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ログミーBusinessアンバサダーが選ぶ「新年に読みたい一冊」(全3記事)

篠田真貴子氏が選んだ「新年に読みたい一冊」 現代組織の「慢性疾患」に対する処方箋

企業変革のジレンマ 「構造的無能化」はなぜ起きるのか』宇田川元一 著(日本経済新聞出版)

「せっかくの休みは読書したいけど、何を読んだらいいかわからない」ということはありませんか? そんな読者のみなさまに向けて、ログミーBusinessアンバサダーであるエール株式会社 取締役の篠田真貴子氏に、「新年に読みたい一冊」について寄稿していただきました。

篠田真貴子氏が選んだ「新年に読みたい一冊」


組織の慢性的な課題に新たな光を当て、変革への道筋を示す注目の一冊『企業変革のジレンマ 「構造的無能化」はなぜ起きるのか』(宇田川元一 著)。本書は「慢性疾患としての組織課題」や「構造的無能化」という鋭い分析で話題を呼んでいますが、その真価は著者が導き出す「対話」の本質的な重要性にあります。

著者は「経営とは対話である」という核心的なメッセージを、緻密な論理と具体的な実例で説得力豊かに展開しています。ここでいう「対話」とは、単なる意見交換ではありません。「他者を通して己を見て応答する」という深い次元で捉えられており、相手の言葉を通じて自分の思考を捉え直し、それに応答することで新たな気づきを得る相互変容のプロセスとして描かれています。

私はかねてから「対話は"聴く"ことから始まり、経営にとって"聴く"ことは不可欠である」という考えを抱いており、著者のメッセージに深く共感しました。

特に印象的だったのは、「他者を通して己を見る」という視点が、単に「相手が自分をどう見ているか」を意識するにとどまらない点です。著者は、相手がどのような景色を見て、何を感じているのかに意識を向けることの重要性を説きます。

これは私がエールに参画してから学び実践している「without judgement(評価を一旦保留する)」という"聴く"姿勢とも重なり、相手の言葉の背後にある感情や文脈を理解しようとする真摯な態度の大切さを改めて認識させられました。

現代組織の「慢性疾患」に対する処方箋

本書の核となる「構造的無能化」という概念は、組織が環境適応のために分業やルーティン化を進めるうちに、かえって環境変化への対応が鈍くなり、問題の本質を見失っていく—この現代組織特有の「慢性疾患」に対する処方箋として、著者は対話の重要性を説いています。

対話がいかに変革を促進するかについて、本書では、組織変革における「多義性」「複雑性」「自発性」という3つの重要な論点に沿って具体的に解説されています。また、専門性の高い人材ほど「わかったつもり」になりやすく、それが対話を阻害する要因になるという指摘も、多くの組織が直面する課題として響きます。

著者は「自分はまだわかっていない」という謙虚な前提こそが、目の前の事象をフラットに捉え、他者を通して己を見直すために不可欠だと指摘しています。

従来型のトップダウンや危機感の煽りに依存しない、新しい変革の方法論として、本書は事業と組織の運営に関わるすべての人々に示唆を与えてくれます。対話の第一歩である"聴く"姿勢から始まる真の企業変革。本書はその道筋を明快に示してくれ、私にとって、今年出合えて良かったと心から思える一冊です。

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