2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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小禄卓也氏(以下、小禄):描き続けられる人と描き続けられない人って、やはりいると思うんですが。そういう意味で、描き続けるために必要な要素とかって思い浮かびますか?
末次由紀氏(以下、末次):小沢さんが出してくれた、資料の4要素がすごくわかりやすくて。説明してもらえますか?
小沢高広氏(以下、小沢):はい。ちょっと考えてみたんですけど、漫画家が漫画を描けなくなる要因って、大きく4つかなと思ったんですね。
1つ目は社会的要請。要するに出版社から要請がある。編集者に頼まれている。後は読者とかファンに「描いて」と言われる。こういう要請があるかないか。
2つ目は、自分自身の創作意欲みたいなものがあるかないか。3つ目は健康。漫画を描けるだけの体力なり健康があるか。4つ目は経済的余裕。さっきのセッションでもありましたが、ネームを描いている間って、我々はお金が出ないじゃないですか。その間を支える経済的余裕があるかないか。
これが、漫画家が漫画を描けなくなる4つの要素かなと思っていて。おそらく今、現役で描かれている方は、この4つ揃っている方が多いんじゃないかなと思うんです。
まぁ、社会的要請がなくてもSNSはじめいろんな媒体で漫画って描けるじゃないですか。だから、描くことは可能だと思うんですね。
他にも、創作意欲がなくても読者に求められる場とか、編集さんから依頼があれば描くよという人はいると思うんです。健康じゃなくても病床でそれを描くみたいな技もあるし。
末次:騙し騙し、生産量を落としてなら描けますね。
小沢:そして、経済的余裕がなくても、社会的要請があれば、前借りとかそういう融通って出版業界はわりとしてくれるところはあるので、いけるかな。
末次:バイトしながら描かれる方もいますしね。
小沢:そうですね。要するに、3つ要素が揃っていれば、漫画家は意外に描き続けられと思うんですよ。年を取っても。なので、一概に年齢で切れるものではなくて。多分、満たしている要素が2つになってくるとだんだん厳しくなってくる。
小禄:なるほど。
小沢:社会的要請がなくて、創作意欲もなくて描くというのはけっこう難しいと思うんですよ。
小禄:そうですね。誰にも求められていない状況ですね。
小沢:そして、創作意欲がなくて不健康だと描けないと思うんです。もはや。
末次:これはだいぶ辛いですね。
小沢:社会的要請があって創作意欲があっても、不健康で経済的余裕もないと「先に病気治して」とか「元気になって」みたいな感じになっちゃうんです。なので漫画を描くためには、3つの要件を満たす状態に戻すことを優先すべきかなと思っているんですね。
小禄:なるほど。
末次:先ほどのセッションでもありましたけど、ナンバーナインさんが健康診断までもフォローしてくださる流れだと聞きましたが、あれで4つとも押さえられるんじゃないかって思います。
小禄:そうですね。
末次:そこにサポートするくらい、ナンバーナインさんが踏み出す可能性があると思います。
小禄:実はそれはすごくありまして。ただ、漫画家さんって全国各地に散らばっていまして。なので「健康診断を東京でやります!」といっても、重い腰を上げられない漫画家さんもいらっしゃったりすると思うんです。健康問題に関しては。
小沢:そうですね。病気になるときはなっちゃうし、事故に遭う時は遭っちゃいますよね。そして「健康診断受けましょう」という当たり前な結論になってしまう。
末次:本当に健康って大事なことです。
小禄:小沢さんにご用意していただいた次のスライドも解説いただいていいですか?
小沢:はい。いわゆる人口ピラミッドなんですけれども、左上が1995年でこれがジャンプが最大部数出した時ですね。
小禄:653万部でしたよね。
小沢:653万部でしたっけ。これがその発行部数を記録した時の人口ピラミッドなんですね。もちろん若い世代がまだ随分多かった感じですと。
そしてこの右側が2020年で現代ですね。この状態になっても『鬼滅の刃』みたいなヒットが出るんですが、随分上の年齢層が漫画を買っているわけですね。
そして次が一応2050年。30年後なので、今20代の人が50代。40代の人が70代になるので、まあこれくらいになるだろうと。
これは悲観しようという資料ではなくて「あまり先のこと心配してもしょうがないよ」という考え方で3つ重ねてみたんですけど、これくらい変わってしまう。
小禄:うーん、確かに。
小沢:一応、漫画を描く王道のルールとして「主人公の設定と読者層を合わせる」というのはあるじゃないですか。
やはり少年誌だと少年が主人公だったり、青年誌だったらそこそこの会社員だったり。そして、年齢がそこそこいっている主人公になったりすると考えていくと、実は末次さんや僕が属している世代って、けっこう実は幅がある世代なんですよ。
末次:はい、そうなりますね。
小沢:そうすると、年齢層の高い主人公の漫画を描くみたいな方法もあるだろうし、逆に掘り起こしもできるし、テーマでおもしろいことができるのかなと思うと、年を取っても描くことはあるんじゃないかなとは思っています。
小禄:社会的要請のボリュームゾーンも大きいわけですもんね。
小沢:そうなんですよね。
小禄:新しいニーズが出てくるかもしれないですね。本当にそれを描きたいかどうかは別ですけども。
小沢:でも、意外に年を取ったら、そういうの描きたくなるんじゃないかなという気もするんですよ。
小禄:へぇ〜、末次さんはどういう感覚ですか?
末次:うちはおじいちゃんたちと一緒に住んでいるんですけど、おじいちゃんは、演歌とかの懐メロが歌われている番組ばかり見ていて「最近は若い人が歌を歌う場がないからヒット作も出ないんだろ?」みたいなことを言うんです。
でも、そもそも見ているものがぜんぜん違うから、単純に若い人のヒット作に触れる機会がなくて。「みんな売れなくて大変なんだ。演歌歌手はこんなに活躍しているけど」みたいになっていて「そういうことか」と。
そういう年齢の人に寄り添うものとして漫画も熟していければ、年を取っても自分が読むものがあるなって。
自分が見たいテレビ番組があるように、学生の主人公とかがピンとこない人でも楽しめる作品は生まれ続ける。そこに寄り添う必要性を、私たちは知っていていいし、そういう活路はあるなと。
今、漫画が好きで大人になった人たちは「俺はもう何歳だから……」って漫画を卒業しないだろうなと思えるので、その人たちと人生を伴走していく作家になりたいなと思っていますね。
小沢:我々が子どもの時って、大人になったら漫画って読まなくなるものだと思っていましたよね。
小禄:そうですね。ちょっと思っていました。
末次:大人が漫画を読んでいると珍しいみたいな価値観って、今はあんまりないですからね。
小沢:それはなくなったと思いますね。
小禄:たぶんそれは、電子書籍化やデジタル化が進んでいって、本当に身近に気軽に漫画が読めるようになったのが大きいと思います。紙だけだとどうしても、こうはなってないと思うんです。
末次:そうですよね。
小禄:物量があってかさばったりとかしますけど、電子だといつでもどこでも、しかも好きなものを読めますからね。
小沢:でも、紙だって好きなものを読めませんか?
小禄:紙でも読めますけど。
末次:でも、昔の作品を紙で手に入れるの、大変じゃないですか?
小禄:これは電子書籍の業界でよく言われますけど、電子だとエッチな漫画がよく売れるとか。
小沢:なるほどね〜。
小禄:あまり並べたくないですけど、自分の中で持っておきたい漫画とかも、自由に選べるところの要請はあるのかなと思いました。
小沢:購入する時に個人情報を垂れ流しているのは、電子書籍のほうだと思いますけどね。
(一同笑)
末次:あなたの趣向をスマホが知っているというね。
小沢:「Googleはすべて知っている」みたいな話になっちゃう。
小禄:そうですね(笑)。ちょっと強引にまとめると、年齢的なところをあまり気にしなくていいということですかね。
末次:今がんばっている60代〜70代の先生もたくさんいらっしゃるので、人によるとなるなは思いますね。やる気のある人はできる。
でも、それは「紙でヒット作を作った先生に限る」となっているのをみると、紙が売れない時代になってしまったらどうする? という問題はありますよね。大ヒット作がない人も長くやるには? というテーマに変わってくるだろうなとは思いますね。
小禄:なるほど〜。
小沢:確かに電子書籍化して、いわゆるロングテールという作品を持っておくことは、漫画家が漫画を描くために必要な、経済的余裕を担保する何かになっていくといいなとは思いますね。
小禄:そうですね。
末次:私たちはきっと時間を味方に付けなきゃいけなくて。蓄積したこれまでの作品がどこかで絶版になってしまったら、もう誰にも買ってもらえないみたいなことはもったいないんですね。
「手元にもうなくなっちゃったから、もう1回買いたいけどない」となるよりは、アーカイブがずっと残っていて少額でも買える。少額でも過去作品が作家さんにお給料をもたらしてくれるみたいな。
やっぱりアーカイブとして積み上がっていくほうが、長くがんばれるだろうなというのはあって。そういうところは紙よりも電子のほうが賄えるという希望は持っていますね。
小沢:まだ電子書籍とかが出る前に、書店員さんに教えてもらって驚いた話なんですけど、その時に現役で連載していた長寿漫画があったんですよ。ある青年誌の看板漫画でずっとその雑誌に載っている漫画ってよくあるじゃないですか。
小禄:ありますね。
小沢:それは当時50何巻だったかな。でも1巻はもう絶版なんですって。
小禄:ええ!
末次:そうなるんですね。
小沢:1巻は絶対刷らないという話を聞きまして。
末次:最初から読み直せないんだ。
小沢:そういう意味では、電子書籍はそこの未来は明るくしたと思ってます。
小禄:アーカイブ化されますし、購入いただいたら印税も還元されますもんね。
末次:いつ何が売れ始めるかわからない時代にあるので、ふと目立ったら昔の作品が売れるみたいなこともやはり可能性としてあるほうがいいですよね。最後におもしろいお話がきましたね。
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