2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
Scientists Want To Make (Some) People More Pessimistic(全1記事)
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ハンク・グリーン氏:実は世の中には、「人の思考を悲観的に変化させよう」と努めている科学者が存在することをご存知でしたか? そして、それは“良いこと”なのです。
私たちは「グラスには半分『も』水が入っている」というような、良い面を重視した物の見方を推奨されますが、長期的に見れば悪い面を重視した決断のほうが有益であることが多いのです。
悪い面を重視した決断を下す脳の持ち主が「悲観主義者」です。逆に、良い面を重視した決断を下す脳の持ち主は「楽観主義者」です。
楽観的な考えは「雨が降りそうなのに『大丈夫だ』と考え、レインコートを持たずに外出して濡れる」といった無難な結果に落ち着くこともありますが、「お金が無いのに使ってしまう」という困った結果になる場合もあります。
深刻な場面では、悪い面を無視する決断を下す脳の持ち主は、その決断が生死を分かつ場合もあります。
子どもの頃はみな楽観主義者です。必ずそうだというわけではありませんが、楽観的に考えがちな人が多いようです。
ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの研究チームは、この「楽観主義」を定義づける数式を導き出しました。その気になれば、どんなものでも数量化が可能なのです。
さて、今からあなたは玄関を出ます。スマホを見ると降水確率は60パーセントです。このデータを数式に当てはめてみると、濡れずに済む確率は1マイナス0.6、つまり0.4となります。
ところがあなたが、「まあそうは言ったって、70パーセントは濡れずに済むだろう。レインコートはいらない」と考えたなら、濡れずに済む「予想値」としてこの0.7を数式に当てはめます。「楽観主義指数」は、単純にこの0.7から0.4を引き算した0.3となります。
あなたの「楽観主義指数」は0以上であり、この場合あなたは「楽観主義者」に分類されます。実際のスマホの情報よりも、より濡れずに済むことを楽観視したことが反映されており、理にかなっていますね。
レインコートを持たずに外出し、濡れるリスクを軽視する例のように、人は誰でも元々は良い面を重視した決断を下しがちです。しかし、大人になるまで楽観主義的な思考を維持することはまれです。
楽観主義的な思考をしなくなる理由は、人生における責任の重さが増すことだけではありません。脳が成熟するからです。
人は年齢を重ねるにつれ、悪い面を重視した決断を考慮に入れるようになってきます。つまり「悲観主義」の始まりであり、先の数式でいうところの「0以下の指数」にあたります。濡れて体を冷やすリスクを回避できるので、これは良いことだと言えるでしょう。
そこでユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの研究チームは、若い脳と成熟した脳の比較を試みました。一群の被験者に「雨に降られてずぶ濡れになる」という短いシナリオを見せた上で、そうなる確率を予想してもらいました。
次に、実際にそうなる確率の数字を被験者に伝えた上で、あらためて予想をしてもらいました。研究チームは先の数式にこれをあてはめて、被験者を「楽観主義者」と「悲観主義者」に分けました。
すると、良い面を重視した決断の能力は、すべての被験者において高いことがわかりました。つまり「レインコートを持たずに出かけるほうが面倒が少ない」と考えたのです。一方で、悪い面を重視した決断の能力は低い人もいて、特に年齢の若い人に多く見られました。
年齢の若い人は、年齢の高い人よりも自分が万能だと考えがちだというわけではなく、結果についてより楽観的に考える傾向にありました。
要するに、「濡れるくらいで何もそんなに騒がなくても」と考えるわけですね。その一方で、年齢の高い人は「以前レインコートを忘れてひどい目に合った」と考えます。
こうした傾向は、脳神経細胞の働きにおいても実証されています。脳の断面画像により、楽観的な人は悪い面を無視し、良い面を重視する傾向があることが明らかにされました。
ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの研究チームはMRI画像によって、良い面を重視する決断を強化し、悪い面を決断から排除する神経経路があることを明らかにしたのです。
この神経経路は「下前頭回」と「線条体」という、決断を司る脳の2つの部位をつないでいます。悪い面ではなく良い面を重視する人、つまり楽観主義者の下前頭回と線条体は、より強力に結びつけられていることがわかりました。
神経経路を形成する軸索を保護し、絶縁体の働きをする「ミエリン」という層が厚く、2つの部位へ伝わる電気信号の伝導速度を速める効果が見られました。
つまり、脳に楽観主義的な思考を促す物理的な証拠が発見されたのです。
軸索は神経伝達物質を伝えます。主なものの1つは、報酬系ホルモンとしてよく知られている「ドーパミン」です。楽観主義も悲観主義も、どちらも報酬として最後に自分が幸せになるかどうかを予測する考え方ですから、これはなんだか納得がいきますね。
ドーパミンには役割がいくつかあります。伝達されたドーパミンは、脳の受容体と結合してさまざまな作用を引き起こします。そしてなんと、結合した受容体の種類により、楽観主義と悲観主義に作用が分かれるのです。
結合する受容体は「D1様受容体」と「D2様受容体」というものがあり、それぞれ正反対の働きをします。
ドーパミンがD1様受容体と結合すると、決断において良い面を重視します。D2様受容体と結合すると、悪い面を重視するようになります。D1様受容体は下前頭回に、D2様受容体は線条体に多く見られます。
つまり、下前頭回のD1様受容体は楽観主義、線条体のD2様受容体は悲観主義を司っていると考えられます。同じドーパミンでも、結合する受容体によって、引き起こす作用が楽観主義と悲観主義に分かれるのです。
つまり、雨が降っても濡れずに済む結果になる、線条体のD2様受容体が作用したほうが、より慎重な決断を下すことができることになります。
人生で下すことになる決断は、降られて濡れるか否かよりもはるかに深刻です。悪い面を重視した決断を下せない人を手助けするためには、神経伝達物質の伝導についてより詳しく調べる必要があるのかもしれません。
そこでユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの研究チームは、TMS(経頭蓋磁気刺激)というテクノロジーを使って、成人の被験者が物事をより悲観的に考えるようになる実験を行いました。
被験者は頭に電磁石を取り付け、下前頭回を刺激します。その状態で、先に述べた「雨に降られる可能性を予測する」というアンケート実験を再度行いました。
すると、磁場の発生により弱い電流を(楽観的な考えを司る)下前頭回に誘起させ、活動を一時的に弱めたことで、実験の質問に対する答えが悲観的な反応となったのです。驚くべきことに、被験者たちは悪い面を重視した決断を下すようになりました。
降水確率が70パーセントと伝えらえた被験者たちは、「雨に実際に降られる予測は80パーセント以上」と答えたのです。
下前頭回の活動は、楽観的な思考を司るだけではなく、悲観的な思考を抑える作用もあるようです。だから、活動を弱めることで悲観的な考え方をするようになったと考えられます。
つまり人間の思考は、神経伝達物質が下前頭回と線条体を行き来してさまざまな受容体と結合することにより、楽観的になったり悲観的になったりと変化することが明らかになったのです。
物事の悪い面を重視して決断できない特性は、実験にあるようなシナリオよりもはるかに深刻な事態を引き起こす危険がありますが、こうした危険な決断を引き起こすのは、神経伝達物質だけではないようです。
ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの研究チームは、生まれつき楽観的な決断を下し過ぎる特性も関与していると考えています。
いずれにせよ、悲観的な決断を下す背後にはさまざまなメカニズムが働いています。そしてそれは、あなたの人生をより安全に守ってくれているのかもしれません。
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