2024.10.10
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These Lice Dive Kilometers Under the Ocean!(全1記事)
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ステファン・チン氏:地球上のどこへ行っても、昆虫の姿は見ることができます。南極の氷床の中に生息する昆虫もいますし、ハワイの溶岩流を住処とする昆虫もいます。しかし、たった1ヶ所だけ昆虫がいない場所があります。それは「海」です。海岸に生息する種はたくさんありますし、水面をスケートする種もいます。しかし、科学者たちにもその理由はわかっていないのですが、昆虫はあの広くて青い海を避ける傾向にあるのです。
ところが、単に水遊びするだけではない昆虫が1種いることは、明らかにされています。それは、「ゾウアザラシシラミ(elephant seal laose)」です。みなさんが小学生の時に、頭に群がるシラミに近い昆虫ですが、実は地球上でもっとも頑健な生命の1つでもあるのです。
このシラミは、ゾウアザラシにしがみつき、水深2キロメートル以上の深海にまで潜ることができます。深海では強大な水圧に耐える必要があります。シラミが小さな体に受ける水圧は、1センチメートル四方につき200キログラムです。これは、軍用深海潜水艦が受ける水圧をはるかに上回ります。
でも、なぜシラミが深海の潜水に耐えられるのか、長い間わかっていませんでした。シラミは、ゾウアザラシの皮膚に確実に生息していますが、アザラシが潜水から浮上した直後にくっついたものかもしれません。研究者たちは、アルゼンチンに生息するゾウアザラシのヒレからシラミを採取し、ラボに持ち帰って厳しい実験を行いました。
シラミをブロンズの容器に密閉し、水深2キロメートル相当になるまで加圧を続けたのです。容器はそのまま10分間放置されました。そして、解放されたシラミを観察したところ、なんとそのほとんどが生きていたのです。
加えて、ある一匹のシラミに至っては、幸運にもあるアクシデントを見事乗り切りました。実験装置の準備中に、技術者が誤って4.5キロメートル水深相当の加圧をしてしまったのです。
これは、どんな海生哺乳類もかつて経験したことのない水深です。ところがなんと、シラミは生きていたのです。
ゾウアザラシシラミが、他の昆虫とは異なる進化を遂げた理由は、生物学者にはよくわかっていません。しかし、説はいくつかあります。海生哺乳類に群がるシラミは、みんな細かくて固いうろこに覆われています。このうろこが、高圧から身を守る鎧のような役割を果たしている可能性がある、というものです。
もしくは、シラミはそもそも圧搾されにくい生物だというものです。消化や呼吸の機能を止めることができれば、他には潰される物はないからです。
では潜水の間、シラミはどのように呼吸しているのでしょうか。これに関しても、いくつかの説があります。うろこの層の下に空気を溜めることができるとか、水中の空気を摂取できるとか、代謝を低下させて酸素の消費を抑えることにより、単に呼吸を止めているだけだとか。さまざまな説があります。
これを解明するには、加圧実験を繰り返し、周囲の水から摂取する空気をモニターすることが1つの手段です。しかし、それには大量のシラミを採取する必要があり、これが実施されたことはなぜか一度もありません。
しかし、このような疑問の解決は、単なるゾウアザラシシラミの研究を超えた意味があります。深海にこれほど深く潜ることのできる昆虫は、これ以外に存在しません。つまり、他とは異なる点を炙り出すことにより、他の昆虫が深海に潜らない、もしくは潜れない理由を解明することができるでしょう。
深海でも、ゾウアザラシは人間と同様にシラミにたかられて痒い思いをしているかもしれないと思うと、なんだか楽しいですね。また、シラミに加圧しすぎた科学者がいたことも、間違いは誰にでもあると共感できます。
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