CLOSE

Why Do Things Look Blurry Underwater?(全1記事)

なぜ人間の目は、水中でうまく物を見られないのか?

言うまでもないことですが、人間の目は魚と違い、水中で辺りを見回すことを得意としていません。視界がボヤけて、正常に物を見ることができないのです。では我々の目は魚よりも性能が劣っているのでしょうか? その答えはノー。人間の目は単に、空気中で焦点を合わせることに適しているだけなのです。今回のYouTubeのサイエンス系動画チャンネル「SciShow」では、その謎に迫ります。

なぜ水中で視界はぼやける?

ローズ・ベアドントウォーク氏:正常な視力の持ち主なら、泳いでいると、水中では視界がボヤけてしまうことにお気づきでしょう。ところが魚をはじめとする水中の生き物は、水の中でもまったく問題なく物を見ることができます。

ではなぜ私たち人間は、水中では正常に物を見ることができないのでしょう。人間の目は、魚より性能が劣るのでしょうか。いいえ、決してそんなことはありません。人間の目は単に、空気中で焦点を合わせることに適しているだけなのです。

目は、入って来る光が曲がること、つまり屈折することにより見ることができます。通常であれば、ある密度の物質の中を進んでいた光が、異なる密度の物質にぶつかると速度が落ちます。速度の落ちた光が、屈折するのです。

物質の中での光の速度を示す値が、屈折率です。密度の高い物質は、屈折率が高くなります。ある物質の中を進んでいた光が、異なる物質にぶつかった時に曲がる度合は、屈折率と進入時の光の角度により異なります。

例えば、水の入ったグラスに入れたスプーンを思い出してみてください。空気と水では屈折率が異なるため、スプーンは曲がって見えるでしょう。

物を見る時に、進入してくる光が最初に当たるのは、目の一番外側にある角膜です。角膜の密度は高いため、光は屈折します。屈折と角膜のカーブにより、光は角度を変え目の中心部へと進みます。角膜の次に光が当たるのは、水晶体です。水晶体の密度はより高く、光はさらに屈折します。こうして光は、眼球の後ろの壁に小さく像を結びます。

しかし、水は空気よりもはるかに密度が高い上、人間の角膜とほぼ同等の屈折率です。そのため水中で角膜にぶつかった光は、ほとんど屈折できません。屈折できるほど、光がスピードを落とすことができないからです。水晶体に当たった光は少しは屈折しますが、目の構造自体はまったく変わらないため、水中で人間の目に入った光は、屈折する力を半分以上失ってしまうのです。

適切に絞られた光は、眼球の後ろの壁に焦点が当たりますが、うまく絞り込めない光は、ぼんやりと広がってしまいます。そのため、脳は目が見ている像をうまく解析できません。

しかし、これを簡単に解決できる手段があります。目の前に空気の塊があれば、光は屈折する力を取り戻すことができます。つまり、ゴーグルをかければ、水中でもはっきりと物を見ることができるのです。

ところで、光が水からゴーグルに当たると、屈折率が変わるので少し屈折します。すると、これが拡大鏡のような作用を起こします。ゴーグルをかけると、物が実際よりも少し近く見えるのは、このためです。

では、魚はゴーグル無しでどのように物を見ているのでしょうか。人間が空気中で物を見ることに適応したように、魚も水中で物を見ることに適応しています。魚は、角膜よりも水晶体の方で主に焦点を絞ります。魚眼の水晶体は、人間のそれよりも高い屈折率です。さらに人間よりも丸みを帯びているため、屈折する力も非常に高いのです。

しかし、この裏には苦労もあります。何百万年もの昔、水から最初に陸上へ上がった魚は、空気中ではうまく物が見えなかったに違いありません。水棲生物に特有の強力に焦点を絞り込む水晶体を持っている上に、空気中では角膜の働きが強くなり、より強く焦点が絞られたからです。焦点は、うまく絞り込めなくても過剰に絞られても、ぼやけて見えづらくなるのです。

人の目は水中ではうまく見ることができませんが、決して劣っているわけではないのです。何百万年もの昔に発生した問題を、見事解決したのです。

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
著者フォローや記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

会員の方はこちら

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

  • 民間宇宙開発で高まる「飛行機とロケットの衝突」の危機...どうやって回避する?

人気の記事

新着イベント

ログミーBusinessに
記事掲載しませんか?

イベント・インタビュー・対談 etc.

“編集しない編集”で、
スピーカーの「意図をそのまま」お届け!