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内山崇×黒田有彩 「2021秋 宇宙飛行士選抜試験への挑戦!」(全9記事)

時代・行き先に左右されない、職業宇宙飛行士に必要な“資質” その一方で多様化しつつある「これまで何をやってきた人か?」

昨年、新著『宇宙飛行士選抜試験 ファイナリストの消えない記憶』が刊行された、第5期JAXA宇宙飛行士選抜ファイナリスト/宇宙船「こうのとり」フライトディレクタの内山崇氏。2021年秋の第6期JAXA宇宙飛行士選抜試験の受験を本気で目指す、タレント黒田有彩氏。そんな両者のガチンコ対談「2021秋 宇宙飛行士選抜試験への挑戦!」の模様を公開します。

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“職業宇宙飛行士”に求められる資質は、ずっと変わらない

黒田有彩氏(以下、黒田):Q&Aでも(質問)いただいていますね。

「今の宇宙飛行士にはなくて、今後の宇宙飛行士に求められるであろう資質や能力がもしあるとしたら、それは何だと思われますか?」。

内山崇氏(以下、内山):僕は宇宙飛行士に求められる資質・能力は、あまり変わらないと思っているんですよ。

黒田:それがISSであろうが。

内山:月であろうがそうですね。それはやっぱり「突発的に何か起きて、それが自分もしくは仲間にすぐに危険が及ぶという状況下で、確実に必要なことを的確な判断で行う能力」というのは、行き先がどこであれ、宇宙である以上は必要で。その能力は、いろんな総合判断だと思うんですよね。そういう悪い状況にならないようにする通常のチームワークとか、そういう人間関係を構築する力とかの総合力だと思っていて、そこは普遍的に変わらないと思う。

もし誰もが宇宙に行く時代になった時、それはもう“職業宇宙飛行士”とは呼ばないと思いますし、そうなると話はもう別なんですけど。職業宇宙飛行士として宇宙に行く限りはやっぱり、そこの能力に重きが置かれると思うんですよね。そうするとそこは、行き先がどうあれ、たぶん変わらないだろうなと思っています。

今後は「宇宙のすばらしさを伝える能力」に長けた人も必要に

内山:ただ、たぶんバックグラウンドの多様性というのは今後も増えていく、広がっていくと思うんですよ。今まではやっぱり、パイロットとか技術者とか、あとはお医者さんとかですね。ある程度は限られた分野の人が、ほぼ主だったと思うんですけど。たぶん今後は、アーティストとかそういう「もっと宇宙のすばらしさを伝える能力」に長けている方からも、宇宙飛行士というのが出てくるでしょうし。今までいなかった分野の方からの宇宙飛行士というのが、増えてくるんじゃないかなと。

宇宙飛行士のその裾野が広がってということは、あると思います。ただ求められる能力は変わらない中で、多様なバックグラウンドが広がっていくんじゃないかなと思いますね。

だからそういう意味では、僕は黒田さんには“強み”があるんじゃないかなと思っていて。やっぱり「今までにない宇宙飛行士のバックグラウンド」という意味では、強みとして持っているし、たぶん黒田さんにしかできないことというのもあると思うので。そういうところはしっかり磨いてアピールできるようにするというのは、すごい大事じゃないかなと思いますね。

たぶんみなさんも、もしパイロットとか「何か受験資格があるのかしら?」みたいな方がいたとしても、逆にそれが強みになるという考え方が持てると思うんですよね。宇宙飛行士の本来の資質を磨きつつ、他の人にはない自分の強みを磨くというのは、大事な視点かなというのはありますね。

黒田:ありがとうございます。私自身も、公言している数年の間「宇宙飛行士を目指しているんです」という言葉を言うと「それは宇宙飛行士の仕事を知っていないから、そう言えるんじゃない?」という言葉もあったりして、確かにそうだなと思っていたんです。自分の中で知識とかもそうですし、人間的なもの、あとは能力も、まだまだ埋められていないところに気付きながら、少しずつ地に足が着いてきたような感覚もあるんですね。

でもその中で、それでもやっぱりタレントという仕事をしている自分が目指すということや「伝える仕事をしているんです」ということをバックグラウンドとして掲げること自体が、もうお門違いなんじゃないか? と思った時期が長くあった中で。内山さんにメッセージをいただいたんですよ。

「黒田さんの今やっていることに誇りを持って、それを大事にして、自分にしかできないことを貫いて、その上で挑戦してほしい」と。その言葉がすごく勇気になったんですよね。なのですごく感謝をしております。

今は「誰もが宇宙を使えるし、誰もが宇宙を語れる」時代

内山:ありがとうございます。宇宙飛行士も宇宙もそうなんですけど、今まではJAXAとか大企業だったり「限られたところしか宇宙をやっていないと」いう時代だったんですけど、今はもうだいぶ変わってきていて。誰もが宇宙を使えるし、誰もが宇宙を語れるという時代に変わってきていると思うんですよね。

だから特別な場所じゃなくて「普通にある中の1つが宇宙です」と。使い勝手の良い宇宙、使い勝手の良い部分というのを活用していく。もう生活に取り入れられている中で、徐々に「宇宙というのが誰もが手の届くところになっていく、途中の段階」だと思うんですよね。だからそういった中で、一部でしかやってなかったものが徐々に広がっていくというのは、ごく自然な話で。一部の人たちがやってきたこと“以外のこと”というのが、他の業界だったり他のバックグラウンドを持った人たちが入って来ると、やっぱりできるようになるわけですよね。

年末に『KIBO宇宙放送局』というテレビ番組に出させていただいたんですけど、あの活動は本当にすごいなと思って。JAXAだったらできなかったんですよ。あの手の宇宙エンタメの世界で「テレビ業界で、ああいう宇宙の使い方があるのか」と、すごく思って。みんなが参加して、子供たちの写真や動画を上げて。それを宇宙で流して、映像として下に降ろしてみんなが共有できる、みたいな。

それなら誰もが参加できる。それまであまり宇宙に興味がなかった人も、そこに「おもしろい」と言って参加してくださるという、ああいう使い方はすごく重要なことだなと思っていて。やっぱり宇宙を使うにしても、宇宙を目指すにしても、そういった広がりというのはすごい大事だなと思っていて。黒田さんの活動に、本当に個人的にも期待しているところです。

黒田:ありがとうございます。

宇宙に国境はないし、ロシア語ができれば選択肢は広がる

黒田:あ、質問もいただいてますね。

内山:そうですね、受けてますね。

黒田:「クルードラゴン以降、ロシア語は不要になるんでしょうか?」

内山:どうですかね。でも宇宙ステーションって、半分ロシア区域があって。半分が西側というか、アメリカ・ヨーロッパ・日本とかのエリアで。ロシアの方も一定数(はいる)。そういう構図で宇宙ステーションに行くとなるので、交流はあるはずなんですよね。で、そこでロシア語も使う。ロシア区画の運用に関してはロシア語でやられるし、アメリカ区画であれば英語なので、コミュニケーション能力としては必要だと思うんですよね。だからどうするのかな……ちょっと私、リサーチ不足でアレですけど。もしかしたら、多少は変わるかもしれないですね。

黒田:アルテミス計画(アメリカ主導の有人月面探査計画)自体がNASAの主導であれば、ということですよね。

内山:そうですね。そこも今後どうなるかなんですけど、基本的には「(アメリカとロシアが)一緒にやろう」っていう動きと「いやいや」っていうのもあるので。そこも1つあるかもしれないですね。でも、宇宙に国境はないですから。どちらの言語も話せるようにするというのが、ある程度は必要になるんじゃないかなと思いますね。ロシア語ができれば、当然、ソユーズにも乗ることができますし、選択肢は広がりますよね。いやぁ、すごいですね。みなさんいろいろ考えられてますね。

大きな夢を目指す時に使うと便利な、マンダラチャート

黒田:こういう質問もありますね。

「『こうのとり』などのお仕事や、生活のさまざまな問題の発見や解決にも、著書で触れられていた『マンダラチャート』を使われていますか?」。

宇宙飛行士選抜試験 ファイナリストの消えない記憶 (SB新書)

内山:あぁ、マンダラチャート。これ、なにか大きな夢を目指す時に使うのには、非常に便利なチャートだと思ってるんですけど。けっこう作るの大変だったんですよね(笑)。いろいろ考えて厳選していきましたけども、僕も仕事では……もしかしたら似たようなことをやってることもあるのかもしれないんですけど。仕事ではマンダラチャート自体を使うことはないですかね。

ただやっぱり「何が必要で」って、問題を分析するいう時には似たようなチャートっぽいものを。課題を洗い出して、その課題に対して何が解決策として考えられるか? みたいな、いろんなアプローチを多角的に考えようと思った時に、チャート形式のものは便利だなと思いますけどね。

黒田:私も今、絶賛編集中の(自身のYouTubeチャンネルの)動画で、マンダラチャートを作ってみたんですよ。

結果的に内山さんの著書のですね、付箋も付けてますけれども……93ページですね(笑)。

内山:(笑)。

黒田:こちらにインスパイアされまくりで(笑)。

内山:そうですか(笑)。そうしたら、人の見ないほうがいいかもしれないですね(笑)。

黒田:えー! そうなんですかね(笑)。でも本当に、大谷翔平選手のものと内山さんのもので構成されたようなマンダラチャートに……(笑)。

内山:ハイブリッドの(笑)。でもやっぱりそこを、自分が何を目指すべきかみたいなのを明確にする、あぶり出すためにはいいと思うんですよね。

黒田:そうですね。

「宇宙飛行士を目指した仲間」100名以上の会合

内山:もう1つ質問がきていますね。

「10人の同志の方のような高め合える関係性は、過去の宇宙飛行士選抜や海外にも見られるのでしょうか」。

あぁー、海外はちょっとわからないですね……。日本のは、宇宙飛行士選抜試験の第1期から第5期までの「受験仲間のみんなの会」みたいなやつは。黒田さんも1回(参加された)。

黒田:そうなんです、その時に内山さんと初めてごあいさつをさせていただきました。

内山:っていう「同じ宇宙飛行士を目指した仲間」みたいな集まりがあってですね。その絆はなかなか強いですね。100名以上集まったんじゃないですかね? 第1期から第5期、ぶち抜きの会っていうのをやったんですけども。もう2~3年前ですかね。そこには1歳から70歳までいたと、記憶しているんですけど(笑)。

黒田:(笑)。そうですね。

内山:受験した方の子どもや、今後、受験を考えている方も含めて、確か100名以上集まった会があって、けっこう絆が。連絡を取り合っているんですよね、毛利(衛)さん世代の方から今まで。たまにですけれども集まって、っていう会は細々と続けたり。あとは宇宙飛行士関連の情報をメーリングリストに流してくれたり、という方がいたりして、けっこうずっとつながってますね。

黒田:去年も知らず知らずのうちに。10月末に“Zoom飲み”みたいな感じで開催されて。

内山:あっ、そうでした、そうでした。

黒田:びっくりすることに、その直前に「宇宙飛行士選抜試験をします」と発表されたんですよね。

内山:そうでしたね。

黒田:初めてその「宇宙飛行士・友の会」に行かせていただいた時にすごくみなさん人間的に落ち着かれていたり、明るいなっていう印象を抱きました。それで「すごく高尚な話ばっかりだったらどうしよう」と思いきや、意外と共感できるというか、くだらない話もしてくれたり(笑)。

内山:(笑)。

黒田:やっぱり人間的に整っている人が多いな、という印象を受けましたね。

内山:みんな宇宙好きですよね。いろいろと「こうあるべきだ」って厳しい意見もあったりしますけど、みなさんやっぱり宇宙が好きで、っていう方の集まりですよね。

黒田:そうですね。

内山:だからけっこうその関係性っていうのは、長く続いてて。たぶんもうずっと続くんじゃないかなって、僕は思いますね。

黒田:うん、うん。

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