2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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桑江令氏(以下、桑江):では次のスライドにいきたいと思います。
「デマ・フェイクニュースへの対策で、企業担当者が意識すること」になります。
こちらについては、先ほど『デジタル・クライシス白書』のデータでも出しましたけれども、2020年は1日7.2件のデマやフェイクニュースが日本で発生していたことがわかっております。そして今年は、企業にもその被害が及ぶケースが増加するのではないかと考えております。ですので「企業担当者として意識しなければいけない部分」についても、お話を伺っていければと思います。
そういった意味で、企業が事前に準備しなければいけない部分で考えるといかがでしょう。先ほどお話があったように、炎上は主体が自分であるケースが多いかと思いますが、デマ・フェイクニュースは、どちらかと言えば「巻き込まれ型」が中心になるかと思います。
そういった部分で、企業として準備しておくべき部分について、どのようなご意見をお持ちでしょうか? 古田さんから伺ってもよろしいでしょうか。
古田大輔氏(以下、古田):僕は「炎上には2パターンある」と、BuzzFeedの編集長時代から編集部でよく話をしてたんですよね。1つは自分に非があるパターン。この場合はもう、誠心誠意、謝って訂正をして、リカバリーを狙うべきです。時にはそれが「神対応」と言われて、逆にレピュテーションが上がることもあるので、きちんと謝って対応することが重要だと思っています。
2つ目は、炎上にも自分が悪くないパターンってありますよね。相手が積極的に燃やしにくるような。どんなに素晴らしい企業であったりサービスであっても、アンチというのは絶対いるんですよね。そのアンチの人たちが積極的に燃やしにくるようなパターンです。
それに対しては、1つ目のケースのように対応していたら、企業として身動きが取れなくなってしまうんですよね。なので、その場合には、正々堂々と毅然な対応をする。もしくは無視をするという2つがあると。
古田:ただ中には、中間的な部分があるんですよね。これが非常に難しい。「そんなに悪くないんだけど、確かにそういう批判も成り立ち得るよね」ぐらいのレベルのやつですね。
例えば「お母さん食堂」もここに入ってくると思うんです。「お母さん食堂」に関して、僕はその企画自体がめちゃくちゃに批判されるべきものなのか? と考えると、そうではないと思います。ああいう表現の仕方も十分にあり得るだろうと思いますし、やはり「お母さんの味」というものに対してノスタルジーを覚える人は、僕を含めています。
ただ一方で、確かに今の世の中において、ジェンダーギャップをなんとかして解消していこうという中で、「ジェンダーのステレオタイプを再強化するような効果が生まれてしまうよね」という批判は、十分成り立ち得るんですよね。それは真摯に聞かないといけないワケです。この真ん中の部分が非常に難しいんですよね。
なので、企業の人たちが事前に準備しておくべきことは、そこだと思うんですよね。もし本当に間違えてしまった場合は、サービスに問題があったときちんと謝ればいいし、ぜんぜん問題ない時には毅然な対応をすればいい。
けれどもミドルのところで「こういう批判はくるよね」とか「そういう時はどうする?」ということを、どれだけ事前にみんなが話せるか。それが、その企業の対応の質・レベルを決めてくるのではないのかなと思います。
桑江:なるほど。山口さんはいかがでしょうか。
山口真一氏(以下、山口):かなり広いところでのデマ・フェイクニュースというところからお話ししますと、世の中にはいろんなフェイクニュースがあります。先ほどおっしゃったように、白書の中では年間2,000件ぐらいが出ていたと思います。
そういった中で、それが企業にとってマイナスになるケースがいくつかあるんですけど、まず一般的なケース。例えば米国大統領選挙みたいな話であればですね。例えば、社員がフェイクニュースを拡散したり、すごく広めようと発信した時に、会社名がプロフィールに出ていたりすると、それで炎上して会社が云々ということになる可能性もゼロではないと。
そういう可能性があるので、まず一般的なフェイクニュースに関わるSNSのルールは、全社的に決めておいてもいいですよね。特に重要なのは、拡散だけでも責任が発生することですよね。なので、拡散元が誤情報であったりデマだった場合に、文句言われることも十分ありえます。
特に、企業で言えば広報だと思うんですが、広報担当者はそういったことを考えながら運用する必要があるのかなと思います。
山口:もう1つ、こちらはより企業に近い話ですけども。デマやフェイクニュースが自社を対象にすることがある、ということですよね。先ほど古田さんも触れてましたが、自分のアンチもいたりするワケですよね。
前にあった例で言いますと、ローソンのローチケに関する事例ですね。ローチケはチケットを販売しているワケですが、それに対して「お金を振り込んだにも関わらず『やっぱりやめてくれ』というキャンセルの通知がきた」みたいな投稿をした人がいたんですね。それでけっこう炎上したんですけども。
その結果、何がわかったかというと、そんなことは事実無根だったと。メールのやり取りも偽造の可能性が高いという事例だったんですね。おそらく、これをつぶやいた人は、そこまで騒ぎになるとは思ってなかったと思うんですけども。結果的にすごい話題になってしまって。
でもその時に、ローチケさんがやっていたことは、消費者を批判するのではなくて、あくまでも「こういう事実でした。」というように、事実確認をした上で事実を発表したんですね。この対応はかなり称賛されましたし、良かったと思うんですよね。なので、そういうパターンも十分あり得るということを覚えておく必要があるのかなと。
山口:もう1つのパターンとしては、よく弁護士の方から伺うケースですね。同業他社による疑義言説。デマによる攻撃の場合です。特に多いのは口コミサイトを思い浮かべがちかなと思いますが、最近多いのは「Googleマップ上での口コミ」だそうです。そういった案件が非常に多いらしいんです。
例えば病院であれば、根も葉もないような口コミが書かれていたり。それで弁護士経由で口コミを特定していったら、同業他社の近くの病院だったみたいなことが平気であるそうで。
このように、いろんなパターンでデマやフェイクニュースに巻き込まれる可能性は常にあるということを、企業として知っておくことが重要です。また、そのパターンごとにどういう対処をすればいいか。例えば消費者の投稿の場合は、いきなり弁護士云々とか、裁判が云々ってことをしてしまうと、逆に心証を悪くすることがあるんですよね。なのでまず、事実確認を進めるやり方をするとかですね。
一方で「なんだこれは?」というような同業他社からの攻撃の場合は、弁護士を通してしっかり裁判をしていくことが大事になってきます。そういったパターンごとの対処方法を、事前にシミュレーションして想定しておくこと。これは古田さんがおっしゃってることと一致すると思いますが、そういった準備をしておくことが企業には求められてるのかなと思います。
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