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SNSでヒットする漫画のつくり方 若林稔弥×地球のお魚ぽんちゃん(全6記事)

“17.4万いいね!”を記録した、Twitter連載漫画の舞台裏 作者がネタ解説しながら考察する「なにがここまでバズったか」

紙本売上の落ち込みによる出版不況から始まり、スマートデバイスの普及やSNSの発達を通して、ここ数年で急伸してきた電子書籍市場。漫画業界でも各社によるデジタルシフトがニュースで取り上げられる一方で、漫画家たちに起こる変化について語られる機会は多くありません。そこで、ナンバーナインが主催で「いまの漫画家たちが何を考え、どんなキャリアを歩むのか」を考えるオンライントークフェス「漫画家ミライ会議」が開催されました。本記事では漫画家・若林稔弥氏、漫画家・地球のお魚ぽんちゃん氏、株式会社ナンバーナイン 執行役員 工藤雄大氏によるトークセッション「SNSでヒットする漫画のつくり方」の模様を公開します。

SNSでヒットする漫画のつくり方

工藤雄大氏(以下、工藤):お待たせ致しました。今回「SNSの漫画のつくり方」ということで登壇いただくのは、地球のお魚ぽんちゃん先生と若林稔弥先生です。よろしくお願いします。

(会場拍手)

工藤:まず若林稔弥先生から自己紹介をお願いします。

若林稔弥(以下、若林):はい。漫画家の若林稔弥と申します。『幸せカナコの殺し屋生活』、あと『ぱちん娘。』というパチンコ漫画。そして終わりましたけれども『徒然チルドレン』という漫画を描いておりました。よろしくお願いします。

幸せカナコの殺し屋生活 1 (星海社COMICS)

工藤:よろしくお願いいたします。

(会場拍手)

工藤:はい。ありがとうございます。じゃあ、地球のお魚ぽんちゃん先生、お願いいたします。

地球のお魚ぽんちゃん氏(以下、ぽんちゃん):漫画家の地球のお魚ぽんちゃんと申します。『男子高校生とふれあう方法』という漫画でデビューしまして、現在はTwitter上で『一線こせないカテキョと生徒』という、ちょっとお馬鹿さんばかり出てくる漫画を、ナンバーナインさんと一緒に描かせていただいております。本日はお招きいただきありがとうございます。

一線こせないカテキョと生徒(1)

工藤:はい。ありがとうございます。

ぽんちゃん:よろしくお願いします。

(会場拍手) 

工藤:(スライドを指して)こちらで本日は行っていきたいと思います。

まず、今回の「SNSでヒットする漫画をつくり方」のところで、トークテーマとしてはこの4つを考えております。まずは「カテキョとカナコの作り方」というところで、お二人の今、連載されている作品の作り方というところを参考にさせてもらいつつ、次、Twitterの漫画の発表に関してのメリット、もしくはデメリットといったところを話していただいて。あとの「バズる」という行動、現象を体験されたお二人に、そのバズった先の向こう側を話していただきたいなと思っております。

4番目には、これを見ていただいている漫画家さんに向けて、SNSを使ってヒットする漫画の作り方のところを、エッセンスだったりとか手法だったりとかそういったところをお話していただければなと思います。よろしくお願いします。

若林:よろしくお願いします。

ぽんちゃん:よろしくお願いします。

「17万4千いいね」を記録した『カテキョ』の1話

工藤:さっそくもう行きたいと思いますので、まず「カテキョとカナコの作り方」というところで。

こちら、画像を用意させていただいておりまして。

工藤:まず、ぽんちゃん先生に『一線こせないカテキョと生徒』、今、連載中の作品なんですけれども。第1話がなんと「17万4千いいね」を記録と。

ぽんちゃん:ありがとうございます。

工藤:めちゃめちゃすごいですよね。

ぽんちゃん:ね(笑)。

工藤:今回、こういった例を何個か出させていただくので、バズる際に意識されたことというのをお話させていただきたくて。

ぽんちゃん:私、地球のお魚ぽんちゃんは、ずっとギャグ漫画を描いていて。たぶん知らない人もいると思うので、先に説明をしていただくと。

工藤:お願いします。

ぽんちゃん:自分で言うのもなんなんですけど、かなりシュールに寄ったギャグ漫画をずっと描いていて。若林先生との対比でお話させていただくと、私は若林先生は「あるある共感ギャグ漫画」だと思っているんですけれども。

反面、私は「ツッコミ待ちシュールギャグ漫画」だと思っているんですよね。そういうのを踏まえた上で見ていただくと、わかりやすいかなと思っていて。

この『一線こせないカテキョと生徒』という漫画は、男子高校生の男の子を誘惑したい家庭教師の女の先生が、あの手この手でいろいろやるんですけど、生徒のほうが馬鹿過ぎてぜんぜん一線を越せないという漫画なんですね。Twitter上で4ページで展開していて。

何がここまでの“バズり”につながった?

ぽんちゃん(スライドを指して)今、表示していただいているのが第1話なんですけれども、カテキョの作り方、どうやってバズらせたかみたいな。

工藤:そうですね。1話目を作る時に。

ぽんちゃん:そういうところでいうと、たぶん2ページ目にすべてが詰まっているんですね。

工藤、若林:おお!

ぽんちゃん:自分で言うの、めっちゃ恥ずかしいんですけど。

工藤:(笑)。

ぽんちゃん:これ、どういうネタかというと。要は「この問題が解けたらいいことしてあげるよ」と誘惑する家庭教師に対して、家庭教師が「1+1=?」と誰でも解ける問題を出したら「42」と答えるという。

え、待って……? 自分でネタを説明するの、めっちゃ恥ずかしい。

(会場笑)

工藤:でも、めちゃめちゃ丁寧に伝わってきますよ。

ぽんちゃん:ちょっと恥ずかしいんですけど、という漫画を描いて。残り2ページもいろいろあるんですけど。たぶんこれがバズったんだろうという理由が、ここの「1+1=42」という「本当にどこからくるの? この数字」という(笑)。

工藤:そうですね。

ぽんちゃん:というところで、バズらせていただいたところがあって。それが「どこからくるの?」というのが、いろんな人からの口コミになっているというか。

工藤:ああ、なるほど、なるほど。

ぽんちゃん:そういった点で、いろいろリプライとかでツイートいただいて。たぶんここまでバズりにつながったのかな? と、この漫画は思っています。

作っているときは「ここで絶対バズらせたろ!」とは思っていない

工藤:そこは狙ってというか、そういった反応「ここ、みんな突っ込んでくるだろうな」というのを思って、ここは入れたというかたちなんですか?

ぽんちゃん:あと付けでは、そうですね。

工藤:あと付けでは、そう。

(会場笑)

工藤:考えている時は。

ぽんちゃん:作っている時は、本当にどうやったらおもしろいか? を考えるので「ここで絶対バズらせたろ!」みたいなのは、あまり思っていない。

工藤:へえ。

ぽんちゃん:とにかくおもしろい、笑えるものを描こうというふうにやって。あとでいろいろなリプライいただく方の反応を見ると「ああ、こういうところで突っ込んでくれるんだ」みたいなのがわかって、という感じです。

工藤:「1+1」が「42」というワードのところはみなさん。

ぽんちゃん:そうですね。「42」に決まったみたいですよ。「1+1」は(笑)。

(会場笑)

工藤:「42」に決まったんですね。

ぽんちゃん:決まったみたいです。

工藤:他の2話、3話、4話と続く時も、けっこう打ち合わせの時も言ってらした「キラーワード」が1個入っていたりとか。

ぽんちゃん:そうですね。やはりこの「1+1=42」ですごく反応をいただけたので、いかにお馬鹿さんな部分をキラーワードとともに描くか、というのは意識していました。

工藤:あの1話の反応を見て「こうしていったほうがいい」みたいなフォーマットができてきたという。

ぽんちゃん:もう本当にそんな感じで、毎回毎回(読者の)反応を全部読んで。どういうのがウケるのか、こういう反応が多いなというのを見て、こっちへ寄せていくというか。そういう意見を頂戴して、自分のエッセンスにしていくみたいなのはやっていました。

“バズり”は落ち着きつつも、引き続き注目が集まる

工藤:ありがとうございます。若林先生から見て、気になるポイントとかありますか?

若林:気になるポイント? なんだろう。

ぽんちゃん:ネタに気になるポイントって、めっちゃ緊張しますけど(笑)。

若林:気になるポイントなんだろう。

工藤:ぽんちゃん先生がバズった要因とかでも。

若林:でも、あれなんですか? ここからアベレージというか、その後も平均的にバズれてたりします?

ぽんちゃん:あのですね、正直、1話ほどはいっていないです。

若林:まあ、まあ、まあ。(そういうこともありますよね)

ぽんちゃん:やはり、1話が本当に爆発的にリツイートといいねしていただいて。2、3、4話あたりまでは、だいたい5、6万いいねとかいっていたんですけれども。その後は落ち着いて、2万いけばいいかなみたいな感じで(笑)。

工藤:いや、でも常時2万いいねで、20何話まで続いているというのは、相当すごいと思うんですけど。

ぽんちゃん:本当にありがたいです。

工藤:なるほど。たぶんこれ、1つずつ深掘っていくとアレだと思うので、そういったかたちで他の作品のも説明していただけるといったらいいなと思っています。

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