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好かれる会社、嫌われる会社―大転職時代を勝ち抜く企業の組織戦略とは―(全5記事)

変化に耐えられる組織を作るのは、毎日の「小さな変化」 定着まで時間のかかる組織文化の“土作り”で大切なこと

Unipos株式会社が主催する「Unipos Summit 2023~日本企業・組織の空気を変えろ~」より、「好かれる会社、嫌われる会社 ―大転職時代を勝ち抜く企業の組織戦略とは―」のセッションをお届けします。経営学者であり企業の組織問題にも見識を持つ早稲田大学入山章栄氏、戦略的な人事制度と採用方針を確立するLINE人事の青田努氏、ビジネスパーソンのデータを最も知る一人であるワンキャリア北野唯我氏が登壇し、「これからの人事戦略のあり方」を徹底議論しました。

カルチャーを定着させる時には「耕す」行為が必要

北野唯我氏(以下、北野):ということで、お時間がそろそろ終わりに近づいてきましたので、まとめに入っていきたいなと思います。お一人3分くらいで、青田さんからよろしいですか?

青田努氏(以下、青田):入山先生、北野さん、今日は本当にありがとうございました。楽しかったです。

入山章栄氏(以下、入山):ありがとうございました。

北野:ありがとうございました。

青田:聞いていただいている方に、最後にメッセージをお伝えする感じにできたらと思いますが、(重要なポイントは)途中で出てきた「耕す」ということですね。カルチャーをちゃんとよりよいものにしていくとか、定着させる時には耕す行為が必要です。

ただ、途中で入山先生がおっしゃったみたいに、すぐに成果が現れるわけではないので、耕し続ける時間が一定は必要だなと思っています。そうなると、「いつ花が咲くの?」というのは、みんなが気になることだと思うんですよね。

時間が出るまでちゃんと信じてやり抜くことだったり、ちゃんと周囲を説得し続けることだったり、辛抱の時間はすごく大事かなと思っていて、一定の覚悟が必要かなと思っています。

やっぱりその時は苦しいと思うんですよ。「正しい」と信じることをやっているけど、周囲の理解が追いつかないこともあったりする。なので、やり抜く勇気を人事みんなで持っていけたらいいなと思っております。

これを聞いていただいているのは人事の方が多いかと思いますが、ぜひ一緒にがんばれればと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。今日はありがとうございました。

グローバルで高い時価総額を出している会社と、日本企業との根本的な差

北野:ありがとうございます。じゃあ入山さん、お願いします。

入山:青田さんが、ちゃんとしたことを言うんだなと思って......。

北野:(笑)。

青田:ちゃんとしたことを言うようになりました。大人になりました。

入山:大人になったんですね。

北野:あの時から変わった、ということですね(笑)。

入山:最初に会った時の飲み会の話が、いまだに忘れられないんですよね。

青田:ここで言わないほうがいいですよ(笑)。

入山:さすがにちょっと言えないけどね。

青田:言わないほうがいいですよ。

北野:(笑)。

入山:奥さんのなんとかをなんとかした、みたいな話ね。僕はその印象しかないから「いや~、立派な方になられたな」と思って。

青田:(笑)。早稲田ビジネススクールを出たおかげで、先生の教えでがんばりました。

入山:何も教えてないけどね。

北野:(笑)。

入山:ありがとうございました。北野さんもすごく上手にまとめていただいたので、本当にさすがだなと思っていました。

青田:さすがでした。

北野:いやいやいや。

入山:図らずもなんですが、実は青田さんとまったく同じことを言いたかったんですね。まず、組織文化は戦略です。長期戦略なので、そういう意識で作って作り込んでいかないと、これからの時代は絶対に生き残れない。

グローバル企業が偉いわけじゃないけど、グローバルでめちゃめちゃ時価総額を出している会社と、日本企業との根本的な差がこれです。なのでそういう意味では、今日のイベントや企画は、とても大事だと思っています。

日本屈指のベンチャーキャピタリストの逸話

入山:その上でもう1つ、僕が組織文化の話をする時にたまに使う逸話があります。ベンチャーキャピタル、ベンチャー界ではとても有名な、日本屈指のベンチャーキャピタリストの伊佐山元っているじゃないですか。もともとはシリコンバレーのDCMという、超有名なVCのパートナーまでいった数少ない日本人です。

今はWiLというファンドを作ってシリコンバレーに住んでいますが、日本とシリコンバレーを往復しながら、この前なぜか2号ファンドを1,000億円も集めてしまって。本人に聞いたら「使い方がわからない」と言っていました。そのくらいとんでもない風雲児で、革命児なわけですね。

彼は今、日本にイノベーションを起こそうとして、すごくすばらしいことをやっているんですが、実は彼は高校の同級生なんです。それで、青田さんが卒業したあとなんですが、早稲田のビジネススクールに講師で来てもらったことがあったんですよ。

その時にうちの社会人大学院の学生が手を挙げて、「どうやったら伊佐山さんみたいになれるんですか?」と聞くわけです。その時に伊佐山くんが言った答えが、僕はいまだに好きなんです。本人は覚えていないと思うんですけどね。

まだコロナの前だったんですが「今日、これから君は電車で家に帰るでしょ。降りる駅を1個変えなよ」と言うんですよ。僕はこれを聞いた時に、本当に「なるほどね」と思いました。

変化したい組織を作るなら、毎日小さな変化を繰り返すこと

入山:今日のテーマである「組織文化を作り込んでいく」「変化に耐えられるような組織文化を作る」って、言うのは簡単ですけど、人間って(変化が)怖いんですよね。

文化を作ることって、日本の会社は今までやったことがないんですよ。それを徹底的にやりに行くのは怖いし、これからの時代で変化をしなきゃいけない時に、終身雇用であまりイノベーションを起こさずに来た会社が、変化をするのは怖いんです。

僕はよく「東洋医学、西洋医学」という言い方をしているんですが、「入山が『新規事業だ、イノベーションだ、両利きの経営だ』とか言うから、いきなり1,000億円の投資をしよう。オー!」っていうのが、一番最悪なんですよ。

怖いに決まっているんです。だってそれは、病気になって冷え冷えになっちゃった体に、突如「大手術をしましょう」という話じゃないですか。別に西洋医学が悪いわけじゃないんですが、これは非常に西洋医学的です。人間はそれが怖いんですよ。

だから僕は、大事なのは東洋医学だという話をしています。本当に変化をしたい組織を作るんだったら、毎日小っちゃな変化を繰り返すこと(が重要)なんです。

大きな変化は怖いんですが、小っちゃなことなら誰でもできる。1,000億円の投資は大変だけど、今日降りる駅を1個変えることなら誰でもできる。小っちゃな変化なら怖くないから、誰でもできて楽しいんですよね。

「自分の家ってこういう道でも帰れたんだ」「こんなところにこんなお店があるんだ」とか、これくらいの変化だと楽しいからみんな続くんですよ。まさに青田さんがおっしゃったとおり、時間がかかるけど、続けていくとだんだん慣れてきて楽しくなってきて、極端にいうと“麻痺”していくんです。これが企業文化なんですよ。

組織文化は“土作り”

入山:なので大事なことは、「企業文化を一緒になって作ったから、大きなことをドーンとやるぞ」ということじゃないんですよ。小っちゃいことからでいいから、じわじわとゆっくりやって行って、作り込んでいくことが大事です。

社員が変化を恐れるようになったら元も子もないので、そういうことを考えていただくとすごくいいんじゃないかなと思います。

北野:なるほど、おもしろかったです。私からも一言だけ。最後のお話を聞いて、それこそ事業ってM&Aで切り貼りできる時があると思うんですよ。でも組織文化は、切り貼りができないからこそ耕していくものなのかなと、あらためて僕の中でもしっくりきました。

青田:簡単に模倣できないですよね。

入山:そっか。そういう意味では「耕す」っていい言葉だなと思って。まさに北野さんがおっしゃったように、畑でも、植える植物はトマトだろうがきゅうりだろうが変えられるじゃないですか。でも、土って変えられないでしょう?

北野:そうですね。

入山:でも、畑って土で決まるじゃないですか。だから“土作り”だと思う。

北野:確かに、土作りですね。格言が出ました(笑)。

入山:今、めっちゃいいこと言ったみたいだな。

北野:ありがとうございます。

入山:これで、さっき僕が彼女と別れた話は帳消しで。

青田:(笑)。

北野:そこは、ぜひ放送いただいて。それでは、ご視聴いただきましてありがとうございました。

青田・入山:ありがとうございました。

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