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Dementia and Hearing Loss are Tightly Linked(全1記事)

遠くなった耳をそのままにすると「認知症のリスク」が高まる 米国の研究でわかった、聴力低下と認知機能の衰えの関連性

米国ジョンズ・ホプキンズ大学の研究によると、加齢にともなう難聴がある人は、認知症リスクが高いことがわかりました。また、コロンビア大学とジョージ・ワシントン大学の研究では、聞こえに問題があっても医療機関を受診しない人は、聞こえに問題がない人よりも認知機能の衰えが見られることがわかりました。今回のYouTubeのサイエンス系動画チャンネル「SciShow」では、聴力低下と認知機能の衰えの関連性に迫ります。

加齢による「聴力低下」と「認知機能の衰え」の関連性

ステファン・チン氏:年を取るってつらいですよね。服のセンスは古くさいと言われ、話す言葉は死語になります。それだけではありません。耳は遠くなり、認知機能も衰えます。

さて実はなんと、聴力低下と認知機能の衰えには、関連性があるというのです。原因ははっきりとはわかっていませんが、聴力低下と認知症との間にはつながりがあることが研究により明らかにされています。

とはいえ、聴力の衰えを自覚している高齢者すべてに当てはまるわけではありません。

これは良いニュースです。認知症の特効薬は現時点では開発されていませんが、難聴への対処法は存在するからです。つまり聴力の衰えが認知症の因子であれば、認知症を予防できるかもしれません。

加齢性難聴とは、もともとは標準的だった聴力が加齢と共に低下することを指します。要因は、騒音による聴覚細胞の損壊や、聴覚細胞が損壊しやすい遺伝、加齢による脳の聴力を司る部位の衰え、聴覚細胞への不十分な栄養などさまざまです。

米国の70歳以上の人のうち実に3分の1に難聴があることが明らかにされています。それだけ大勢の人に見られる症状で、その程度もさまざまです。

他の多くの事象と同様、聴力も人それぞれです。難聴の測定には、アンケート調査や聴力検査が用いられます。

聴力検査では、異なる「強さ(intensity)」の音を発生させて被験者が聴こえる音域を特定します。25デシベル以下の音が常に聞こえない場合は「異常あり」と診断されます。

音が聞こえなくなる値(しきい値)は人によって異なります。その人が常に聞こえなくなる値を「平均聴力レベル(pure tone average)」、略してPTAと言い、この値が高くなるほど難聴の程度が高いとされます。

PTA値が難聴と診断される区分値に該当すれば、聞こえづらさを軽減できる補聴器を利用した方がよいかもしれません。補聴器の利用により聞こえに関するほとんどの問題が解決される可能性があるからです。

残念なことに、補聴器を必要とする人のうち実際に利用しているのはわずか14パーセントであり、多くは専門機関を受診すらしていません。テレビのボリュームを上げるのは、固いキャンディを我慢するのと同じくらい気軽な加齢現象だと思っているようです。

加齢性難聴を放置することのリスク

ところが、加齢性難聴を放置することにより、認知症のリスクが高まることがわかってきました。

2011年のジョンズ・ホプキンズ大学の研究によると、加齢性難聴がある人は、認知症リスクが高いことがわかりました。認知症リスクは、被験者の聴力が重度、中程度、軽度、標準の順で低いとされ、難聴度が高ければ高いほど認知症リスクは高いことになります。

それだけではありません。コロンビア大学とジョージ・ワシントン大学の研究では、認知症リスクが高まるのは、重度の難聴だけではないことがわかりました。聞こえに問題があっても医療機関を受診しない人は、聞こえに問題がない人よりも認知機能の衰えが見られました。

PTA値が1から10デシベルの被験者は、11デシベルから20デシベルの(難聴の度合いが高い)被験者よりも認知機能が高く、わずか10デシベルの聴力を失っただけでも認知機能が明白に損なわれることが複数の検査で判明しました。

さらに驚くべきことに、PTA値が1から25デシベルの人は、25デシベル以上の(難聴の度合いが高い)人よりも、認知機能が高い傾向がより強いことがわかりました。

こうした結果から、25デシベルを目安に医療機関の受診を促し、認知症を誘発する難聴を発見して細やかに対処するべきなのかもしれません。とはいえ、もう少し対処法の研究が進むまでは明確な医療の基準を設けるのは難しいでしょう。

難聴で他者とのコミュニケーションが困難になることの弊害

難聴と認知症には関連性があることは明らかですが、認知症の因子であると明言するにはもう少しデータが欲しいところです。認知症を誘発するしくみの一部であるとは考えられていますが、難聴が認知機能の低下の直接的原因だとは、はっきりとは言えないのです。

2011年の論文はさらに、難聴の人は聞き取りに集中してしまうため、記憶への注意力がおろそかになると指摘しています。また、コミュニケーションが困難であるため、社会的にも孤立してしまいます。

社会的な孤立と認知症とを関連づけるデータもあります。つまり、難聴でコミュニケーション能力や社会的な関わりを失うことによって、間接的に認知症の因子となっているのだと考えられています。

難聴と認知症の症状には、どちらも末梢血管疾患など他のよく見られる病気が隠れていることがあり、難聴が認知症の発症を警告している場合もあります。これにはデータの裏付けがあります。2011年の研究では、認知症を発症した人は、そうでない人に比較して年間で倍以上のデシベルの聴力を失っていました。

高まる補聴器への期待

さて、難聴が認知症の原因であるかいなかの議論はさておき、難聴そのものに対する対処法はあるのでしょうか。もし認知症のなんらかの因子であるのなら、難聴そのものに対処すれば認知症は防げるはずです。ここで補聴器の登場です。

これまで認知症と補聴器使用との関連性を示す研究実績はなく、認知症の予防手段としての補聴器による成果は見られませんでしたが、これは補聴器をメインに据えた実験が行われていなかったからです。

2011年の研究でも、補聴器の装着時間や種類、医療機関の診断に基づいて正しく使用されているか否かはデータに入れられていません。

補聴器使用の効果が出始めるのは数年かかると考える医師もいますし、補聴器の使用が数年に及ぶ被験者と、使い始めの被験者がいっしょくたに集計されているのであれば、効果は見えるはずもありません。つまり、補聴器の使用が認知症予防につながるか否かには、まだ研究の余地があるのです。

うれしいことに、そのような研究はすでに始まっています。2018年から25年間被験者を追跡調査した研究では、補聴器の使用者の認知症発症リスクは低いとされました。

とはいえ、この調査は聴力検査ではなく聞こえの自己申告によるもので、聴力テストの結果との関連性が認められているとはいえ、デシベル単位での計測ほどの実証性には乏しいと考えられます。つまり、現時点では正確な調査が行われていないのです。

しかし、どの実験においても補聴器を使用することによる悪い結果は出ておらず、認知症を改善する手だてが現時点ではない以上、難聴が認知症の要因であるのなら、難聴外来を充実させ、対処法を充足させることにより、多くの人の人生が救われるはずです。難聴と認知症との関連性が明らかになりつつある今、これは医療の今後の課題となることでしょう。

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