
2025.02.12
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内山崇氏(以下、内山):本日は「内山崇×黒田有彩 2021秋 宇宙飛行士選抜試験への挑戦!」と題しまして、私がSB新書さんから出させていただいた『宇宙飛行士選抜試験 ファイナリストの消えない記憶』。こちらの刊行記念オンラインイベントです。
けっこう大変な状況ですよね。天災のように我々はあまりコントロールできないという状況で、人間の無力さを感じることもあるんですけど。やはり、できることをやっていくということで。挑戦であったり、歩みを止めないという感じで、やっていきたいなと思っています。今日は聞いていただいて、ありがとうございます。
前回のJAXA宇宙飛行士選抜試験にて、私がファイナリストであったということで、このような本を書かせていただきました。内山崇と申します。お願いいたします。
黒田有彩氏(以下、黒田):そして、本日対談させていただきます、黒田有彩と申します。よろしくお願いします。
内山:じゃあ、最初は自己紹介を簡単に。
黒田:(笑)。ちょっと緊張解きません?
内山:そうですね。
黒田:実は、(イベント主催の)本屋B&BさんのBが“BOOK&BEER”ということで、ビール飲みながらやっていいという(笑)。
内山:いや、本当に驚いたんですけれども、お言葉に甘えまして。
黒田:じゃあ、乾杯。リモート乾杯。
内山:乾杯。もし、見られている方もいましたら、乾杯。
黒田:(笑)。乾杯。
内山:ありがとうございます。自己紹介からさせていただきます。私、JAXAの「こうのとり」のフライトディレクタをやっていまして、2009年1号機から2020年の9号機まで、フライトディレクタを9機連続で務めました。
その「こうのとり」の初号機を、まさに開発して打ち上げしようと準備を進めている2008年に、ちょうど前回の「JAXA宇宙飛行士選抜試験」が行われまして。それが通算で5回目だったんですけども、その試験に挑戦をしまして、ファイナリストまで残りました。というようなことを経験しております。
そこから「こうのとり」のフライトディレクタとしての仕事であったり、あとはその時、宇宙飛行士候補として選ばれました油井(亀美也)飛行士、大西(卓哉)飛行士、金井(宣茂)飛行士を横目に見ながら、つくばであったりヒューストンであったりで共にして。僕もフライトディレクタという仕事は非常にチャレンジングで、見習いから始めて10数年やっているんですけれども。
共に成長してきたという感じで。彼らが本物の宇宙飛行士になって、宇宙ステーションのミッションを完了するところを一緒に走ってきたあたりを、本に書いたというところです。
ふだんは、スポーツとかが好きで。ゴルフとかバドミントンとか、今でも少しやったりしています。あとは子どもと虫採りをしたり。それから子育てはけっこう大変で、宇宙船のコントロールは得意とするところなんですけど、ちょっとあの2人はなかなかコントロールできなくて(笑)。
黒田:(笑)。
内山:日々大変だなと思っているところです。今日はよろしくお願いします。
黒田:はい。お願いします。僭越ながら、私も簡単に自己紹介させていただきます。宇宙の魅力をお伝えする“宇宙タレント”の活動をしております、黒田有彩と申します。
今は精力的に「黒田有彩もウーチュー部」というYouTubeをやっておりまして、そこで出演だけではなくて、台本制作や構成、編集もやっています。制作のよろこび、大変さも感じている、今日この頃でございます。
2015年に、ちょうど「こうのとり」の5号機、H2Bロケットの打ち上げを種子島に見に行くというロケに参加しました。その時は、油井さんがISSでロボットアームでキャッチされたんですね。それが、自分が初めて生で見たロケットの打ち上げだったんですが、それを見て、人類の凄さに改めて感動して。その時から「私は宇宙飛行士を目指しています」と公言し始めました。
もともとは中学の時にNAXAを訪れたことがきっかけで「宇宙というものが一番特別なもの」になったんです。でも現実を知っていく中で諦めたり「憧れではあるけれど自分には手が届かない夢」だと感じていた時期がありました。でもその打ち上げを見て、改めて自分の口で言うことに決めたんです。
今年の秋から13年ぶりに宇宙飛行士選抜試験が行われるということで、それにチャレンジします。よろしくお願いします。
内山:よろしくお願いします。やはり、公言されているってすごいなと思うんですよね。
黒田:そう思われますか?。
内山:僕の時は12年前ですけど、そんなに手前のタイミングで「募集します」という話もなかったというのと。
黒田:そうですね。
内山:わりとみんな、それほど周りに言わずに受けているという方がほとんどだったんですよ。だから、最近はけっこう公言されている方がいて。それって勇気がいるじゃないですか。
黒田:はい。
内山:言うことによって、もう引き下がれないというか。
黒田:そうですね。
内山:というプレッシャーを自ら課すという意味も込めて、すごい勇気のあることだなと僕は思っています。
黒田:ありがとうございます。内山さんの著書、私もガッツリと読ませていただきました。
内山:ありがとうございます。
黒田:まず始めに『宇宙兄弟』のサイトの中で連載が始まって「これは、ものすごいものが始まったぞ」と思いました。12年前の、ある意味、思い出すのも辛いようなことも自分の中で掘り起こして、それを言葉にしていくという作業は、すごく大変なものだったと思うんです。
「思い出したくない、触れたくなかった時期もあった」と著書にもありましたけれども、また改めて見つめ直したきっかけというのは、まずどこにあったんですか?
内山:2年くらい前なんですけど、ちょうど「こうのとり」の7号機のリードフライトディレクタという、ミッション全体をまとめる役割だったんですけど。宇宙ステーションから小型カプセルの物資を回収するミッションがあって、それが終わったんですよね。
その時ってソユーズの失敗があったり、宇宙ステーション自体も大変だった中でミッションを終えて、自分の中では一区切りついたと思った時で。すでに(宇宙飛行士選抜試験から)10年経っていたんですよね。ちょうど受験をしてから10年という、区切り。
「もしかしたら次の試験があるかもしれない」と思いながら5年が経ち、7~8年経ち、10年と来た中で。「宇宙飛行士になりたい」という夢がフワフワッと飛んだまま、何も整理ができていない状態である自分に気が付いた時に「この10年を真正面から振り返って、1回まとめてみたいな」という思いが、まずきっかけとしてあって。
5年経ってまだ募集がなくて、自分は自分の仕事をがんばっているんですけど、やはり「宇宙飛行士に、もう1回チャンスがあればチャレンジしたい」と思っていた時期もあったし。その頃ってちょうど、油井さんが宇宙に行って、JAXAの選抜関係の方とかNHKさんとかがけっこう本を出されていて。当時の試験のことに関する話が出てきたりというのが、続いた時だったんですね。
やはり、まだその時はまともに見られなかったんですよ。いろいろ書かれていて、たぶん冷静でフラットな気持ちで見れば、いろんなことが発見できたと思ったんですけど。まだそんなに、冷静に振り返ることができなかったんですよね。
10年経って、ちょっと勇気を出して、ちゃんと振り返ってみようと思ったのがきっかけで。でも振り返るにあたって、例えば本を書くこと自体が僕にとってはチャレンジだったんですけど。「1回まとめたいな」ということで、コルクの佐渡島(庸平)さんに声を掛けて。「こんなこと考えているんですけど」と言ったら「いいね。やろう、やろう」と言ってくださったので、書き始めたというのがきっかけでした。
内山:ただ、最初はもっと格好つけて書こうと思ってたんですよ。
黒田:あはは(笑)。
内山:いろいろとメモを取ったり、残してある資料もあったし。振り返ればいろいろ出てくるというのはわかっていたんですけど、やはりちょっと格好つけて書きたいじゃないですか。最初はそんな感じで書いていたんですけど「それじゃあ、おもしろくない」と、編集のプロの人たちからは言われたんですよね。
日記みたいでダメだと。「心が、自分が動いたところの描写をしっかり書かないと、それは伝わらないよ」というのを、何度も何度も言われて。確かに読み手としては「なるほどな」と思うんですけど、書くほうとしてはそこまで踏み込んで書かないといけないとなると、けっこう大変な作業だったんですよね。
ただそれをやってみると、その時、本当に自分がどういうふうに思っていたのかとか、感情がどういうふうに揺れ動いたのかみたいなのを、けっこうガッツリ振り返れたんですよね。そこを繰り返し繰り返し、問われつつ書くことによって、自分自身はもう“丸裸にされた”みたいな感じだったんですけど。
人にもあまり言ったことがないようなことまで書いてみて、最初はやはりちょっと抵抗があるし、それを人に見せるって恥ずかしいなという思いがあったんですけど。1回出しちゃうと、けっこう大丈夫になって。それ以降は、なるべくその「自分の気持が動いたところ」を中心に書こうと思っていたら、これくらいのことが書けましたというようなかたちですかね。けっこう丸裸にされました。
黒田:読んでいても、喉の奥がギュッとなるような感覚になるというか。特に選ばれる分岐点のところ。選ばれる人、選ばれなかった人の描写は、もう本当にすごいものを言葉にしていかれたんだなと。泣きながら書いていたんじゃないかなと思うような(笑)。
内山:(笑)。
黒田:そういった感じがありましたね。
内山:いやぁ、でも、あの辺は確かに。自分でもう1回読んでも、ちょっとグッと来るところがあるし。僕が書いたんですよね、たぶん。ちゃんと書いたんですけど(笑)。
黒田:(笑)。
内山:「あれ、これ、誰が書いたのかな?」という、第三者的にもう1回読んでみると「これ、本当に僕が書いたんだろうか?」というくらい、その時の気持ちにグッと入り込んで書いていたというのか……もしかしたら、ただ僕が忘れっぽいだけなのかわかんないんですけど。
黒田:(笑)。
内山:読み返してみると、その時の自分の気持ちに気付くみたいなこともありましたね。
黒田:そうだったんですね。
内山:なんか不思議でした。自分のことを本に書くって、生まれて初めての体験なんですけど。そこから気付かされることもあったし、書いた中身で事前に読書会グループというのを作って、いろんな方にリリース前に読んでいただいて、フィードバックをいただいたんですよ。
それが本当に、自分にとっては目からウロコの体験が多くて。「こういうふうに読んでくだささるんだ」とか「こういうふうに、自分の体験に照らし合わせて心に響かせてくれるんだ」という、けっこうダイレクトなフィードバックをいただけて。
僕自身をさらけ出して「こういうこと、こういう時に気持ちが揺れ動きました」「自分はこう考えて行動しました」みたいなのを書くと、ものすごい人に刺さるというか、響いていただけるんだなというのがわかって。
そうすると書くほうも「ここって重要なんだな」とか、普遍的に宇宙飛行士という挑戦だけじゃなくて、それ以外のいろんなことを目指している、がんばっている方々にも響くんだなとかいう気付きを得られて。それでますます書いて、といういい循環ができて。
黒田:そうでしたか。
内山:というプロセスがすごい楽しくもあり、いろいろ、自分の発見ですかね。とにかく本を出すという経験で、いろんなことをまた学ばせていただいたなという感じがします。
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