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漫画家ミライ会議2021【村田雄介×森川ジョージ】超創作論(全5記事)

大ベテラン漫画家が、若い世代を「見習いたい」と思うワケ 『はじめの一歩』作者が期待する、漫画界の未来

ナンバーナイン主催で開催された「漫画家ミライ会議2021」より、【新創作論】をテーマに、『はじめの一歩』の森川ジョージ氏と『ワンパンマン』の村田雄介氏が登壇したセッションの模様を公開します。本記事では、「2人が注目する漫画トレンド」と題し、村田氏が注目する「アニメ×漫画」の可能性について、森川氏が考える「若い世代を見習うべき理由」について語られました。

「TikTok売れ」の話を聞き、動画編集アプリをインストール

工藤雄大氏(以下、工藤):どんどんツイートもされてるので、お二人も見ていただきつつ、そろそろ次の話題にいきたいと思います。もう気づけば1時間。

森川ジョージ氏(以下、森川):終わりじゃない?

工藤:ぜんぜんまだありますよ。「2人が注目する漫画トレンド」という4つ目のテーマがあるんですけど。森川先生もTwitter見られていますか?

森川:見てる見てる。

工藤:何か気になるやつとかあります?

森川:Twitterトレンドというか、僕も昨日から「漫画家ミライ会議」を見てるわけですよ。で、すごい勉強になって。これ無料で見ていいんだと思って。

工藤:ありがとうございます、無料です。

森川:昨日出てきた……ツモツモさん?

工藤:もつもつさんですけど(笑)。

森川:そうだね、麻雀好きだからツモツモさんになっちゃったんだけど(笑)。

工藤:ツモりたいですからね。

森川:もつもつさんのを見て、「TikTok売れ」っていうの? あれ考えて。すぐに僕、動画編集アプリをインストールして「僕も漫画の紹介するんだ!」と思って。

工藤:ちょっと待ってください(笑)。『はじめの一歩』のアカウントではなく、森川先生が?

森川:僕がいろいろ紹介したいなと思って。とりあえず昨日すぐインストールして、自分ちの熱帯魚を撮ってやってみたんだけど。何がなんだかわからなくて。

工藤:動画を作るっていうのは、また違う難しさですよね。

森川:あれ難しいね。慣れないとできないなと。

工藤:もしかして、やろうと思われてます?

森川:やれるならやろうと思うよ。

プレイステーションのゲーム『戦場のフーガ』もインストール

森川:あとね、「漫画家ミライ会議」を見て、『戦場のフーガ』っていうのを昨日インストールして。

工藤:えっ、プレイステーションのゲームですか?

森川:そう。おもしろそうだったから、さわりだけやってみたの。犬みたいなのが出てきて。

工藤:CC2さーん、サイバーコネクトツーさーん! 森川先生が『戦場のフーガ』をご購入いただけたということです。

森川:だけどまだぜんぜんプレイしてないんだよ。さわりだけしかやってなくて、でもすごく期待感あって。

工藤:私は実際プレイさせていただいて、最後までいかせていただいたんですけど。

森川:言ったほうがいいよ。スポンサーさんなんでしょ、どんどん言ったほうがいいよ(笑)。

工藤:はい! 「漫画家ミライ会議」はサイバーコネクトツーさまのおかげで運営できております、ありがとうございます。『戦場のフーガ』、クリアまでさせていただいたんですけど、めちゃめちゃおもしろかったです。

森川:僕はぜんぜん忖度なしで、すごく期待感ありましたよ。

工藤:そう言っていただけて、めちゃめちゃうれしいですね。たぶん松山(洋)さん、めちゃめちゃ狂喜乱舞してると思いますが。

「TikTok売れない漫画紹介」で紹介したい『メイドインアビス』

森川:あのね、(村田先生が)描いてるんで(笑)。

(一同笑)

森川:もうちょいつないでください!

工藤:もうちょいつなげましょう(笑)。ちなみにこのあと聞きたかったところですが、森川先生が漫画紹介をTikTokでやるとしたら(笑)。

森川:僕ね、漫画紹介をやるとしたら、本当に広めたくない漫画があって。

工藤:えっ、広めたくない?

森川:逆に「お前ら読むなよ」「絶対読むなよ」という。「TikTok売れ」はないけど。「TikTok売れない」にしたいんだよね。

工藤:「TikTok売れない漫画紹介」みたいな(笑)。

森川:うん、まず初めに紹介するのが『メイドインアビス』。

『メイドインアビス』(1) (バンブーコミックス/竹書房 )

(一同笑)

工藤:なるほど(笑)。

森川:うつになっちゃうからね(笑)。あれ見てさ、先が気になってしょうがないんだけど、どんどん落ち込んでいくのよ。

工藤:「どこかで救いを……!」と思いながら読みますよね。

森川:それで、(作者の)つくしあきひとくんと知り合いになって、「あれどうにかしろよ」って。

工藤:(笑)。

森川:「あれがいいんじゃないですか」とか言ってさ(笑)。「愛ですよ、愛」とか言われちゃって、「んなぁ……」しか言えなかったもん。だからもう、あれの不買運動をしたい。

工藤:不買運動(笑)。けどみんな買っちゃうと思いますよ。

気になったことは何でも食いついてしまうタイプ

森川:あ、なんか描いたよ?

工藤:えー!?

村田雄介氏(以下、村田):すいません、ちょっと一歩くんを描いてみたんですけど……(笑)。

工藤:いやぁー……。

森川:うまいよねぇ。

工藤:目の力が。

森川:よく覚えてんなこれ!(笑)。

工藤:(笑)。今何も見てなかったですよね?

村田:そうなんですけど、でも今描いたそばから修正したいですね(笑)。

工藤:どういう(笑)。

森川:さっきの僕の適当なサイタマ先生と比べて、また好感度が上がっていっちゃったじゃない(笑)。

工藤:(笑)。でも森川先生の描かれたサイタマさんもすごくかわいかったんで。まあブロッコリーマンでしたけど。

森川:さっき見たのを描いたんだけどさ……(笑)。

工藤:いやぁ、まさかのつくし先生が、先ほど「#漫画家ミライ会議」をつけてツイートされていますよ。

森川:本当だ。つくしくん、「森川先生、戦場のフーガのCM見ていきなり買ってプレイするのすごい…」(笑)。なんでもね、食いついちゃうのよ。今日だって僕、工藤君とぜんぜん知り合いでもないのに「村田先生と会えますよ」ってだけでパクっと食いついちゃったからね。

工藤:いやいや、なんか悪いやつみたいに言われてますが(笑)。私たちのおかげとは思ってませんが、でもそういう縁になってうれしいなとは思います。

森川:勘違いしないでね、村田君のおかげだから(笑)。

工藤:(笑)。もちろん、そのとおりでございます。

村田:すいません、ちょっと鼻を修正させていただきました。

(一同笑)

工藤:今の時間でまた何か描かれてると思ったら、修正されてた(笑)。

森川:だんだん価値が出てきたぞ、これ(笑)。

工藤:いやぁ、ありがとうございます。

村田:僕はしゃべりがいっぱいいっぱいで、森川先生が出された時に初めて森川先生が描かれているのに気づくという体たらくだったんですけど。その描いてるさまを動画を撮らせていただきたかったです……(笑)。

村田先生のおすすめ漫画は『元音くんはデビューしたい!』

森川:「おすすめの漫画」だそうですよ。

村田:はい? あっ、そうですか?

森川:今のお題わかってんの?(笑)。

村田:すいません、ちょっと夢中で……(笑)。

森川:今のお題は「村田先生がおすすめの漫画は何ですか」って、視聴者のみなさんが興味持って待ってるから。

村田:本当ですか? それは『はじめの一歩』です。

(一同笑)

森川:そうじゃなくて! これはいいから(笑)。

工藤:もちろん『はじめの一歩』も最高の漫画だと思いますし。最近、何か注目されている漫画とか。

村田:先ほどお話に出た、ムカデ長老を描いていただいた元スタッフの梅渡飛鳥先生が描かれた『元音くんはデビューしたい!』という漫画がございまして。それは非常におすすめです。

『元音くんはデビューしたい!』(1) (コミッククリエイトコミック/講談社)

工藤:それは少女漫画ですか、少年漫画?

村田:少年漫画ですね。元根暗の少年が不良としてデビューしたい、という。

工藤:ぜひみなさん検索していただいて。たぶんチャット欄とかTwitterで、私たちからそちらの作品のリンクを貼らせていただきますので。ぜひお願いいたします。

村田:検索していただいて、読んでいただいて、その感想を梅渡先生に送っていただけると。

工藤:さっそく今の作品をツイートしてくださってる方がいらっしゃいますね。

村田:よかった、ありがとうございます。

工藤:『メイドインアビス』の書影をツイートされてる方もいらっしゃいますね。

森川:「メイドインアビスはあかん」って書いてあるよ、この人。大賛成だね!

プロ並みの動画が作れる、クリスタのアニメ制作機能

工藤:(笑)。今お二人がご注目される漫画のお話をうかがいましたが、続いてトレンドと言いますか。漫画業界はいろいろあると思うんですけど、お二人が興味があることについてうかがいたいと思うんですが。

村田:じゃあ、いいですか。クリスタ(CLIP STUDIO PAINT:漫画原稿制作ソフト)で、たぶん気合を入れるとプロとそんなに遜色ないぐらいの動画が作れるんじゃないか、というくらいアニメを作る機能が拡充されているんですけど。

工藤:実際作られてましたよね。

森川:あれね。動いてたよね。

村田:(笑)。はい、ちょっと作らせていただいて……。

工藤:「ちょっと」っていうレベルじゃなかった気がするんですけど。

村田:3週間ぐらいかけて2分ぐらいの動画ができまして。

工藤:えっ、あれ3週間なんですか?

村田:そうですね、2~3週間はみっちりだったんですけど。これから、コンスタントに作っていければと思ったりするんですけど。

工藤:コンスタントに作っていかれるんですか(笑)。

村田:WEBTOON(韓国発の縦スクロールデジタルコミック)とかで雪が降ったりとか、そういう演出がよく試されてるんですけど。現状だとまだアニメを作るのは手間がかかりすぎるんで、漫画の利点としての「コンスタントに新しい話を更新していく」というところに響きかねない作業量にはなるんですけど。

漫画とアニメの「おいしいとこ取り」ができる表現の可能性

村田:アニメを作るクリスタの機能って、これから拡充されてく一方ですし。ほかのソフトでもどんどん手軽に作れるようになっていくと思うんですね。

なので漫画を描くのとそんなに変わらない手間で動画が挟まれば、アニメだか漫画だかよくわからないものだとか、初めからアニメを作ったりだとか、アニメから作って漫画に展開したりだとか。今後はちょっと変わった展開もあり得るのかなと思っています。

工藤:個人でアニメからスタートするっていう。

村田:ですね。WEBTOONで動きが挟まってる漫画とかは、今の段階だと作家さんが動きを付けてるわけじゃないと思うんですよね。外注してほかの企業で、予算内で動かしてというかたちになるので。なので、作家さんが動かしたいところや動きをイメージしてるところを、必ずしも動かしてるわけではないように感じていて。

作品を作る時に「ここはこういう動きにしたほうが、動きとして映える」「止め絵で描くよりは動きのほうが絶対いい」というのを、作家が判断して動きを付けられるようになれば。それが実現できるようになれば、漫画とアニメの合いの子で、しかも両方のおいしいとこ取りみたいなこともできるのかなと感じますね。

で、動きを付けるポイントは、ちゃんとその動きがキャラクターと結びついている、キャラクターの感情と結びついていたりすると、表現として意味があるのかなと。

キャラクターもアクションもおもしろくする『カリオストロの城』のワンシーン

村田:例えば古い例なんですけど、宮崎駿作品でルパンの『カリオストロの城』ってあるんですけど。CMの時ってハイライトをパッパッと並べて映すじゃないですか。僕が子どもの頃、まだ『カリオストロ』を見たことない時に番宣を見て、「すごい、何この今の動き」と思った、印象に残った動きがあって。

クラリスという囚われの姫がいるんですけど、ルパンが助けに入って、そこで敵に囲まれるんですよ。敵に囲まれたルパンがそのまま罠に落とされるんですけど、その罠に落とされる時の動きが、ルパンが不敵な笑みを浮かべながらポケットに手を突っ込んだ、その姿勢のまま足元がバカっと開いて、その姿勢のままヒュッと落ちていくっていうシーンがあって。それをカメラで追っていくんですね。

そのまま落っこちていくのもおもしろいですし、ルパン的には足元に罠があるのなんてわかった上であえて落ちてるっていう、ルパンのキャラクター表現にもなっている。そんなに手間がかかるシーンじゃないんですけど、動きとして見ても、アクションとして見てもおもしろい。そういうワンシーンであれば、瞬間的に挟み込むようなかたちで漫画の中にあっても、ストレスにはならないんじゃないかなと思います。

工藤:むしろ、おもしろくなるんじゃないかという。

村田:そうですね。

「キャラクターに乗っかったアクション」への期待

村田:『ラピュタ』でもけっこう有名なシーンなのでご覧になった方も多いとは思うんですけど。シータというヒロインを救出するシーンで、フラップターという飛行機械から逆さ吊りになって、手を広げてシータのところに飛び込んでいくシーンがありまして。

それでシータはどうするかというと、ものすごい高い塔の上にいるというのは、前のシーンでちゃんと振ってあるんですけど、目もくらむような高さの塔からパズーを信じて飛び降りるんですよ。その瞬間にかっさらっていくっていう、ものすごい気持ちいいタイミングで決まるシーンがあるんです。

あの気持ちよさと、そして2人のキャラの決意が見えるという。そんな動きをちゃんとアニメ化できていれば、少なくとも邪魔にはならないんじゃないかなと思っていまして。

工藤:すごいですね。本当に「漫画家ミライ会議」にふさわしいと言いますか。漫画の未来って話ですよね。

村田:どういうかたちでそれをお金にしていくかとかはまったく……。とりあえずおもしろそうだから、そういうのを思いついたら作ってみようという気持ちでいます。どういうふうに仕事にするか、お金にするかは白紙なんですけど(笑)。

とりあえず、キャラクターに乗っかったアクションをするというところですね。『一歩』でも、ドラマを背負ってるやつが試合の最後にどんな意地を見せるかが、動きとリンクするところだと思うんですけど。

トレンドを作る若い世代のすばらしさ

森川:さっきから気になってることが1つあるんだけど。……尺が決まってるから。

(一同笑)

森川:話が長ぇから。

村田:あー! ご迷惑をおかけしてすいません!

工藤:いやいやいや(笑)。

森川:(笑)こういうとこだよ、司会進行は!?

工藤:聞き入ってしまってました、ごめんなさい。

森川:僕も聞き入ったふりをしていました。

(一同笑)

村田:すいません……。

工藤:いやいやぜんぜん、村田先生にも気持ちよく話していただけたほうが嬉しいので。

森川:これから注目する漫画のトレンドでしょ。還暦迎えるような我々の世代からすると、まさにこれなの! 彼(村田先生)だってもうベテランなわけ。ベテラン作家なんだけど、僕らから見たらまだ若い彼らが、こうやって引っ張っていってくれてるわけ。

よく世間では「昔はよかった」とか「我々の時代は」って言うけど、んなわけないじゃん。若者のほうが絶対すばらしいんだから。昔の満員電車って、みんな新聞広げてこうでしょ。ここにタバコ持ってたりとかして。でも今の若者って、みんなここ(スマホ)で済ませてるわけ。若者ってのは、これほどすばらしく進化してるわけよ。

だから漫画界も同じで、若者がこうやって引っ張ってくれてるわけ。どんどんトレンドを作ってくれるのはこの世代とその下の世代なので、我々はそれを見習わなきゃいけないなと思うの。もう「老害」って言われてるんだけど……だからと言ってどかないけど。

工藤:(笑)。いや、誰も言ってないと思います、まず。

いいものはどんどん取り入れていくべき

森川:僕らはいられるだけいるけども、でもやっぱり若者たちは本当にすばらしくて。『少年マガジン』の僕の仲間たちもみんな本当にすばらしくて、どんどん漫画を描いていくの。「トレンドがこれだ」というんじゃなくて、若者だよね。若者にどんどん描いていってほしいと思うし、みんなすばらしいと思う。もう未来しかないよね。

工藤:こういう若い方々からの突き上げというか……。

森川:いや、突き上げはないよ。

工藤:突き上げはないですか(笑)。突き上げという話ではなかったですか。

森川:ただ「老害」という違う椅子にちょこんと座ってるだけだから。

工藤:いやいや! 同じラインじゃないですか。老害なんて誰も思ってないと思います。

村田:『マガジン』の永遠の4番バッターということで。

森川:いや、そういうことを言うとね、また見てる人が「お前どけ」って言うから。

(一同笑)

村田:すいません、今日ちょっとしゃべりすぎたんで……。

森川:いやいや、君にしゃべってほしい。

工藤:でも森川先生も今のように、トレンドは若い方々が作っていくという。

森川:だって、びっくりすることばっかりなんだもん。彼が今言ったこともびっくりしたし、話が長いのもまたびっくりしたけど。

(一同笑)

村田:すいません(笑)。

森川:だけどWEBTOONとか読んでも、びっくりするシステムばっかりになってきてるから。時代は変わっていくし、どんどん変えていってほしいと思うし。

工藤:私たちナンバーナインもそこの一端を担えるように、がんばっていきます。

森川:ヒロユキくんたちが言ってたやつとか、若林くんがこの「ミライ会議」で言ってたマネタイズの方法とか、すべてそうだよね。変わってきてるから。どんどんいいものを取り入れていって、僕も見習いたいなってことだよね。

工藤:もう、そう言っていただけるのが何よりうれしいといいますか、がんばっていこうと思います。

森川:いや、きみはがんばらなくていいから、もう……(笑)。

工藤:村田先生とは完全に同じラインではなかったですよ(笑)。ちょっと聞き入ってしまって、私が司会どころじゃなくなってしまって大変申し訳ないんですが。実は残り15分ですので、質疑応答をしていきたいなと思います。

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