2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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大澤孝氏:次は「スマッシュボマー」。
これはどうですかね。当たったのか、当たらなかったのか? さっきも言いました伝承玩具コンセプト。ビー玉があって「ビーダマン」がありました。これ、売れました。次、ベーゴマがあって「ベイブレード」がありました。これも売れましたね。
次のこれ(スライドを指して)は歴史の隅に隠れたんですが(笑)。けん玉のおもちゃ「デジケン」というのがありました。これ、僕が作ったわけじゃないんですけど、当時のタカラで売ったものですね。これ、ぜんぜん売れなかったですけれども、けん玉をおもちゃにしています。
ヨーヨーはバンダイさんですけれども「ハイパーヨーヨー」になりました。ピンとくる方はピンとくるんですが、伝承玩具で有名なのがもう1個ありまして、メンコ。メンコのおもちゃって、あってしかるべきなんですよね。
じつは当時、タカラ以外でけっこうありました。例えば「ポケモンパッチン」というポケモンのメンコとか。「めんこスタジアム」というケイン・コスギさんが出ていたやつとか。あと「バング」って、誰も知らないですけどね。
僕や別の担当者がメンコのおもちゃみたいなのをやったんですが、全部売れなかったです。「メンコは鬼門」と言われていました。じつはこのおもちゃはメンコのおもちゃなんですが「鬼門だから、俺が一発当ててやろう!」と思って、あえて鬼門に足を突っ込みました。
当然、やるからには3つの商品を研究しました。なぜ、メンコのおもちゃは売れなかったか? 散々調査して、3つ原因が見つかりました。1つが、当時の子どもたち……今の子もそうなんですが、メンコを渡してもうまく投げられないんですよね。
僕らの子どもの頃とかもうちょっと前は、公園で野球を絶対にやっていたので「投げること」が得意だったんですけど。だんだん野球やらなくなってくるんで、投げること自体がそもそも得意じゃない。的に当たらないし、うまく投げられないのでそもそも当たらない。
2個目がひっくり返らない。メンコをひっくり返すのって、すごく難しいんですよ。紙ですから、うまくスナップ効かせてパシンとやって、それでひっくり返るんですけど。ひっくり返らないと爽快じゃないので、これができないからぜんぜんダメです。
3個目が、拾うのが面倒。投げたら拾わなきゃないので、これが、かったるいというので。これで子どもたちに何回やらせても、なかなかメンコってハマれないということがあったので「このままだったら売れないな」というのがあって、いろいろアイデアを出しました。
当時の僕が考えたのが、メンコって「投げるもの」と「ひっくり返すもの」が違ってもいいんじゃないか? と。同じだと結局、いたちごっこなんですよ。手前を重くするとこっちが重くなっちゃうから、ひっくり返らないですよね。
いっそのこと、こっち(ディスク)を軽くして、こっち(ボマー)を重くするとひっくり返るんじゃないか? というので。ボマーという投げるほうは重くして、ディスクは軽くしたんですよ。しかもこれはすごくひっくり返りやすいかたちで、ちょっと当たったらポーン! と飛ぶので、めちゃめちゃ爽快感ですよね。
しかも、紐がついているので、何回も投げられる。こういうことがあって、問題点を解決したなということで「スマッシュボマー」というおもちゃを作りました。今考えてみると、めちゃめちゃいいコンセプトだなと思うんですけどね。しかも、それだけじゃなくて、組み先があります。
また歴史の話になりますが。『コミックボンボン』と『コロコロコミック』が2大雑誌ですけども、それに3個目の勢力がありまして。それが『Vジャンプ』という集英社の雑誌。
もともとは、ジャンプコンテンツを売るようなゲーム雑誌だったんですけれども、この『Vジャンプ』から「おもちゃをやりたい」という話がタカラに来まして。そこに向けて新企画をやろうというので始まったのが、この「スマッシュボマー」なんですが。『Vジャンプ』さんと一緒におもちゃを作るということをやりました。
すごいですよ。『Vジャンプ』なんで、漫画家さんがなんと『シャーマンキング』の武井先生。先生がキャラを描いてくださって、めちゃめちゃすごいです。そんな感じで、もう完璧な体制を組んでやりました。
でも、流れでわかると思うんですけどね。売れなかったです。本当に。何で売れなかったんだろう? と思ったんですけど。今にして思うと、やはりスキルホビーというのは、個人のスキルに影響されるんですよ。やはり「ベイブレード」がすごいのは、誰でも回せるんですよね。引っ張ればいいんで。誰でも回せるって、めちゃめちゃハードルを下げたんですよ。
「スマッシュボマー」も、多少は下げているんですけど、まだまだやはりスキルに左右される。人の能力に左右されるというハードルを下げたんだけど、まだ下げ足りなかったんじゃないかというのが1つ。そして、あとにして思うと、メンコのパシッ! という音が鳴らないんですよね。
ラバーを使って、重さでひっくり返していたのでパシン! と鳴らないというのがあって。それのせいかもしれないです。あとはやはりもしかしたら、(メンコのおもちゃは)呪われているのかもしれないですよね。
(会場笑)
大澤:ということで、残念ながら売れなかったというものです。
次です、5番目。「夢見工房」。
ここからはテーマが変わりまして。それまでは小学生向け玩具の部署に居たんですけど、そこから部署が変わりまして。大人向けというか、新しいものを作る部署になりました。
当時の2000年代のタカラなんですが「e-kara(イーカラ)」という商品。これ、僕の担当じゃないんですけども、会社としてめちゃめちゃ売れた商品で。当時「モーニング娘。」が流行っていたんですが、モーニング娘。のコマーシャルで。
あと、タカラ。じつは車を出していました。実車の「Qカー」というのを出したんですが。当時、もう少子化が見えていたので、当時のタカラの経営者が「もう子ども向けは止めよう。大人向けにおもちゃを売ろう」というコンセプトを出して。そういうことを自分は、やらせていただくことになりました。
そのきっかけとなっているのが、こちらです。2002年の「バウリンガル」。これ、僕の担当じゃないんですけど。当時、僕はまだ「ベイブレード」やってたんですが、会社でめちゃめちゃ話題になりまして。
数は30万個ぐらいだったんですが、社会的には本当に大旋風を巻き起こして。今でもよく名前が通ったものだと思いますが、これが成功したがために「おもちゃを買うのは、もう子どもたちじゃないよ」という話になりまして。まさに「『バウリンガル』に続くようなヒット商品を作れ!」という、無茶振りをされました。
どうしようか? と。「犬がしゃべる」というのをやったので、これを越えるコンセプトを出さなきゃいけないよな、というね。やはりこれは、実際はそんなに効かなかった(効果はなかった)んですけどね。やった人のレビュー見るとわかるんですけど、所詮、犬が何を言っているのかってわからないですよね。
コンセプトはよかったんですけど、長く売れなかったのは「犬がこう言っている」というところと、なかなか整合性が取れなかったようなことだと思いますが。そうはいっても、犬が言っていることを翻訳するのって、すごい夢がありますよね。なので、それ以上にもっと夢のあるコンセプト出さなきゃいけない、というのがあったので。
そこで僕が出したのが「夢」です。まんま夢のある商品なので、夢をテーマにしようということで。「見たい夢が見られるマシンを作ろう」と。すごいですよね。本当に売ったんですよ、この商品。好きな夢が見られる商品を作ろう、ということでやりました。
一応、理屈があります。例えば「西部劇とかをテレビで流して寝ると、その夢を見る」とか、そういうことが言われます。じつはそれって、睡眠中に外部からの刺激を取り入れているんですよね。
テレビの音を寝ながらにして聞いているので、その刺激があるとそれに関連した夢を見る、という研究があります。スライドには入っていませんが、江戸川大学の松田(英子)先生という方が「夢」の研究をしていまして。
その先生の本を買って勉強したんですが、最終的にこの商品は僕もその先生のところに行って話を聞いて、共同研究させていただいて作ったものなんですが、根っこはこの理論です。
商品はどうなっているか? というと、こういったプロセスです。寝る前に見たい夢と、その夢に対する音と匂いを関連付けます。例えば、ハワイの夢を見たかったら、ハワイの夢とハワイの音・ハワイの匂いに関連付けを行います。
寝ている間、ビジュアルは見えませんので、音と匂いを出します。ハワイとハワイの音・匂いを関連付けておいて、この音とか匂いを睡眠中に出すことによって、頭の中のハワイの記憶を呼び覚まして夢を見る、という仕組みになっています。しくみはけっこう「なるほど」という感じですよね。
しかもこれ、聞いたことあるかもしれませんけれども、レム睡眠とノンレム睡眠というのがありまして。レム睡眠という、脳が半分起きてる状態になる瞬間があるんです。なので、その瞬間に合わせて匂いとか音を再生するとその夢を見るよ、というふうなもので。
出しちゃいました「夢見工房」。2004年にね。すごいですよね、今、思うとね。すごい会社だなと思いましたね。ノリでやったんですけど「本当にこんな商品を出させてくれるんだ」と思いましたが、すごい商品でした。
ただ、これまでの説明が長かったように、夢を見るプロセスがありまして。じつは6工程やらないと見られないんですよね、これ。夢への準備あるので、意外と面倒くさいんですよね。
夢のようなマシンなんですけど、やっているのは「夢を見るための理論」を全部入れこんでいっている商品なので、わりと真面目に作っている。こういう機能が全部あって。しかも書いていないんですが、目覚ましで起きちゃうと夢を忘れちゃうんですよ。
ピピピ! と鳴って起こされると夢を見ていても忘れちゃうので、日光で起きなくちゃいけない、というのがあって。マシンの上のところに照明が付いているのが、じつはそのためで。時間になるとだんだん明るくなっていって、自然の光で目覚めるよ、みたいな。いろんな機能がある。
なので、値段は高いんですが、そうはいっても先生の理論を全部入れたようなもので、本気でちゃんと「夢を見るマシンを作ろう」というコンセプトで作りました。
おかげさまで、2004年ギフト・ショーでグランプリを獲得したりして、すごく話題になりました。これに気をよくして、社長が「これは売れるぞ。『バウリンガル』に続いてこれを売るんだ!」みたいな記者会見をやったりしまして。これ、いろいろとやって、全社一丸で売りに行きました。
それで結局どうなったか? これはTwitterに出した画像なんですが「期待値」というのがありますね。どのくらい期待するか。すごいかどうかというのは、じつは「何個売れたか?」とか「どんなものか?」ではなくて「ユーザーや関係者の期待値を超えているかどうか?」ということで評価されます。
今回でいうと、当時のタカラの社長の気持ちになってみると。本気で「100万個売ろう!」みたいに考えていたので、このくらいの期待値ですね。本当に売れたかというと、じつは売れなかったわけではないです。
ちゃんと儲けが出るくらい売れたんですけども、あまりにも期待値が高かったために「売れなかった」という評判になりまして。
当時はまあまあ、僕としてはがんばったんですが。ちょっと「大コケ商品」みたいな感じとして、のちのち、社内ではたびたび話に出てくるような商品になります。期待度が高すぎたというのもあります。
すごく惜しいんですけど、この商品、じつはちゃんと見たい夢が見られるんですね。100パーセントじゃないんですが、ちゃんと一定の人は見えていたんですけど「夢が見られたよ!」ということを伝える手段がないんですよね。当たり前なんですけど。
今だったらYouTubeとかあるから、YouTuberが「見た」と伝えたり、Twitterとかで伝えられたんですけど、当時は伝達手段がなかったんで。今やったらまた売れるかもしれないんですけど、残念ながらそれほど売れなかったという商品です。
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