2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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大澤孝氏:このペースで行くとたぶん時間が長いんで、だんだん早く行きますね。次が「ベイブレード」ですね。
僕が入社2年目か3年目ぐらいに担当した商品なんですが、タカラの代表商品になっています。これ、先に言っちゃうと、めちゃめちゃ売れまして。第1弾を僕がやったんですけど、1弾と2弾合わせて、80ヶ国で売って3億個ですからね。3億個、3千億円売れた。
今年なんか5億個売れたらしいので、もうたぶん4千億円とか5千億円はいっているんだと思いますけど。とにかくアホみたいに売れたおもちゃで、もう本当、信じられないくらい売れましたす。
(スライドを指して)昔の写真ですけど、若いですよね。29歳ですもんね。こんなような感じで、当時はいろいろマスコミにも出させていただいたりなんかしながらやっていましたけど、本当に売れました。
めちゃめちゃ売れまして「ものが売れるって、こういうことなんだな」という経験をさせていただいたのがこの商品ですし。23年ものづくりやっていて、こういう話をさせていただいているのは、ヒット商品が1個あるからなんですね。
本当にこれって、たまたま売れたんですけど。やはり、なにかをやる中で「1回ヒット出すと一生食える」というのがあって(笑)。実力があってもヒットに恵まれない。代表商品があるかないかで、だいぶ周りからの見た目が変わるので、ラッキーでした。僕が一生やっていけるのは、これのおかげだなと思っています。
何でこれが生まれたか? という話をさせていただきたいと思います。また歴史の話になりますが「おもちゃ」と「歴史」って切り離せないので、また歴史をひもといていきたいと思います。さっきの話でいうと、まずゲームがあります。1990年ごろにスーパーファミコンが出て、1994年にプレステが出て。この頃はちょうどそんな感じで、まだゲームブームが続いていました。
こちらがボーイズホビーの流れで、おもちゃの主流である男の子のホビーです。この歴史においてやはり一番大きいのが、さっき出てこなかったですが「ミニ四駆」というのがありまして。これはめちゃくちゃ売れました。
これがいわゆる「コロコロマーチャンダイジング」という「『コロコロコミック』とおもちゃ会社が組んでヒットを起こす」という“雛形”を作ったのが「ミニ四駆」。そのパターンでヒットしたのが「ビーダマン」。
という流れで、ヒットの系譜から『コロコロコミック』と玩具メーカー。これはタミヤですけどね。タミヤと『コロコロコミック』で「ミニ四駆」。その後にヒットしたのが「ビーダマン」。
その後に来たのが、この「ハイパーヨーヨー」という商品でして。中村名人という人がいて、その人がめちゃめちゃ流行らせたような流れがあって。ちょうどこの「ベイブレード」が出た頃には「ビーダマン」がちょっと下がって来て、「ハイパーヨーヨー」のブームがちょっと上ってきた頃でした。
さっきの話でいうと「おもちゃとゲーム」が、ちょうどバランスを取っているような状況だったんですが。この時に、第3の黒船と呼ばれる存在が1999年頃に来ました。さあ、おもちゃとゲームに続いて、子どもたちの財布の紐を取ったのは何か? というと、これです。「遊戯王」ですね。
これがすごかったんですよね。これまで「カードゲーム」というジャンルがなかったんです。これが1999年に出まして、一気に子どもたちの財布、全部こちらに来ました。おもちゃが売れなくなっちゃいました。この時。
これは今でもめちゃめちゃ売れているんですが、本当にカードゲームってすごいですよね。まず、だいたい安いです。100円とか150円で買えて、しかも何が入っているかドキドキですし。
さらに遊びがめちゃめちゃおもしろいということで。安いし、おもしろいし、しかもハマるということで。当時、ジャンプで漫画もやっていましてね。全盛期。今でも売れているというのは、化け物のようなものなんです。
これが出てしまったので、一気に玩具業界がピンチになりました。僕も「ビーダマン」をやってたんですけど、当時、これのせいで売れなくなっちゃったんですね。どうしようどうしようということで「『ビーダマン』に続くおもちゃを作ろう!」という話になりました。
「ビーダマン」は見てのとおりビー玉のおもちゃですが、当時は「伝承玩具コンセプト」というのがあって。「昔から売れているものを現代風にアレンジしたら、売れるんじゃないか?」ということで。「ビー玉玩具が売れたんだから、ベーゴマを売ろうよ」という自然な流れがあったんです。なので、ベーゴマの玩具を売ることにしました。
というのが一般的によく言われている話なんですが、じつは歴史に埋もれてる玩具があります。「すげゴマ」と「バトルトップ」というのがあるんですが。これらは何かというと「ベイブレード」を売る前に、タカラがコマを売って失敗した商品です(笑)。
僕が来る前の先輩たちのおもちゃなんですが、これじつは、どっちもめちゃめちゃおもしろいんです。よくできているんですが、これは2個とも失敗しました。コマというのはけっこう奥が深くて「どうすると長く回るか?とか「どうするとおもしろくなるか?」って、すごく研究がいるんですよ。
これら2個をやったがために「コマ作りのノウハウ」というのが、当時のタカラにめちゃめちゃ蓄積されていました。これがきっかけの1つです。「ベイブレード」ヒットの要因の1つは「コマのDNAをタカラが持っていた」。これが1つ。そして2つ目が、その時代に合わせて、子どもたちがハマっているカードゲームの要素を入れたというところが「ベイブレード」の当たった原因です。
カードゲームのおもしろさとは何か? というと、要素は3個あります。
1つが「デッキを組む」。カードって、100円とか150円で5枚入っているんですが、5枚だけでは遊べないです。だいたい40枚とか60枚で遊ぶんですが、それを自由に組み合わせて「自分のデッキを作る」というのが、カードゲームのおもしろさです。
このすごさは何か? というと、友だちと遊べるのって、日中でせいぜい2時間くらいなんですが、家で友だちと遊ぶためにデッキを組んでいる間も楽しいんですよね。作戦タイム。一日中楽しめる。遊んでいない時も楽しめる。
2個目が「最強がない」ということです。これ、なぜ今でも「遊戯王」が売れてるか? というと、最強パターンがないからなんですよね。すごく強いデッキができても「それに勝つデッキはこっち。さらにそれに勝つのはそっち」みたいな感じの“相性”というものを考えられています。“最強”ができたらゲームって終わっちゃうんですけど、できなくなっているというところがポイントです。
3個目は「当たり」ですね。射幸心が強くて、今でもスマホゲームとかでガチャがいっぱいありますが、これが男の子を惹きつけて止まない要素です。なので、この3個を入れました。
1つ目は「デッキを組む」ですね。ベーゴマをパーツに分けて、これを組み合わせるというのが「ベイブレード」の根幹であって。1世代目にも2世代目にも3世代目にも、全部に入っている要素なんですが。
普通に考えたらコマって1個なんですけど、それを分けて。組み合わせられるようにしたというのが、すごく大きな要素なんですが。なぜこうしたか? というと、さっきのカードの要素を入れたためです。
2個目が「最強がない」。これもカードゲームに最強がないように「ベイブレード」も同じように、最強がないようにしました。「攻撃タイプ」と「防御タイプ」と「スタミナタイプ」。呼び方が毎回(弾ごとに)変わっているんですが、3個のタイプがあって、どのタイプも最強じゃないんですよ。必ず「このタイプにはこっちが勝つ。このタイプはこっちが勝つ」と、組み合わせが“じゃんけん”になっているために、これが未だに売れているということです。
そして「当たりがある」。これは全部の商品じゃないんですが「ランダムブースター」という、当たりが入っているシリーズがありまして。これが1作目、2作目、3作目に毎回あります。
これの根幹を作ったのが「ベイブレード」なんですが。これがすべて、どこから来ているか? というと、先ほどの「遊戯王」から来ています。ベーゴマと「遊戯王」を組み合わせてできたものが「ベイブレード」です。
これも同じく漫画があって、その後、アニメになりました。こちらの『爆転シュート ベイブレード』。映画にもなったんですよね。これがまたまためちゃめちゃおもしろくて流行りました。
ここは割愛しますが、めちゃめちゃおもしろいので、ぜひ古本があったら見ていただきたいんですけども。この「ベイブレード」の漫画があって、アニメが話題になって、とにかくめちゃくちゃ売れましたということです。
まとめです。何で売れたか? これはやはり『コロコロコミック』とのタイアップの成功ですね。必勝パターンです。これがうまくいったというのが1つ。2つ目がヒットは1日にして成らず、ですね。ノウハウの蓄積があったと。
じつはこの「ベイブレード」が売れた時、バンダイさんとか他社さんも、コマのおもちゃを出しました。けどぜんぜん売れなかった。なんでか? というと、コマに対する練度が低かったんですよね。
我々(タカラ)には、コマに対する微妙なところのノウハウが山ほどあったので。そもそものノウハウの蓄積というのがあったから売れた、というのがあります。3個目は、当時に流行っていたカードゲームの要素を入れ込んだということで。このような理由で売れました。
ということで、売れた商品2個、並べてみました。入社してからしばらくは、全部売れました。当時は「おもちゃを作るのって、簡単だな」と思ったくらい売れたんですが。だいたいテレビ番組だとこのあとこうなる(下がる)感じで、同じパターンですね(笑)。
このあと、売れなかったものがたくさん出てきますので、ご期待ください。
次は「サプリビンダーズ」でございます。
じつはこれもバトルホビーなんですが、写真を見てもどんな遊びをするかわからないですよね。どんな遊びかというのは、このあとご紹介をしますので考えてみてください。
また時代背景の話をしますが、当時、男の子たちには2大情報源というのがございました。1980年代から1990年代にかけての2大雑誌がありまして『コロコロコミック』と『コミックボンボン』ですけど。今はもう『コミックボンボン』はないです。
当時は『コロコロコミック』と『コミックボンボン』の2個があって。だいたい30、40代が昔話をすると「コロコロ派かボンボン派か?」みたいな話で盛り上がったりするんですが。「マガジン派かジャンプ派か?」みたいな。必ずみんな、どっちかでした。
『コロコロコミック』は1990年代になるとだいぶ勝敗が見えてきて。『コロコロコミック』からヒットコンテンツが、山ほど出ましたね。「ポケモン」「ミニ四駆」「ビーダマン」「ハイパーヨーヨー」「ベイブレード」「デュエルマスターズ」。こんな感じで『コロコロコミック』があります。
対して『コミックボンボン』ですね。1980年代はけっこういろいろあったんですが、1990年代は「メダロット」とか「サイボーグクロちゃんとか。そんな感じで、だいぶおもしろいんですけどね。わりと特色がありまして。
こう言っていいかどうかわからないんですが……わりと“陽”の『コロコロコミック』に対して“陰”の『コミックボンボン』みたいな感じで。わりとキャラクター性とか、クラスの中でも遊んでいる子にちょっと系統があって。
「わーっ!」という感じの子はこっち(『コロコロコミック』)に行って、1人で「うーん」という子は『コミックボンボン』に行く。こういうのが多かったですけどね。という感じなんですけど、どちらもすごくいい雑誌だったんですけど、そういう感じでキャラクター性が見えてました。
『コロコロコミック』は小学館、『コミックボンボン』は講談社なんですが、当時のおもちゃ会社はどちらとも付き合わないといけないんですよね。小学館ばかりとやっていると講談社に行けなくなってしまうので、どっちもバランスよくやっていて。
当時は例えば「メダロット」なんかをタカラでやったりしたんですけども。両方の編集とうまく付き合っていって、どちらとも仕事ができるようにしていかなきゃいけないというのがありました。次は『コミックボンボン』のほうとやることになりまして、それで「サプリビンダーズ」をやりました。
当時に流行っていたものがありまして、4Dパズルという立体のパズルですね。(スライドを指して)こんな感じの立体のパズルを組み立てるみたいなことが流行って、たくさん売れました。これがなかなかおもしろかったので、遊びのヒントにならないかな? というので生まれたのが「サプリビンダーズ」です。
これはけっこうインパクトのある作りで、瓶の中にフィギュアが入っています。これを早く組み立てる「バトル×パズル」という、すごく新しい、世界発のコンセプトのおもちゃだったんですが。
『ボンボン』派ってけっこうクラスで少ないので、(『コロコロ』で連載していた)「ベイブレード」みたいに「2人いないと遊べない」というかたちだとまずいだろう、というのもあって、1人でも遊べる。1人で組み立てて遊べるし、2人いたらバトルができるという。『ボンボン』チックな感じの……ディスるわけではないですけどね。
「『ボンボン』ファンの方も遊べるようなバトルホビー」というテーマでやりました。バトルしてパズルをするという、世界初のコンセプトです。
遊び方はけっこう変わっていまして。お互いにフィギュアを準備して、掛け声と同時に組み立てます。「ベイブレード」だとバトルするんですが、これは組み立てをしまして、先に組み上げたほうが勝ちということなんで。お互いに瓶を振って、バトルになったりするような遊びでした。
これで組んだのがけっこうすごくて。レッドカンパニーって、広井王子さんという方が作った会社で。『サクラ大戦』をやった会社さんで、その前は『魔神英雄伝ワタル』というコンテンツなんかやったりした、すごく有名なクリエーターさんのいる会社さんで。こちらと組んでやって。
なんと漫画を描いたんですけど、寺沢大介先生。知っていますかね? 『ミスター味っ子』とか『将太の寿司』とかを描かれている有名な漫画家さんで、本当にすごいタッグです。どちらもお会いしましたけど、こういう方たちと仕事できていい経験ができました。
もうやる前から「これ……勝ったな!」という感じだったんですが。のちほど、何かのインタビューで寺沢先生が「びっくりするほど売れなかった」と。
(会場笑)
大澤:びっくりするほど売れなかったです、本当に。この先生でも売れなかったなんてすごいですよね。本当にね。
これは本当にメディアミックスが不発でした。すごいよかったんですけれども、メディアミックスって本当にハマる時はハマるんですが、ハマらない時はハマらないです。これは誰が悪いわけではないんですが、とにかく不発でした。
今にして思うと、ホビー成分が足りなかったのかな? とか、世界初のコンセプトなんですが、世界初過ぎて伝わらなかった。「早ければいい」というもんじゃなかったりします。
というので、これはめちゃめちゃ売れなかったということですが、自分的には思い出に残っているおもちゃです。これ、ほとんど市場では入手できないので、レアな商品ですけどね。「サプリビンダーズ」というのをやりました。
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