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Fastest Day on Record...but We're Slowing Down(全1記事)

一日はいつも「24時間」ぴったりとは限らない? 観測史上「最も短い一日」が生まれた理由

一日は常に24時間ぴったりだと思っていませんか? 実は2022年6月29日は、1.59ミリ秒短い観測史上「最も短い一日」となっています。今回のYouTubeのサイエンス系動画チャンネル「SciShow」では、一日の時間が変化する理由に迫ります。

一日はいつも「24時間」ぴったりとは限らない?

ハンク・グリーン氏:近ごろ「どうも時間の感覚がおかしいな」と感じることはありませんか? 新型コロナウィルス感染症のパンデミックが始まって以来数年が経ちましたが、ほんの数か月間だったように感じる一方で、十年近く経ったように感じることもあるでしょう。

人間の時間の感覚はこのようにぶれが生じますが、実は一日の長さは、実際に絶えず変動しているのです。

2か月ほど前(2022年6月29日)、原子時計による正確な一日の計測が始まって以来ではありますが、史上「最も短い一日」が観測されました。

地球内外のさまざまな現象により、一日が短くなることはありますし、逆に長くなることもあります。私たちは、一日はぴったり24時間だと思っていますね。「時間」という単位も、一日の長さが基になっています。しかし実際は、地球の自転の速さにより多少の長短の差が生じます。

2022年6月29日、地球の自転は通常より早く、その日は1.59ミリ秒短くなり、記録を更新しました。しかしこれは、原子時計による正確な一日の計測が始まって以来の、ごく最近の記録にすぎません。

太古にさかのぼれば、地球の一日が何時間も短い時代がありました。なぜこのようなことがわかるのでしょうか。なんと軟体動物の化石を調べることにより、何百万年も昔の「一日の長さ」がわかるのです。

貝は炭酸カルシウムを分泌することによって、日々、貝殻に層を形成します。つまり殻の層が薄い場合は。一日が短かったと考えることができます。これと併せて、当時の環境下のさまざまな成分の割合から類推すると、7200万年前から8400万年前の地球の標準的な一日の長さは、現代と比較して30分近くも短かったようです。

つまり地球の自転速度が速かったため、一年は今のように375日で、うるう年に366日あるのではなく、372日もあったことになります。さらに140億年前までさかのぼれば、一日の長さは19時間にも満たなかったようです。

地球の自転速度の変化は「月」に関係があった

なぜこのようなことが起きたのでしょうか。原因は地球の衛星、月にあります。地球は、月が地球を公転するよりも早く自転しています。この速度差により、月の重力がブレーキに似た働きをして、一世紀につき数ミリ秒ずつ、地球の自転速度を落としているのです。

一日の長さは一年単位ではなく、一日単位といった、もっと短い期間で変動することもあります。これは地球の質量の分散と関連性があります。

これには、アイススケート競技選手がスピンする時に腕を体につけて縮めたり、しゃがんで片足を伸ばしたりして回転速度を調整するのと、同じ物理法則が働いています。

地球上には流動する物質が大量に存在します。大気や海水、岩石などは、太陽や月の引力による潮汐力(ちょうせきりょく)で絶えず移動していて、極地の氷床の成長圧によって、地球の球体には歪みが生じます。

一説によれば、前述の最短記録日が生じた一因に、気候変動があるようです。極地の氷床や氷河が、冬になっても再凍結せずに溶け出しつつあるため、地球を変形させる圧が年々低下しているのです。

アイススケート選手が手足を縮めてスピン速度を上げるのと同じ仕組みで、地球の自転速度は少しずつ上昇しています。つまり、これまで何百万年、何十億年とかけて徐々に一日が長くなってきたのに反して、一日が短くなりつつあるのです。SFでもよくあるように、時は不変ではありません。

日々変動する一日の長さに対応するための「うるう秒」

さて、失われた1.59ミリ秒を人間が感知することはできませんでしたが、テクノロジーがそれを可能としましたね。

テクノロジーの一例「GPS」は、複数の人工衛星から発信した信号を、個人のスマートフォンなどの受信機に受信させて機能します。地球の自転速度に加えて、衛星から電波が発信された時刻と、受信機がその電波を受信した時刻との差を利用して、位置情報や移動距離などを算出します。

ところが、地球の自転速度がわずかとはいえ日々変動するのであれば、GPSの位置情報も乱れるはずです。そうなれば、テクノロジーに依存したシステムにも甚大なダメージがあるでしょう。たとえばGPSは、嵐や洪水、山火事の拡大状況などのモニターにも活用され、必要に応じて避難情報の提供にも使われています。

そこで、日々変動する一日の長さに対応するため、科学業界(国際地球回転・基準系事業(IERS))では、数年おきに「うるう秒」を加えています。

しかし、今回の最短記録日が、今後も平均を下回る長さの日が増える前兆であるならば、「負のうるう秒(天文時に合わせるために、原子時から1秒を差し引くこと)」を導入する必要があるかもしれません。その場合、差し引く割合は、極地の氷が融解し続けるスピードなどの要因と併せて考慮される可能性があります。

しかし、いくら短期間のうちに一日の天文時間が短くなっているとはいえ、限度はあります。月は地球の自転速度を低下させ続けていますし、過去140億年と同様に一日が長くなり続けるのであれば、地球の一日はわずか2億5000万年間で25時間になるはずなのです。

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