2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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小禄卓也氏(以下、小禄):では次いきましょうか。
赤松健氏(以下、赤松):これか!
小禄:「漫画と海外市場」です。
小林琢磨氏(以下、小林):今日の一番の。
赤松:ポリコレね。要するに(笑)。
小林:ポリコレって言って、見てる方のどれくらいの人がわかるのかっていう。
赤松:ポリティカル・コレクトネス。「政治的な正しさを、漫画とか映画とかに導入しなさい」みたいな外圧が来ているわけですよ。日本の漫画の良さって、鬼滅なんかもけっこう残酷な……進撃だって人を食べる……食人……。
小禄:カニバリズム的な。
赤松:ヤバいですよね。
小林:ヤバいです。ヤバいです。
赤松:こういうものが、世界で驚きを持って迎えられたりする。ここまで日本漫画というものが世界を見据える段階になった時に、もっとグローバルスタンダードに合わせなさいよっていう、圧力的なものが現場に来ているわけです。
そういうものは「是か非か」というのを漫画家のほうである程度、意見を統一したいんだけど。ただし、グローバル化してあんまり尖ったものがなくなった作品の売上がよかった時に「あれ、それはいいのかもしれない」っていうことになっちゃう。
小林:本当にこれは難しい問題で、生放送で話す話じゃないんですよ。
小禄:それを話すんですよ。小林さん。
小林:ちょっとでも揚げ足取られると、すぐ炎上するテーマなんですよ。だから個人的にはあんまり話したくないんですけど。
赤松:確かに。
小林:会社とは関係なく、あくまでも個人的な意見をいうとすれば「表現の自由」というのは、尊重すべきだとは思っています。
赤松:ナンバーナインは海外にいきたいんですか?
小林:ナンバーナインの戦略として、海外進出はしません。
赤松:え、なにそれ!
小禄:これは「一旦」ですね?
小林:一旦です。
赤松:なにそれ?
小林:理由を説明しましょうか。ナンバーナインの基本戦略として「紙はやらない。そして海外展開しない」っていうのが、今、考えていることです。
赤松:すげ!
小林:だから国内の電子書籍のところは、その分がんばっていこうっていう感じですね。これはもう、うちの戦略です。
赤松:へ~、海外目指していって、いずれは上場してやれみたいな(笑)。
小林:いずれ上場は、ちょっとなにも言わないですけど(笑)。海外、もちろんグローバルなところ……でも逆に言うと赤松さんもご存知だとは思いますけど、海外市場って今いくらくらいあって、日本の市場がいくらくらいあるかってわかります?
赤松:値段はわかんないけど、たいしたことない。
小林:そう、そのとおりなんです。実は今、日本の漫画の市場って4,400億円くらいあって。
小禄:2019年はそれくらいですね。
小林:2019年だと日本の市場が4,400億くらいで、海外はいくらだと思います? 海外、全世界を合わせて1,000億円いってないんですよ。最近だとみなさんも縦読み漫画、つまりウェブトゥーンですね。ウェブトゥーンとかの縦読みフルカラー、めちゃくちゃ流行ってます。
ピッコマさんだと『俺だけレベルアップな件』とか、あれ「月1億売れてる」みたいな。
話題にもなりましたけど。すごいんです。確かに来てます。でも、それでも全世界の、韓国とか中国とかアメリカとか全部合わせても、1,000億なんです。つまり何が言いたいかというと、まだ……まだというか、日本が“メジャーリーグ”なんですよ。
赤松:そう。海外の漫画作家が何をしたいかというと「日本でメジャーリーガーになりたい」っていうことですね。
小林:だからグローバル展開をして、これが日本の市場の5倍6倍7倍あるっていうんだったら、リスクを取ってでも行くべきだと思うんですけど。正直めちゃくちゃ大きいリスクなんですよ。文化が違うので。言語も違うし、文化も違うし、育ちも違うし、もう『セロリ』(山崎まさよし氏の曲)ですよね。「育ってきた環境が違う」ので。
小禄:ちょっとわかんないですけど。
小林:わかんないか。
赤松:わかるんだけど……。
(一同笑)
小林:何が言いたかったかというと「リスクを取って海外に行くよりも、まず日本の大きな市場を取りに行ったほうが戦略的には価値がある」っていうのが、ナンバーナインの考え方。
赤松:日本の大きな市場って、レッドオーシャンじゃないですか。海外はブルーオーシャンだと私は思うんですよ。
小林:あ~。
赤松:私、海外の海賊版サイトによく行ってるんですけど。そこで中国の漫画とか韓国の漫画と日本の漫画、全部、海賊版に載ってるんですよ。それを見ると、その時は『ワンパンマン』だとか日本漫画が1位だったの。
韓国とか中国のを見ると、まだまだ。カラーイラストは完全に追いつかれました。が、漫画に関してはね、縦スクロール、横でもなんであれですけど。まだまだ日本漫画のほうが“分”があるっていうのは、海賊版の素直な読者数を見るとわかる。
小林:これも一理あって、僕も赤松さんと同じ意見で。正直、韓国の漫画、ウェブトゥーンの漫画を見た時に、ぜんぜんまだまだ日本のほうがおもしろいし。もっというと、あの漫画に慣れた人たちが、よりおもしろい漫画を読みたいと思って横読みに戻るとも思ってます。
赤松:そう。
小林:ただ実際問題、今、日本で一番売れてるアプリは何かというと、ピッコマだったりする。
赤松:まぁね。
小林:これはなぜかというと、漫画の読み方が変わってきているんですよね。20代30代40代くらいの漫画好きって、やっぱり紙で育ってきて。『ラブひな』読んで性に目覚めた、みたいな感じですけれども。
結局、今の若い子たちってもう考え方も違うし……。
赤松:私もね、昔はその意見だったの! 都市伝説なんだけど、今の幼稚園や小学生は漫画の読み方がわからない。「こっちからこうやって読むのが、わからないんだよ」っていう都市伝説があって。「これから漫画は絶滅するんだよ」って言われていたんだけど。
小禄:言われてましたね。
小林:絶滅はしないです。
赤松:いや、鬼滅とか小学生がガンガン読んでて「ぜんぜん漫画読めてるじゃねぇか」っていうのがあるんですよ。縦スクじゃないと漫画が読めない世代が増えてきたっていうのは、ぜんぜん嘘。
小林:それはもちろん。縦読みじゃないと読めないっていうのは違います。語弊があります。要は、すごくライトに漫画を読む人が増えたっていうことです。昔は漫画を読むのに、250円払ってジャンプを買って楽しみに読むとか。学校で回し読みみたいなのから、トイレの中の5分とか、移動の中で読むとか……。
赤松:日本人なんか、大人から子どもまでみんな漫画読むじゃないですか。海外ではそんなことないんですよ。
小林:あ~、もちろん文化の違いはありますね。
赤松:そういうライトな層にどんどん売っていけばいいと、私は思っているんですけどね。
小林:そうですね。海外はまだまだライトな層が多いかなとは思っていて、そういう意味でいうと、日本の漫画はぜんぜん負けてないなと思います。
小林:ただ話を戻しますと、何でしたっけ? ポリコレ問題でしたっけ?
赤松:ポリコレ問題(笑)。
小禄:急に戻しますね(笑)。大丈夫ですか。
赤松:わかった。海外に行かないんだったら、この問題はぜんぜんバトルにならんですよ。
小林:そうですね。バトルにならないというか……。
赤松:「表現の自由を守っていく」っていうことですよね?
小林:そうです、そうです。表現の自由は守る。あともっというと、これもあくまで個人的な考えですけど、ポリコレをめちゃくちゃ意識して売れるかっていうと、そこまで売れないと思います。要は「ポリコレを意識しないで出した漫画が、ポリコレ問題で読まれなくなること」は、これはめちゃくちゃあると思うんです。炎上したりとか。
じゃあ、めちゃくちゃそれを意識して「この作品はポリコレにめちゃくちゃ配慮してます」って描いて売れるかというと、そんなことないんですよ。ただ、もちろん配慮して売れてる作品はあるけど。
赤松:なんだけど、ハリウッド映画がスクリプトドクター、シナリオドクターによって、だいたいの盛り上がりは決まっていると。これからポリコレ意識して黒人、白人、いろいろ出してみたいなかたちで。『アベンジャーズ』みたいなのが、どれ見ても同じかもしれないですよ。しれないけど、やっぱりヒットすると。
小禄:おもしろい。
小林:めちゃくちゃ配慮されてますよ。『アベンジャーズ』。
赤松:もしそういうのがあったとして、科学で漫画の構造を分析して「ポリコレも含まれていて、必ず当たる漫画」っていうのが、もし海外で受けるようになってものすごく金が儲かった場合、我々はどう考えるべきか? っていうのはすごく悩んでいるんですよ。
小林:それは無視していいと思いますよ。
赤松:え~!?(笑)。
小禄:赤松さんはどうお考えなんですか?
赤松:漫画の利点は「安くいろんな実験を繰り返して、打ち切りになるのは打ち切りかもしれないけど、ヒットするのはヒットする」みたいな基礎実験がいっぱいできるっていうのがあって。それが役目だと思っているので。その中でヒットしたやつはハリウッドに行くのかもしれないけど。っていうかたちでいうと、表現の自由はあったほうがいい。
小林:ですよね! 同じ考えなんですよ。
赤松:これが(製作費・予算が)高くなると、ハリウッドだと『アベンジャーズ』作るのにまず120億くらい銀行から借りるっていう時に、銀行に「必ずこんなかたちで当たります」からって言うと、貸してくれるわけですよ。みたいなかたちで、漫画がスタジオ化して外せないとなったらば、そういうかたちで「なるべくエッジのないものを安全に作って」みたいになると思うんですね。
小禄:投資額が高まれば高まるほど。
小林:それは本当にそうですね。適材適所というか、立場によって変わって。個人でやっていくなら、ポリコレ問題はそこまで意識しなくてもいいかなと思いますけど。さっきのスタジオでお金をたくさんかけてやるんだったら、当然、考慮すべき問題だとも思いますし。
あとは繰り返しになりますけど、僕らはどちらかというと著作権を……表現の自由を大事にしたほうがいいという考えですけど。違う考えの人もいらっしゃると思うので、こういう時は必ずほかの人の考えも見たほうがいいかなと思います。
僕がすごく好きな漫画で『図書館の大魔術師』という漫画があるんですけど。
これは図書館の本を守るという文化があるんですけど、1つの問題に対して必ずAという側面とBという側面の、2つの本をとなり合わせに置くっていうのがルールになっていて。これってすごく大事な考えだと思うんですよ。
特に僕だったりとか赤松さんもそうなんですけど、声が大きいので(笑)。「表現の自由を守るべきだ!」僕もそう思ってるんですけど。そう言うと、どうしてもそっちに寄っちゃうので、大事なのはこれを見ている漫画家さんたちが自分で考えることなので。まず1回、ポリコレとは何かって、ググってみてください。
小禄:大事ですね。
赤松:じゃあ一旦あれか。漫画は表現の自由メインで、ポリコレにはあまり屈しない感じ? それがもし、ポリコレ合わせの作品群が圧倒的な力を得ちゃった時には負けかな? っていうことかな。
小林:いや、負けってことはないと思いますよ。仮にめちゃくちゃポリコレに反するようなエンタメがあったとしても、これ(現在のポリコレの考え)が10年後とか20年後とか30年後とかにもずっとこのままかっていうと、違うじゃないですか。もっというと、10年前って今みたいにポリコレ、ポリコレなんてまったくなかったじゃないですか。5年前でもなかったですよ。ここ最近ですよ、いわれたの。
これがこの先の未来のスタンダードになる可能性はゼロではないですけど、また変わる可能性もあるんですよね。
赤松:そうね。確かに。
小林:だから短期的なところで勝ち負けではなくて「エンターテインメントとして自分が誇れるものを常に作っていく」ってことが、大事なんじゃないかなとは思います。
赤松:なるほど。
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