冨山さんですね。冨山雄一さん。2004年にNHKに入局。2007年ニッポン放送へ。『オールナイトニッポン』では、ディレクターとして岡野昭仁さん、小栗旬さん、AKB48、山下健二郎さんなどの番組を担当されていました。イベント部門を経て、2018年4月から『オールナイトニッポン』のプロデューサーを経て、現在は、ニッポン放送メディアプロデュース部に所属し、ラジオの広告企画全般を手掛けています。
そして2025年1月にクロスメディア・パブリッシングより『今、ラジオ全盛期。』を、出版されました。よろしくお願いいたします。
冨山:よろしくお願いします。
入江:この番組はこの本の編集担当である小山さんが企画をして生まれたんですけれども。
冨山:今日これから話していくんですけど……まさに小山さんに「どういった人に話を聞きたいですか?」と聞かれた時に「ジャンプ+に関わっている人に話を聞きたい」というリクエストをさせていただいたきました。
入江:そうだったんですね!
冨山:今日、編集長の籾山さんにお会いできて、すごくうれしいです。
入江:じゃあ、冨山さん的にも念願が叶ったんですね。
冨山:はい、念願が叶った感じです。
入江:そうなんですね。
冨山氏、念願の「ジャンプ+」編集長との対談
入江:冨山さん自身、「『オールナイトニッポン』を作る時に、「ジャンプ+」をかなり意識されていた」というお話を小山さんから聞いていました。
冨山:そうなんです。今日、いろいろお話をうかがえればと思っているんですけど。実はそう思ったきっかけがあって。
僕、今43歳なので、『ジャンプ』というと中高生の時に『DRAGON BALL』『SLAM DUNK』『るろうに剣心』『幽☆遊☆白書』とかが連載中でした。毎週月曜日になるとコンビニとか、売店とかで紙の『ジャンプ』を買って読んでいた世代なんですけど。
ある日、『ジャンプ』の話を若いディレクターとしていたら、微妙に話が合わなかった時があって。そのディレクターはジャンプ、イコール「ジャンプ+」のアプリの話をしていて、僕は紙の話をしていて、ズレた時に「あ、もう今の若い人にとって、『ジャンプ』という名詞だけでいうと、紙の『ジャンプ』じゃなくて、アプリのほうの「ジャンプ+」を指すんだ」となって。
『ジャンプ』は、もちろん50年以上の伝統があるものだと思うんですけれども。『ジャンプ』というブランドは維持しながら、アナログからデジタルになっても新しい価値観を作っているというのが、まさに『オールナイトニッポン』も、ラジオからradikoで聴かれるようになったことと通じるなと思って。
若い人たちにどうやって『オールナイトニッポン』というものを知ってもらうかという課題に取り組んでいた時に、勝手にアップデートが非常にされているなと思ったのがきっかけです。
紙からアプリへ 「ジャンプ+」誕生の背景
入江:具体的にこういうところを参考にしたとか、取り入れたという部分はあるんですか?
冨山:いや(笑)。逆にどうやって紙からスマホの中のほうにスムーズに移行できたかを今回すごく聞いてみたいです。
入江:そのあたり、籾山さんいかがですか?
籾山:そうですね。もちろん移行も、すぐにできていたわけじゃなくて。僕は昔『週刊少年ジャンプ』編集部にいて、そのあと2010年ぐらいにデジタル事業部という部署に異動になったんですけども。ちょうどスマートフォンが世の中に増えていった時代でした。
『週刊少年ジャンプ』の雑誌の部数もちょっとずつなくなっていくタイミングで「このままいったら、『ジャンプ』は大丈夫かな?」と思うことも当時は多くて。僕が一番『ジャンプ』ですごいと思うところは、毎年のように新しい漫画がどんどん生まれるところです。それができなくなっちゃうと、作家さんも困るし、読者も困る、もちろん集英社も困る。
今『ジャンプ』は絶好調なんですけど、『ジャンプ』のように新しい漫画がたくさん生まれる場所を、スマートフォンで読める場所として作りたいと思って、2014年に「ジャンプ+」をスタートをしました。最初は、なかなか読者も作家さんもいなくて苦労したんですけども、ちょっとずつ、ちょっとずつ右肩上がりに増えていった感じですね。
2024年が10周年だったので、10年ぐらいかけてここまで来た感じですね。
作家も編集者も少なかった当初の苦労
入江:本の中でも、漫画家の人や作品がなかなか決まらずかなり苦戦したという内容もありましたよね。
籾山:はい。そうですね。今から11年前の2014年だと、スマホで漫画を読む人が今ほど多くなかったので、そこで「発表したい」と思う作家さんも少なかったんですよね。「そこで仕事をしたい」という編集者も少なくて。なので、ちょっとずつ小さな実績を残しつつ「だったら自分たちもやってみたい」という人がちょっとずつ増えてきて、本当に階段を一歩ずつ上るような感じで、やってきた感じですかね。