2024.10.10
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The Secrets of Life’s Toughest Material(全1記事)
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ステファン・チン氏:科学的に知られているうちで一番硬いとされる物質の中では、一番硬いとされているのは人工物ではなく自然物です。それは、牡蠣カキが外敵を排除するために利用する、輝く物質「真珠層」です。これは、「真珠母」としても知られています。
驚くべきことに、真珠層は地球上でももっとも硬い物質の一つなのです。今日はこの美しい虹色の物質が、なぜそこらじゅうの物質科学者の羨望の的なのかをお話ししましょう。
真珠層は単なるパーツの寄せ集め物質ではありません。2つの異素材のコンビネーションのおかげで、真珠層は大きな衝撃を受けても、粉々に砕けることはないのです。
さて、真珠を実際に扱ったことのある人であれば、「ちょっと待って。真珠は、眺めるために持つだけでも、下手をすると傷がつくじゃないか」と思うことでしょう。それは事実です。
真珠層の「硬度」は非常に高いわけではありません。これは、物質科学においては表面に傷がつきやすいことを意味します。しかし、物質の持つ総体的な力の判断基準は、「硬度」以外にもあるのです。実は真珠層は、みなさんが想像する以上の大きな力に耐えうるのです。
まず1一つに、真珠層には「剛性」があります。これは、丈夫で曲がらないことを意味します。さらに、1一つの真珠が壊れるまで、加えなければならない力が大きな点では、「強度」もあります。もちろん「靱性」もあります。つまり仮に傷をつけても、その傷を広げるには大きな力を要することを指します。
真珠層は、この「靱性」が高いことでよく知られています。事実、真珠層の95パーセントを占める鉱物であるアラゴナイトの単体よりも、真珠層はなんと3,000倍も壊れにくいのです。では、どうしてこんなことが可能なのでしょうか。
実は、科学者たちにも、真珠層の靱性がこれほどまでに高い理由は、よくわかっていないのです。しかし重要な要素として、真珠層が1枚板の硬いアラゴナイトではない点が挙げられます。そうではなく、菱形に近いアラゴナイトのプレートが重なり合ってできているのです。
アラゴナイトのプレートの層の間には、やや柔らかい有機物の成分が挟まっています。これは、レンガとモルタルが交互に層になっている様子に非常によく似ています。こうした互い違いの構造が、真珠層に強さを与え、支えているのです。このプレートは「レンガとモルタル構造」と呼ばれますが、レンガほど等間隔ではありません。互いを支えあい、がっちりと組み合って構造をより強固にしています。
プレートの表面は粗く、摩擦が生じるため固定されます。さらにその上、細かな鉱物の沈着物やブリッジが、互いを引っ掛け合いがっちりと固めています。そのため、真珠層を粉々にすることは困難なのです。
アラゴナイトは単体では脆いですが、モルタル状の物質はその欠陥をうまく補填しています。この糊状の物質は多様な成分からな成る有機物の複雑な混合物で、カニの甲羅などに見られるキチン質などが含まれます。
もし外敵が殻に食いついた場合は、柔軟でクッションのような役割を果たすモルタル状の物質が押し出され、その圧力を四散させて、割れ目がそれ以上広がることを防ぎます。外敵が噛むことを止めれば、元の形状に戻ります。レンガもモルタルも、すべて元通りになってしまうのです。
科学者たちはこの驚異的な構造から着想を受け、非常に硬い合成物質や、人工的な真珠層を一から作り出そうとしてきました。例えば、生体適合性のある人工真珠層が考案されれば、人体に異物として排除されません。人体に挿入し、狭窄部を広げて通す小型の管、ステントなどには最適です。例えば、脆くなった動脈などに用いて、免疫システムに排除されずに長期間体内で維持させることもできます。
しかし、こうした素材が一般で活用されるようになるには、まだまだ研究が必要です。その時まで、私たちは自然の驚異的なエンジニアリングを賞賛することにしましょう。
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