2024.10.01
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The Science of Parkour(全1記事)
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ハンク・グリーン氏:パルクールを見たことがない人に説明をしますと、これは「およそ可能とは思えないスポーツ」です。パルクールをする人を「トレーサー」と呼び、トレーサーは壁を駆け上り、ビルの谷間を飛び越えますが、2階の屋根から飛び降りても、ふしぎなことに衝撃で粉々になったりはしません。
これには、みなさんの想像どおり、さまざまな生体力学が関係してきます。科学者たちがパルクールのスキルを科学的に解析したところ、パルクールのプロの技のヒントをたくさん得ることができました。
一番有名なパルクールの技は、壁登りです。壁に向かって走って片足を掛け、高く飛び上がって頂上を手で掴みます。心地よいほどに超人的な技ですが、特にある点が科学者たちの注意を惹きつけました。水平の床から垂直の壁に移行する際の“踏み込み”です。水平の動きをすべて、垂直の動きに移行するのは簡単ではありません。しかし、トレーサーはこれを優雅に実践します。
『The Journal of Experimental Biology』誌上で発表されたある論文では、アスリートがどのようにこれを行っているのかが調べられました。
研究者たちは、DIYのランウェイを作り、何人かの熟練のトレーサーがアクションしている様を力覚センサーで撮影しました。このセットには、2つの力覚センサーが設置されました。ランウェイに設置されたセンサーでは最後の水平方向の踏み込みの力を、壁に設置されたセンサーでは垂直方向への踏み込みの力が調べられました。
研究者たちはこのようにして、トレーサーが地面を踏み切る力、壁に着地する力を測定したのです。
壁を駆け上がるには、単に非常に高くジャンプすればいいのではないかと考えてしまいますが、実験では、力任せに跳ぶよりもテクニックが重要であることがわかりました。
壁登りがうまくいく際には、多くの場合、壁を蹴る足はトレーサーの腰の高さよりも低い位置に踏み込みます。
この位置取りがどれほど重要がを調べるため、研究者たちは撮影した映像と同時に2つのセンサーのデータを調べ、シミュレーションを作りました。シミュレーションでは、ちょうどよい位置に足が来れば、壁を軽く蹴るだけで、推進力が壁に吸収されることなく維持されることがわかったのです。
しかし、ちょうど良いスピードで移動していなければ、これはうまくいきません。トレーサーが壁に向け早く走りすぎると、足には、緩衝材のように衝突を防ぐ余分な力がかかってしまいます。ところが、走るスピードが遅すぎると、もう片方の足は上に向けて大きな力で蹴りだす必要があり、これもまた理想的とは言えません。
研究者たちは「スイートスポット」があると結論付けました。壁を上るのにもっともエネルギー効率の良い“中庸”のアプローチスピードです。そして、研究者たちが計算により導き出したアプローチスピードは、まさにアスリートたちが既に実践しているものだったのです。
パルクールのもう一つの技が「コングヴォルト」です。これは、障害物を跳び箱の進化バージョンのように飛び越える技です。ヴォルトという名とは裏腹に、機械体操でみられる跳躍技(ヴォルト)とはまったく異なります。
一番大きな相違点は、体操においてはできるだけ高く跳ぶことが求められますが、パルクールにおいてはできるだけ低く跳び、水平方向へのスピードを維持することである点です。その結果、体操とパルクールでは「ヴォルト」での体の使い方はまったく異なってきます。
2020年の研究において生体力学者たちは、コングヴォルトで何が起こっているかを初めて分析し、前からあった体操の技と比較しました。
研究者たちは、壁登りの実験と同様にDIYの障害物を設け、力覚センサーを障害物上や周辺に設置して、トレーサーたちにその上を跳んでもらいました。そして採集したデータから、通常のコングヴォルトにおける、技のさまざまな時点での個々人の関節にかかる力や回転力のシミュレーションモデルを構築しました。
すると、見かけは極端であるにもかかわらず、コングヴォルトは体に優しい技であることがわかったのです。動きは地面に沿ったものであるため、トレーサーたちは上方向に飛び上がる大きな力を使いません。ある研究において体操選手は、跳躍するのに自重の7倍以上の力を使って地面を蹴り出す必要がありました。これに比較して、トレーサーがコングヴォルトをするには、自重よりわずかに大きな力を使い、着地もはるかにソフトだったのです。
ここで、パルクールの最後のスキルの話に移ります。パルクールの人気が高まるにつれ、研究者たちはさまざまなパルクールのスキルを分析しました。ここで、ある一つの疑問が注目を集めたのです。トレーサーたちは、なぜあれほどまでに優雅に着地できるのでしょうか。
トレーサーたちは、非常に高いところから地面に着地しますが、決して激突はしていないように見えます。ある時は着地の際に体を丸めて片方の肩を使って一回転したり、またある時は着地してすぐに深くスクワットします。
トレーサーが着地時に関節を複雑骨折することは無いことから、これらのアスリートたちがこうしたテクニックにより衝撃を最小化していることは明らかです。
2013年の研究では、経験豊富なトレーサーたちに床反力計に着地してもらい、さまざまな着地の衝撃を比較しました。トレーサーたちは、深くスクワットしたり、技の後ですぐに回転することにより、衝撃を一瞬で受けるのではなく、より長めの時間幅で力を吸収することができるのです。
断っておきますが、これらの研究は、ビルディングからジャンプすることには適用できません。科学者たちが期待しているのは、パルクールの技術がアスリートや兵士に役立ったり「週末戦士(週末または休日だけスポーツや運動をする人)」が日々をアクティブに過ごして怪我を防げることなのです。
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