2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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北野唯我氏(以下、北野):みなさん、こんにちは。本セッションのモデレーターを務めます、ワンキャリアの北野唯我です。ここからは「戦略・人事・採用、好かれる会社、嫌われる会社―大転職時代を勝ち抜く企業の組織戦略とは―」をお送りしていきたいと思います。
それでは、登壇者のみなさまをご紹介させていただきます。まずは、LINE株式会社のOrganization Successセンターの青田努さんです。よろしくお願いします。
青田努氏(以下、青田):LINEの青田と申します。よろしくお願いいたします。私はこれまで、リクルートグループやAmazonなど、比較的今回のテーマである「カルチャーの濃い会社」にいたんじゃないかなと思っております。
かれこれ5年くらいLINEで働いておりまして、タレントマネジメントや人材開発、採用などに幅広く関わらせていただいております。
今日のテーマのカルチャーについては、自分なりに思うところがあるんですが、私の知見だけじゃなくて、いろんな会社さんをご覧になっている入山先生や北野さんと楽しくお話ができたらなと思っております。よろしくお願いいたします。
北野:よろしくお願いします。では、もうお一方。早稲田大学大学院の経営管理研究科、早稲田大学ビジネススクールの教授の入山章栄さんです。よろしくお願いします。
入山章栄氏(以下、入山):早稲田大学の入山でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
ちなみに、北野さんには今日初めてお会いするんですが、実は青田さんはもう10年近くの付き合いですよね。
青田:そうですね。
入山:2013年にアメリカから日本に帰ってきて、早稲田大学のビジネススクールの教員になったんですが、(青田さんは)一番最初に授業を担当していたところにいた社会人大学院生だったんですよ。
青田:はい。
北野:すごいご縁ですね。
青田:私は当時、昼にAmazonで働いていて、夜に早稲田ビジネススクールに行って入山先生の授業を受けていました。
入山:今日の(テーマである)組織文化とも関わるんですが、おかげさまで早稲田のビジネススクールは今、めちゃくちゃ人気があるんですね。すごくありがたいことだと思っているんですが、逆に危惧しているのが、倍率が高いから優秀な人ばかり入ってくるので、組織文化がけっこう真面目になってきていることです。
青田さんの(通っていた)頃は、早稲田のビジネススクールって誰も知らないので、その頃に来ていたのは変人ばかりなんですよ。
北野:(笑)。
入山:今日はいきなり真面目な挨拶をしていますが、青田さんはめちゃくちゃ変人ですからね。
青田:ありがとうございます。
入山:あの頃って、やっぱり変人がいっぱいいて。
青田:多いですね。
入山:今はすごく人気がありますが、そもそもあの頃に「社会人大学院に行ってやろう」なんて、よっぽどネジの外れた人たちです。
青田:はい、外れていました。
入山:だから変人ですので、みなさまよろしくお願いします。
青田:よろしくお願いいたします。
北野:じゃあ、(今日は青田さんの)違う側面も見れるかもしれないですね。では、ここからは3人でディスカッションを進めていきたいと思います。
1つ目に「いい組織文化がないと、採用・人材獲得はうまくいかないのでしょうか?」というテーマで聞いていきたいなと思います。
どの企業にとっても採用や人材獲得はものすごく重要で、かつグローバルレベルでも競争が激しかったりすると思うんですが、ここらへんについて聞いていきたいなと思います。まず、入山先生から聞いてもよろしいですか?
入山:いろいろな講演依頼のお話もいただく中で、今日私が「これは絶対に出たい」と言ってお引き受けした理由は、今日のテーマが間違いなく大事だからです。
こういう立場なので、ありがたいことに毎日いろんなところで講演させていただいたり、企業さんでお話ししたりするんですね。僕の場合、テーマはだいたいイノベーションや両利きの経営の話とか、DXの話もめちゃくちゃするんですけど、特にこの1~2年でずーっと言い続けているのが、まさに「組織文化」なんです。
僕がよく講演で「イノベーションが大事です」という話をすると、「これからは変革の時代だから、入山先生がおっしゃっているイノベーションや戦略が大事なのはわかります」「両利きの経営が大事なのはわかるけど、うちの会社の文化に合っていないんですよね」みたいなことを言う会社さんが、けっこういらっしゃって。
僕はそこでピクンと来ました。「ちょっと待てよ。あなたがおっしゃっている組織文化って、勝手にできているものじゃないですか?」という話をしているんですが、実は僕が(組織文化の)重要性に気づいたのはこの数年なんです。
日本の会社って、なんとなく手なりでじわーっと勝手に湧き上がっているものを組織文化だと思っていて、それが会社の戦略に合うの合わないのと言っているんですが、大変失礼ながら、これが根本的に違うという話をしています。
北野:なるほど。
入山:ズバリ言うと、組織文化は「戦略」なんです。日本の企業は終身雇用だったので、(組織文化を)戦略的に・意図的に狙って作ることを、恐ろしいほど長い間やっていなかったんですよ。
青田さんはよくご存じだと思うんですが、僕はGoogleやAmazonさんともお付き合いがあります。Google、AWSさんと仲がいいんですが、彼らが一番大事にしているのは、とにかく組織文化なんです。文化を作って、作って、作り込むことを徹底的にやりこんでいるから強いんですよ。
入山:1回(話を)止めますが、それは採用でも重要です。僕は今、ソラコムという、たぶん日本のIoTプラットフォームNo.1のベンチャーの社外取締役をやっているんですね。
ソラコムさんは非常に伸びていて、日本ではいろいろな方に支持をいただいているので「日本から出る最強のグローバル企業にしよう」「アメリカに行こうぜ」と言って、アメリカやヨーロッパにも出ているんですね。
「グローバル勝負だ」と言ってやっているんですが、ご存じのように今のアメリカって、IT人材はものすごく給料が高いんですよ。スタンフォード大学を出ると、コンピューターサイエンティストだと初任給で4,000万円です。
我々はそれくらいの給料を払わないといけないわけですよ。資金調達すれば払うのはさておきでしょうけど、やっぱり最後はリテンションが大切です。どのくらい(従業員を)引き止められるかという話になるんですが、実はソラコムは離職率がめちゃめちゃ低いんです。
北野:へぇ~。
入山:僕もびっくりしちゃって。普通、1年間に1~2割辞めるのはざらじゃないですか。(ソラコムは)ぜんぜん辞めないんです。アメリカ人ですよ?
びっくりして、社長の玉川憲くんに「なんでこの会社は、こんなに超グローバル優秀なデジタル人材が辞めないの?」と聞いたら、「章栄さん。たぶんそれは、うちのカルチャーがいいからだと思う」と言っていました。
ソラコムは創業者3人がAmazonのAWS出身なので、AWSのカルチャーを徹底的に恃みにしているんです。ソラコムのカルチャーの場合は「リーダーシップステートメント」といって、「こういう行動は絶対に大事にするぞ」というものが17個あります。
このあとも話すと思うんですが、文化って行動なんです。Amazon時代からみんながそれを守っていて、そのカルチャーが好きな人を採用するから、みんな辞めないんですよ。あのレベルの人材になると、どこ(の会社)に行ってもお金は手に入ります。
北野:そうですよね。
入山:なので、大事なのはカルチャーなんですよね。そう考えると、日本はアメリカの後追いなので、まさにこれからそういうふうになっていきます。
カルチャー作りは今までも大事だったんだけど、日本企業が変革を起こして、イノベーションを起こして、新しい人材を惹きつけていくという意味では、これからはカルチャー作りが一丁目一番地だと思っています。
北野:おもしろいですね。青田さんはどうですか?
青田:そうですね。まさしくカルチャーって、結果として手なりでできてくるものじゃなくて、カルチャーの語源は「cultivate」なので、「耕す」ということなんですよね。これまでいかに継続的に耕して、いい土壌を作ってきているか。ここの積み重ねが、企業の競争力の差にもなっているんだろうなとすごく感じますね。
入山:LINEでも、かなり意図的に・戦略的にカルチャーを作り込んでいるんですか?
青田:はい、やっています。Amazonでいう「リーダーシップ・プリンシプル」「Leadership Principles」なんですが、LINEでも11項目の「LINE STYLE」というものを作って、それ自体も定期的に見直したり、ちゃんと実行されているかどうか、360度評価で定期的に見ていたりしますね。
北野:「組織文化に対して作っていくものだ」となった時に、経営陣やマネージャーからすると、「組織文化を作っていくために投資する」「何に時間やお金を使うのか」という考え方になると思うんですが、具体的にはどういうところから入っていくのがいいんですか?
青田:ちゃんとやるのであれば、まずはそれ用のチームを作ることです。カルチャーを推進するためのチームを作ることは、ちゃんと(カルチャーが)定着するまでは大切かなと思っていますね。
北野:それ以降は何かありますか? 組織を作っても稼働しないというか、みんな「また出たよ」みたいな感じになるじゃないですか(笑)。
青田:そうそう。薄れていっちゃうんですよね。
北野:しらけムードみたいになる。
青田:なので、薄れていかないようにする。ちゃんとカルチャーが浸透している会社って、半期のレビューや評価でもちゃんと見られているなと思います。
入山:カルチャー的な行動をしているか、ということですね。
青田:そうです。もちろん業績の評価もあるんですが、行動評価的なところでいうと、LINEであれば11項目がちゃんと実行できているかどうかを360度評価する。もちろん全部スコア化されるので、半期ごとにそれぞれの項目が上がっているかどうかは、ちゃんと見るようにはしていますね。
入山:なるほどね。
北野:入山さんはどうですか?
入山:もちろん、いろんな投資は大事です。それこそ、Uniposさんなんかもバンバン使ってほしいなと思っています。投資は大事なんですが、一丁目一番地で一番大事なことだと思っているのは「行動」です。
カルチャーは行動の習慣化です。口で言っていてもしょうがないので、これが一番重要なポイントなんですよ。日本の会社の場合、カルチャーを作って「わー、作ったぁ。やったぜー!」......おしまい。という会社が、死ぬほどあるんですよ。
だいたいスタートアップに行くと「うちの会社のカルチャーはこうだ」とか、入口にアニメで流れているわけですが、作っただけで満足するのは意味がないんですよ。
北野:(笑)。
入山:やらなきゃしょうがないわけですよね。だから、行動がすべてです。行動の習慣化、つまり毎日やるということですね。行動なので、やらなきゃしょうがない。
これを言うと身も蓋もないんですけど、何が一番重要かを言わせてもらうと、誰がやるかといったらズバリ社長です。なんでかというと、組織って誰もが上を見ているわけです。ということは、その頂点である社長がやらなかったら誰もやらないんです。
社長、あるいは経営陣がやれば、次に部長がやる。上を見ていますから、部長がやれば課長がやるし、課長がやれば現場がやるんですよ。だから、とにかくそこが一番重要です。
青田さんがおっしゃっているように、まずカルチャーチームを作るのは大賛成です。ただ、そこで大事なのは、やらされ感のあるカルチャーチームだとぜんぜん意味がなくて、まずは絶対に社長を巻き込む。なんならお前(社長)が作るんだと。
これも重要なんですが、グローバル企業の場合はグローバルチームでやったほうがいいんですね。日本だとカルチャーってあまり大事にされていないんですが、グローバル(企業)だとカルチャー作りってみんなすごく喜ぶんですよ。そのプロジェクトチームに入るだけで、けっこう誇りになるんですよね。
巻き込んで、とにかくやっていく。ただ、最後は社長(の姿勢)なんです。例えば我々が11個のステートメントを作ったら、「絶対に毎日やりますよね? 嘘はつきませんよね?」と言って、とにかく徹底的に上からやってもらう。
当然ながら、ステートメントを作ったカルチャーチームはそれを体現する人なので、まずは自ら徹底的にやる。それをやっていると周りは見るので、だんだん伝播していく。まずはそれが一番大事だなと思っています。
北野:なるほど。
入山:そう思うんですが、いかがでございましょうか?
青田:まさしくそのとおりです。ちょうどいいタイミングなのでお見せしますが、小物を持ってまいりました。
入山:おお、すごい。
青田:LINEでは「LINE STYLE」についてまとめたこの「LINE STYLE BOOK」を社員みんなに渡しています
入山:見てもいい?
青田:どうぞ。
入山:ありがとうございます。
北野:(笑)。
入山:「バージョン2」なんですね。
青田:そうなんです。
入山:「バージョン1」があった。
青田:アップデートしているんです。この11項目も「要はこういうことですか?」「こういった要素もあったほうがいいんじゃないですか?」と、経営陣で膝を突き合わせて、経営陣の頭の中や今までの歴史の中から出てきたんですね。
中盤に3人の経営陣の対談も載っているんですが、こうやって経営自らが率先垂範役にならないと、やっぱりしらけます。そこはまさに(入山)先生がおっしゃるとおりだなと、同感ですね。
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